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NECが、2024年度(2025年3月期)通期決算(2024年4月1日~2025年3月31日)と2025年度(2026年3月期)通期業績予想を発表しましたので、概況を整理します。
NECは、前年同期に対して減収増益となりましたが、日本航空電子工業(JAE)非連結化影響を除くと増収増益となりました。
また、営業利益と税引前利益および当期利益、Non-GAAP営業利益とNon-GAAP当期利益すべてが増益となりました。
特に、Non-GAAP営業利益は、2025年度を最終年度とする中期経営計画の目標を1年前倒しで達成しました。
ITサービスと社会インフラの2セグメントともに増収増益したことが貢献しています。
売上収益の減収は日本航空電子工業(JAE)の非連結化によるもので、影響を除くと売上収益は同5.3%増、Non-GAAP営業利益は989億円増になったとしています。
調整後連結業績
- ・売上収益は、前年同期に対して538億円(1.5%)減の3兆4,234億円
- ・調整後営業利益は、前年同期に対して636億円増の2,872億円
(対売上比率は、前年同期比2.0%改善して8.4%)
- ・Non-GAAP営業利益は、前年同期に対して837億円増の3,113億円
(対売上比率は、前年同期比2.5%改善して9.1%)
- ・親会社の所有者に帰属するNon-GAAP当期利益は、前年同期に対して479億円増の2,257億円
連結業績(調整前)
- ・売上収益は、前年同期に対して538億円(1.5%)減の3兆4,234億円
- ・営業利益は、前年同期に対して685億円増の2,565億円
- ・税引前利益は、前年同期に対して548億円増の2,398億円
- ・親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年同期に対して257億円増の1,752億円
2025年度(2026年3月期)の通期決算予想は、前年度に対して減収増益を見込んでいます。
なお、Non-GAAP営業利益は、2025年度を最終年度とする中期経営計画の目標から200億円上方修正して3,200億円としています。
NECの2024年度(2025年3月期)通期連結業績
国内および海外ともに好調なITサービス、テレコムサービスの費用効率化などで利益改善した社会インフラの両セグメントが増収増益となったのが貢献しています。
なお、日本航空電子工業(JAE)の非連結化の影響を除くと、売上収益は同5.3%増、Non-GAAP営業利益は989億円増になったとしています。
調整後連結業績
- ・売上収益は、前年同期に対して538億円(1.5%)減の3兆4,234億円
- ・調整後営業利益は、前年同期に対して636億円増の2,872億円
(対売上比率は、前年同期比2.0%改善して8.4%)
- ・Non-GAAP営業利益は、前年同期に対して837億円増の3,113億円
(対売上比率は、前年同期比2.5%改善して9.1%)
- ・親会社の所有者に帰属するNon-GAAP当期利益は、前年同期に対して479億円増の2,257億円
連結業績(調整前)
- ・売上収益は、前年同期に対して538億円(1.5%)減の3兆4,234億円
- ・営業利益は、前年同期に対して685億円増の2,565億円
- ・税引前利益は、前年同期に対して548億円増の2,398億円
- ・親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年同期に対して257億円増の1,752億円
売上収益は、前年同期比538億円(1.5%)減の3兆4,234億円
- ・日本航空電子工業(JAE)非連結化影響を除くと5.3%増収となりました。
- ・ITサービスと社会インフラの2セグメントが増収増益したことが貢献しています。
- ・ITサービスは、国内および海外ともに好調を維持しています。
- ・社会インフラは、テレコムサービスは減収したものの、ANS(Aerospace and National Security)は案件を着実に遂行して増収し、全体では増収しています。
調整後営業利益は、前年同期比636億円増の2,872億円
- ・ITサービスは、国内では売上増や収益性向上、海外ではAvaloqを中心とした利益改善により増益しています。
- ・社会インフラは、テレコムサービスの一過性の損益あるものの、開発費を中心とした費用効率化により調整後営業利益が改善しています。
Non-GAAP営業利益(3,113億円)の前年からの837億円増益要因は、オペレーション改善で+989億円(ITサービスで+608億円、社会インフラで+318億円、他で+63億円)に対して、日本航空電子工業(JAE)非連結化で△152億円です。
さらにNon-GAAP調整項目(構造改革費用)の△241億円で、調整後営業利益2,872億円(対前年度比636億円の増益)となります。
なお、Non-GAAP営業利益は、買収によって認識した無形資産の償却費、M&A関連費用、一過性損益である構造改革関連費用、減損損失、株式報酬などを営業利益から排除したもので、「根源的な事業の業績を測る利益指標」としています。
セグメント別の業績
セグメント別の業績は以下の通りで、前年同期に対して、ITサービスと社会インフラが増収増益、その他が減収減益となりました。
■ITサービスは増収増益
売上収益は前年同期に対して1,192億円(6.2%)増の2兆332億円、調整後営業利益は前年同期から530億円増の2,371億円
- ・売上収益は、国内および海外ともに好調に推移して増収(除くNECファシリティーズ:国内+9%)
- ・調整後営業利益は、売上増に加え、国内・海外ともに収益性改善により増益
- ・国内外の構成は以下の通りで、NECファシリティーズを除いた売上収益は前年同期比9%増となりました。
- 国内の売上収益は前年同期比6.2%増の1兆7,125億円、調整後営業利益は同503億円増の2,154億円
- 海外(DG/DF)の売上収益は前年同期比6.4%増の3,207億円、調整後営業利益は同27億円増の216億円
国内ITサービスのサブセグメント別の売上構成は以下の通りで、エンタープライズ、パブリックは旺盛な需要を取り込み好調を維持しています。
売上構成 国内:前年同期比6.2%増の1兆7,125億円(構成比:84.2%)、受注はパブリックを中心に堅調な需要が継続して前年同期比9%増
- ・パブリック:前年同期比13.3%増の4,939億円(構成比:24.2%)
受注は同31%増で、自治体標準化の案件増に加え、中央官庁向け案件が堅調に推移
- ・エンタープライズ:同0.6%減の6,909億円(同:33.9%)
受注は前年同期並み- 金融は、前年度の大型案件の反動減あるも高水準を維持し同9%減
- 製造は、高収益案件の獲得にシフトする選別受注が一巡してDX関連の案件増で同9%増
- 流通・サービスは、前年の反動減があるものの需要は堅調で同5%減
- ・クロスインダストリー:同13.8%増の1,609億円(同:7.9%)
- ・Digital Platform(DPF)他:同10.6%増の3,668億円(同:18.0%)
その他の受注で、アビーム13%増に加え、消防防災案件が好調
売上構成 海外 Digital Government(DG) / Digital Finance(DF)の売上収益:前年同期比6.3%増の3,207億円(構成比:15.7%)
■社会インフラは増収増益
売上収益は前年同期に対して644億円(6.0%)増の1兆1,417億円、調整後営業利益は前年同期から302億円増の854億円
- ・売上収益は、テレコムサービスは減収したものの、ANSは案件を着実に遂行して増収
- ・調整後営業利益は、テレコムサービスは、通信事業者の投資抑制や一過性の損益があるものの開発費を中心とした費用効率化により調整後営業利益が改善
サブセグメント別の売上構成は、以下の通りです。
- ・テレコムサービス:売上収益は前年同期比3.7%減の7,717億円、調整後営業利益は同166億円増の439億円
- 海洋の既存複数プロジェクトでスケジュール遅延に伴う費用増が発生したのが影響
- 事業全体の品質改善に向け、新規契約案件の契約条件やプロセスの見直しを実施済みで、2025年度以降は正常な利益率に回復予定
- オペレーション改善や費用効率化を実施して439億円改善
- ・Aerospace and National Security(ANS):売上収益は前年同期比34.0%増の3,700億円、調整後営業利益は同136億円増の415億円
■その他は減収減益
売上収益は前年同期に対して48.9%減の2,485億円、調整後営業利益は前年同期から197億円減の△147億円
トピックス
■2024年5月30日に発表した価値創造モデル「BluStellar(ブルーステラ)」
「BluStellarによって、以前から進めてきたDXの取り組みを強化し、新たな価値創造に向けて、お客さまのビジネス変革を加速させ、2025中期経営計画の達成に向けた成長エンジンに位置づけており、DX事業をさらに加速することになる」と位置づけています。
また、構想策定をはじめとしたコンサルティングから、サービスデリバリー、運用、保守に至るまで、すべてのビジネスプロセスにAIをフル活用し、「先端テクノロジーを集約し、AI技術とセキュリティをキーテクノロジーに位置づけて展開する。従来型のSIビジネスから進化し、顧客価値を最大化するValue Driverとなり、NECのDX事業を強化していくことになる」としています。
BluStellarの売上収益は前年度比44.3%増の5,424億円、調整後営業利益は同438億円増の663億円
2024年度は、2025年度中計目標を1年前倒しで達成し、利益率が大幅に向上しました。
25年度は、売上収益は前年比二桁成長を継続し、商材・リソース拡充への投資を増加させつつ利益率改善するとしています。
- ・自治体標準化の需要を取り込み、ガバメントクラウド運用支援サービスの受注堅調
- ・自社活用事例をモデル化した、コンサル起点でのセキュリティ運用・ダッシュボートやデータドリブン経営実現シナリオの受注拡大
- ・高度な専門業務を自動化するAIエージェントを発表(2024年11月)、複数業種のお客様と実証準備中
- ・利益率の改善では、製品ポートフォリオを見直し、低収益の製品を削減したのに加え、バリューベースドプライシングによる成果、シナリオによる販売を主軸とするビジネスモデルへの変更が貢献
■低収益事業への対応
2020年度期末当初16事業であった低収益事業は、2024年度までに12事業が卒業しています。
なお、2025年度末までには、既存低収益事業に関しては、CFO主導の徹底した低収益モニタリングでのフォローに加え、高中収益からの悪化抑制としては、予算進捗状況に応じたモニタリングでのフォローを実施することにより、すべての低収益事業の意思決定完了を目指すとしています。
- ・2020年度期末:16事業、6,500億円
- ・2021~2023年度:7事業減
2022年度:4事業卒業、2023年度:5事業卒業、2021~2023年度:2事業悪化(追加)
- ・2023年度期末:9事業、5,500億円
- ・2024年度:1事業減
2024年度:3事業卒業、2024年度2事業悪化(追加)
- ・2024年度期末:8事業、4,600億円
- ・2025年度期末目標:0事業
■4月1日付で組織体制を変更
- ・2025中期経営計画の達成および持続的な成長を実現することを狙いとして、2025年4月1日付で組織体制を変更することを発表
- ・BluStellarを軸とした価値提供体制を強化に向けて、デジタルプラットフォームBUを再編(2つのBUを新設)
デジタルプラットフォームサービスBU:BluStellarを軸とした製品・サービス事業
デジタルデリバリーサービスBU:コンサルティングやSIサービスのデリバリー
- ・政府・官公庁および自治体向け事業を担うパブリックBUに集約
クロスインダストリーBUとグローバルイノベーションBUの行政および医療に関連する事業(都市インフラ事業、消防・防災事業、スマートシティ事業など)を集約
- ・経済安全保障を含むナショナルセキュリティ事業体制を確立
コーポレートにサイバーセキュリティ部門を新設し、NECグループ全体のサイバーセキュリティ関連事業や機能を統括し、セキュリティ人材の育成や最先端技術の活用を通じて顧客への提案力を強化
- ・航空宇宙・防衛事業を担うエアロスペース・ナショナルセキュリティBUに、サイバーセキュリティ部門と密に連携する組織を新設し、テレコムサービスBUから海底ケーブルシステムを開発、提供する海洋システム事業を移管
■セグメントを変更(2025年度以降)
- ・ITサービス内のNECファシリティーズをその他へ移行
- ・社会インフラのテレコムサービス内のNECネッツエスアイをITサービスへ移行
- ・社会インフラのテレコムサービス内の海洋を社会インフラのエアロスペース・ナショナルセキュリティへ移行
- ・その他のグローバルイノベーション内のヘルスケア、コーポレート主管会社内のNECプラットフォームズをITサービスへ移行
その他
海外売上比率:20.6%の7,074億円(前年度:25.5%の8.880億円)
キャッシュフローの状況
- ・営業活動によるキャッシュ・フロー:前年同期比732億円増の3,44億円
投資活動によるキャッシュ・フロー:同551億円減の△1,312億円
フリーキャッシュ・フロー:同180億円増の2,132億円
- ・財務活動によるキャッシュ・フロー:同4,479億円増の△1,040億円
- ・現金及び現金同等物の期末残高:同1,081億円増の5,846億円
資産、負債、資本の状況(2025年3月末)
- ・資産:2024年3月末に対して879億円増の4兆3,154億円
(流動資産は同832億円増の2兆2,214億円、非流動資産は同46億円増の2兆904億円)
- ・負債:同1,059億円増の2兆2,439億円
- ・資本:同180億円減の2兆715億円
親会社所有者帰属持分:同364億円増の1兆9,520億円
親会社所有者帰属持分比率:同0.1ポイント減の45.2%
- ・D/Eレシオ(倍):同0.05ポイント減の0.34
- ・ネットD/Eレシオ(倍):前年同期並みの0.04
2024年度(2025年3月期)の通期決算予想
2025年度(2026年3月期)の通期決算予想は、以下の通りです。
なお、Non-GAAP営業利益は、2025年度を最終年度とする中期経営計画の目標から200億円上方修正して3,200億円としています。
- ・売上収益は、前年度比634億円(1.9%)減の3兆3,600億円
- ・調整後営業利益は、同228億円増の3,100億円(対売上比率:同0.8%増の9.2%)
- ・Non-GAAP営業利益は、同87億円増の3,200億円(対売上比率:同0.4%増の9.5%)
- ・Non-GAAP当期利益は、同43億円増の2,300億円
- ・EBITDAは、同34億円増の4,450億円
セグメント別の業績予想
■ITサービスは増収増益
国内は法人向けPCの販売機能移管に伴う減収も継続的な収益性向上により増益を計画し、海外は収益性向上と前年度一過性費用の剥落により増益を計画しています。
- ・売上収益は、前年度比182億円(0.8%)減の2兆150億円
- ・調整後営業利益は、同259億円増の2,630億円(対売上比率:13.1%)
- ・国内ITサービスの売上収益は前年比0.7%減の1兆7,000億円、調整後営業利益は同96億円増の2,250億円
- ・海外(DG/DF:デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンス)の売上収益は前年比1.8%減の3,150億円、調整後営業利益は同164億円増の380億円
■社会インフラは増収増益
売上収益はANSでのプロジェクトを確実に実行することで増収を計画、調整後営業利益はテレコムサービスの前年度一過性要因の反動による増益を計画しています。
- ・売上収益は、前年度比183億円(1.6%)増の1兆1,600億円
- ・調整後営業利益は、同146億円増の1,000億円(対売上比率:8.6%)
- ・テレコムサービスの売上収益は前年比5.4%減の7,300億円、調整後営業利益は同121億円増の560億円
調整後営業利益は、前年度の一過性要因の反動による増益を計画
- ・ANSの売上収益は前年比16.2%増の4,300億円、調整後営業利益は同25億円増の440億円
獲得済みの案件の確実な実行による売上増・利益増を織り込むと共に、今後の事業機会獲得の為の投資増を計画
■その他は減収増益
- ・売上収益は、前年度比635億円(25.6%)減の1,850億円
- ・調整後営業利益は、同107億円増の△40億円(対売上比率:3.7%)
■調整額
- ・調整後営業利益は、同284億円減の△490億円
参考:電機各社の決算発表
2025.4.28 2024年度通期決算と2025年度通期予想:NEC
2025.4.25 2024年度通期決算と2025年度通期予想:富士通
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富士通の2024年度(2025年3月期)通期決算は増収増益、国内好調で調整後当期利益は過去最高益を記録