Case1|統合
統合フェーズ
翻訳フェーズでは、異なる主体が形成している意味やその背景を保持しながら、それぞれの意味を相互に接続可能な表現へ変換しました。
その結果、両チームのそれぞれの「意味接続カード(意味の接続)」は、以下に整理しました。
Aチームの意味接続カード
- A-1.DXは会社の存在価値を変えるためのものである
- A-2.得意先への提供価値を高めるために情報を活用する
- A-3.効率化は仕事を減らすことではなく、価値創造の余力を生み出す
- A-4.情報と人の判断を組み合わせる
Bチームの意味接続カード
- B-1.DXは現場の仕事を置き換えるものではなく、現場の仕事をより良くする
- B-2.標準化と個別対応を両立する
- B-3.効率化した余力を得意先対応に戻す
- B-4.現場の経験・判断力をDXに組み込む
今回のA社のワークショップでは、翻訳フェーズの段階で意味接続カードが4枚ずつに絞り込まれています。
この場合であれば、この4枚を統合して協働可能な新しい意味を形成することができますが、その前に問いを置くことも重要です。
具体的には、「その新しい意味を実現するためには、何を始め、何を止めるのか?」と問いかけます。
「新たに始める / 現状を止める」は統合そのものではなく、統合された意味を行動・変化の方向に具体化する段階と位置づけます。
具体的な施策を決めることではなく、統合した意味を実現するために、現在の意味づけ・仕事の進め方の何を変えるかを明確にする段階である。
但し、「新たに始める」と「現状を止める」とでは、言葉の裏返しにならないように留意することが重要です。
そこで、AチームとBチームそれぞれの意味接続カードについて、「新たに始める / 現状を止める」を考えていきます。
Aチーム:「新たに始める / 現状を止める」から統合へ
A-1.DXは会社の存在価値を変えるためのものである
- 新たに始める:DXの個別施策を考える前に、「10年後も必要とされる会社とは何か」を考える。
- 現状を止める:システム導入や業務効率化そのものをDXの目的にする。
A-2.得意先への提供価値を高めるために情報を活用する
- 新たに始める:営業・物流・得意先の情報をつなぎ、得意先への提案・対応に活用する。
- 現状を止める:情報を部門ごとに保有し、それぞれの業務だけで利用する。
A-3.効率化は仕事を減らすことではなく、価値創造の余力を生み出す
- 新たに始める:DXで生まれた時間を、得意先への提案や新しい価値創造に振り向ける。
- 現状を止める:効率化によって空いた時間を、そのまま別の業務量の増加に充てる。
- 「効率化=仕事を減らす」という意味から、「効率化=価値創造に使える余力をつくる」へ意味を変えます。
A-4.情報と人の判断を組み合わせる
- 新たに始める:データと現場の経験・判断を組み合わせて業務を改善する。
- 現状を止める:「データがあれば判断できる」と考えて、人の経験や判断を切り離す。
ここから統合すると、「A-1.存在価値」と「A-2.顧客価値」から「会社の存在価値を高めるには、得意先への提供価値を高める必要がある」、さらに、「A-3.余力」と「A-4.情報と判断」かた「情報と現場判断を組み合わせ、効率化によって生まれた余力を価値向上に使う」という中間的意味が形成されます。
そして最終的に、「DXを会社の存在価値から捉え、情報と人の判断を活用し、効率化によって生まれた余力を得意先への価値向上に振り向ける」
という新しい意味の形成につながります。
Bチームの「新たに始める / 現状を止める」から統合へ
B-1.DXは現場の仕事を置き換えるものではなく、現場の仕事をより良くする
- 新たに始める:現場の仕事を理解した上で、DXによって負担を減らし、得意先対応など本来の仕事に集中できるようにする。
- 現状を止める:DXを「人の仕事を置き換えるもの」として進める。
B-2.標準化と個別対応を両立する
- 新たに始める:共通化できる業務は標準化し、得意先ごとの事情や例外には現場が判断して対応する。
- 現状を止める:すべての業務を一律のルール・システムで処理しようとする。
B-3.効率化した余力を得意先対応に戻す
- 新たに始める:DXによって生まれた余力を、得意先への提案・対応に振り向ける。
- 現状を止める:効率化によって生まれた余力を、単純な仕事量の増加に使う。
B-4.現場の経験・判断力をDXに組み込む
- 新たに始める:現場の経験や判断をDXの仕組みに反映する。
- 現状を止める:システムやデータだけで現場の仕事を決めようとする。
ここから統合すると、「B-1.現場の仕事高度化」と「B-4.現場の経験・判断の活用」から「現場の経験・判断力を活かしながら、DXによって現場の仕事をより良くする」という接続になり、中間的意味が形成されます。
そして最終的に、「B-2.標準化と個別の両立」「B-3.余力の振り向け」を接続することにより、「DXによって標準化できる仕事を効率化しながら、現場の経験・判断を活かし、生まれた余力を得意先対応に戻す」
という新しい意味の形成につながります。
AチームとBチームの整理
AチームとBチームの「新たに始める / 現状を止める」を整理すると以下の通りになります。
| Aチームの新たに始める | Aチームの現状を止める | Bチームの新たに始める | Bチームの現状を止める | |
|---|---|---|---|---|
| A:存在価値 B:現場 |
DXを会社の将来・存在価値から考える | DXをシステム導入そのものとして考える | DXで現場の仕事をより良くする | DX=人の仕事を置き換える |
| A:情報 B:標準化 |
情報を得意先への価値向上につなげる | 部門ごとに情報を分断して利用する | 標準化と個別対応を使い分ける | すべてを一律に処理する |
| A:効率化 B:余力 |
生まれた余力を価値創造に使う | 効率化=単純に仕事を減らす/別業務を増やす | 効率化した余力を得意先対応に戻す | 効率化=仕事量を増やす |
| A:判断 B:判断 |
情報と人の判断を組み合わせる | データだけで業務を決める | 現場の経験・判断をDXに組み込む | データ・システムだけで判断する |
ここから言えるのは、「現状を止める」に関しては、両チームで類似した方向性が見られます。
- DXを「システム導入」だけで考えることを止める
- 効率化した結果、単純に仕事量を増やすことを止める
- データやシステムだけで現場を判断することを止める
一方、「新たに始める」に関しても、意味が共通して浮かび上がってきます。
- 情報と現場の判断を組み合わせる
- DXで生まれた余力を得意先への価値提供に使う
今回のワークショップでは、Aチームは「存在価値・顧客価値」から意味を形成し、Bチームは「現場・利害」から意味を形成した構造ですが、両者は情報・現場判断・余力・顧客価値という媒介を通じて接続可能になりました。
ワークショップ全体の流れを整理すると、以下の通りとなります。
| 意味接続カード | 意味接続カード内容 | 元の意味ズレカード | 翻訳する意味 | 新たに始める / 現状を止める | 統合後の新しい意味 |
|---|---|---|---|---|---|
| A-1 | DXは会社の存在価値を変えるためのものである | A-11・A-12・A-14・A-17・A-21 | 認知 → アイデンティティ |
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DXを会社の存在価値から捉え、情報と人の判断を活用し、効率化によって生まれた余力を得意先への価値向上に振り向ける |
| A-2 | 得意先への提供価値を高めるために情報を活用する | A-31・A-32・A-34・A-52・A-53 | 認知 → 価値 |
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| A-3 | 効率化は仕事を減らすことではなく、価値創造の余力を生み出す | A-33・A-35・A-43・A-44・A-54 | 利害 → 価値 →(より上位の価値) |
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| A-4 | 情報と人の判断を組み合わせる | A-31・A-32・A-51・A-52・A-53 | 認知 → 価値 |
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| 意味接続カード | 意味接続カード内容 | 元の意味ズレカード | 翻訳する意味 | 新たに始める / 現状を止める | 統合後の新しい意味 |
|---|---|---|---|---|---|
| B-1 | DXは現場の仕事を置き換えるものではなく、現場の仕事をより良くする | B-21・B-22・B-41・B-42・B-43 | 利害 → 価値 |
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DXによって標準化できる仕事を効率化しながら、現場の経験・判断を活かし、生まれた余力を得意先対応に戻す |
| B-2 | 標準化と個別対応を両立する | B-23・B-32・B-34・B-51・B-52・B-54 | 認知 → アイデンティティ |
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| B-3 | 効率化した余力を得意先対応に戻す | B-31・B-33・B-34・B-41・B-53 | 利害 → 価値 → アイデンティティ |
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| B-4 | 現場の経験・判断力をDXに組み込む | B-32・B-34・B-51・B-52・B-54 | 認知 → 価値 |
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