このページ内の目次
レベニューオペレーション(RevOps)の教科書 部門間のデータ連携を図り収益を最大化する米国発の新常識
川上 エリカ (著)、丸井 達郎 (著)、廣崎 依久 (著)
出版社:翔泳社 (2024/9/25)
Amazon.co.jp:レベニューオペレーションの教科書
-
Amazon、Microsoft、Googleでも採用されている世界標準の協業プロセス
顧客体験と経営判断の質を向上させる最適解
GTM戦略のブラッシュアップ|顧客ライフサイクルの統合管理|業績予測と目標管理の支援
本書は、デジタル推進に関するコンサルティングサービスを提供する企業の代表取締役らが、レベニューオペレーション(Revenue Operations:RevOps)の実践について解説した一冊です。
レベニューオペレーション(RevOps)とは、企業のレベニュー組織(マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセス)のプロセス・データをシステムで統合・最適化して持続的な収益成長を目指す概念・役割のことで、米国では6割を超える大手企業がこの専門チームを持つほど普及しているそうです。
RevOpsに関する豊富な知識と実績を持った著者らが詳細に解説していますので、ビジネスリーダーの方々が自社でRevOpsを推進していくうえでのガイドとなります。
本書は8章で構成しており、レベニューオペレーション(RevOps)の役割や体制づくりから、人材確保の方法、収益管理に最適なツールの選定、意思決定を助けるレベニュープロセスの構築とフォーキャスト(業績予測)の精度の高め方、イネーブルメント(組織の強化・改善ための取り組み)、AI活用法までを具体的に解説しています。
- ・第1章では、RevOpsの役割を明確にしたうえで、レベニュー組織間の連携強化、データドリブンな戦略的意思決定プロセスの構築、RevOpsの中心は顧客であり一貫性のある顧客体験構築の必要性に加え、AIを最大限活用するための方法を解説しています。
- ・第2章では、CRO(Chief Revenue Officer)とレベニュー組織が担う役割について解説しています。
RevOpsを束ねるCROの重要性と役割、CROのスキルセットやキャリアパスを明らかにし、レベニュー組織を取り巻くトレンドを紹介しています。
- ・第3章では、レベニュー組織における各部門のオペレーション部門の役割を紹介しています。
マーケティングオペレーション(Marketing Operations:MOps)、セールスオペレーション(Sales Operations:SaleOps)、カスタマーサクセス(Customer Success Operations:CSOps)が担う役割と全体像を詳細に解説し、部門横断的に顧客像を可視化するための方法を示しています。
- ・第4章では、RevOps組織を立ち上げる際の進め方を解説しています。
RevOpsが担う役割の全体像を定義し、RevOps組織モデル、ガバナンスモデルの設計、RevOps人材確保と育成について解説しています。
- ・第5章では、データドリブンな意思決定プロセスを構築する方法について解説しています。
データドリブンを阻害する要因を明らかにしたうえで、レベニュープロセスと見るべき指標、データによる意思決定における重要な要素の一つであるフォーキャストマネジメント(業績予想管理)について解説しています。
- ・第6章では、RevOpsを実践していく方法を解説しています。
RevOpsマチュリティレベル(成熟度)で現状を整理・理解することから始め、レベニュープロセス全体の生産性向上を目的としたレベニューイネーブルメント、経営判断の速度と精度を向上させるフォーキャストの実践を解説したうえで、大企業と中小企業にけるRevOpsの取り組み方を紹介しています。
- ・第7章では、現在レベニュー組織で使われているAIのユースケースや今後期待されるAIの活用方法を紹介しています。
レベニュー組織でのAI活用ケースや展望、AIを活用する価値はあるもののセキュリティやガバナンスの重要性を解説し、日本企業に対する取り組みを提言しています。
- ・第8章では、レベニューリーダー3名のインタビューを紹介しています。
RevOpsの役割や重要ポイント、AIの効果的な活用、RevOpsチームを立ち上げる際のアドバイスなど、それぞれの立場と視点からのインタビューを紹介しています。
RevOpsは戦略であり戦術でもあります。
すべての企業に当てはまる一律の型があるわけではありません。
しかし、戦術を理解せずにやみくもにサッカーをプレーしても、勝率を高めるには多くの時間と労力を必要とするように、標準化された方法論を知らずにレベニュー組織の生産性を向上させようとするのは、非効率で高コストな取り組みになってしまいます。
変化の多い時代において、付加価値の高い領域で競合優位性を発揮するためにも、標準的なオペレーションモデルを理解することには大きな意味があります。
レベニューオペレーション(RevOps)
レベニューオペレーション(Revenue Operations:RevOps)は、持続的な成長を実現するためにレベニュー組織の協業プロセスを強化し、戦略や戦術面で生産性向上を支援する方法論であり役割である。
信頼できるデータにもとづいた一貫性のある活動をレベニュー組織が実践することによって、顧客の信頼を得てビジネス成長を加速させることができる。
プロセス・データ・テクノロジーを統合管理することで、サイロ化を解消し、本質的な部門横断的連携が実現できる。
デジタルの活用が加速し顧客の購買行動はさらに複雑化する中で、さまざまな部門で情報を共有する重要性は高まり続けている。
レベニューオペレーション(RevOps)はレベニュー組織を支えるオペレーション部門であり、CRO(Chief Revenue Officer)はRevOpsチームを含めてレベニュー組織全体を統括し、収益成長を推進する責任を持つ。
CROの設置は、レベニュー組織のサイロ化や対立構造を排除して統合し、企業全体としてのレベニュー戦略を統一するためには不可欠である。
成長のための統合的な戦略をCRO主導で立案し、実行に移す責任を担い、部門間のシナジーを最大化する。
CROの視点は、単なる売上の増加だけではなく、企業全体の収益性と成長戦略に関連したものであり、顧客体験の向上やLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の向上のための仕組み構築など、収益を生み出すすべての要素に関連している。
CRO(Chief Revenue Officer)の役割
- ・収益成長の戦略立案
データドリブンによるGTM戦略(Go To Market戦略、市場開拓戦略)を立案し、短期と中期の収益目標を設定し、それを達成するための具体的なアクションプランを策定する。
- ・顧客ライフサイクルの統合管理
マーケティング、営業、カスタマーサクセスの各部門を統括し、リード獲得から営業の受注、受注後の顧客満足度の向上と継続までの顧客ライフサイクル全体をマネジメントし、収益を最大化する。
- ・フォーキャスト(業績予測)と目標設定
過去データや市場動向をもとにして、将来の収益や受注を予測し、現実的かつ挑戦的な目標を設定する。
RevOpsを構成する要素
『レベニューオペレーション(RevOps)の教科書』を参考にしてATY-Japanで作成
GTM(Go To Market)モデルは、以下を総称したものである。
- ・PLG(Product Led Growth):製品自体でユーザーを拡大し、収益を伸ばす事業戦略に注目
- ・SLG(Sales Led Growth):営業中心に売上を拡大する組織
- ・MLG(Marketing Led Growth):マーケティング中心に売上を拡大する組織
前提はGTM戦略(Go To Market戦略、市場開拓戦略)実現を支えるための要素であり、その戦略を意思決定するための支援も実施する。
オペレーションマネジメント
- ・レベニュープロセスの最適化と効率化を実現する。
- ・プロセス設計・標準化によって、レベニュー組織の業務効率を向上させ、人材・時間・コストなどを効率的に配分し、最大の効果を発揮できるように支援する。
- ・KPI目標を設定し定期的に評価やフィードバックをして、リソースやパフォーマンスを管理・改善する。
レベニューイネーブルメント
- ・収益向上のためにフィールド組織の能力を最大限に引き出す。
- ・トレーニングプログラムの開発、コーチング、コンテンツの提供・整備、テクノロジーの導入や利活用促進、インセンティブの設計などのトレーニングや教育全般を担う。
- ・戦略上重要な活動に焦点を当てて行動できるようなインセンティブ設計を、CRO(Chief Revenue Officer)やファイナンス部門と連携して実施する。
レベニューテクノロジー(Revenue Technology:RevTech)マネジメント
- ・フィールド組織が効果的に連携し、データを活用するためのテクノロジーの導入、統合、維持管理を担う。
- ・GTM戦略実現に向けてテクノロジーを選択し、そのテクノロジーの能力を最大限発揮できるように構築やワークフローの自動化、他システムとを統合する。
- ・自動化に適した領域や新技術の活用領域を特定し、より効率的で合理的なオペレーションに進化させる。
データマネジメント・インサイト
- ・CROやフィールド組織にビジネス判断をサポートする情報を収集し提供する。
- ・各部門や顧客から収集したデータを整理し一元的に管理し、定量的な分析と定性的な分析の両方を行い、トレンドやパターンを見つけ出す。
- ・分析結果をレポートとしてまとめ、各関係者に戦略や施策を提案し、データにもとづく意思決定を促す。
RevOpsはこれからの時代において、レベニュー組織が顧客に価値提供し成長していくために不可欠なコンセプトです。
そしてAI活用など最先端のテクノロジーの進化は想像を超えるスピードで展開しており、戦略実現に向けたRevOpsの担う役割には今後もますます期待が高まっていくでしょう。
まとめ(私見)
本書は、レベニューオペレーション(Revenue Operations:RevOps)について解説した一冊です。
レベニューオペレーション(RevOps)の役割や体制づくりから、人材確保の方法、収益管理に最適なツールの選定、意思決定を助けるレベニュープロセスの構築とフォーキャスト(業績予測)の精度の高め方、イネーブルメント(組織の強化・改善ための取り組み)、AI活用法までを詳細に解説しています。
レベニューオペレーション(Revenue Operations:RevOps)は、ビジネス目標達成に向けて、GTM戦略(Go To Market戦略、市場開拓戦略)の立案、レベニューの組織デザインやステークホルダー管理、リソースの優先度の決定、それに基づいたレベニューモデルの構築を行うものです。
なお、RevOpsは企業規模問わずどのようなビジネスにも有効であるとして、その取り組みついて大企業と中小企業に分けて解説しています。
さらに、近年ビジネスに大きく影響を及ぼし始めているAI活用について、現在レベニュー組織で使われているAIのユースケースや今後期待されているAIの活用方法を詳細に紹介しています。
ビジネスリーダーの方々が自社でRevOpsを推進し、プロセス・データをシステムで統合・最適化することで持続的な収益成長を目指すためのガイドとなります。
著者らは、『ザ・モデル THE MODEL(MarkeZine BOOKS) マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』(福田 康隆、翔泳社、2019年1月)を誤解した相談を受けてきたとしています。
レベニュー組織の連携強化の第一歩は、責任範囲を明確にし役割を分けた分業型の組織(機能別組織)がバラバラのゴールを見据えて活動するのではなく、オペレーションモデルを理解したうえで共通のゴールを意識した組織設計にすることであると強調しています。
ゴールは「売上目標」「売上総利益」「新規の受注金額」などの収益に寄与するもので、それらをレベニュー組織全体で意識し、各部門がゴール達成のために目指すべき目標の数値を合意するというものです。
レベニュー組織には、短期的に売上を上げるだけではなく、持続的な成長を達成し、競争力を維持するための戦略と実行力が求められます。
そのためには、ビジョンと戦略を明確にし、組織全体が共通する長期的な目標や方向性を認識し、各部門が同じ方向へ一致団結して尽力しなければなりません。
経営陣の支援のもとで、成長のための統合的な戦略を立案・推進するCRO(Chief Revenue Officer)と、そのパートナーとしてのレベニューオペレーションは重要な役割を担うことになります。
レベニューオペレーション(RevOps)は、効率的な規模拡大と成長を目指す企業にとって不可欠なものとなっていると主張しています。
ビジネスが拡大するにつれ、セールスプロセスやGTM(Go To Market、市場開拓)の動きは以前よりも複雑化してきているため、業務の合理化、生産性の向上、成長の促進を実現するRevOpsが出番となります。
そのうえで、レベニュー・オペレーション(RevOps)の重要性は、以下をあげています。
- ・データドリブンな意思決定を可能にする。
- ・セールスの生産性を向上する。
- ・コンバージョンレートを向上する。
- ・各指標を可視化する。
- ・ビジネスゴールのためにレベニュー組織を連携する。
なお、既存企業では、その歴史の中で最適化してきた業務プロセスがあり、個々の部門独自に累積的に進化してきています。
その既存の機能別組織を顧客起点からデザインし直し、プロセス・データを統合・最適化して、全社で共通のゴールを目指す必要があることは理解できます。
それを実現するためには、やはりトップのリーダーシップにかかっています。
オペレーションモデルの標準化が可能な領域を徹底して標準化し、付加価値の高い領域にリソースを投入することで企業価値向上につながります。
本書は、オペレーションモデルを理解したうえで共通のゴールを意識した組織設計であるレベニュー組織を構築し、RevOpsを推進して持続的な収益成長を目指すうえでのガイドとなる一冊です。
目次
はじめに
序章 注目されるRevOps(レベニューオペレーション)
01 持続的な収益成長を実現する重要な鍵
02 個の力から、専門性の高い協業組織モデルへ
03 分断するマーケティング・営業・カスタマーサクセス
04 アマゾン、グーグル、マイクロソフトでも採用されるRevOpsチーム
第1章 収益拡大を実現するRevOpsの価値
01 コラボレーションを強化し収益成長を実現
02 共通の目標達成を目指すレベニュー組織間の連携強化
03 ファイナンスにも影響を与えるデータドリブンな戦略的意思決定プロセスの構築
04 シームレスかつ一貫性のある顧客体験の構築
05 データ・テクノロジーの一元管理による生産性向上
06 新しい技術への適用、生成AI活用の促進
第2章 CROとレベニュー組織が担う役割
01 収益最大化において重要性を増すCROの役割
02 CROのスキルセットとキャリアパス
03 CROの戦略的パートナーであるRevOps
04 レベニュー組織のトレンド
インタビュー:日本のレベニュー組織で進む変革とその未来
── ジャパン・クラウド・コンサルティング株式会社 福田 康隆
第3章 RevOpsが統合するプロセス・データ・テクノロジー
01 BigOpsコンセプトとは?
02 MOpsが担う役割の全体像
03 SalesOpsが担う役割の全体像
04 CSOpsが担う役割の全体像
05 部門横断的に顧客像を可視化するには
インタビュー:RevTech紹介①
顧客体験向上の鍵は部門間データ統合
── クリエイティブサーベイ株式会社 石野真吾
第4章 RevOps専門組織を設立する
01 ビジョンと目標に沿ってRevOpsが担う役割の全体像を定義
02 RevOps組織モデル
03 ガバナンスモデルの設計
04 RevOps人材をどのように獲得する?
05 オンボーディングプログラムの開発
06 コミュニケーションプランの策定
インタビュー:チェンジマネジメントで効果的なカスタマーサクセス戦略とオペレーションを実現
── シーメンス ギソ・ファン・デル・ハイデ
第5章 データドリブンな意思決定プロセスを構築する
01 うまくいかないデータドリブンな意思決定
02 レベニュープロセスと見るべき指標
03 ケーススタディ
04 レベニュー組織のデータドリブンの肝であるフォーキャスト
インタビュー:RevTech紹介②
競争優位性を高めるレベニュードライバーとしてのカスタマーサクセス
── Gainsight株式会社 絹村 悠
第6章 RevOpsの実践
01 戦略実現のためのテクノロジースタックデザイン
02 複雑化する購買プロセスを支えるレベニューイネーブルメント
03 経営判断の速度と精度を向上させるフォーキャストの実践
04 RevOpsの取り組み方
05 企業の組織規模や事業フェーズによる取り組み方
06 レベニューイネーブルメントの重要性
インタビュー:RevOpsプロフェッショナルをつなぐコミュニティ
── RevOps Co-op(レブオップス・コープ) マシュー・ヴォルム
第7章 AI時代に向けてますます重要性が高まるRevOps
01 現在のレベニュー組織におけるAI活用
02 レベニュー組織でのAI活用ケース
03 レベニュー組織におけるAI活用の展望
04 AI時代におけるRevOpsの価値
05 日本企業が機会を損失し続けた20年とその原因
インタビュー:エクスペリエンスデザインから始めるRevOps
── ソフトバンク株式会社 山田 泰志
第8章 レベニューリーダーズのインタビュー
01 AI駆動のRevOpsプラットフォームで信頼、透明性、フォーキャスト応力を実現
── Clari(クラリ) ケビン・クニエリアム
02 大企業に必要不可欠なスケーラブルなRevOps構築
── Openprise(オープンプライズ) エド・キング
03 データドリブンなレベニュー組織管理が企業にもたらすビジネスの可視性
── Xactly(エグザクトリー) アーナブ・ミシュラ
おわりに
参考
レベニューオペレーション(RevOps)の教科書 部門間のデータ連携を図り収益を最大化する米国発の新常識|翔泳社の本
enhamp(エンハンプ)|成長しつづけるレベニュー組織へ
売上成長に不可欠なレベニューオペレーション(RevOps):前編|enhamp(エンハンプ)
売上成長に不可欠なレベニューオペレーション(RevOps):後編|enhamp(エンハンプ)
01GROWTH (ゼロワングロース)|世界標準のマーケティング組織へ
ゼロワングロース、『レベニューオペレーション(RevOps)の教科書 部門間のデータ連携を図り収益を最大化する米国発の新常識』を9月25日に発売| 01GROWTH(ゼロワングロース)
The B2B Buying Journey : Key Stages and How to Optimize Them
関係する書籍(当サイト)
-
The Intelligent Sales
AIを活用した最速・最良でクリエイティブな営業プロセス
今井 晶也(著)
出版社:翔泳社 (2024/4/25)
Amazon.co.jp:The Intelligent Sales -
ザ・モデル THE MODEL(MarkeZine BOOKS)
マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス
福田 康隆(著)
出版社:翔泳社(2019/1/30)
Amazon.co.jp:ザ・モデル(THE MODEL)
レベニューオペレーション(RevOps)の教科書
-
レベニューオペレーション(RevOps)の教科書
部門間のデータ連携を図り収益を最大化する米国発の新常識
川上 エリカ (著)、丸井 達郎 (著)、廣崎 依久 (著)
出版社:翔泳社 (2024/9/25)
Amazon.co.jp:レベニューオペレーションの教科書
関連記事
前へ
富士通とNECの中期経営計画と進捗状況 | 成長エンジンの富士通のFujitsu UvanceとNECのBluStellar