書籍 生成AI活用の最前線 | バーナード・マー(著)

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生成AI活用の最前線 世界の企業はどのようにしてビジネスで成果を出しているのか

バーナード・マー(著)、株式会社クニエ デジタルトランスフォーメーション担当、NTTデータ・コンサルティング・イニシアティブ(翻訳)
出版社:東洋経済新報社 (2025/3/5)
Amazon.co.jp:生成AI活用の最前線

  • 世界の企業はどのようにしてビジネスで成果を出しているのか

    AI活用の世界的権威バーナード・マー氏による100以上の事例に基づくインサイト

本書は、ビジネスおよびテクノロジー分野における世界的に著名な未来学者、インフルエンサー、そして思想的リーダーの著者が、さまざまな分野における生成AIの実践的なアプリケーションや応用に焦点を当てて解説した一冊です。

そして、デジタルテクノロジーによって顧客ビジネスの変革と成長を支援する株式会社クニエ、NTTデータグループのコンサルタントが、日本語版の解説として生成AIの原理や実践導入のノウハウを付け加えています。

生成AIを解明し、進化の軌跡を辿ったうえで、企業や組織がどのようにこのテクノロジーを活用しているかを詳細に解説していますので、ビジネスリーダーの方々が自らの事業や組織に適した潜在的および戦略的な活用を立案するうえで大変参考になります。

本書は3部19章で構成しており、生成AIの解明と進化の軌跡、ビジネスエコシステムへの影響、リスクと管理すべき課題を整理し、さまざまな業界における生成AIの活用事例を紹介したうえで、進化の未来を解説しています。

第1部は、生成AIの概要と仕組みを解明し、世界やビジネスの在り方をどう変えるか、個人や仕事に与える影響に加え、発生し得るリスクとその対処法を解説しています。

  • ・生成AIの内部を掘り下げて仕組みを解明し、概念を初めて提唱した1950年代から現在に至るまでの生成AIの進化の軌跡を辿っています。
  • ・生成AIが急速に進化してビジネスや日常生活にどのようにインパクトを与えているのかを俯瞰し、生成AIの活用にあたっての多面的かつ複雑なリスク、管理すべき4つの課題を解説しています。
  • ・生成AIによってどのような職種がリスクに晒されているのか、そしてどの分野で新しい雇用機会が生まれるのかを考察しています。

第2部は、さまざまな業界における生成AIの活用事例を紹介し、そこから得られる教訓を解説しています。

  • ・メディアとエンターテイメント、広告とマーケティング、顧客エンゲージメント、小売業、教育、医療、ビデオゲーム、法律分野、銀行業と金融サービス、プログラミングなどの特定の分野に焦点を当てて、生成AIが実際にどのように使われているのか事例を紹介しています。
  • ・あらゆるビジネスが生成AIを活用して顧客とつながり、新しい製品やサービスを市場に投入することで、業務を効率化する方法を提示しています。
  • ・生成AIが業界にどのように変革を及ぼし将来どのように進化していきそうかを予想し、さらに生成AIを活用していくために必要なスキル、人間の役割などについて考察しています。

第3部は、生成AIを企業や組織に導入する際に重要となる成功要因に加え、生成AIの進化の未来について解説しています。

  • ・ビジネスで生成AIを活用することにより、製品やサービスの向上、プロセスの強化などに役立てるためのヒントを紹介しています。
  • ・生成AIを成功裏に導入するためには、文化やマインドセットの変革、AI委任スキルの習得、データ戦略の立案、適切なテクノロジー(3つの基本要素)の導入に加え、戦略的なアプローチをとることの重要性を説いています。
  • ・マルチモーダルAIやインタラクティブAI、ロボットとの組み合わせ、ユーザーインターフェースなど、生成AIの未来に関する予測を探るとともに、そこにはリスクや克服すべき課題があることも警告しています。

ご存知の通り、チャットGPTのような生成AIツールに対する注目、盛り上がりは相当なものだ。

本書を手に取った理由も、そんなことよりも生成AIが一体何なのかを理解したいからだろう。

果たして生成AIは世間が注目、大騒ぎをするほどのものなのか?

あなたの今の仕事にどのような影響を及ぼすのか?

あなたの会社や組織はこのテクノロジーを活用すべきなのか?

生成AIの解明

AIは、学習、意思決定、問題解決といった人間の認知プロセスを効果的にシミュレーションできるコンピューターアルゴリズムを指す。

生成AIは、AIの中でも最先端の画期的な分野であり、既存のデータから学んだパターンや構造に基づいて新しいコンテンツを生成する能力を持つ。

  • ・通常のAIと同様に、生成AIツールは膨大な量のデータから学習する。
  • ・学習データから得たパターンやルールを用いて、学習データに類似しているが、まったく同じではない新しいコンテンツを作り出すことができる。

生成AIは独立して存在するのではなく、さまざまな他のテクノロジーと相互に作用しながら影響を与え、また影響を受けることで、技術進化のスピードが一層増している。

生成AIはすべてのビジネス分野、さらには社会全体に影響を及ぼす。

  • ・企業においては、製品やサービスの強化や新たな創出、提供内容のパーソナライズ化に加え、社内の業務プロセスの効率化や強化だけでなく、ビジネスモデルの変革を可能にする。
  • ・日常生活においては、情報検索から料理や旅行まで、さらにはチャットボットとの個人的なやりとりを楽しむところまで影響を与える。
従来型(識別型)AIと生成AI

従来型(識別型)AIと生成AIとは区別でき、両者は相互に排他的なものではなく組み合わせることで、さらに強力なソリューションを提供することができる。

従来型(識別型)AI

  • ・大量のデータから学習するが、生成する結果は生成AIとは異なる。
  • ・既存のデータに基づいて予測し、その予測をもとに仕事や日常生活においてより良い意思決定をするために役立つ。
  • ・パターン認識に優れている。

生成AI

  • ・さらに一歩進んで、既存のデータに基づいて新しいコンテンツを作り出す。
  • ・意思決定や問題解決といった人間の認知プロセスをシミュレーションするだけでなく、人間の創造性をシミュレーションする。
  • ・パターン創造に優れている。
機械学習とニューラルネットワーク

生成AIは「機械学習」と呼ばれるAIの研究と実践から発展してきたものである。

  • ・機械学習アルゴリズムはデータから学習し、その学びに基づいて自ら意思決定を行うことができる。
  • ・与えられるデータが多ければ多いほど、プロセスの精度が向上する。
  • ・プロセスの過程で、多少の人間の介入が必要となる。

ニューラルネットワークは、生成AIの基盤技術である。

  • ・人間の脳の働きに触発された高度な機械学習モデルである。
  • ・自ら学習しながら意思決定を行う能力を持っており、さらには人間が試行錯誤を通じて学習するのと似ており、自身の誤りから学ぶこともできる。
  • ・仕組み:訓練、学習、推論、層、生成モデル、インプットとアウトプット、ランダム性
生成AIが生成できる主な領域

テキスト
人間が書いたものとほとんど区別がつかないテキストを書ける。

画像
通常の会話で使用する言葉を受け取り、ニーズに応じた画像を作成できる。

動画
指示を与えれば望む映像や動画を作成したり、編集したりできる。

音楽と音声
人間のような声を生成する音声合成技術を利用し、コンピューターに言葉を話させることができる。

グラフィックデザインとジェネレーティブデザイン
視覚デザインの一部を自動化することから、複数の製品デザインのバリエーションを作成できる。

データ分析とレポート作成
データを解析・分析することにより、自動レポートの生成、作成から予測まで、データを最大限に活用するための方法を提供する。

コーディング
技術的な知識がほとんどなくても、コンピューターコードを生成できる。

合成データ
他のAIモデルのトレーニングに使用するために必要な合成データを作成でき、実データ利用に伴うプライバシーやデータセキュリティの問題や規制を克服するのに役立つ。

調査研究
研究プロセスを多岐にわたって支援し、調査研究による発見を加速させる可能性を秘めている。

ビデオゲームと仮想世界の生成
仮想現実(VR)環境や没入型ビデオゲームの世界から、メタバースという広範な概念に至るまで、没入的でリアルな複雑なコンテンツ作成を支援できる。

生成AI活用の最前線

生成AI活用の最前線

『生成AI活用の最前線』を参考にしてATY-Japanで作成

著者がこのような本を執筆することを好む理由の一つは、さらなる議論の出発点となるからである。

ぜひ質問や感想を自由に共有してほしい。

日常生活や仕事において、生成AIをどのように活用し始めているいるだろうか?

生成AIが、あなたの組織の最大の課題を解決する助けとなるのだろうか?

生成AIやその他の未来テクノロジーによって、あなたの職場はどのように変革されるだろうか?

導入にあたっての最大の課題は何だろうか?

あなた自身の仕事の役割はどのように進化すると考えているだろうか?

まとめ(私見)

本書は、さまざまな分野における生成AIの実践的なアプリケーションや応用に焦点を当て、生成AIを解明し進化の軌跡を辿ったうえで、企業や組織がどのようにこのテクノロジーを活用しているかを詳細に解説した一冊です。

生成AIの動作原理やビジネスへの影響、主な分野への導入事例とそこから得られる教訓に加え、企業や組織に導入する際の成功要因や将来予想を解説していますので、ビジネスリーダーの方々が自らの事業や組織に適した戦略的な生成AI活用を立案するうえで大変参考になります。

第2部では、主な業界(分野)における生成AIの活用事例を紹介しており、現状を確認し今後を予測していくうえで参考になりますが、訳者らが「日本語版まえがき」と「日本語版解説」で整理した観点で読んでいけば、各業界(分野)だけでなく自らの事業での生成AI活用のヒントになります。

また「日本語版解説」において、訳者らが実際のお客様プロジェクトで得た知見に基づいて、生成AIの原理やビジネスへの活用をわかりやすく整理していますので、内容の理解を深めるのに役立ちます。

さらに付録では、本書で紹介している主な生成AIツールの概要とURLを紹介していますので、気になったツールの詳細を確認できます。

生成AIは仕事を奪うことはないかもしれませんが、仕事のやり方は変わるはずです。

そのため、生成AIを活用することを前提として、企業や組織をどのように進化させるかを考えていかなければなりません。

本書の第2部では、さまざまな業界(分野)における企業や組織において、生成AIの導入事例に加え、そこから得られる教訓を紹介しています。

紹介している内容は現段階における事例や予想かもしれませんが、自らの事業への関連を確認できますし、そこから中長期的な取り組みを立案するのに役立ちます。

生成AIを最大限に活用するためには、人間の専門知識と機械の知識とのバランスが必要であると、著者は主張しています。

そのためには、生成AIはツールであり、そのツールをどのように使うかは私たち人間次第です。

完全な自動化を目指すのではなく人間が生成AIと協働して、今まで以上の価値や新サービスを創出して、世の中に貢献できるよう努めなければなりません。

しかし、生成AIは、ある程度までは人間がコントロールできるかもしれませんが、生成AI同士が連携して独自に進化する可能性もあります。

そのためにも、バイアスや事実とは異なる回答をするハルシネーション、ディープフェイクや他者による悪用、さらには生成AIの独走または暴走などに対して、人間として良識ある取り組みが必要です。

今や企業においても生成AIを活用し始め、その活用範囲は拡大しています。

生成AIをビジネスで活用していくうえでは、単独のツールとしての社内業務の置き換えや効率化だけでなく、企業価値の創造につながるように取り組んでいくことが重要です。

具体的には、議事録や報告書などの作成といった既存業務の効率化だけでなく、業務プロセスの改革、さらには顧客対応業務の効率化や接点強化、新たな製品やサービスの創出とパーソナライズ化などへの拡大です。

そのためには、生成AIを戦略的に活用することを想定した戦略を立案し、推進組織体制とガバナンス態勢を確立することが必要です。

そして、変革に向けた企業文化の醸成に加え、生成AIを適切に活用することへのメンバーのマインドセット転換とスキル開発も必要です。

なお、著者は、急激に変化する時代においては、スキルよりも企業文化への適合性や人材の潜在能力を重視すべきであると提言しています。

スキルは後から強化することができますが、文化的なミスマッチは克服が難しいということですが、それらを解決するためにもトップのリーダーシップが重要です。

さらに著者は、データ戦略の重要性も訴えています。

生成AIはデータから学習するため、データの整備と精度向上の取り組みが不可欠であるということです。

データ戦略は、ビジネスの問題や未解決の質問を特定し、それらの課題を解決するために必要なデータ、目標を達成するために必要な技術、そして良好なガバナンスを通じてデータを保護する方法を明確にするものです。

また、生成AIが学習対象とするデータには社内と社外の両方のリソースがありますが、どちらにアクセスするかのコントロールも必要です。

社内の機密情報に関するものは社内限定利用としつつも、補完する有効な社外データがあれば学習させるといった取り組みになります。

但し、生成AIに学習させるためには、正確なデータを提供し、生成した回答結果に誤りがないかを確認し、誤りがあった場合は再学習をさせることが必要です

そして、望ましい回答を得るためには、生成AIへの質問文(プロンプト)を工夫することも重要ですし、RAG(Retrieval Augmented Generation)という仕組み、プロンプトの基になるデータ整備や質問に関連する情報検索の仕組みも必要です。

経営戦略に基づくAI戦略、データ戦略の立案と実行に加え、生成AIを使いこなすためのメンバーのスキル向上、それらを牽引するトップのリーダーシップが重要です。

生成AIは単独のツールとして活用するのではなく、他のデジタル技術と組み合わせて、企業の価値創造に組み込んでいかなければなりません。

そのためには、企業戦略に基づくデジタル戦略、AI戦略やデータ戦略の立案と実行を、トップのリーダーシップのもとで推進していくことが必要です。

その取り組みに当たっては、生成AIの動作原理を理解し、課題解決や価値創造のための生成AIの活用方針を明確にし、生成AIの信頼性を確保するためのデータ整備や既存システムとの効果的連携が必要です。

そして、生成AIを戦略的に活用するための組織文化の醸成、組織体制やガバナンス態勢の確立、メンバーのマインドセットの改革とスキルアップも必要です。

生成AIは、これまでにないほどの革新的なテクノロジーであり、社会に大きな影響をもたらす力を持っていますが、解決すべき課題があることも事実です。

しかし、生成AIを活用しないリスクの方が、活用するリスクよりも大きいと思います。

生成AIをはじめとする新技術を効果的に活用するためには、それらの原理や限界を理解したうえでコントロールし、自らの活動の中に組み込んでいくことが重要です。

本書は、生成AIの原理や実践導入のノウハウを詳細に解説していますので、事業や組織に適した潜在的および戦略的な活用を立案するうえでのガイドとなる一冊です。

目次

日本語版まえがき
著者について

序章

第1部 AI革命の幕開け
 第1章 生成AIの解明 ―― 新たなフロンティア
 第2章 生成AIの進化の軌跡を辿る
 第3章 社会とビジネスエコシステムの革新
 第4章 生成AIのリスクと管理すべき4つの課題
 第5章 生成AIが職業に与える影響

第2部 生成AIの活用
 第6章 メディアとエンターテインメントの新時代
 第7章 広告とマーケティング ―― 創造性とAIの架け橋
 第8章 インテリジェントシステムを通じた顧客エンゲージメントの再構築
 第9章 新たな小売業の世界 ―― バーチャル試着、AIショッピングアシスタントの台頭とその先
 第10章 パーソナライズされた学習 ―― 教育の未来
 第11章 医療の変革 ―― パーソナライズされたアドバイスから業務改善まで
 第12章 ビデオゲームの設計とテスト ―― 生成AIアプローチ
 第13章 法律分野におけるAI活用 ―― AIによる文書作成とレビューの支援
 第14章 未来を創る ―― デザインと開発におけるAIの活用
 第15章 銀行業と金融サービス ―― AIの持つ破壊的な力
 第16章 コーディングとプログラミング ―― 生成AI導入による革命
 第17章 生成AIの力を活用して得られるデータインサイト

第3部 生成AIとの前進
 第18章 生成AI導入の成功の鍵
 第19章 生成AIの進化の未来

日本語版解説
日本語版あとがき(1)
日本語版あとがき(2)
原注
付録 主なAIツールの紹介
訳者紹介

参考

生成AI活用の最前線 | 東洋経済STORE

生成AI活用の最前線 | NTTデータグループ - NTT DATA GROUP

Bernard Marr | Future . Business . Success

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