『LinkedIn活用大全』から考える「ビジネスSNS」LinkedInの国内拡大への期待

『LinkedIn活用大全』から考える「ビジネスSNS」LinkedInの国内拡大への期待

前へ

次へ

このページ内の目次

 

『LinkedIn(リンクトイン)活用大全』(松本 淳、2022年4月)は、ビジネスSNS「LinkedIn」について、豊富な実際の事例を紹介しながら、実践的な活用方法を詳細に解説した一冊です。

基本的な使い方からビジネスへの活用へと段階的に解説し、非常に読みやすい構成となっていますので、初心者から上級者の全ての方々にとって、LinkedInをビジネスで活用していくうえで大変参考になりますので熟読をお勧めします。

 

本書によれば、LinkedInは世界中のビジネスパーソンや学生に利用されているグローバルスタンダードの「ビジネスSNS」であるとしています。

そこで、「日本企業のSNS姿勢」と「大まかな世代別傾向」の2つの視点から、社員がSNSをビジネス活用することに対して企業はどのように考えていくべきなのかを、国内でのLinkedIn拡大への期待を込めて個人的な考えを簡単に整理します。

なお、ビジネス活用とは、就職や転職、キャリア形成、人材の採用、営業やマーケティングにおける個人の発信と捉えています。

 

「ビジネスSNS」LinkedInへの期待

『LinkedIn(リンクトイン)活用大全』(松本 淳、2022年4月)では、LinkedInは「ビジネスSNS」なので、ビジネスで利用することへの気兼ねは基本的には必要ないと述べています。

本書によれば、「北米や欧州諸国では、LinkedInアカウントを持っていなければビジネス上のコミュニケーションをスムーズに進めることができないこともある」とか、「名刺交換の代わりに『LinkedInでつながる』ことからビジネスがスタートする」といった、営業展開、転職、採用などのあらゆるシーンでLinkedInは有用なSNSであるとしています。

日本には2011年10月時点で上陸していたようですが、近年SNSが社会に浸透してきたことに加え、日本語環境での利便性向上などの利用環境が整い、日本でのLinkedInビジネス活用も期待できそうです。

しかし、就職・転職や人材の採用の領域においては、雇用や仕事への意識など日本固有の特徴もあります。

一方、新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、近年の企業は、社員の働き方改革を推進し、ネットを利用した採用活動などに取り組んでいます。

さらに社会全般においても、仕事と生活の調和(ワークライフバランス)の実現を目指した動きが活発になっています。

このような状況は個人の尊重とともに、「個人の存在意義」や「個人のSNS活用に対する責任」への意識も強くなってくると考えます。

SNSには、正のネットワーク外部性(ネットワーク効果)もありますが、負のネットワーク外部性もあります。

企業は、社員がSNSなどを使ってポジティブな情報を発信してくれれば、企業ブランドが向上することになります。

しかし、社員が不適切な発信をしたり、問題を起こしたりすると、企業ブランドに大きなダメージを与え、ブランドが損なわれるリスクもあります。

そのためにも、企業はSNSの活用に関しても、適切なガバナンスを確立してリスクを最小化するとともに、コンプライアンスを順守に努めることが必要となります。

 

SNSのビジネス活用に関する日本企業の姿勢

SNSのビジネス活用に関しては、多くの企業が広報やマーケティングの一環として、自社の取り組み状況や製品・サービスの情報をFacebookやTwitterなどを使って以前から発信しています。

SNSでの公式発信に加え、他の一般の発信に対する市場の反応情報を収集・分析し、次の対応に役立てている企業も少なくありません。

また本書では、LinkedInでは企業アカウントよりも、個人アカウントで発信することの重要性も説いています。

他のSNSは匿名でも発信できるため情報の信頼性は低くくなる傾向があるのに対し、LinkedInは実名での発信なので情報の信頼性は高くなるというものです。

さらに本書では、「ソーシャルリクルーティング」や「ソーシャルセリング」といった動向をわかりやすく解説し、企業がSNSを活用することの有効性を示していますが、そこには社員「個人」のあり方や存在意義が重要であることも浮かび上がってきます。

その意味においては、企業のSNS運営に関するポリシー、社員がSNSを活用する際のガイドラインを含め、SNSに関するガバナンスを考え直していくことも必要かもしれません。

今のところ、多くの企業は「社員のSNS上での発信は企業活動とは無関係」という姿勢を示していますが、実名で所属企業名を明らかにした社員のLinkedInでの発信にも同様の扱いをすべきなのかという課題も出てきます。

終身雇用の崩壊、ジョブ型への移行や雇用の流動化などを背景に、雇用関係や仕事に対する個人の意識も変わり、自分が保有する業務経歴やスキルを社会に発信していくことが多くなってくると思います。

そして企業は、SNSでの発信を「所属する社員としての活動」と「社員ではあるが個人としてのプライベート活動」と、どのように区別するか、どこまで関与していくべきなのかの判断が難しくなってきます。

そこには、企業への帰属意識が低下している中でエンゲージメント向上に努めている最近の日本企業と、そもそも個人(自律)を重視する文化(主義)の欧米企業と、雇用や仕事などに関する企業の考え方や歴史の違いもあるのかもしれません。

また、「就職や転職」「キャリア形成」でSNSを活用する場合は個人的な要素が強いのですが、「人材の採用」「営業やマーケティング」でSNSを活用する場合は仕事の一環として考えられる場合もありますので、企業側の判断は分かれるのかもしれません。

LinkedInも他のSNSと同様と考えるのか、LinkedInは特別と考えるのかで、企業の対応は異なるのでしょうが、おそらくリスクを嫌う日本企業は前者を選択する傾向が強いのではないかと思います。

リアルでありネットであり、社員のエンゲージメントが高くなければポジティブな発信は生まれません。

トップ自身が理念や事業方針を発信し、それに社員が共感してこそポジティブな発信が生まれるものです。

そして社員は、社会人の一員として、プロフィールに企業名を明示する際には組織人として、適切な発信やコミュニケーションを心がける必要があります。

 

大まかな世代別のSNS活用と仕事意識

大まかな世代別に、SNSのビジネス活用や仕事に関する意識について簡単に整理すると以下の通りではないかと考えています。

大まかな世代分類

  • ・ベビーブーム世代:1946年から1964年に誕生=現在76歳から58歳
  • ・X世代:1965年から1980年に誕生=現在57歳から42歳
  • ・Y世代(ミレニアル世代):1981年から1996年に誕生=現在41歳から26歳
  • ・Z世代(センテニアル世代):1997年から2009年に誕生=現在25歳から13歳
  • ・参考:アルファ世代:2010年以降に誕生

 

まずはベビーブーム世代(現在76歳から58歳)の若い世代は、未だに企業に残っていて、中には上層部にいることも少なくなく、旧来の考えでSNSのビジネス活用を捉え、社員のSNS活用とは距離を置くといった姿勢(判断)を示しているのではないかと思います。

次に続くX世代(現在57歳から42歳)は、仕事のために初めてインターネットを使った世代で、現在は企業内でのリーダー的役割を担っていますが、ベビーブーム世代の影響からかSNSのビジネス活用は積極的ではないのかもしれません。

それに対して、Y世代(現在41歳から26歳)やZ世代(現在25歳から13歳)は若い時からネットを使い、SNSも私的な目的で利用してきた世代です。

デジタル世界をリアル世界の切れ目のない延長と見なしていますし、特にZ世代になるにつれて自分の日々の生活を写真や動画の形でSNSに投稿し、個人情報もシェアする傾向も強くなっています。

仕事に関しては、私生活と職業生活を融合させる傾向は、Y世代の若い世代からZ世代にかけて強くなっていきますし、転職を考えたり就職を迎えたりする世代でもあります。

これらから言えるのは、SNSのビジネス活用は現在過渡期であり、世代が変わることで企業の取り組みも変わっていくのかもしれません。

ベビーブーム世代やX世代が上層部にいる伝統企業は、市場環境変化への対応に加え、雇用環境の変化や若い社員への対応に向けた、新たなSNSのビジネス活用に転換していくことが急務となりそうです。

社員構成上の世代が交代すれば変わるだろうというものではなく、積極的な改革が必要です。

一方、Y世代やZ世代がトップにいる企業は、すでに当たり前のようにSNSをビジネスに活用し、さらに拡大していくことになります。

 

まとめ

LinkedInは現在、良識のある方々が活用しているようですし、国内でもこれから拡大していくと思います。

特にビジネス領域では、LinkedInを活用するという傾向は強まると予想しています。

そのためにも、LinkedInは「ビジネスSNS」という土壌を維持・向上していくことが重要となります。

そして、個人も「組織人という意識」を持って適切な発信を心がけ、企業もそれをバックアップするとともに、特にSNSに関しては以下のような取り組みも必要かもしれません。

 

SNS全般に対する企業の主な取り組み(SNSガバナンス確立)

1.企業は、ネット上の資産(デジタル資産)に関するガバナンスを確立する。

2.ネットやSNSで作成した公式ページを統合し、一貫した自社ブランドの確立に努める。

3.偽物やなりすましなどを常時監視する。

4.ネット上で自社との強い結びつきを明示している社員のアカウントや関連サイトの状況、場合によっては発信している内容を適時確認する。

5.企業の方針に反する情報が発信されたり、他のリスクに関する問題が起こったときには、迅速に対処する。

6.SNSへの参加全般に関わる教育を実施し、活用の心構えを示したガイドラインを定め、順守を徹底する。

 

但し、本来SNSは広く自由なコミュニティであるはずですし、LinkedInは「ビジネスSNS」だからと言って、個人の発信に対して企業が介入したり、統制したりするのは本末転倒です。

企業は、社員のエンゲージメントを高め、社員が進んでポジティブな発信をするよう努力していくべきではないかと考えています。

一方、LinkedInをビジネスで活用する個人は、礼儀と節度をわきまえ、適切な発信を心がけるべきです。

『LinkedIn(リンクトイン)活用大全』(松本 淳、2022年4月)は、ビジネスSNS「LinkedIn」の基本的な使い方からビジネスへの活用へと段階的に解説し、非常に読みやすい構成となっていますので、初心者から上級者の全ての方々にとって大変参考になりますので熟読をお勧めします。

そして、LinkedInを自分自身はどのように活用していくべきなのか、組織としてどのように運営していくべきなのか、多くのヒントを得ることのできる一冊です。

 

参考

主なSNSの月間利用者数(グローバル、参考:国内)
主なSNS グローバル
月間利用者数
発表 参照元 参考:国内
月間利用者数
Linkedin 8億人 2021年12月 About Us 200万人
Facebook 29億1,000万人 2021年12月 Investor Events 2,600万人
YouTube 20億人 2021年12月 YouTube for Press 6,500万人
WeChat 12億6,820万人 2022年4月 Quarterly Results
TikTok 10億人 2021年9月 TikTok ニュース 950万人
Twitter 3億3,300万人 2021年10月 Investor Relations 4,500万人
LINE 1億9,000万人 2022年4月 決算説明会 8,900万人

 

主なソーシャルメディア系サービス/アプリ等の利用率

主なソーシャルメディア系サービス/アプリ等の利用率

出典:総務省「令和2年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」2021年8月25日

 

情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査|総務省 情報通信政策研究所

 

LinkedIn(リンクトイン)活用大全

 

トップに戻る

関連記事

前へ

書籍 LinkedIn活用大全 情報発信、起業、転職、人脈…ビジネスで一番使えるSNS | 松本 淳(著)

次へ

富士通の2021年度(2022年3月期)通期決算は減収減益、本業ベースの営業利益は前年比10%超の増益

Page Top