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富士通は2025年4月24日、NECは4月28日に、2024年度(2025年3月期)通期決算と2025年度(2026年3月期)通期業績予想を発表しました。
富士通とNECの両社は、国内市場を中心にDXおよびモダナイゼーション商談が力強く伸長しています。
通期の連結決算は、富士通は非継続事業へ分類を変更したデバイスソリューションを除き、NECは日本航空電子工業(JAE)非連結化影響を除くと、両社ともに増収増益となりました。
両社は2025年度(2026年3月期)を最終年度とした中期経営計画を展開しています。
計画達成に向けては、富士通はサービスソリューション事業を重点事業とし、その成長エンジン(事業ブランド)をFujitsu Uvance(2021年10月7日発表)、NECはITサービス事業を重点事業とし、その成長エンジン(事業ブランド)をBluStellar(2024年5月30日発表)に位置付けています。
富士通のFujitsu UvanceとNECのBluStellarともに、中期経営計画の目標を達成する見込みです。
重点事業や成長エンジンに加え、コンサルティングを起点としたアプローチなど、両社は類似した事業構造をしています。
そこで、富士通のFujitsu UvanceとNECのBluStellarの概要、両社の中期経営計画の予想を整理します。
富士通とNECの2024年度通期決算と2025年度通期予想
富士通とNECの2024年度通期決算(連結)は、両社ともに構造改革の影響を除くと増収増益となりました。
- ・富士通は、サービスソリューションの調整後営業利益 2,899億円(前年同期比 22.2%増)、調整後当期利益(連結) 3,073億円(前年同期比 15.8%増)ともに過去最高益を記録
- ・NECは、日本航空電子工業(JAE)非連結化影響を除くと 5.3%増収となり、Non-GAAP営業利益 3,113億円(前年同期比 36.7%増)とNon-GAAP当期利益 2,257億円(前年同期比 26.9%増)は中期経営計画の目標を1年前倒しで達成
■2024年度(2025年3月期)通期決算:富士通
ハードウェアが増収減益、ユビキタスが減収増益となりましたが、国内のDXやモダナイゼーションが牽引したサービスソリューションが増収増益となり、全体累計では前年同期に対して増収増益となりました。
- ・売上収益は、前年同期に対して731億円(2.1%)増の3兆5,501億円
- ・調整後営業利益は、前年同期に対して420億円増の3,073億円
(調整後営業利益率は、前年同期比1.1%改善して8.7%)
- ・親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、前年同期に対して51億円増の2,409億円
富士通のサービスソリューションは増収増益
売上収益が前年同期に対して1,084億円増の2兆2,459億円、調整後営業利益は同527億円増の2,899億円(過去最高益)
国内市場を中心にDXおよびモダナイゼーション商談が力強く伸長し、Fujitsu Uvanceの売上も拡大しました。
- ・売上収益は、国内市場においてDX・モダナイ商談が力強く伸長(国内ビジネス+8%)、海外市場はドイツプライベートクラウド事業カーブアウト影響により減収(海外ビジネス△2%)、Fujitsu Uvanceの売上は前年から31%伸長
- ・調整後営業利益は、増収効果に加えて、採算性も着実に進捗
調整後営業利益率は同1.8%増の12.9%、受注時の採算管理の強化も寄与
■2024年度(2025年3月期)通期決算:NEC
国内および海外ともに好調なITサービス、テレコムサービスの費用効率化などで利益改善した社会インフラの両セグメントが増収増益となったのが貢献しています。
なお、日本航空電子工業(JAE)の非連結化の影響を除くと、売上収益は同5.3%増、Non-GAAP営業利益は989億円増になっています。
- ・売上収益は、前年同期に対して538億円(1.5%)減の3兆4,234億円
- ・調整後営業利益は、前年同期に対して636億円増の2,872億円
(対売上比率は、前年同期比2.0%改善して8.4%)
- ・Non-GAAP営業利益は、前年同期に対して837億円増の3,113億円
(対売上比率は、前年同期比2.5%改善して9.1%)
- ・親会社の所有者に帰属するNon-GAAP当期利益は、前年同期に対して479億円増の2,257億円
NECのITサービスは増収増益
売上収益が前年同期に対して1,192億円(6.2%)増の2兆332億円、調整後営業利益は同530億円増の2,371億円
- ・売上収益は、国内および海外ともに好調に推移して増収(除くNECファシリティーズ:国内+9%)
- ・調整後営業利益は、売上増に加え、国内・海外ともに収益性改善により増益
- ・国内外の構成は以下の通りで、NECファシリティーズを除いた売上収益は前年同期比9%増となりました。
- 国内の売上収益は前年同期比6.2%増の1兆7,125億円、調整後営業利益は同503億円増の2,154億円
- 海外(DG/DF)の売上収益は前年同期比6.4%増の3,207億円、調整後営業利益は同27億円増の216億円
富士通とNECの2025年度通期予想(中期経営計画の最終年度)
富士通とNECの決算資料を参考にしてATY-Japanで作成
2025年度は富士通とNECともに中期経営計画の最終年度となりますが、注力事業である富士通のサービスソリューション事業が増収増益、NECのITサービス事業は減収増益を見込んでいます。
なお、NECの減収は国内法人向けPCの販売機能移管に伴うもので、移管影響を除くと4%の増収となる見込みです。
■2025年度(2026年3月期)通期予想:富士通
2025年度(2026年3月期)の通期決算予想(デバイスソリューションの非継続事業への分類変更後)
- ・売上収益は、前年比1,001億円(2.8%)減の3兆4,500億円
- ・調整後営業利益は、同527億円増の3,600億円
- ・親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、同91億円増の2,500億円
サービスソリューションは増収増益
売上収益が前年同期に対して840億円増の2兆3,300億円、調整後営業利益は同700億円増の3,600億円(売上比 15.5%)
- ・グローバルソリューションは、FujitsuUvanceを中心に売上拡大して、売上収益は同187億円増の5,300億円、調整後営業利益は同213億円増の270億円の見込み
- ・リージョンズ(Japan)は、DX、モダナイゼーション案件が伸張増収効果に加え採算性も引続き向上して、売上収益は同1,195億円増の1兆4,300億円、調整後営業利益は同456億円増の3,060億円の見込み
- ・リージョンズ(海外)は、為替影響による減収に加え、欧州のデマンド減事業ポートフォリオ改革効果により利益改善して、売上収益は同597億円減の5,300億円、調整後営業利益は同30億円増の270億円の見込み
2024年度は、JGG(Japan Global Gateway)や開発基盤活用による標準化/自動化に加え、価値ベースのプライシング戦略を展開しました。
今後の取り組みは、生成AI活用とセキュリティ・AI倫理の両立を図り、グローバルなデリバリー体制の最適化により、全体の収益性を継続的に向上する計画です。
■2025年度(2026年3月期)通期予想:NEC
2025年度を最終年度とする中期経営計画の目標から、Non-GAAP営業利益を200億円上方修正して3,200億円、Non-GAAP当期利益を450億円上方修正して2,300億円としています。
- ・売上収益は、前年度比634億円(1.9%)減の3兆3,600億円
- ・調整後営業利益は、同228億円増の3,100億円(対売上比率:同0.8%増の9.2%)
- ・Non-GAAP営業利益は、同87億円増の3,200億円(対売上比率:同0.4%増の9.5%)
- ・Non-GAAP当期利益は、同43億円増の2,300億円
- ・EBITDAは、同34億円増の4,450億円
ITサービスは減収増益
売上収益が前年同期に対して182億円(0.8%)減の2兆150億円、調整後営業利益は同259億円増の2,630億円(対売上比率:13.1%)
国内は法人向けPCの販売機能移管に伴う減収も継続的な収益性向上により増益を計画し、海外は収益性向上と前年度一過性費用の剥落により増益を計画しています。
- ・国内ITサービスの売上収益は前年比0.7%減の1兆7,000億円、調整後営業利益は同96億円増の2,250億円
(減収は法人向けPC販売機能をNECパーソナルコンピュータに移管したことによるものであるが移管影響を除くと4%の増収、収益性改善により増益の見込み)
- ・海外(DG/DF:デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンス)の売上収益は前年比1.8%減の3,150億円、調整後営業利益は同164億円増の380億円
(2025年度からはDGDFの統括機能を欧州に移転し、成長戦略の一層の加速を図る見込み)
富士通の中期経営計画とFujitsu Uvance
富士通の中期経営計画と決算資料を参考にしてATY-Japanで作成
富士通のFujitsu Uvance
富士通の中期経営計画と決算資料を参考にしてATY-Japanで作成
2023年5月24日に発表した、2025年度を最終年度とする中期経営計画では、Fujitsu Uvanceを成長のドライバーとして、サービスソリューションを中心に全社の収益性拡大を目指しています。
そこで、2025年度の売上収益 7,000億円(2022年度実績:2,000億円、2023年度実績:3,679億円、2024年度実績:4,828億円)を目標にしています。
社会課題を起点として、クロスインダストリーでお客様の成長に貢献するデジタルサービスを提供するとして、社会課題を解決するクロスインダストリー4分野(Vertical)と支える3つのテクノロジー基盤(Horizontal)を定めています。
- ・Vertical:Sustainable Manufacturing、Consumer Experience、Healthy Living 、Trusted Society
- ・Horizontal:Digital Shifts、Business Applications、Hybrid IT
2024年度は、コンサルリードにより商談の質が変化し、標準化率・リカーリング比率が着実に向上したのに加え、GK Softwareなど海外Vertical領域が拡大しました。
今後の取り組みは、コンサルティングビジネスの拡充により、Uvanceの受注拡大に寄与する計画です。
2024年度通期の売上収益は、前年同期に対して31%増の4,828億円(構成比21%)となっています。
- ・2023年度:3,679億円(Vertical:1,163億円、Horizontal:2,515億円)
→ 2024年度:4,828億円(Vertical:1,752億円、Horizontal:3,076億円)
- ・売上構成比は、2023年度:17% → 2024年度:21%
なお、売上収益の年度推移は、以下の通りです。
- ・2022年度(実績):2,000億円、構成比 10%
(V:150億円、H:1,850億円)
- ・2023年度(実績):3,679億円、構成比 17%
(V:1,163億円、H:2,515億円)
- ・2024年度(実績):4,828億円、構成比 21%
(V:対前年比51%増の1,752億円、H:対前年比22%増の3,076億円)
- ・2025年度(予測):7,000億円、構成比 30%
(V:対前年比60%増の2,800億円、H:対前年比37%増の4,200億円)
なお、2030年度に向けては、(Fujitsu Uvanceのような)オファリングのポートフォリオで半分近くを占め、グロスマージン率を拡大していきたいとの考えを明らかにしています。
NECの中期経営計画とBluStellar
NECの中期経営計画と決算資料を参考にしてATY-Japanで作成
NECのBluStellar
NECの中期経営計画と決算資料を参考にしてATY-Japanで作成
NECは、DX事業の進展として、着実にビジネス変革を継続しています。
- ・2019年、DXの基盤づくりとして、DX専任組織の立ち上げ、プラットフォーム構築、DXオファリングの提供開始
- ・2020年、戦略コンサルアプローチとして、DX戦略上流アプローチ、社内DX強化
- ・2021年、グローバルアライアンスとして、Microsoft・AWS・Oracleと協業、DX人材の2025年度目標を10,000人
- ・2022年、DX事業拡大として、NEC Digital Platformへの機能集約、グローバルアライアンスCOE設立
- ・2023年、DX機能一元化として、過去最大規模の組織再編、スピーディなビジネス展開
- ・2024年5月30日、価値創造モデル「BluStellar(ブルーステラ)」を発表
「BluStellarによって、以前から進めてきたDXの取り組みを強化し、新たな価値創造に向けて、お客さまのビジネス変革を加速させ、2025中期経営計画の達成に向けた成長エンジンに位置づけており、DX事業をさらに加速することになる」と位置づけています。
また、構想策定をはじめとしたコンサルティングから、サービスデリバリー、運用、保守に至るまで、すべてのビジネスプロセスにAIをフル活用し、「先端テクノロジーを集約し、AI技術とセキュリティをキーテクノロジーに位置づけて展開する。従来型のSIビジネスから進化し、顧客価値を最大化するValue Driverとなり、NECのDX事業を強化していくことになる」としています。
BluStellar事業は、旧NEC Digital PlatformのBluStellar商材、コンサルビジネス起点ビジネスとで構成しています。
- ・BluStellar商材は、2025年度に向け市況/マーケットBUの状況も踏まえて受注残の積上げを加速し、収益性改善で利益率アップを見込んでいます。
- ・ABeamのビジネス変革における強みとNECの先進テクノロジーの活用における強みを掛け合わせ、新しい価値の創造と既存提供価値の強化を図るとしています。
2024年度は、BluStellar商材の受注が大幅拡大し、お客さまの変革を実現する生成AIのユースケースも拡大しています。
その結果、2024年度は、中期計画の目標を大幅に達成し、調整後営業利益率も2023年度 6.0%に対して2024年度 12.2%と大幅に向上しました。
2025年度は、売上収益は前年比二桁成長を継続し、商材・リソース拡充への投資を増加させつつ利益率改善を計画しています。
なお、売上収益の年度推移は、以下の通りです。
- ・2021年度(実績):1,796億円、調整後営業利益率:△2.3%
(商材 792億円、コンサル 1,004億円)
- ・2022年度(実績):2,376億円、調整後営業利益率:1.6%
(商材 1,107億円、コンサル 1,269億円)
- ・2023年度(実績):3,758億円、調整後営業利益率:6.0%
(商材 2,261億円、コンサル 1,497億円)
- ・2024年度(実績):5,424億円、調整後営業利益率:12.2%
(売上収益の対前年比:44.3%増)
- ・2025年度(予測):6,240億円、調整後営業利益率:13.2%
(売上収益の対前年比:15.0%増)
参考
中期経営計画について(PDF) | 富士通 株式会社(2023年5月24日発表)
Fujitsu Uvance | 富士通
「Fujitsu Uvance」ビジネスについてのメディア向け説明会 | 富士通(YouTube)
IR Day 2024 Opening Remarks(PDF) | 富士通 株式会社(2024年9月10日発表)
IR Day 2024 Fujitsu Uvanceの成長(PDF) | 富士通 株式会社(2024年9月10日発表)
2025中期経営計画(PDF) | 日本電気 株式会社(2021年5月12日発表)
BluStellar(ブルーステラ) | NEC
新ブランド「BluStellar」発表!NEC DX事業戦略説明会2024 ダイジェスト | NEC(YouTube)
IR Day 2024 ITサービス(PDF) | 日本電気 株式会社(2024年10月7日発表)
IR Day 2024 BluStellar(PDF) | 日本電気 株式会社(2024年10月7日発表)
関連情報(当サイト)
2025.4.30 富士通とNECの中期経営計画の予想
2025.4.28 2024年度通期決算と2025年度通期予想:NEC
2025.4.25 2024年度通期決算と2025年度通期予想:富士通
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