富士通とNECの中期経営計画と進捗状況 | 成長エンジンの富士通のFujitsu UvanceとNECのBluStellar

富士通とNECの中期経営計画と進捗状況 | 成長エンジンの富士通のFujitsu UvanceとNECのBluStellar

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富士通とNECの中期経営計画

富士通は10月31日、NECは10月29日に、2024年度(2025年3月期)第2四半期決算(2024年4月1日~9月30日)と通期業績予想を発表しました。

また、富士通は9月10日、NECは10月7日に、IR Dayを開催して、事業の進捗状況を明らかにしています。

富士通とNECの両社は、国内市場を中心にDXおよびモダナイゼーション商談が力強く伸長し、2024年度も好調に推移しています。

両社ともに、2025年度(2026年3月期)を最終年度とした中期経営計画を展開しています。

計画達成に向けた重点事業として、富士通はサービスソリューション事業、NECはITサービス事業、その成長エンジン(事業ブランド)として、富士通はFujitsu Uvance(2021年10月7日発表)、NECはBluStellar(2024年5月30日発表)を位置付けています。

重点事業や成長エンジンに加え、コンサルティングを起点としたアプローチなど、両社は類似した事業構造をしています。

そこで、富士通のFujitsu UvanceとNECのBluStellarの概要、両社の中期経営計画の進捗状況を整理します。

富士通とNECの2024年度第2四半期と通期予想

富士通とNECの2024年度第2四半期決算は、両社ともに全体では減収増益となりました。

前年同期に対する売上収益の減少は、主に以下の要因が影響しています。

  • ・富士通は、ハードウェアとユビキタスが減収が影響
  • ・NECは、日本航空電子工業(JAE)の非連結化が影響

しかし、重点事業である富士通のサービスソリューション事業とNECのITサービス事業は、国内を中心としたDXやモダナイゼーションが好調で、ともに増収増益となっています。

■2024年度第2四半期:富士通のサービスソリューションは増収増益

売上収益が前年同期比333億円増の1兆175億円、調整後営業利益は同252億円増の887億円

国内市場を中心にDXおよびモダナイゼーション商談が力強く伸長し、また、Fujitsu Uvanceの売り上げが拡大したとしています。

  • ・売上収益は、国内市場においてDX・モダナイ商談が力強く伸長(国内ビジネス+7%)、海外市場はドイツプライベートクラウド事業カーブアウト影響により減収(海外ビジネス△4%)、Fujitsu Uvanceの売上は前年から31%伸長
  • ・調整後営業利益は、増収効果に加えて、採算性も着実に進捗
    調整後営業利益率は同2.3%増の8.7%、受注時の採算管理の強化も寄与
■2024年度第2四半期:NECのITサービスは増収増益

売上収益は前年同期に対して475億円(5.6%)増の8,906億円、調整後営業利益は前年同期から92億円増の564億円

全体的に旺盛な需要が継続して足元での受注環境は好調で、年間目標の達成に向けて着実に案件を積み上げており、今後に向けてもリスクはないとしています。

  • ・売上収益は、国内および海外ともに好調に推移して増収
  • ・調整後営業利益は、国内の売上増や海外でのAvaloqを中心とした利益改善により増益
富士通とNECの2024年度通期予想

富士通とNECの2024年度通期予想と中期経営計画目標

富士通とNECの決算資料を参考にしてATY-Japanで作成

2024年度通期予想は、富士通とNECともに前回予想を据え置いており、注力事業である富士通のサービスソリューション事業とNECのITサービス事業ともに増収増益を見込んでいます。

なお、富士通は、調整前では上期の営業利益調整項目を織り込んで約△200億円、当期利益で△140億円下方修正しています。

営業利益の調整項目の主な内容は、ポスティング・リスキル・外部転進などによる人材最適配置と生産性向上を加速するため、間接部門の幹部社員を対象に期間を限定して「セルフ・プロデュース支援制度」を拡充することによるとしています。

■2024年度予想:富士通のサービスソリューションは増収増益

売上収益は前年比924億円増の2兆2,300億円、調整後営業利益は同428億円増の2,800億円(対売上比率:12.6%)

  • ・グローバルリューション
    Fujitsu Uvance を中心に増収増益を見込んで、売上収益は前年比496億円増の5,300億円、調整後営業利益は同62億円増の200億円
  • ・リージョンズ(Japan)
    売上収益はFujitsu Uvance、コンサルティング、モダナイゼーション中心に増収を見込んで、前年比1,078億円増の1兆3,700億円、調整後営業利益はコンサルティングケイパビリティ拡大に積極投資するも、継続して生産性向上して、同268億円増の2,400億円
  • ・リージョンズ(海外)
    売上収益は前年比641億円減の5,400億円、調整後営業利益はトランスフォーメーションによる採算性改善効果を確実に実現して、同96億円増の200億円
■2024年度予想:NECのITサービスは増収増益

国内は高水準であった23年度から更なる成長を計画し、海外はAvaloqでの利益成長を織り込んでいます。

売上収益は前年度比360億円(1.9%)増の1兆9,500億円、調整後営業利益は同79億円増の1,920億円(対売上比率:9.8%)

  • ・国内ITサービスの売上収益は前年比2.3%増の1兆6,500億円、調整後営業利益は同29億円増の1,680億円
  • ・海外(DG/DF:デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンス)の売上収益は前年比0.5%減の3,000億円、調整後営業利益は同50億円増の240億円
  • ・Avaloqは、BlackRockとの戦略的パートナーシップの成果やNECのルートを活用したAPACでのビジネス拡大、クラウドによる費用効率化、オフショア化の移行加速で利益率向上を計画
    2022年度の利益率:7%→2023年度:11%→2024年度:14%(売上成長:10%)→2025年度:20%

富士通の中期経営計画とFujitsu Uvance

富士通の中期経営計画

富士通の中期経営計画と決算資料を参考にしてATY-Japanで作成

富士通のFujitsu Uvance

富士通のFujitsu Uvance

富士通の中期経営計画と決算資料を参考にしてATY-Japanで作成

2023年5月24日に発表した、2025年度を最終年度とする中期経営計画では、Fujitsu Uvanceを成長のドライバーとして、サービスソリューションを中心に全社の収益性拡大を目指すとして、2025年度の売上収益 7,000億円(2022年度実績:2,000億円、2023年度実績:3,679億円)を目標にしています。

社会課題を起点として、クロスインダストリーでお客様の成長に貢献するデジタルサービスを提供するとして、社会課題を解決するクロスインダストリー4分野(Vertical)と支える3つのテクノロジー基盤(Horizontal)を定めています。

  • ・Vertical:Sustainable Manufacturing、Consumer Experience、Healthy Living 、Trusted Society
  • ・Horizontal:Digital Shifts、Business Applications、Hybrid IT

2024年度第2四半期の売上収益は、前年同期に対して31%増の2,007億円(構成比20%)となっています。

  • ・2023年度2Q:1,537億円(Vertical:328億円、Horizontal:1,208億円)
    → 2024年度2Q:2007億円(Vertical:632億円、Horizontal:1,375億円)
  • ・売上構成比は、2023年度2Q:16% → 2024年度2Q:20%

なお、売上収益の年度予測は、以下の通りとしています。

  • ・2022年度(実績):2,000億円(V 150億円、H 1,850億円)、構成比 10%
  • ・2023年度(実績):3,679億円(V 1,163億円、H 2,515億円)、構成比 17%
  • ・2024年度(予測):4,500億円(V 1,800億円、H 2,700億円)、構成比 20%
  • ・2025年度(予測):7,000億円(V 4,000億円、H 3,000億円)、構成比 30%

2030年度に向けては、半分近いものを、(Fujitsu Uvanceのような)オファリングのポートフォリオで占め、グロスマージン率を拡大していきたいとの考えを明らかにしています。

NECの中期経営計画とBluStellar

NECの中期経営計画

NECの中期経営計画と決算資料を参考にしてATY-Japanで作成

NECのBluStellar

NECのBluStellar

NECの中期経営計画と決算資料を参考にしてATY-Japanで作成

NECは、DX事業の進展として、着実にビジネス変革を継続してきたとしています。

  • ・2019年、DXの基盤づくりとして、DX専任組織の立ち上げ、プラットフォーム構築、DXオファリングの提供開始
  • ・2020年、戦略コンサルアプローチとして、DX戦略上流アプローチ、社内DX強化
  • ・2021年、グローバルアライアンスとして、Microsoft・AWS・Oracleと協業、DX人材の2025年度目標を10,000人
  • ・2022年、DX事業拡大として、NEC Digital Platformへの機能集約、グローバルアライアンスCOE設立
  • ・2023年、DX機能一元化として、過去最大規模の組織再編、スピーディなビジネス展開

そして2024年5月30日、価値創造モデル「BluStellar(ブルーステラ)」を発表しています。

「BluStellarによって、以前から進めてきたDXの取り組みを強化し、新たな価値創造に向けて、お客さまのビジネス変革を加速させ、2025中期経営計画の達成に向けた成長エンジンに位置づけており、DX事業をさらに加速することになる」と位置づけています。

また、構想策定をはじめとしたコンサルティングから、サービスデリバリー、運用、保守に至るまで、すべてのビジネスプロセスにAIをフル活用し、「先端テクノロジーを集約し、AI技術とセキュリティをキーテクノロジーに位置づけて展開する。従来型のSIビジネスから進化し、顧客価値を最大化するValue Driverとなり、NECのDX事業を強化していくことになる」としています。

BluStellar事業は、旧NEC Digital PlatformのBluStellar商材、コンサルビジネス起点ビジネスとで構成しています。

  • ・BluStellar商材は、2024年度は見通し順調で、2025年度に向け市況/マーケットBUの状況も踏まえて受注残の積上げを加速し、収益性改善で利益率アップ(2025年度目標の調整後営業利益率:10.7%)を見込んでいます。
  • ・ABeamのビジネス変革における強みとNECの先進テクノロジーの活用における強みを掛け合わせ、新しい価値の創造と既存提供価値の強化を図るとしています。

2024年度第2四半期は、BluStellar商材の受注は前年度比+40%となり大幅拡大

  • ・エンタープライズだけでなくパブリックでの大型案件もあり拡大
  • ・先行するエンタープライズに加え、パブリック向けにも業種に特化した価値創造シナリオを拡充予定
  • ・モダナイゼーション案件を中心に、AI/セキュリティ商材を活用した高収益案件も拡充

お客さまの変革を実現する生成AIのユースケース拡大

  • ・生成AIと音声認識を搭載したコンタクトセンター向けプラットフォームを9月より提供開始
  • ・安心・安全なお客さまの生成AI活用を実現するハルシネーション対策機能を10月より提供開始

なお、売上収益の年度予測は、以下の通りとしています。

  • ・2021年度(実績):1,796億円(商材 792億円、コンサル 1,004億円)
  • ・2022年度(実績):2,376億円(商材 1,107億円、コンサル 1,269億円)
  • ・2023年度(予測):3,758億円(商材 2,261億円、コンサル 1,497億円)
  • ・2024年度(予測):4,265億円(商材 2,745億円、コンサル 1,520億円)
  • ・2025年度(予測):4,935億円(商材 3,285億円、コンサル 1,650億円)

参考

中期経営計画について(PDF) | 富士通 株式会社(2023年5月24日発表)

Fujitsu Uvance | 富士通

「Fujitsu Uvance」ビジネスについてのメディア向け説明会 | 富士通(YouTube)

IR Day 2024 Opening Remarks(PDF) | 富士通 株式会社(2024年9月10日発表)

IR Day 2024 Fujitsu Uvanceの成長(PDF) | 富士通 株式会社(2024年9月10日発表)

2025中期経営計画(PDF) | 日本電気 株式会社(2021年5月12日発表)

BluStellar(ブルーステラ) | NEC

新ブランド「BluStellar」発表!NEC DX事業戦略説明会2024 ダイジェスト | NEC(YouTube)

IR Day 2024 ITサービス(PDF) | 日本電気 株式会社(2024年10月7日発表)

IR Day 2024 BluStellar(PDF) | 日本電気 株式会社(2024年10月7日発表)

関連情報(当サイト)

電機とITの決算

2024.11.02 富士通とNECの中期経営計画と進捗状況

2024.10.31 2024年度第2四半期決算と通期予想:富士通

2024.10.29 2024年度第2四半期決算と通期予想:NEC

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