Case1|事例概要|食品卸売業A社のDX推進

Case1|DX推進事例

MGIMワークショップの実施事例として、食品卸売業A社のDX推進に向けた事例をご紹介します。フェーズ別の議論内容や成果物を具体的にご紹介し、ATY Japanの考察や示唆などを解説しています。

A社ワークショップの背景

食品卸売業のA社は、今年度の開始に当たり、全社でDXを推進することを宣言しました。

DX推進責任者である副社長がDXの方針を明らかにしましたが、変革内容や活動計画などの具体的な内容はこれから決める段階です。

副社長が全社に宣言したDX方針は、以下の通りです。

得意先への提供価値向上に向けてサプライチェーンをマネジメントし、地域密着の卸売企業としての存在意義を示す。

副社長は、DX推進は全社的な活動であるため、全社員が同じ意識で取り組む必要があると考えていますが、今回は部門の代表者によるワークショップを実施することになりました。

そこで、副社長がワークショップ冒頭で、今回の趣旨やルールを明確に宣言しました。

記録

今回のワークショップでは、参加者から積極的に意見が出ました。

ATY解釈

A社には、日頃から意見を言い合える風土があったと、実施中の観察から判断しています。
この風土は、副社長が同席する場での発言のしやすさに影響した可能性があり、他の組織に適用する際には、風土の違いに注意が必要です。

ワークショップ事例:食品卸売業A社のDX推進

企業概要

業種
食品の卸売業
年間売上高
約50億円
従業員数
約80名
主な得意先
約60社地域の食品スーパー(SM)
主な仕入先
約65社国内の大手食品メーカー
配送拠点
2個所自社配送センター

ワークショップ

テーマ・目的
全社のDX推進全社一丸となってDXを実践するため、DX推進に向けた「協働可能な意味」を部門代表者が形成する。
参加者
11名副社長、取締役 2名、営業 4名、スタッフ 2名、配送センター 2名
チーム編成
2チームで並行実施6名と5名
ファシリテーター
総務部の課長

Aチーム6名

  • 副社長、取締役
  • 営業 2名
  • スタッフ 1名、配送センター 1名

Bチーム5名

  • 取締役
  • 営業 2名
  • スタッフ 1名、配送センター 1名

MGIMワークショップは、検出・対話・翻訳・統合までのフェーズを基本としていますが、今回の事例では2チームで並行してワークショップを実施しましたので、まずはチーム単位で4つのフェーズを実施し、終了後に参加者全員で共有・議論する時間を設けました。

  1. 検出
  2. 対話
  3. 翻訳
  4. 統合
  1. 参加者全員での共有・議論(発展)

参加者全員の共有・議論の場では、両チームの最終成果やフェーズ途中での特徴的な議論などを紹介しながら、参加者全員の新しい意味が発言として確認されました(新しい意味カードへの記入はなく、各主体による保持の確認は行っていません)。

記述区分とデータの取扱い

本事例の記述は、次の3つに区分しています。

  • 記録ワークショップで実際に作成・発言された内容(参加者の記述、分類、成果物)
  • ATY解釈実施後にATY Japanが行った分析・考察・仮説
  • ATY関与ATY Japanがワークショップ中に行った介入・助言(本事例では、該当する介入・助言はありませんでした)

検出・対話・翻訳・統合・発展・考察の各ページでは、見出しまたは文頭に【記録】【ATY解釈】の区分を付しています。

見出しに区分を付した節では、配下の記述はその区分に従い、記録と解釈が混在する節では、段落ごとに区分を付しています。

データの取扱いと改変の範囲匿名化・記録方法・参加者の範囲

掲載する付箋・シートの記述は、実施時の原文(原本の写真)と照合したものです。
匿名化のための修正は、固有名詞の置換と、機密性の高い数値の丸めに限ります。意味内容と分類は変更していません。

掲載するカードは、全37枚(Aチーム23枚、Bチーム14枚)です。

分析は、ワークショップ実施後に行いました。
ATY Japanによる分析内容は、実施中は参加者に共有していません。

ファシリテーションは企業の総務部課長が担当しました。
ATY Japanは、当初、相談があれば対応する方針としていましたが、今回のワークショップでは相談はなく、助言・介入は行っていません。

ワークショップの開始から終了まで同席し、手書きメモ/写真により、議論の内容と成果物を記録しました。

【記録】は、参加者が記入した付箋・シート(原本)と、ATY Japanの同席記録に基づきます。
参加者の発言は、同席記録に基づく要旨であり、逐語ではありません。

参加者は全従業員約80名のうち11名(役員3名を含む)で、得意先・仕入先は参加していません。

本事例の位置づけ

MGIMは概念が先にあり、本事例は、その実施および検証の一部です。

本事例からMGIMを導いたものではなく、今後、事例を増やすことで、MGIMを理論として確立し、実務利用に向けた拡充を予定しています。

本事例は、MGIMの研修の基本手順を、半日(240分)のワークショップ形式で適用した際の観察記録で、手順の運用と各フェーズでの意味の現れ方を示すことを目的としています。

MGIMの効果検証や理論の実証を目的とするものではありません。

事前・事後の測定(MGIM成熟度尺度(理論上の枠組み)、相互理解度テストなど)、複数評定者による分類、先行研究との対置は、本事例では行っていません。
これらは、測定を伴うMGIMの本格的な適用で扱う課題です。

したがって、本事例の記述は、観察された事実(記録)とATY Japanの解釈(ATY解釈)として、示唆は仮説的なものとして読んでください。

事例の限界(役職の影響、提唱者の同席による観察者効果、約80名中11名の参加など)は、考察ページに13項目で整理しています。

事例ページの構成

本事例は、MGIMのフェーズに沿って、次のページで構成しています。

  • 1. 検出意味ズレカードの記録と、実施後のATY解釈(チーム別の構造、比較ポイント)
  • 2. 対話背景要因カードへの分類と、深掘りで確認された意味(記録のある4例)
  • 3. 翻訳意味接続カード(Aチーム4枚、Bチーム4枚)と、その整理
  • 4. 統合「新たに始める/現状を止める」と、チーム別の統合結果
  • 5. 発展意味ズレ統合シートと、参加者全員での共有・統合
  • 6. 考察意味の追跡、保持の整理、示唆、研究上の観察ポイントと限界

更新履歴

更新履歴第1.0版〜第1.2版

第1.0版(公開日:2026年10月1日)

  • MGIMワークショップの実施事例(食品卸売業A社のDX推進)を公開しました。
  • 2チームで並行してワークショップ(チーム単位で4つのフェーズ)を実施し、終了後に参加者全員で共有・議論する時間を設けました。

第1.1版(公開日:2026年10月6日)

  • 記述区分(記録・ATY解釈)、データの取扱い、本事例の位置づけを整理しました。
  • 掲載時の転記誤りを訂正しました。
    Bチームのカードに原本にない1枚(旧B-54)が含まれていたため削除、意味接続カード(接続B④)の文面の「リアルタイムの」は誤記だったため原本の文面に訂正

第1.2版(公開日:2026年10月7日)

  • 考察ページを、発展ページから分割し(分析・示唆・限界を考察ページに移動)、考察ページに「MGIMプロセスにおける意味ズレの変化・統合分析」を追加しました。
  • タグの付け忘れ、表記の誤りを訂正しました。

Case1|検出

検出フェーズでは、DX推進に関する意味の差異を言語化し、誰と誰の間に、どのような意味の違いが存在するのかを、参加者の本音として意味ズレカード(意味ズレの検出)に記述しました。

詳細 Case1|検出

Case1|対話

対話フェーズでは、検出フェーズで記述した意味ズレカードを、意味の差異を捉える4つの分析観点に分類しながら、お互いの背景や立場、考え方の違いを対話を通して理解し合いました。

詳細 Case1|対話

Case1|翻訳

翻訳フェーズでは、異なる主体が形成している意味やその背景を保持しながら、それぞれの意味を相互に接続可能な表現へ変換し、意味接続カード(意味の接続)を作成しました。

詳細 Case1|翻訳

Case1|統合

統合フェーズでは、複数の意味の重要要素を保持しながら協働可能な新しい意味を形成し、参加者がそれを自分の立場から理解し、協働に活用できる方向性を共有しました。

詳細 Case1|統合

Case1|発展

発展フェーズでは、2つのチームが個別に実施した成果を共有し、参加者全員で協働可能な意味を整理しました。両チームの意味ズレ統合シート(Meaning Gap Card)を参加者全員で統合した成果を解説します。

詳細 Case1|発展

Case1|考察

考察では、今回の食品卸売業の「DX推進」をテーマにしたMGIMワークショップ(検出から発展までの記録)を踏まえ、ATY Japanの分析・示唆・限界をまとめています。

詳細 Case1|考察

Copyright © 2004-2026 ATY-Japan All Rights Reserved.