MGIMの4つのプロセス|意味のズレを検出・対話・翻訳・統合する組織変革の循環モデル

意味形成と再創出

意味ズレ統合モデル(MGIM)は、検出・対話・翻訳・統合の4つのプロセスで意味の差異を扱い、統合された意味を「意味の再創出」へ連動させる、ATY Japanが研究・提唱する概念モデルです。

MGIMプロセス

MGIMの循環の全体像

複数の主体(個人・チーム・部門・組織)の意味の差異を出発点に、4つのプロセスを経て、意味の再創出へ至る流れです。

① 意味の差異を扱う4つのプロセス

  1. 検出
  2. 対話
  3. 翻訳
  4. 統合

② 意味の再創出(統合された意味の展開)

  1. 協働行動
  2. 組織学習
  3. アイデンティティ更新
意味ズレ統合モデル(MGIM)の全体プロセス。複数主体間の意味の差異を出発点とし、その差異が認識・接続されず、協働に不整合を生じさせる場合に意味ズレとして捉える。検出・対話・翻訳・統合の4プロセスを通じて協働可能な新しい意味を形成し、その後の協働行動・組織学習・アイデンティティ更新を経て次の意味形成へ循環する構造を示す。
循環の読み方

意味づけには「個人レベル」と「組織レベル」といった主体のレベルがあります。
主体間で重なり合っていた意味も、時間の経過に伴って差異が生じていきます。

統合された意味は協働行動の基盤となり、協働行動の経験を振り返ることで組織学習につながる場合があります。

その学習が組織の自己理解に影響するとアイデンティティ更新につながり、更新されたアイデンティティは次の意味づけを形成します。

ここでの「進化」は、組織が意味構造(主体が持つ意味づけのまとまり)を更新・蓄積し、環境変化に対応できる状態へ変わっていくことを指す作業的な用語で、生物進化の比喩を厳密に当てはめるものではありません。

意味の差異と4つのプロセス

意味の差異は、環境や解釈が変化する以上、避けられません。

意味の差異が認識・接続されないまま放置されると、意味ズレとなって組織の活力や個人の成長を妨げます。

一方、丁寧に扱い、対話を通じて意味を再構築できる組織は、変化に強く、メンバーの主体性も高まると考えます。

MGIMは、意味の差異を「問題」としてではなく、意味を共に創るための出発点として捉えます。

リーダーがこのモデルを推進することが、組織の累積的な変化につながると考えています。

MGIMの4つのプロセス詳細図。環境変化や意識変化に伴って組織と個人との間に意味の差異が生じ、それを起点として①検出(違和感・混乱・抵抗などを認識)、②対話(相互理解を形成)、③翻訳(異なる意味を保持したまま、相互に理解でき、行動に結びつけられる表現へ変換)、④統合(協働可能な新しい意味を形成)が循環する構造。

用語の定義はMGIM(MGIMの定義と、意味の差異・意味ズレ)を参照してください。

意味の差異を捉える4つの分析観点

主体間の意味は、環境や意識の変化、解釈の多様化によって、時間とともに差異が生じます。

MGIMでは、この意味の差異を、次の4つの分析観点から捉えます。

  • 認知的な差異出来事の理解が異なる。
  • 価値的な差異何が重要かが異なる。
  • 利害的な差異損得が異なる。
  • アイデンティティ的な差異「自分たちは何者か」が異なる。

いずれの観点でも、差異が認識・接続されないまま残ると、意味ズレになります。

この4つの分析観点は、実務上の観察に基づく作業的な整理で、学術的な根拠づけは今後の課題です。

意味の差異が生じやすい4つの場面

次の4つの場面では、複数の分析観点が同時に問われます。

いずれの場面でも、根底には4つの分析観点の差異が複雑に組み合わさっています。

なお、戦略協働・文化協働・危機協働・業務協働は、場面の名称です。意味の再創出における「協働行動」とは別の概念です。

  • 戦略協働(戦略転換時)
    • 環境認識の変更(認知的な差異)と、組織の自己定義の再検討(アイデンティティ的な差異)を同時に要求します。
    • 環境変化や新技術への対応に向けて戦略を転換する際に、その意義や取り組みへの意味づけが変わります。
  • 文化協働(組織文化改革時)
    • 価値観の変更(価値的な差異)と、変革効果の再認識(利害的な差異)を同時に要求します。
    • 組織外の変化や圧力、組織内の変化によって意味づけが変わります。
  • 危機協働(危機対応時)
    • 対応成果の再認識(利害的な差異)と、その意義の再検討(価値的な差異)を同時に要求します。
    • トラブルや事故が発生した際に、対応することへの意味づけが変わります。
  • 業務協働(日常業務改善時)
    • 改善効果の再認識(利害的な差異)と、自己の存在意義の再検討(アイデンティティ的な差異)を同時に要求します。
    • 業務改善や新たな業務プロセスの導入に取り組むことへの意味づけが変わります。

MGIMを構成する4つのプロセス

4つのプロセス(検出・対話・翻訳・統合)の目的、リーダーの役割、成果は、次のように整理できます。

プロセス内容リーダーの役割成果
1. 検出違和感・混乱・抵抗などを認識する検出者意味の差異の可視化
2. 対話相互理解を形成する対話促進者理解の可能性の拡大
3. 翻訳異なる意味を保持したまま、相互に理解でき、行動に結びつけられる表現へ変換する翻訳者理解可能な意味形成
4. 統合協働可能な新しい意味を形成する統合者統合された意味が、協働行動の基盤になる
ステップ1 検出意味の差異を可視化する

複数主体の意味づけの間に存在する差異を、違和感・混乱・抵抗などの兆候として認識するプロセスです。

目的:意味の差異は自然には見えないため、意識的に取り組んで可視化することです。

  1. 差異の存在の可視化、観察
  2. 見えにくい意味の差異を、認識可能な課題として顕在化、データ確認
  3. 解釈と対話の出発点づくり

リーダーの役割(検出者):自らの意味だけでなく、他者・部門・専門領域などの異なる意味形成を認識し、意味の差異に気づくことです。

成果:問題の言語化や不満の構造化により、対話可能な状態が整います。意味の差異が可視化されることで、次プロセス「対話」の必要性が生じます。

ステップ2 対話相互理解を形成する

異なる意味づけを持つ主体が、自らの理解や価値観を互いに表現し、相互理解を形成するプロセスです。

目的:効果的な対話を行うことであり、相手を説得することではない点に留意します。

  1. 相互理解の形成、双方向コミュニケーション
  2. 意味の共有可能領域の拡大、意図・背景・感情の理解
  3. 誤解の解消、共通認識、意味の共有

リーダーの役割(対話促進者):異なる主体が持つ意味や背景を、対話を通して浮き彫りにし、相互に理解できるよう促すことです。

成果:相互理解の形成です。完全に一致させるまでは至らなくても、理解の可能性が広がることで、次プロセス「翻訳」での意味変換が可能になります。

ステップ3 翻訳相互に理解でき、行動に結びつく表現へ変換する

異なる主体が形成している意味やその背景を保持したまま、それぞれの意味を、相互に理解でき、行動に結びつけられる表現へ変換するプロセスです。

目的:主に次の3点です。

  1. 抽象と具体の橋渡し:抽象的な言葉や感情を、具体的な課題・ニーズへ変換
  2. 意味の構造変換:方針を行動に接続
  3. 理解可能性の向上:関係者間で意味を共有できるように整理

リーダーの役割(翻訳者):異なる意味や背景を、それぞれの主体が理解し、協働に活用できる言葉や、行動可能な課題に変換することです。

成果:理解可能な意味形成です。「わかる」から「動く(動きたい)」への変換が進むことで、次プロセス「統合」での意味の調整が促されます。

ステップ4 統合協働可能な新しい意味を形成する

複数の意味の重要な要素を保持しながら、協働可能な新たな意味を形成するプロセスです。

目的:主に次の3点です。あわせて、実行後のフィードバックを次の「検出」に連動させる、循環の仕組みをつくります。

  1. 意味の調整
  2. 行動の整合:関係者が役割を理解し、分担・協働して実行できる状態をつくる
  3. 組織的一貫性の確保

リーダーの役割(統合者):既存の意味のいずれかに一方的に合わせるのではなく、異なる意味を接続し、協働可能な新しい意味の形成を促すことです。

成果:統合された意味が、協働行動の基盤になります。これが、意味の再創出の出発点です。

これらの役割は、リーダーが常に4つすべてを担うことを意味しません。状況に応じて、必要な役割が異なります。

実践場面での適用:MGIM研修モデル

MGIMの実施および検証の一部として、モデルを実践場面で適用・観察するため、4つのプロセスをワークショップ形式に操作化した基本手順、事例における議論内容や成果物、観察を通した考察や得られた示唆を、「MGIM研修モデル」で具体的に解説しています。

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