富士通が経営方針の進捗を発表、For Growth売上拡大とFor Stability採算性改善で営業利益率達成を目指す

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富士通の2021年度の経営方針進捗

富士通の経営方針と決算資料を参考にしてATY-Japanで作成

 

富士通は、2021年度(2022年3月期)通期決算に合わせて、「経営方針進捗レビュー」も発表しました。

2022年度は中期経営計画の最終年度となりますが、その目標としていた指標を一部下方修正しながらも、当初目標の営業利益率10%達成は目指すとしています。

当初の目標は、テクノロジーソリューション事業で営業利益率10%、売上収益3兆5,000億円を目指していましたが、今回営業利益率は計画値を維持したものの、売上収益は3,000億円下方修正して売上収益3兆2,000億円としました。

今回の発表では、Fujitsu Wayを構成する3つの要素となる「パーパス」「大切にする価値観」「行動規範」を示したうえで、「お客様への価値創造」としての4つの取り組みに加え、「自らの変革」としての3つの取り組みについて、それぞれの進捗状況を説明しました。

また、PFUの株式の80%をリコーに売却すること、デバイスソリューションも短期的な思考で動いているわけではなく独立させる方針には変更がないことも明らかにしています。

 

2022年度の経営目標

富士通の2022年度の経営方針の財務目標

富士通の経営方針と決算資料を参考にしてATY-Japanで作成

 

わたしたちのパーパスは、イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続的可能にしていくことです。

富士通は、パーパスを定義しています。

 

そこで、当初のテクノロジーソリューション事業の中期目標として、2022年度売上収益3兆5,000億円、営業利益率10%を掲げていました。

また、非財務指標として、人権・多様性、ウェルビーイング、環境、コンプライアンス、サプライチェーン、安全衛生、コミュニティの7つの課題について、NPS(Net Promoter Score)を用いて評価する仕組みを設定する予定としていました。

 

今回の発表では、テクノロジーソリューション事業の2022年度予想を、売上収益3兆2,000億円、営業利益率10%として、売上収益を3,000億円下方修正しました。

また、非財務指標に関しては、以下の状況であることを示しました。

  • ・お客様NPS
    2021年度 +2.3ポイント → 2022年度目標 +3.7ポイント
  • ・従業員エンゲージメント
    2019年度 63 → 2020年度 68 → 2021年度 67 → 2022年度目標 75
  • ・DX推進指標
    2019年度 1.9 → 2020年度 2.4 → 2021年度 3.2 → 2022年度目標 3.5

 

価値創造のための2つの事業領域

デジタル(DX、モダナイゼーション)を「For Growth」、従来型ITを「For Stability」と定め、2つの事業領域でお客様や社会への価値創造に取り組む。

「For Growth」では規模の拡大と収益規制の両方を伸ばし、「For Stability」は効率性を上げ、利益率を高める。

  • ・For Growth
    DXやモダナイゼーションといったデジタル領域を、お客さまの事業の変革と成長に貢献する事業領域
    当初は、2022年度売上収益1兆3,000億円を目指し、テクノロジーソリューションの売上収益の内37%を占める計画でしたが、今回の売上収益の下方修正を考慮した計画値は明らかにしていません。
  • ・For Stability
    システム保守や運用、プロダクト提供といった従来型IT領域を、IT基盤の安定への貢献と、品質向上に取り組む領域

 

2021年度の実績と2022年度以降の取り組み

富士通は、パーパス実現のために取り組む課題として、「お客様への価値創造」と「自らの変革」をあげています。

さらに、「価値創造」では、顧客の事業変革や成長に貢献する「For Growth」領域で規模の拡大と収益性の向上を目指し、顧客の事業の安定化に貢献する「For Stability」で効率性を高め、利益を向上させる方針を打ち出しています。

また「価値創造」の観点からは、「グローバルビジネス戦略の再構築」「日本国内での課題解決力強化」「お客さま事業の一層の安定化に貢献」「お客さまのDXベストパートナーへ」という4つの取り組みをあげています。

そして「自らの変革」の観点からは、「データドリブン経営強化」「DX人材への進化・生産性の向上」「全員参加型、エコシステム型のDX推進」という3つの取り組みをあげています。

 

「お客様への価値創造」と「自らの変革」

価値創造 1.グローバルビジネス戦略の再構築

  • ・「ビジネスフォーメーションの変革」としては、2021年度にリージョンのビジネス構造改革を実施し、2022年度以降にはJapan/Europe/Americas/Asia Pacificの4リージョン体制の再編とリーダーシップのグローバル配置を実施する計画
  • ・利益体質の改善に向けて各リージョンでの構造改革を推進し、Americasリージョンでは、オペレーション構造やサービスの採算性改革により2021年度に黒字化を達成
  • ・2022年4月からのリージョン再編成により、欧州の2リージョンを統合したEuropeリージョン、アジアとオセアニアを一体化したAsia Pacificリージョンに、JapanとAmericasの2リージョンを加えた4リージョン体制にし、2021年度には欧州にソリューションの責任者、2022年度には北米にネットワークの責任者を配置
  • ・「オファリング強化」に関しては、2021年度にグローバルオファリングの拡大とGlobal Center(GDC)のプリセールス機能を強化し、2022年度以降には価値創造・モダナイゼーション領域でのリージョン横断的なサポート強化に加え、Fujitsu Uvanceの本格始動を計画

 

価値創造 2.日本国内での課題解決力強化

  • ・「ソリューションビジネス強化、エコシステム拡大」として、2021年度には富士通Japanの立ち上げとソリューションビジネスへのシフト、NTT・川崎市・KDDIなどと持続可能な未来型デジタル社会への連携を実施し、2022年度以降には社会を支える基盤システムのDX化の促進、デジタル田園都市家構想などにおける社会課題解決型アプローチの推進を計画
  • ・PFUのリコーグループへの参画を機に、リコーとの国内協業も推進
  • ・「人材育成、お客様接点の強化」においては、2021年度にはビジネスプロデューサー8,000人のリスキリング研修完了に加え、デジタルセールスによる新たなお客様接点の開拓を実施し、2022年度以降にはコンサルティング強化によるビジネスモデルの変革推進、CxO・LOB(Line Business)アプローチの強化を計画

 

価値創造 3.お客さま事業の一層の安定化に貢献

  • ・「SI商談良質化/品質向上、リスクマネジメント強化」においては、2021年度にAIとデータの活用により予兆を検知したトラブル未然防止に加え、本社専任CISO(Chief Information Security Officer)のもとで情報セキュリティ本部を設置し、2022年度以降にはデータを活用した未然防止型点検の高度化、全リージョンに専任のCISOを設置してグローバル共通戦略を整備・実行を計画
  • ・2021年度、重大トラブル防止に向けた全社探索を完了するとともに、データ分析プラットフォーム「Palantir」やAIを活用した品質低下の予兆を検知する取り組みを開始
  • ・Palantir活用により、人的リソースのアサインメントの大幅な効率化と有効活用を進め、4,000人のリソースから案件に適した人材を5分でマッチングし、プロジェクト組成することができ、これをグローバルで標準化し活用を拡大予定
  • ・「グローバル標準開発のためのGDCの更なる活用」に関しては、2021年度にはリソースアサインメントの大幅効率化とGDCを約20,000人体制に増強し、2022年度以降にはデリバリーモデルの標準化と運用自動化、JGG(Japan Global Gateway)・GDCのグローバル化の後押し予定
  • ・日本固有の商習慣を踏まえてデリバリーを標準化したJGGとGDCを連携し、グローバルに展開する顧客を支援

 

価値創造 4.お客さまのDXベストパートナーへ

  • ・「社会/経営課題解決に向けた”カスタマーサクセス”の強化」として、2021年度にお客様の課題解決に向けて伴走するAccount General Managerを育成した他、市場観点から商品ポートフォーリオを整理し、2022年度以降には、お客様の事業や変革の達成を「カスタマーサクセス」としてサポートの強化に取り組み、社会課題の解決やお客様のサステナビリティ経営を支えるオファリングの強化を計画
  • ・2021年度に開発と営業機能を一体化した組織により顧客サポートを一元化し、中長期の視点で顧客と伴走するAccount General Managerを育成
  • ・「DX・経営課題へのアプローチ強化」としては、2021年度に前年比約120%の受注高で堅調に推移した他、社員のパフォーマンスを最大化する人事制度を導入し、2022年度以降にはPrincipalの強みを掛け合わせたツーミングにより課題への対応力を強化し、ダッシュボードJ経営などのマネジメント高度化を実践予定
  • ・2021年度、社員のパフォーマンスを最大化するために第三者の視点を取り入れた評価制度や女性の積極登用

 

自らの変革 1.データドリブン経営強化

  • ・データを活用してグループ全体の経営を高度化する「One Fujitsu」プログラムを、全リージョン横断で推進
  • ・「実績ベース経営から、データを活用した未来予測型経営への変革」として、2021年度にデータ分析プラットフォーム「Palantir」の活用拡大し、2022年度以降には、パイプラインマネジメントを統合しグローバル横串で管理する「One CRM」を2022年4月から開始、全社のERP統合とデータドリブン型3軸経営を実現する「One ERP+」を英国およびアイルランド(UK&I)で2022年4月から先行稼働
  • ・データ分析プラットフォーム「Palantir」により、経営ダッシュボードの活用を開始し、データアナリティクスセンターを設立

 

自らの変革 2.DX人材への進化・生産性の向上

  • ・「人材マネジメントのフルモデルチェンジ」として、2021年度にポスティング拡大による人材流動性の向上(約2,700人がポスティングを利用)、職責ベースの報酬制度を強化し、2022年度以降にはグローバルポスティングの導入、グローバル共通な評価制度「Connect」浸透、ジョブ型人事制度の一般社員への適用拡大を計画
  • ・「制度・環境を整備し、生産性・想像力向上」においては、2021年度に最先端技術の自社実践、ライフステージに合わせた自律的なキャリア形成を支援し、2022年度以降にはBorderless Officeのグローバル展開、従業員サーベイ毛一家の分析など、データドリブンで心理的安全性、生産性や創造力向上に向けた施策を展開予定
  • ・男性社員の育児休暇の取得拡大や地方自治体と連携したワーケーションを進め、同時に新たな働き方に適したオフィスへの変革
  • ・最先端技術を自社で実践するために、Fujitsu Uvance Kawasaki Towerでは生体認証を取り入れ、ネットワークの利用状況、フロアの混雑状況、社員の居場所検索を実現

 

自らの変革 3.全員参加型、エコシステム型のDX推進

  • ・「FUITRA(Fujitsu transformation)」として、2021年度に全社員のパーパスカービングのグローバル展開、部門DXをけん引するDX Officerのグルーバル展開を実施し、2022年度以降には30のDXフレームワークの深化、DX推進指標達成に向けたマインドセット・企業文化の向上を推進
  • ・「VOICEプログラム」では、2021年度にテンプレート化し社内利用1,200回超、社員をエンドユーザーに見立ててお客様への提案に活用し、2022年度以降にはAI・行動分析技術と組み合わせた分析と施策立案強化、報告から対話重視のカルチャーへの変革を推進
  • ・「Fujitsu Innovation Circuit」を新たに開始し、2021年度にイントレプレナー育成プログラムを開始、2022年度以降には育成人数の拡大、制度やリソース面から事業創出サポートを実施

 

持続可能な成長に向けた重点的な取り組み

サステナビリティへの取り組みとしては、人権・多様性、ウェルビーイング、環境、コンプライアンス、サプライチェーン、安全衛生、コミュニティの7つを重要課題を設定し、役員を推進責任者として活動を開始しており、2022年度をゴールとする9つの目標を掲げています。

そして、2021年10月策定の事業ブランド「Fujitsu UVANCE」では7つの重点注力分野を定め、2022年4月にはグローバルな専任組織を1,000人規模で立ち上げ、2022年度を始動の年と位置づけ、2023年度から事業を本格化させることを示しました。

  • ・Vertical Areasは社会課題を解決するクロスインダストリーの4分野として、Sustainable Manufacturing、Consumer Experience、Healthy Living、Trusted Society
  • ・Horizontal Areasはクロスインダストリーを支える3つのテクノロジーとして、Digital Shifts、Business Applications、Hybrid IT

さらに、研究開発分野では、5つのキーテクノロジーに投資を集中し、インドとイスラエルに新たに研究科発拠点を設置して世界8カ国850人以上のグローバル研究体制を確立し、拠点ごとにフォーカス領域を定めて研究を行っているとしています。

  • ・金融・材料開発・防災・創薬・エネルギー・気象などの社会課題を支えるテクノロジーを実現
  • ・スーパーコンピューター、量子インスパイアート、量子コンピューターなどの巨大なコンピューティングパワーと超低消費電力で、シミュレーション、AI、データ解析により、企業・組織を超えたデータの新たな価値化、新たな視点での高度な意思決定を実現
  • ・5つのキーテクノロジーとして、Converging Technologies、Data & Security、AI、Network、Computing
  • ・イギリス・スペイン:ソーシャルデジタルツイン/AI倫理、中国:パターン認識、アメリカ:先端機械学習、カナダ:先端コンピューティングに加え、新たにイスラエル:セキュリティ、インド:次世代AI/量子ソフト

 

2022年度の経営目標

2022年度の経営目標(財務目標)

富士通の2022年度の経営方針の財務目標

富士通の経営方針と決算資料を参考にしてATY-Japanで作成

 

売上収益の拡大や採算性改善に向けた施策を実施し、テクノロジーソリューションで売上収益3兆2,000億円、営業利益率10%達成を目指す。

売上収益の拡大

  • ・サービスビジネスの継続強化
  • ・お客様の経営課題解決型のビジネスを拡大
  • ・Uvanceの事業立ち上げと実行

採算性改善

  • ・GDC/JGG活用や標準化・自動化による生産性の向上
  • ・品質/リスクマネジメントによる不採算プロジェクトの抑制

 

2022年度の経営目標(非財務指標)

お客様NPS
2021年度 +2.3ポイント → 2022年度目標 +3.7ポイント

従業員エンゲージメント
2019年度 63 → 2020年度 68 → 2021年度 67 → 2022年度目標 75

DX推進指標
2019年度 1.9 → 2020年度 2.4 → 2021年度 3.2 → 2022年度目標 3.5

 

今回の発表で、時田社長は以下のように語っています。

進捗は5合目に達している。

自動車であがれるところまでは来た。だが、その道のりも曲がりくねった道であった。

今後は、自分の足で登らなくてはならないところに入っていく。

87年の歴史を持つ富士通の諸先輩が築いたところにあぐらをかいているわけではないが、これまでの基盤で事業がなしえている。

満足することなく変革と成長を進めていきたい

 

2022年度を最終年度とする現在の経営方針は、2019年9月26日に時田社長が就任して以来初めて発表したものです。

就任以降まざまな改革を断行してきましたが、その取り組みには相当の苦労があったと想像できます。

2021年度の業績は前年度に対して減収減益となりましたが、本業ベースでは増収増益となっています。

今回の「経営方針進捗レビュー」発表では、テクノロジーソリューション事業の当初経営目標の2022年度売上収益3兆5,000億円は1年遅れとなりそうで、今回3,000億円下方修正して3兆2,000億円としましたが、営業利益率10%は当初目標を維持しています。

新型コロナウィルス感染症に続き、2021年度の部材供給遅延の影響、最近の円安傾向など、企業を取り巻く環境は激しく変化している状況ではありますが、今回発表の目標達成を期待しています。

 

参考:富士通の発表資料

2022.04.28 経営方針進捗レビュー PDF(2022年4月28日実施)

 

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電機とITの決算

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2022.04.29 富士通の経営方針進捗レビュー:2021年度実績と2022年度の取り組み

2022.04.28 2021年度通期決算と2022年度通期予想:富士通

 

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