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富士通が、2025年度(2026年3月期)第1四半期決算(2025年4月1日~6月30日)と通期予想を発表しましたので、概況を整理します。
国内のDXやモダナイゼーションが牽引したサービスソリューションが増収増益となりましたが、ハードウェアとユビキタスが減収増益となり、全体の累計では前年同期に対して減収増益となりました。
なお、調整後営業利益は前年比185億円(112%)増、親会社の所有者に帰属する当期利益は非継続事業(新光電気工業)の売却益 約1,400億円を計上したため前年比1,548億円(918%)増となり、いずれも過去最高益を記録しました。
第1四半期決算は、おおむね計画通り進捗したとしています。
調整後連結業績
- ・売上収益は、前年同期に対して94億円(1.2%)減の7,499億円
- ・調整後営業利益は、前年同期に対して185億円増の351億円
(調整後営業利益率は、前年同期比2.5%改善して4.7%)
- ・親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、前年同期に対して146億円増の298億円
連結業績(調整前)
- ・売上収益は、前年同期に対して94億円(1.2%)減の7,498億円
- ・営業利益は、前年同期に対して192億円増の335億円
- ・税引前利益は、前年同期に対して172億円増の371億円
- ・親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年同期に対して1,549億円増の1,718億円
2025年度(2026年3月期)の通期決算予想は、前回予想を据え置いています。
なお、2024年度第4四半期から非継続事業へ分類を変更したデバイスソリューションを除いています。
富士通の2025年度第1四半期(2024年4~6月)連結業績
国内のDXやモダナイゼーションが牽引したサービスソリューションが増収増益となりましたが、ハードウェアとユビキタスが減収増益となり、全体の累計では前年同期に対して減収増益となりました。
調整後連結業績
- ・売上収益は、前年同期に対して94億円(1.2%)減の7,499億円
- ・調整後営業利益は、前年同期に対して185億円増の351億円
(調整後営業利益率は、前年同期比2.5%改善して4.7%)
- ・親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、前年同期に対して146億円増の298億円
連結業績(調整前)
- ・売上収益は、前年同期に対して94億円(1.2%)減の7,498億円
- ・営業利益は、前年同期に対して192億円増の335億円
- ・税引前利益は、前年同期に対して172億円増の371億円
- ・親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年同期に対して1,549億円増の1,718億円
セグメント別の業績
セグメント別の業績(累計)は以下の通りで、サービスソリューションが増収増益、ハードウェアソリューションとユビキタスソリューションが減収増益となっています。
■サービスソリューションは増収増益
売上収益が前年同期比130億円増の5,146億円、調整後営業利益は同128億円増の478億円
国内市場を中心にDXおよびモダナイゼーション商談が力強く伸長し、また、Fujitsu Uvanceの売り上げが拡大したとしています。
- ・売上収益は、国内市場においてDX・モダナイ商談が伸長(国内ビジネス+6%)、海外市場は主に為替影響により減収(海外ビジネス△6%)、Fujitsu Uvanceの売上は前年から52%伸長
- ・調整後営業利益は、増収効果に加えて、採算性も着実に進捗
調整後営業利益128億円増益の内訳は、以下の通りです。
- ・Uvanceオファリングやモダナイゼーションおよびコンサルティングの投資拡大など△12億円に対し、
- ・売上増収影響で+64億円(売上収益+130億円)と採算性改善で+76億円で、計+128億円(売上収益+130億円)
採算性改善+76億円(売上総利益率は1.5%の改善)は、以下の状況です。
- デリバリ強化
- ジャパングローバルゲートウェイ(JGG)活用率:1Q 47%、年間計画 45%
- 生成AI活用として、JGG活用プロジェクトの設計・開発工程を中心に生成AIを活用した効率化を本格開始し、国内SE 3万人と協力会社に生成AIツールの利用環境を提供
- ・プライシング戦略として、価値ベースのプライシング戦略を展開
- ・人材ポートフォリオ最適化として、人材の最適配置による生産性を向上
国内の受注状況(累計)の分野別は以下の通りで、全体では前年同期に対して101%です。
エンタープライズで前年複数年商談の反動があった一方、ファイナンスでは大型案件を獲得し、全業種において商談パイプラインは着実に拡大しています。
- ・エンタープライズ(産業・流通・小売)は前年同期に対して97%
前年同期の大口複数年契約の反動、特に流通は、DXやSX、モダナイゼーション案件などの引き合いが旺盛
- ・ファイナンス(金融・保険)は同119%
金融機関向けの営業店システムの大型更新商談を獲得
- ・パブリック&ヘルスケア(官公庁・自治体・医療)は同96%
主に官公庁向けの大型案件の反動、第2四半期や第3四半期に獲得予定の大型案件を積み上げ中
- ・ミッションクリティカル他(ミッションクリティカル・ナショナルセキュリティ他)は同114%
ナショナルセキュリティを中心に順調に案件を積み上げ中
一方、海外の受注状況(累計)の分野別は以下の通りです。
- ・Europeは前年同期に対して177%
データセンター関連で複数年契約の大型更新案件を受注
- ・Americasは同51%
前年にBusiness Applicationの複数年契約の大型受注の反動
- ・Asia Pacificは同117%
Oceaniaでリテール系の複数年更新案件を受注
なお、2025年4月からは国ごとの体制へと変更して利益体質の確立に向けた構造改革を進め、Uvanceを中心としたサービスビジネスの拡大を図り、すべてのエリアでの収益性向上を図っています。
- ・Europeは、構造改革完了に向けて採算性の低い事業のカーブアウトや地域戦略の見直しを実行
- ・Americasは、サービスビジネスに注力し、2024年度にコンサルティング事業を立ち上げ
- ・Asia Pacificは、採算性の高いビジネスと地域にフォーカスした構造改革に着手
サブセグメント別の内訳は、以下の通りです。
特に、Japanは、売上収益はDXおよびモダナイゼーション案件が伸長し、調整後営業利益も増収効果に加え、採算性向上により増益となったのが貢献しています。
- グローバルソリューションは減収増益
- 売上収益が前年同期比82億円減の1,207億円、調整後営業利益が同13億円改善して△10億円(赤字)
- 売上収益は、前年度(2025年2月)のコンタクトセンター事業譲渡により減収
- 調整後営業利益は、デリバリの効率化により損失現象
- リージョンズ(Japan)は増収増益
- 売上収益が前年同期比168億円増の2,894億円、調整後営業利益は同37億円増の416億円
- 売上収益は、DXビジネスや基幹システム刷新によるモダナイゼーションの案件が伸長して増収
- 調整後営業利益は、増収効果に加え採算性向上により増益
- リージョンズ(海外)は減収増益
- 売上収益が前年同期比85億円減の1,337億円、調整後営業利益は同77億円増の71億円
- 売上収益は、主に為替影響により減収
- 調整後営業利益は、事業ポートフォリオ改革の効果により利益改善
■ハードウェアソリューションは減収増益
売上収益が前年同期比264億円減の2,021億円、調整後営業利益は同50億円増の13億円(前年同期の赤字から黒字に転換)
- ・システムプロダクトの売上収益は、同277億円減の1,671億円
欧州サーバ事業の他社ライセンスの減収、主に欧州の間接コスト効率化により李秋改善
- ・ネットワークプロダクトの売上収益は、同13億円増の349億円
売上収益は前年並みで推移、採算性改善により増益、7月1日に新会社(1FINITY株式会社)を設立
■ユビキタスソリューションは減収増益
売上収益が前年同期比8億円減の479億円、調整後営業利益は同37億円増の82億円
- ・2024年1Qに競争環境が厳しい欧州ビジネスを終息したことが影響
- ・国内売上は+6%、為替影響による部材コスト低下に加え採算性重視の販売への転換により採算性改善
■消去・全社
調整後営業利益は同31億円悪化の△223億円
- ・AIや量子分野などの先進的先行研究、中長期的な事業成長投資は引き続き計画的に実施(先進的先行研究・経営基盤強化)
Fujitsu Uvanceの状況
2023年5月24日に発表した、2025年度を最終年度とする中期経営計画では、Fujitsu Uvanceを成長のドライバーとして、サービスソリューションを中心に全社の収益性拡大を目指すとして、2025年度の売上収益 7,000億円(2022年度実績:2,000億円、2023年度実績:3,679億円、2024年度実績:4,828億円)を目標にしています。
社会課題を起点として、クロスインダストリーでお客様の成長に貢献するデジタルサービスを提供するとして、社会課題を解決するクロスインダストリー4分野(Vertical)と支える3つのテクノロジー基盤(Horizontal)を定めています。
- ・Vertical:Sustainable Manufacturing、Consumer Experience、Healthy Living 、Trusted Society
- ・Horizontal:Digital Shifts、Business Applications、Hybrid IT
2025年度第1四半期の売上収益は、前年同期に対して52%増の1,467億円(売上構成:比29%)となっています。
コンサルティングブランドであるUvance Wayfindersが立ち上がり、従来のSI商談とは異なり、経営変革のアジェンダ策定から実装までの商談が生まれているとしています。
また、グローバルでのオファリングの標準化、商談におけるリカーリング比率の向上、海外ではGK SoftwareなどのVertical領域が伸長しているようです。
- ・2023年度1Q:704億円(Vertical:103億円、Horizontal:601億円)
→ 2024年度1Q:965億円(Vertical:294億円、Horizontal:671億円)
→ 2025年度1Q:1,467億円(Vertical:498億円、Horizontal:969億円)
- ・売上構成比は、2023年度1Q:15% → 2024年度1Q:19% → 2025年度1Q:29%
なお、売上収益の年度推移は、以下の通りとしています。
- ・2022年度(実績):2,000億円(V 150億円、H 1,850億円)、構成比 10%
- ・2023年度(実績):3,679億円(V 1,163億円、H 2,515億円)、構成比 17%
- ・2024年度(実績):4,828億円(V 1,752億円、H 3,076億円)、構成比 21%
- ・2025年度(予測):7,000億円(V 2,800億円、H 4,200億円)、構成比 30%
2030年度に向けては、サービスソリューション全体の半分近いものを、(Fujitsu Uvanceのような)オファリングのポートフォリオで占め、グロスマージン率を拡大していきたいとの考えを明らかにしています。
Uvanceによるオファリングビジネスを半分にすることで採算性が高まり、リカーリング型ビジネスの獲得にもつながるのに加え、第4四半期集中のビジネス構造を解消でき、事業効率を高めることもできるとしています。
モダナイゼーションの状況
DX化・クラウド化への導線としてモダナイゼーション需要が拡大し、レガシー資産からDX移行を戦略的に進め、新市場・波及売上を創出するとしています。
2025年度第1四半期の売上収益は、Fujitsu Uvanceの重複分を含むと前年同期比44%増の738億円(売上構成比 10%)となりました。
なお、売上収益の年度推移は、以下の通りとしています。
- ・2022年度(実績):1,100億円、構成比 4%
(ハード 149億円、Uvance 136億円、サービス 815億円)
- ・2023年度(実績):1,600億円、構成比 6%
(ハード 217億円、Uvance 199億円、サービス 1,600億円)
- ・2024年度(実績):2,969億円、構成比 9%
(ハード 374億円、Uvance 585億円、サービス 2,010億円)
- ・2025年度(予測):3,300億円、構成比 10%
(ハード 370億円、Uvance 620億円、サービス 2,310億円)
受注、売上とも順調に拡大しており、リソースを効率的、機動的にアサインするほか、モダナイゼーションマイスターと認定している専門人材の育成、言語の自動変換ツールの整備など、業務の高度化、効率化を図っているとしています。
2025年度は、Fujitsu Uvanceにつながるモダナイゼーションと、Horizontalソリューションを統合したDXの提案を加速させるのに加え、生成AIを活用した効率化や自動化を行い、競争力を高める計画です。
その他
キャッシュフローの状況
- ・コア・フリー・キャッシュフロー:前年同期比625億円増の2,303億円(売上債権の回収増加)
- ・フリー・キャッシュフロー:前年同期比2,713億円増の4,017億円
営業活動によるキャッシュ・フロー:同530億円増の2,268億円
投資活動によるキャッシュ・フロー:同2,182億円増の1,749億円(新光電気工業株式売却による一過性の収入 2,002億円)
- ・財務活動によるキャッシュ・フロー:同824億円減の△890億円(短期借入金の返済)
資産、負債、資本の状況
- ・資産:前年同期比3,170億円減の3兆1,807億円
- ・負債:同3,211億円減の1兆2,746億円
- ・資本(純資産):同40億円増の1兆9,061億円
親会社所有者帰属持分(自己資本):同1,480億円増の1兆8,890億円
- ・(参考)有利子負債:前年同期比507億円減の1,963億円
2025年度(2026年3月期)の通期決算予想
2025年度(2026年3月期)の通期決算予想は、前回予想を据え置いています。(デバイスソリューションの非継続事業への分類変更後)
- ・売上収益は、前年比1,001億円(2.8%)減の3兆4,500億円
- ・調整後営業利益は、同527億円増の3,600億円
- ・親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、同90億円増の2,500億円
Fujitsu Uvanceの売上収益は、前年比45%増の7,000億円
- ・Verticalは同60%増の2800億円(構成比:40%)、Horizontalは同37%増の4,200億円(構成比:60%)を見込む。
- ・2025年度は、VerticalをUvance拡大のエンジンとし、サービスソリューションの売上収益における売上構成比 30%を目指す。
モダナイゼーションのサービス売上収益は同15%増の2,310億円とし、Fujitsu Uvanceとの重複分を加えると3,300億円を目指すとしています。
セグメント別の業績予想
セグメント別の業績見通しは以下の通りで、ハードウェアソリューションとユビキタスソリューションは減収減益を見込むものの、サービスソリューションが増収増益を見込んで、全体で減収増益を見込んでいます。
■サービスソリューション
売上収益は前年比840億円増の2兆3,300億円、調整後営業利益は同700億円増の3,600億円(売上比 15.5%)
- ・グローバルソリューションは、FujitsuUvanceを中心に売上拡大して、売上収益は同187億円増の5,300億円、調整後営業利益は同213億円増の270億円の見込み。
- ・リージョンズ(Japan)は、DX、モダナイゼーション案件が伸張増収効果に加え採算性も引続き向上して、売上収益は同1,195億円増の1兆4,300億円、調整後営業利益は同456億円増の3,060億円の見込み。
- ・リージョンズ(海外)は、為替影響による減収に加え、欧州のデマンド減事業ポートフォリオ改革効果により利益改善して、売上収益は同597億円減の5,300億円、調整後営業利益は同30億円増の270億円の見込み
■ハードウェアソリューション
売上収益は前年比1,549億円減の9,650億円、調整後営業利益は同63億円減の550億円
- ・システムプロダクトは、為替影響や、ライセンス・外購品販売減により、売上収益は同1,233億円減の8,150億円の見込み。
- ・ネットワークは、低調なデマンドにより減収次期サイクルのデマンド増は来年度以降になる見通しで、売上収益は同316億円減の1,500億円の見込み。
ネットワーク事業に関する新会社「1FINITY株式会社」を7月1日に設立しました。
- ・ネットワークに関するハード・ソフトの研究開発・製造・販売・導入支援・保守運用を集約することで、高品質で競争力のあるネットワークソリューションをグローバルに提供する。
- ・経営責任の明確化、経営判断の迅速化を図るとともに、最先端のテクノロジーを最大限に活用した製品の早期提供やソフトウェア技術へのシフト、AIデータセンタ市場など新たなマーケットへの拡大を通じ、市場環境への迅速な対応とイノベーション創出を目指す。
■ユビキタスソリューション
売上収益は前年比267億円減の2,250億円、調整後営業利益は同113億円減の200億円
- ・前年の大型ロット商談の反動減
■消去・全社
調整後営業利益は同24億円減の△700億円
- ・AI、量子等の先端研究への投資を継続
中期経営計画の当初計画値を修正(前回予想時)
前回予想時に、2025年度を最終年度とする中期経営計画を、当初の計画値を修正しています。
なお、事業ポートフォリオの変革は予定通り進んでおり、成長領域としてフォーカスしているサービスソリューションは増収増益を見込んでいます。
サービスソリューションは、売上収益は為替影響もあり、リージョンズ(海外)を中心に減額し、調整後営業利益は採算性改善を進め、計画に対しオントラックとしています。
ハードウェアソリューションは、ネットワークの所要回復遅れによるものとしています。
連結業績
- ・売上収益(前回計画から3,400億円下方修正)
前回計画 3兆7,900億円 → 今回予想 3兆4,500億円(前年度比:1,001億円減)
- ・調整後営業利益(前回計画から600億円下方修正)
前回計画 4,200億円 → 今回予想 3,600億円(前年度比:527億円増)
参考:電機各社の決算発表
2025.7.30 2025年度第1四半期決算と通期予想:富士通
2025.7.29 2025年度第1四半期決算と通期予想:NEC
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