このページ内の目次
富士通が、2021年度(2022年3月期)通期決算(2021年4月1日~2022年3月31日)を発表しましたので、概況を整理します。
富士通は、主に部材供給遅延が影響して、前年度に対して減収減益となりました。
売上収益は、前年度に対して28億円(0.1%)減収で3兆5,868億円(部材供給遅延影響△780億円、再編除いた本業の前年差+323億円)
営業利益は、前年度に対して471億円減益で2,192億円(部材供給遅延影響△310億円、本業では2,756億円)
税引前利益は、前年度に対して518億円減益で2,399億円
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年度に対して200億円減益の1,826億円
2022年度(2023年3月期)の連結業績は、2021年度に対して増収増益を見込んでいます。
- ・売上収益は、前年度に対して1,331億円(3.7%)増収で3兆7,200億円
- ・営業利益は、同1,807億円増益で4,000億円(営業利益率:10.8%)
- ・親会社の所有者に帰属する当期利益は、同973億円増益で2,800億円
富士通の2021年度通期(2021年4~2022年3月)連結業績
売上収益は前年度に対して28億円(0.1%)減収で3兆5,868億円、営業利益は同471億円減益で2,192億円
売上収益の状況は、
- ・本業では323億円の増収
テクノロジーソリューションが153億円、ユビキタスソリューションが628億円の減収したものの
デバイスソリューションが821億円増収して、計323億円の増収
- ・欧州低採算国、北米プロダクトビジネス、携帯販売代理店事業などの再編ビジネスで351億円の減収
- ・部品供給遅延影響で780億円の減収
テクノロジーソリューションが681億円、ユビキタスソリューションが99億円のマイナス影響
営業利益471億円減益の内訳は、
- ・本業では282憶円の増益
2020年度の特殊事項の反動で189億円減益
- ・増収影響で291億円、コスト・費用効率化で681億円のプラス影響で、計972億円の増益
- ・成長投資で380億円、部材供給遅延影響で310億円のマイナス影響で、計690億円の減益
- ・事業構造改革費用や事業譲渡に関する損益等一過性の利益または損失、M&Aに関するPPAなどの特殊事項で、564億円の減益
税引前利益は前年度に対して518億円減の2,399億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同200億円減の1,826億円
売上総利益で367億円の改善(売上総利益率31.2%、前年比1.1%の改善)
- ・ソリューション・サービス:システム開発、デリバリー、サポート業務の変革(アジャイル開発、ジャパン・グローバルゲートウェイ、リモート保守)
- ・システムプラットフォーム:前年度のスパコンの反動により改善
- ・海外リージョン:大型サービス商談の獲得、北米が構造改革の進展により改善
- ・売上総利益率の推移:2019年度 29.1%、2020年度 30.1%、2021年度 31.2%
費用の効率化で313億円の改善:開発の効率化、働き方改革の効果、遊休資産の売却など(成長投資を除いた営業費用、その他損益)
成長投資は850億円(前年度から+450億円)
- ・価値創造に向けた投資:グローバルオファリング開発、サービスデリバリー変革(ジャパングローバルゲートウェイ、GDC強化)、新規事業創出(6G スマートシティ、次世代プロセッサ)、ビジネスプロデューサー変革
- ・自らの変革に向けた投資:社内DX投資(One Fujitsu)、Work Life Shift
- ・2021年度の主な効果は200億円
オフショア拡大によるコスト効率化 90億、グローバルオファリングの売上/利益拡大 90億、Work Life Shiftによる費用効率化 20億
部材供給遅延による影響は、売上収益で△780億円、営業利益で△310億円
- ・売上遅延影響:ソリューションサービスのハード一体型ビジネス/スキャナで△353億、システムプラットフォームのIAサーバ他で△258億、海外リージョンのIAサーバ他で△233億
- ・コストアップ影響:部材調達価格上昇、代替品への設計変更対応、航空便での出荷対応
- ・売価転嫁:コスト上昇品を中心に価格改定を実施(IAサーバ及びオプション製品を対象に、コスト上昇品を中心に平均10%値上げ)
DXを加速するための人材施策を実施
- ・DX企業への変革を加速するために各種人材施策をスピード感をもって展開:ビジネスプロデューサーへの変革、適所適材の実現に向けた人材の最適配置、期間を限定したセルフ・プロデュース支援制度の拡充
- ・営業損益への影響
2021年度 △650億(退職金の特別加算、及び転身支援サービス)、2022年度 +300億(人件費の減少効果)
国内の受注の状況は、全体では前年度に対して97%(SI/サービス 103%、PC 77%、サーバ/ネットワーク他 83%)で、分野別は以下の通りとしています。
- ・エンタープライズ(産業・流通)は、前年度に対して99%(SI/サービスでは102%)
- ・ファイナンス&リテール(金融・小売)は、同103%(同109%)
- ・Japanリージョン(官公庁・社会基盤他)は、同96%(同105%)
- ・富士通Japan(自治体・ヘルスケア・文教・民需(中堅他))は、同90%(同92%)
セグメント別の業績
セグメント別の通期業績は以下の通りで、テクノロジーソリューションとユビキタスソリューションが減収減益、デバイスソリューションが増収増益となっています。
テクノロジーソリューションは減収減益
- ・売上収益が前年度比313億円減の3兆563億円、営業利益は同582億円減の1,350億円(本業では1,939億円)
- ・売上収益313億円減収の内、本業で△313億円(内、部材調達遅延の影響が△681億円)
- ・営業利益582億円減益の内、本業で△67億円(内、部材調達遅延の影響が△306億円)、特殊事項で△515億円
- ■ソリューション・サービス事業は減収減益
・売上収益が前年度比431億円減の1兆8,405億円、営業利益が同19億円減(本業では44億円減)の1,887億円
・売上収益は、部材調達遅延の影響を除くとほぼ前年並みで、ハード一体型ビジネスが低調もサービスは堅調に推移
・営業利益は、費用の効率化や採算性は改善したものの、DX拡大に向けた成長投資と部材調達遅延影響により減益
- ■システムプラットフォーム事業は減収増益
・売上収益が前年度比162億円減の6,175億円、営業利益は同178億円増(本業では123億円増益)の566億円
・内、システムプロダクトの売上収益は、部材供給遅延に加え、前年のスパコンの反動を受け減収
・ネットワークプロダクトの売上収益は、北米向けが大きく増収
・営業利益は、部材供給遅延による減収影響も費用の効率化と採算性改善などで増益
- ■海外リージョン事業は増収増益
・売上収益が前年度比56億円増の7,293億円、営業利益は同123億円増の239億円
・売上収益は、為替の円安効果もあり増収
・営業利益は、採算性改善が進み全リージョン黒字化
ユビキタスソリューションは減収減益
- ・売上収益が前年度比819億円減の2,371億円、営業利益は同373億円減の58億円(本業では58億円)
- ・売上収益819億円減収の内、本業で△819億円(内、部材調達遅延の影響が△99億円)
- ・営業利益373億円減益の内、本業で△109億円(内、部材調達遅延の影響が△4億円)、特殊事項で△263億円
- ・売上収益は前年のテレワーク需要とGIGAスクール商談の反動で減収、営業利益は前年あった事業譲渡益の反動△254億以外でも減収が影響して減益
デバイスソリューションは増収増益
- ・売上収益が前年度比821億円増の3,759億円、営業利益は同485億円増の783億円(本業では758億円)
- ・売上収益821億円増収の内、本業で821億円
- ・営業利益485億円増益の内、本業で460億円、特殊事項で+24億円
- ・売上収益は半導体需要の高まりに連動して好調に推移して増収、営業利益は増収効果と操業改善が進んで増益
その他
海外売上比率:36.7%の1兆3,169億円(前年度:32.7%の1兆1,720億円)
キャッシュフローの状況
- ・フリー・キャッシュフロー:前年度比473億円減の1,890億円
営業活動によるキャッシュ・フロー:同596億円減の2,483億円
投資活動によるキャッシュ・フロー:同122億円増の△592億円
- ・財務活動によるキャッシュ・フロー:同259億円増の△1,936億円
- ・現金及び現金同等物の期末残高:同22億円増の4,840億円
資産、負債、資本の状況
- ・資産:前年度比1,416億円増の3兆3,318億円
- ・負債:同272億円減の1兆6,160億円
- ・資本(純資産):同1,688億円増の1兆7,157億円
親会社所有者帰属持分(自己資本):同1,405億円増の1兆5,907億円(自己資本比率:同2.2ポイント増の47.7%)
- ・ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)
2018年度 9.4%、2019年度 13.5%、2020年度 15.1%、2021年度 12.0%
- ・EPS(1株当たり当期利益)
2018年度 512.5億円、2019年度 791.2億円、2020年度 1,013.8億円、2021年度 924.2億円
2022年度(2023年3月期)の通期決算予想
2022年度(2023年3月期)の連結業績は、2021年度に対して増収増益を見込んでいます。
売上収益は、前年度に対して1,331億円(3.7%)増収で3兆7,200億円
- ・テクノロジーソリューションは、同1,436億円増の3兆2,000億円
再編除くベースでは108%伸長、DXビジネス拡大
- ・ユビキタスソリューションは、同71億円減の2,300億円
前年並みを維持
- ・デバイスソリューションは、同140億円増の3,900億円
光コンポーネント製品は減収も高水準の電子部品の所要が継続
営業利益は、同1,807億円増益で4,000億円(営業利益率:4.7ポイント増の10.8%)
- ・テクノロジーソリューションは、同1,949億円増の3,300億円(営業利益率:10.3%)
増収効果、採算性改善、費用の効率化など
- ・ユビキタスソリューションは、同58億円減の0億円
円安に伴う部材価格の上昇
- ・デバイスソリューションは、同83億円減の700億円
設備投資の増加に伴う償却費増と光コンポーネント製品の減収影響
親会社の所有者に帰属する当期利益は、同974億円増益で2,800億円
目標達成に向けた取り組み
売上収益の拡大:事業再編の影響を除いて前年比 +8%伸長
- ・グローバルビジネス戦略(+6%):リージョンビジネスの再構築、グローバルオファリングの拡大、ビジネスプロデューサー変革、お客様と経営課題を共有し、価値創造・モダナイゼーション領域での早期サポートを強化
- ・Fujitsu Uvance(+1%):サステナブルな世界を実現する7つのKey Focus Areas
- ・部材供給遅延のリカバリ(+1%):延伸商談のリカバリ、売価転嫁等(減収幅 2021年度 約△700億円 → 2022年度 △400億円)
コスト・費用効率化 600億円 (採算性改善+400億円、費用効率化+200億円)
- ・GDC/JGG活用:GDC/JGG連携を2倍に拡張、デリバリーモデルの標準化・自動化による生産性の向上
- ・SI商談良質化・品質向上:AI・データ利活用によるトラブルの未然防止、品質/リスクマネジメント強化
- ・先行投資による効果:ボーダレスオフィスの更なる進展、働き方改革、ビジネスプロデューサー変革
成長投資:企業価値の持続的成長に向けた投資を積極的に実施
- ・2020年度 400億円、2021年度 850億円、2022年度(予想) 1,200億円
- ・内、価値創造に向けた投資
2020年度 310億円、2021年度 350億円、2022年度(予想) 600億円
- ・内、自らの変革に向けた投資
2020年度 90億円、2021年度 500億円、2022年度(予想) 600億円
テクノロジーソリューションの財務目標(営業利益)
- ・2019年度:売上収益 3兆2,843億円、営業利益 1,959億円(6.0%)
- ・2020年度:3兆877億円、2,006億円(6.5%)
- ・2021年度:3兆563億円、1,939億円(6.3%)
- ・2022年度(予想):3兆2,000億円、3,200億円(10.0%)
参考:電機各社の決算発表
関連する情報
2022.06.01 2021年度通期決算と2022年度通期予想:三菱電機
2022.05.31 2021年度通期決算と2022年度通期予想:東芝
2022.05.30 2021年度通期決算と2022年度通期予想:日立製作所
2022.05.27 2021年度通期決算と2022年度通期予想:シャープ
2022.05.26 2021年度通期決算と2022年度通期予想:パナソニック
2022.05.25 2021年度通期決算と2022年度通期予想:ソニー
2022.05.18 2021年度通期決算と2022年度通期予想:日立製作所、東芝、三菱電機
2022.05.17 2021年度通期決算と2022年度通期予想:ソニー、パナソニック、シャープ
2022.04.30 2021年度通期決算と2022年度通期予想:NEC
2022.04.29 富士通の経営方針進捗レビュー:2021年度実績と2022年度の取り組み
2022.04.28 2021年度通期決算と2022年度通期予想:富士通
関連記事
前へ
『LinkedIn活用大全』から考える「ビジネスSNS」LinkedInの国内拡大への期待
次へ
富士通が経営方針の進捗を発表、For Growth売上拡大とFor Stability採算性改善で営業利益率達成を目指す