書籍 Read Write Own シリコンバレートップクラスVCが語るインターネットの次の激戦区

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Read Write Own シリコンバレートップクラスVCが語るインターネットの次の激戦区

クリス・ディクソン (著)、大熊 希美 (翻訳)
出版社:日経BP (2024/11/29)
Amazon.co.jp:Read Write Own

  • 読み書きから所有へ

    10年先を見通す有力投資家が今知りたいネットの過去・現在・未来を解説

    この本を読めば、インターネットが目指すべき姿とその実現への道筋が明確に見えてくる。

本書は、アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)のゼネラルパートナーを務める著者が、ブロックチェーンの本質、コンピューターとしての技術とそれで実現できる新時代を説明した一冊です。

アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)は2009年に設立されたシリコンバレーでは新しい企業ですが、テクノロジー業界では知らないものはいないほどの有名なベンチャーキャピタルです。

オキュラス(後にフェイスブック、現メタ・プラットフォームズにより買収)やコインベースなどの企業に投資した他、キックスターター、ピンタレスト、スタックオーバーフロー、ストライプなど、現在広く利用されている製品を提供する企業にも初期から投資しています。

著者がインターネット業界での25年間のキャリアを通じて学んだことを凝縮していますので、ビジネスリーダーの方々が、ブロックチェーンがどのような問題を解決し、なぜこのような解決策が今すぐ必要なのかを正確に理解するうえで大変参考になります。

本書は5部14章で構成しており、ブロックチェーンに関する知見や洞察、考え方の枠組みを展開しています。

  • ・第1部では、インターネットの未来を理解するためには、その歴史を知る必要があるとして、1990年代初頭から現在までに起きた2つの時代に焦点を当てて歴史を振り返っています。
  • ・第2部では、ブロックチェーンがどのように機能し、なぜ重要なのかについて説明するため、ブロックチェーンネットワークを構成するブロックチェーンおよびトークン、そしてそれを動かす技術的、経済的メカニズムを解説しています。
  • ・第3部では、ブロックチェーンネットワークがユーザーをはじめとする他のネットワーク参加者にどのように役立つかについて説明し、「なぜブロックチェーンを使うべきか」という質問に答えています。
  • ・第4部では、政策や規制に関する難しい問題や、ブロックチェーンの周辺に発展した有害なカジノ文化にまつわる疑問に答えています。
  • ・第5部では、ソーシャルネットワーク、ゲーム、仮想空間、メディア事業、共創的な作品づくり、金融、人工知能などのブロックチェーンと接点のある領域について深く掘り下げたうえで、ブロックチェーンネットワークの力がどのようなもので、これまで不可能だった新しいアプリケーションを実現する方法を説明しています。

この本は、私がインターネット業界でのキャリアを通じて学んだことを凝縮したものだ。

幸運なことに、これまで多くの優れた起業家や技術者と出会ってきた。

ここで説明する多くのことは、彼らから学んだことである。

開発者、起業家、企業の幹部、政策立案者、アナリスト、ジャーナリスト、あるいは単に今世界で何が起きているのか、世界はどこへ向かっているのかを理解したい人にとって、この本が未来を案内し、作り、参加する助けになることを願っている。

ブロックチェーン

ブロックチャーンネットワークはインターネットの中央集権に対抗できる最も信頼でき、公共志向をもつ技術である。

これはインターネットのイノベーションの終わりではなく、始まりである。

次世代のネットワークがブロックチェーンの仕組みを取り入れることで、インターネットの権力が一部の企業に集中している現状を変えられる。

これにより、少数の企業の代わりに、インターネットの主導権を握る正当な立場にコミュニティを戻すことができる。

  • ・改ざんできないプログラムにルールが組み込まれているため、ブロックチェーンによる保証は非常に強力である。
  • ・開発者やクリエイターは、低いテイクレートと一貫したインセンティブの恩恵を受けられる。
  • ・ユーザーにとっても透明なルールは理解されやすく、ネットワークの運営に参加できるうえ、ネットワークの成功に伴う利益を受け取れる。
  • ・プロトコルネットワークの最良の特徴をさらに強化する。
  • ・雇用と成長に投資するために資金を集めることができ、資金が潤沢なインターネット企業と肩を並べられる。
ブロックチェーンの特性

1.ブロックチェーンは民主的で誰でも使える。

  • ・ブロックチェーンは初期のインターネットの精神を受け継いでおり、全員が平等に参加できる。
  • ・インターネット接続があれば、好きなプログラムをアップロードし、実行して構わない。
  • ・優遇されるユーザーはおらず、ネットワークはすべてのプログラムとデータを平等に扱う。

2.ブロックチェーンは透明性が高い。

  • ・プログラムとデータの履歴はすべて公開されており、自由に調べられる。
  • ・誰もが取引の履歴を調べ、システムの現在の状態が正しいプロセスによって作られたことを確認できる。
  • ・透明性が信頼を生む。

3.ブロックチェーンは長期的な動作を強く保証する。

  • ・ブロックチェーン上で実行されるあらゆるプログラムは設計された通りに動き続ける。
  • ・ブロックチェーンは力を逆転させ、プログラムに強い力を持たせる。
  • ・人間がブロックチェーンに介入することができないため、ブロックチェーンを使用するユーザーは特定の個人や企業を信頼する必要がなくなる。
企業・プロトコル・ブロックチェーンネットワーク

企業ネットワーク・プロトコルネットワーク・ブロックチェーンネットワーク

『Read Write Own』を参考にしてATY-Japanで作成

インターネットを変えるには遅すぎると思うかもしれないが、実際はまだまだこれからである。

今こそネットワークがどうあるべきか、それで何ができるかを再考すべき時だ。

ソフトウェアは創造力や工夫をいかんなく発揮できる遊び場だ。

あなたが今見ているインターネットをそのまま受け入れる必要はない。

開発者として、クリエイターとして、ユーザーとして、そして何よりも重要なのは所有者として、より良いものに作り変えることができる。

まとめ(私見)

本書は、ブロックチェーンの本質、コンピューターとしての技術とそれで実現できる新時代を説明した一冊です。

ビジネスリーダーの方々が、ブロックチェーンがどのような問題を解決し、なぜこのような解決策が今すぐ必要なのかを正確に理解するうえで大変参考になります。

プロトコルネットワークや企業ネットワークの歴史を振り返り、それぞれの特徴に加え、利点や問題点を詳細に解説しています。

  • ・プロトコルネットワーク
    多くの弱いネットワークノードで構成され、権力が分散することから、一部のノードが利己的に振る舞うようになっても影響は軽い。
  • ・企業ネットワーク
    すべての権力がネットワーク所有者である企業に集中しているので、企業が利己的に振る舞わないことを期待するしかない。

そのうえで、新しい構造のネットワークとして、ブロックチェーンベースのネットワークは、開発者やクリエイター、ユーザー全員に利益をもたらし、インターネットを第3の時代へと進ませるとしています。

インターネットの「読み取り・書き込み・所有(Read・Write・Own)時代」は、人びとがデジタル世界で健全な市民生活を送れるようにすることを約束するというのが本書の主張です。

なお本書には、コンピューター用語が多く出てきて理解するのが難しく感じますが、「ブロックチェーンはどんな特徴や機能なのか、それで何ができるのか」といった視点から読み進めていけば、個人や自身のビジネスへの可能性を見出すことができます。

GoogleやAppleおよびAmazon、Meta(facebook)やX(Twitter)などの中央集権型の企業ネットワークは、ネットワーク効果によって急成長してきました。

今や優れた機能と持続的な資金調達によって、プロトコルネットワークを超えています。

企業ネットワークは商取引や広告出稿といったネットワーク上の活動に手数料を課すことで収益を得ており、その収益の内、ネットワーク参加者ではなく所有者である運営企業が多くの割合(ネットワークスのテイクレート)を得ています。

これまでの歴史から見ても、ユーザーとの約束を守るという点で信頼できるか疑問もあります。

企業は株主に対する受託者責任が他よりも優先するため、サービスの利用規約を改訂したり、条件をかいくぐったり、サービスを終了したりして、ユーザーとの誓約を破棄する可能性があります。

これに対してブロックチェーンは改ざんされにくいオープンな仕組みで、新しいものを創造、発明できるキャンパスとなり、従来のコンピュータではつくれないアプリケーションをつくれるようになります。

ブロックチェーンを使うことで、プロトコルネットワークの社会的利益と企業ネットワークの競争上の優位性の両方を備えたネットワークをつくれるとしています。

そして、ブロックチェーンネットワークがより良い未来がつくれるとして、新しいネットワークが登場する可能性を例示しています。

本書では、ソーシャルネットワークやゲーム、マーケットプレイス、金融サービスなどを紹介していますが、他にも新たなサービスを創出できる可能性があります。

ブロックチェーンとそれでつくられるネットワークは、インターネットをキャンパスとしてソフトウェアの驚異的な力を解き放ち、この流れは人類のデジタルとの関係を何ができるかの常識を一変させる力がありそうです。

そして、開発者、クリエイター、起業家、ユーザーであれ、誰もが参加できます。

本書は、今あるインターネットをただ利用するだけではなく、理想のインターネットをつくるチャンスがあることを再認識させてくれ、個人や自らのビジネスの新時代を考えるうえで参考になる一冊です。

目次

序章

第1部 読み書きの時代
第1章 ネットワークが重要な理由
第2章 プロトコルネットワーク ― オープンで利用に許可がいらない
第3章 企業ネットワーク ― テック企業が中央集権型で制御する

第2部 所有する時代
第4章 ブロックチェーン ― 改ざんされにくいオープンな仕組み
第5章 トークン ― デジタル所有権を表し、新時代に成長する
第6章 ブロックチェーンネットワーク ― さまざまな用途で使える新ネットワーク

第3部 新時代
第7章 コミュニティが作るソフトウェア
第8章 テイクレート ― 低い手数料がもたらす競争優位性
第9章 トークンをインセンティブとするネットワークを作る
第10章 トークノミクス ― トークン経済における供給と需要の創出
第11章 ネットワークガバナンス ― 独裁から成文化されたルールへ

第4部 現況
第12章 コンピュータ vs. カジノ

第5部 次にくるもの
第13章 iPhone的転機:インキュベーションから成長へ
第14章 有望な応用例 ― ブロックチェーンネットワークの可能性

結論

参考

はじめに:『Read Write Own シリコンバレートップクラスVCが語るインターネットの次の激戦区』 | 日経BOOKプラス

Read Write Own - Chris Dixon

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