書籍 世界標準の経営理論/入山 章栄(著)

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世界標準の経営理論
MANAGEMENT THEORIES OF THE GLOBAL STANDARD

入山 章栄(著)
出版社:ダイヤモンド社(2019/12/12)
Amazon.co.jp:世界標準の経営理論

 

世界標準の経営理論

世界の経営学の英知は、この一冊で完璧に得られる

史上初!世界の主要経営理論30を完全網羅した解説書

ビジネスパーソンが考え抜くための羅針盤はここに

圧倒的なわかりやすさと面白さで、どの章も驚くほど、一気に読める!

 

 

経営学の知が凝縮された「標準理論」は、あらゆるビジネス課題を解き明かす。

  • ・イノベーション、人材育成、新規事業創造:知の探索・知の深化の理論
  • ・M&A、スタートアップの国際化、外部との契約:取引費用理論
  • ・リーダーシップ、部下のマネジメント、ビジョンの実行:センスメイキング理論

 

本書は、早稲田大学大学院・ビジネススクールの入山教授が、複雑なビジネス・経営・組織のメカニズムを解き明かすために発展してきた「経営理論」を、可能なかぎり網羅・体系的に、そして圧倒的なわかりやすさでまとめた一冊です。

世界の主要な経営理論30を網羅して解説していますので、大学生・(社会人)大学院生などの方々にとっては初めて体系化された「経営理論の教科書」となり、研究者の方々にとっては自身の専門以外の知見を得る「ガイドブック」となり、多くのビジネスリーダーの方々にとっては自身の思考を深め、解放させる「軸」となります。

 

本書は6部で構成されており、第1部では「経済学」、第2部は「マクロ心理学」と第3部は「ミクロ心理学」、第4部は「社会学」の学問分野から主要な理論を解説しています。

  • ・第1部は「経済学ディシプリン」で、「たいていの人は、それなりに合理的に意思決定をする」という仮定に基づいて、複雑な戦略や組織の行動に対して精微で整合的な説明をしています。
  • ・第2部と第3部は「心理学ディシプリン」で、「人は合理的な行動をとらない」という原理に基礎を置き、「人には非合理的な感情もあるし、認知にも限界があり、それらが人の行動や組織のあり方に影響を及ぼす」ということに基づいています。
  • ・そこで第2部は「マクロ心理学ディシプリン」で、現代のイノベーション研究や組織学習の研究の発展に圧倒的な貢献をしている、認知心理学から応用された理論を解説しています。
  • ・そして第3部は「ミクロ心理学ディシプリン」で、マクロ心理学が組織を一つの単位としてとらえているのに対し、ミクロ心理学では個人、チームなどの組織内のより細かい単位の行動メカニズムとして、リーダーシップ、感情、モチベーション、意思決定などに関係する理論を解説しています。
  • ・第4部は「社会学ディシプリン」で、海外では社会学の科学的な発展が急速な勢いで進んでいる分野として、会社や組織は一つの「社会」であり、人と人との間(あるいは組織と組織の間)の「社会的な関係性」に関する理論を解説しています。
    SNSの台頭もあり、現代は世界中でつながりが加速しており、「社会学ディシプリン理論」の有効性が今後もますます高まっていくとしています。

第5部「ビジネス現象と理論のマトリックス」では、経営学における主要な「ビジネス現象」と「理論」のマトリクスを示し、現象それぞれと相性の良い経営理論を整理しています。

第6部「経営理論の組み立て方・実証の仕方」では、学術的な手法・プロセスの概要をわかりやすく解説しており、その想定は経営理論を論文などに応用していきたい大学生・大学院生や若手研究者ですが、一見アカデミックに聞こえる「理論の組み立て方・実証の仕方」はビジネスでも日頃から行なわれているため、ビジネスリーダーの方々にとっても一読の価値があります。

 

それに対して世界標準の経営理論は、世界中でビジネスを長いあいだ研究してきた経営学者の英知の集大成であり、したがって「ビジネス・経営の真理法則」に肉薄している可能性が高い。

それを理解することで、ご自身の考えをさらに深め、広げ、考え続けるための「思考の軸」にしていただきたいのである。

経営・ビジネスとは結局は、人や(人が織りなす)組織を探求する学問である。

そして現代の経営学は、「そもそも人・組織はどうものを考え、どう行動するのか」の根本原理を、経済学、心理学、社会学という他の3つの学問分野から応用して使っている。

本書ではこれを「理論ディシプリン」と呼ぶ。

 

理論とフレームワークの違い

理論の目的は、「経営・ビジネスのhow、when、whyに応える」ことである。

特に重要なのはwhyであり、経済学、心理学、社会学のいずれかの人間・組織の思考・行動の根本原理から、「なぜそうなるのか」を説明するのが理論の目的である。

  • ・参考文献や引用の羅列は、理論ではない。
  • ・データを記述しただけでは、理論ではない。
  • ・概念の説明は、理論ではない。
  • ・図表は、理論ではない。
  • ・命題や仮説だけでは、理論ではない。

 

経営理論が実務に貢献しうる3つのルート

経営理論が実務に貢献しうる3つのルート

入山 章栄『世界標準の経営理論』ダイヤモンド社(2019年)を参考にしてATY-Japanで作成

 

科学の目的とは、分野を問わず「真理の探究」にあり、社会科学の一分野である経営学でも、学者は「ビジネスの真理法則」を探求しようとしている。

そのために、他の科学分野と同様に、理論が生み出され、それが実証研究を通じて検証される。

第1ルート:フレーム化される(whatを重視)

  • ・理論そのものは抽象的で、実務で使いやすいとは限らないため、理論を使いやすいフレームワークに落とし込む場合がある。
  • ・代表例は、経営学の「SCP理論」をフレームワークに落とし込んだ、ポーターの『競争の戦略』で紹介されている「ファイブ・フォース」「ジェネリック戦略」などである。
  • ・「確立されたフレームワーク」と「実に中途半端な理論の紹介」の混在が、既存のMBAの教科書を読みにくくしている。

第2ルート:理論が「思考の軸」となる(how、when、whyを重視)

  • ・本書が目指すルートである。
  • ・世界の最先端で経営学者たちが発展させてきた「経営理論」の内、「標準」といえるものを約30選び抜いて、体系的に、基本原理から解説する。

 

ビジネス現象と理論のマトリックス

ディシプリン

入山 章栄『世界標準の経営理論』ダイヤモンド社(2019年)を参考にしてATY-Japanで作成

 

経済学ディシプリン

経済学ディシプリン

 

マクロ心理学ディシプリン

マクロ心理学ディシプリン

 

ミクロ心理学ディシプリン

ミクロ心理学ディシプリン

 

社会学ディシプリン

社会学ディシプリン

 

まず「目的」の方は、言うまでもなく「世界の経営学の主要理論のほぼすべてを、経済学ディシプリン、心理学ディシプリン(マクロとミクロ)、社会学ディシプリンの3つにまたがって体系的に解説する」ことだ。

序章で述べたように、本書のように世界標準の経営理論を根本から丁寧に解説することは、海外ビジネススクールのMBA(経営学修士)プログラムでも行われてない。

一方の「狙い=筆者の願望」は、経営理論を知りたい学生や研究者の方々はもとより、現実のビジネスで活躍するビジネスパーソンの皆さんに、本書で紹介した経営理論を「思考の軸」としてもらうことだ。

序章で述べたように、現在多くのMBA本・経営書は理論の解説が浅く、現象ドリブンで記述されている。

一方、本書の仮説はまったくその逆で、これからのビジネスパーソンには理論ドリブンの思考を身につけていただくことこそ有用と考えたからだ。

 

まとめ(私見)

本書は、世界の主要な経営理論を体系化して、わかりやすく解説していますので、本書一冊あれば、ほぼすべての範囲の経営理論の全体像と仔細を体系的に学ぶことができます。

また本書は理論だけを解説しているだけではなく、その汎用性を検証する実証研究も紹介しています。

多くの章で、理論を検証した過去の有力な実証研究のリストを紹介していますので、自身の研究・調査するうえで参考になります。

なお本書で解説している経営理論は章単位で独立していますので、自分の知りたい、理解を深めたい理論の章だけを読んでも知見が得られる構造になっています。

そして、目次の直後にある「ビジネス現象と理論のマトリックス」を確認して、「戦略」「イノベーション」「人事」「アントレプレナーシップ」「ガバナンス」などのビジネス現象面から、自分の関心があるテーマを選んで、それに関わる理論を読み進めていくことも効果的です。

その助けとなるのが第5部「ビジネス現象と理論のマトリックス」で、まずは第5部から読み始め、関心のある現象の章を読んでから、興味のある理論を深く知るために第1部から第4部に戻るという読み方も有効です。

この第5部では、「戦略とイノベーション」「組織行動・人事」「企業ガバナンス」「グローバル経営」「アントレプレナーシップ」「企業組織」「ビジネス」の7つのテーマに関わる経営理論を網羅的に解説しています。

 

本書では、33の理論キーワードがどこかで取り上げられたり、触れられています。

これは、経営理論に特化した学術誌として最高峰に君臨する『アカデミー・オブ・マネジメント・レビュー(AMR)』の論文投稿用Webサイトの「theory」の項目に列記されている、キーワード42の理論の約8割になります。

なお、「所有者理論」「サーチ理論」「トーナメント理論」など、本書で取り上げていないAMRのキーワード9個は、経済学ではすでに確立している理論ではあるものの、経営学に「輸入」されている途上であるとして、意識して外しているようです。

一方、AMRのキーワード群では、学習や知識経営というキーワードに集約されているものを、本書では組織学習・イノベーションに関する一連の理論として、複数回にわたって解説しています。

さらに、AMRのキーワードではリストされていない「レッドクイーン理論」については、第32章に独立して解説しています。

この「レッドクイーン理論」は、「ある領域の競争を通じてライバルと切磋琢磨することが進化を促すものの、当該領域では進化しても他領域での競争や大きな環境変化にはむしろ対応できなくなる(ガラパゴス化)」という、日本企業がこれまで陥ってきた「共進化の罠」のメカニズムを明快に提示するもので、日本企業には耳の痛い、非常に興味深い理論で、「大変化の時代における本当の競争相手は誰なのか」を考えさせられます。

 

一方、経営理論を思考の軸として、さらに活用するための視座について、著者がビジネスパーソンに対して述べていることも、納得感があります。

  • ・本当の意味で「経営理論」は存在しない。
  • ・経営理論を深く知るのに、これ以上の経営学書は必要ない。
  • ・思考の軸に必要なのは、経営理論を信じないこと。

経営理論を軸として、思考を解放する。

経営理論という抽象的であるが一本筋の通ったwhyに答える軸があるからこそ、これを現実のビジネスにぶつけて多くの人と意見を交換し、思考を解放することができるというものです。

よくビジネスで活用されるフレームワークは「型」にすぎず、その背後にある「なぜそう言えるのか」というwhyにはいっさい答えないし、思考を停止することさえあると指摘しています。

経営理論は正解ではないが、ディシプリンをベースに「人はそもそもこういうものである」という前提を置くことで、なぜ企業はそのような行動を取るのか、なぜ組織はそのようになるのかというwhyに一つの道筋を与え、思考をクリアにすることができます。

本書は、820ページに及ぶ非常にボリュームある書籍ではありますが、世界の主要な経営理論の全体像と仔細を体系的に学ぶことができ、自身の知見を広げたり深めたりしたいとき、疑問に思ったり迷ったりしたときに、読み返すために側に置いておくべき一冊です。

 

目次

序章 経営理論とは何か
いまこそビジネスに経営理論が求められる、3つの理由

第1部 経済学ディシプリンの経営理論

第1章 SCP理論
「ポーターの戦略」の根底にあるものは何か

第2章 SCP理論をベースにした戦略フレームワーク
ポーターのフレームワークを覚えるよりも大切なこと

第3章 リソース・ベースト・ビュー(RBV)
バーニーの理論をようやく使えるものにしたのは誰か

第4章 SCP対RBV、および競争の型
ポーター vs バーニー論争に決着はついている

第5章 情報の経済学①
「悪貨が良貨を駆逐する」のはビジネスの本質である

第6章 情報の経済学②(エージェンシー理論)
人が合理的だからこそ、組織の問題は起きる

第7章 取引費用論(TCE)
100年前も、企業のあり方は「取引コスト」で決まる

第8章 ゲーム理論①
この世のかなりの部分はゲーム理論で説明できる

第9章 ゲーム理論②
我々は人を「無償」で信じるか、それとも「合理的な計算」で信じるか

第10章 リアル・オプション理論
不確実性を恐れない状況は、みずからの手でつくり出せる

第2部 マクロ心理学ディシプリンの経営理論

第11章 カーネギー学派の企業行動理論(BTF)
経営理論は名経営者の教訓を裏付ける

第12章 知の探索・知の深化の理論①
「両利き」を目指すことこそ、経営の本質である

第13章 知の探索・知の深化の理論②
「両利き」は戦略、組織、人材、経営者のすべてにおいて求められる

第14章 組織の記憶の理論
日本企業が「組織の記憶力」を取り戻す術は何か

第15章 組織の知識創造理論(SECIモデル)
これからの時代からこそ、「野中理論」が圧倒的に必要になる

第16章 認知心理学ベースの進化理論
組織の成長は「進化するルーティン」で決まる

第17章 ダイナミック・ケイパビリティ理論
企業が変わる力は組織に宿るのか、個人に宿るのか

第3部 ミクロ心理学ディシプリンの経営理論

第18章 リーダーシップの理論
半世紀を超える研究が行き着いた「リーダーシップの境地」

第19章 モチベーションの理論
半世紀を超えてたどり着いた新時代のモチベーションとは

第20章 認知バイアスの理論
認知の歪は、組織で乗り越える

第21章 意思決定の理論
意思決定の未来は、「直感」にある

第22章 感情の理論
感情のメカニズムを理解してこそ、組織は動き出す

第23章 センスメイキング理論
「未来はつくり出せる」は、けっして妄信ではない

第4部 社会学ディシプリンの経営理論

第24章 エンベデッドネス理論
ソーシャルネットワークの本質はいまも昔も変わらない

第25章 「弱いつながりの強さ」理論
弱いつながりこそが、革新を引き起こす

第26章 ストラクチャル・ホール理論
「越境人材」が世界を変える、そのメカニズムとは

第27章 ソーシャルキャピタル理論
リアルとデジタルのネットワークで働く、真逆の力

第28章 社会学ベースの制度理論
「常識という幻想」に従うか、活用するか、それとも塗り替えるか

第29章 資源依存論
小企業が大企業を抑え、飛躍する「パワー」のメカニズム

第30章 組織エコロジー理論
変化の時代にこそ不可欠な「超長期」の時間軸

第31章 エコロジーベースの進化理論
生態系の相互作用が、企業進化を加速する

第32章 レッドクイーン理論
競争が激化する世界で、競争すべきは競争相手ではない

第5部 ビジネス現象と理論のマトリックス

第33章 組織とイノベーションと経営理論
近未来に戦略とイノベーションは融合し、理論も重層化する

第34章 組織行動・人事と経営理論
これから人事がさらに面白くなる、5つの背景

第35章 企業ガバナンスと経営理論
あるべきガバナンスを考え抜く時代に、必要な理論は何か

第36章 グローバル経営と経営理論
「国境」の本質を見直すことが、グローバル経営の未来を映し出す

第37章 アントレプレナーシップと経営理論
アントレ領域が拡張する未来に、起業家をどう育てるべきか

第38章 企業組織のあり方と経営理論
「5つのドライビングフォース」が示す、未来の企業組織の姿

第39章 ビジネスと経営理論
現代の経営理論はビジネスを説明できない

第6部 経営理論の組み立て方・実証の仕方

第40章 経営理論の組み立て方
ロジックの賢人ほど、「人とは何か」を突き詰める

第41章 世界標準の実証分析
ビジネスの実証分析は想像以上に身近で、とてつもなく深い

終章 経営理論のさらなる視座
経営理論こそが、あなたの思考を解放する

『世界標準の経営理論』を読んでくださった方へ

 

参考

世界標準の経営理論 | ダイヤモンド・オンライン

著者入山章栄氏らが語り尽くす!3年8ヵ月、DHBR人気連載の舞台裏 「世界標準の経営理論」最終回記念鼎談|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

 

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