書籍 HIDDEN POTENTIAL 可能性の科学――あなたの限界は、まだ先にある | アダム・グラント(著)

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HIDDEN POTENTIAL 可能性の科学――あなたの限界は、まだ先にある

アダム・グラント(著)、楠木 建(監訳)
出版社:三笠書房 (2025/10/16)
Amazon.co.jp:可能性の科学

  • 内に秘めた可能性を、いかにして解き放つか―?

    『GIVE & TAKE』『ORIGINALS』『THINK AGAIN』邦訳版シリーズ35万部!

    ニューヨーク・タイムズNo.1ベストセラー!

本書は、ペンシルベニア大学ウォートン校教授で組織心理学者の著者が、実現不可能に思えるような高い目標を、どのようにすれば達成できるのか、その具体的な道筋を明らかにした一冊です。

誰もが持つ「隠れた可能性」に着目し、「向上心」や「人間的成長」について、心理学の最新知見に基づいて詳細に解説していますので、すべての方々が自らの殻を破って成長していくための指針となります。

本書は、世界的ベストセラーの『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』三笠書房(2014年1月10日)や『THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す』三笠書房(2022年4月18日)に続く意欲作で、読み応えのある内容です。

本書は3つのパート計9章で構成しており、逆境に立ち向かい、成功を収めた個人や組織の実例を紹介しながら、困難を乗り越え向上していくためのスキルを紐解き、そのためのモチベーションを高め、成長の機会を増やすための仕組みについて詳細に解説しています。

パート1では、より高い目標へ到達するために不可欠な「性格スキル」について探求し、人はどうやって困難を乗り越え向上していくのかを紐解いています。

  • ・第1章では、不快な経験こそが最高の成長剤であり、不快に向き合うには強い「意志力」が不可欠であるとして、そのために必要な3つの勇気それぞれを詳細に解説しています。
  • ・第2章では、あらゆる経験を成長の糧に変える必要があるとして、「積極性」を獲得するために「スポンジになる」ことの重要性に加え、「スポンジになる」ための習得方法を解説しています。
  • ・第3章では、内に秘めた可能性を解き放つ鍵は完璧さの追及ではないとして、自分の基準を高く設定し、欠点を受け容れ、結果を出してフィードバックを得て改善し続けることの重要性を説いています。

パート2では、モチベーションを高める仕組みの構築に焦点を当て、困難を克服するための「足場かけ」について掘り下げています。

  • ・第4章では、喜びがなければ可能性は潜んだままであるとして、単調な状態におけるリスク、調和のとれたフロー状態をつくる方法を紹介し、粘り強さと情熱を組み合わせられるデリバレイト・プラクティス(限界的練習)について詳細に解説しています。
  • ・第5章では、ブレークスルーのように見える成功は実は小さな成功の積み重ねであるとして、停滞感や虚脱感を打破するためのコンパスや案内人の見つけ方、時には回り道や脱線も効果があることを説いています。
  • ・第6章では、仲間たちと結びつくことで、より高く険しい頂へ到達できるとして、自分を超える力の源となる成長マインドセット、自らの能力を磨くチューター効果やコーチング効果に加え、モチベーションを燃え上がらせるための方法について解説しています。

パート3では、成長の機会を増やすための体制・仕組みづくりに重点を置き、すべての人の内に眠る「可能性」を育むための方法を説いています。

  • ・第7章では、人は自身の関心ごとを深く掘り下げる機会に恵まれることで学びへのモチベーションを見出せるとして、フィンランドの教育システムを紹介しながら、すべての人に等しくチャンスを与えられる文化を発展させる必要性を説いています。
  • ・第8章では、一個人の力では到底不可能な偉業でも集団の力であれば成し遂げられるとして、チームの知性を高める集合知について掘り下げ、協力の文化の築き方、効果的なリーダシップのあり方について解説しています。
  • ・第9章では、「過去の成果」と「未来の可能性」とを混同することなく、一人ひとりが持つ可能性を見出すことが必要であるとして、人が努力して障害を乗り越えてきた「成功の道のり」をきちんと評価する方法について解説しています。

偉大な思想家や実業家、そして指導者たちを称賛する際、私たちはその人々の輝かしい実績にばかり注目しがちである。

その結果、最も大きな成功を収めた人物ばかりを祭り上げ、最も不利な立場にありながらも、多くを達成してきた人々の真価を見落としてしまう。

内に秘めた可能性を測る真の基準とは、到達した頂の高さではない。

むしろ、そこに到達するまでに、どれほど険しく、長い道のりを歩んできたのか、なのである。

HIDDEN POTENTIAL 可能性の科学

HIDDEN POTENTIAL 可能性の科学

『HIDDEN POTENTIAL 可能性の科学』を参考にしてATY-Japanで作成

偉大な成功を収めた人びとのうち、幼いころから「神童」と称賛されていたのはごく一握りの、むしろ例外に過ぎない。

並外れた才能よりも、並外れたモチベーションの高さである。

モチベーションは先天的なものではなく、多くの場合、学ぶことは楽しいものだと教えてくれるコーチや教師のもとで、後天的に育まれるものである。

潜在能力を判断する際に真に重要なのは、持って生まれた明白な才能ではなく、その人がどれほど進歩し得るか、という点である。

優秀さと先天的な能力とは、一般に期待されるほど強い関係性はない。

積極性や向社会性、自己統制力、意志力といった「心の力」は、知識や技能よりも遥かに長い期間にわたり、そして結果としてより深く、内に定着している。

人格や性格といった「心の力」とは単に意志の強さの問題ではなく、むしろ学習し向上させることが可能なスキル(性格スキル)である。

人格や性格というものは、後天的に獲得できる一種の能力であり、自らが信じる道徳的な生き方を実践するために、学び、磨き上げていくものである。

インポスター症候群は囁く。

  • ・私に能力があるか、わからない。
  • ・私の無能さを、近いうちに誰かが見つけてくれるだろう。

成長型マインドセットが応える。

  • ・私に能力があるか、まだわからない。
  • ・しかし、近いうちに身につくだろう。

能力を身に着ける必要があるとき、あなたを支えてくれるのは「足場」である。

人生で最も大きな意味を持つ成長とは、輝かしいキャリアを築くよりも、むしろ自身の人間性、人格そのものを豊かに磨き上げていくことなのである。

本当の意味での成功とは、目標を達成したという事実そのものよりも、むしろ、自分の価値観を貫いて生きることにある。

日々、昨日よりも少しでも成長しようと、ひたむきに努力し続けるその情熱こそが、何よりも尊い。

そして、自分自身の中に秘められた、まだ見ぬ可能性の扉を開き、それを存分に羽ばたかせること以上に素晴らしい成果など、この世には存在しないのである。

まとめ(私見)

本書は、実現不可能に思えるような高い目標を、どのようにすれば達成できるのか、その具体的な道筋を明らかにした一冊です。

誰もが持つ「隠れた可能性」に着目し、「向上心」や「人間的成長」について、心理学の最新知見に基づいて詳細に解説していますので、すべての方々が自らの殻を破って成長していくための指針となります。

本書の主眼は、「アンビション」ではなく、「アンスピレーション」です。

  • ・「アンビション」は名声や権力への野心で、「自分が望む結果を獲得する」ことを意味します。
  • ・「アンスピレーション」は成し遂げたいことそのものに対する強い願望や向上心で、「自分が望む人物になる」ことを意味します。

大きな進歩を遂げる人は、最初から完成された天才であることは極めて稀で、大半は、たゆまぬ努力によってつくられた「後天的な天才」であり、「才能は育てるものだ」という視点が重要であると主張しています。

私たちが、自身の内に秘めた可能性を見出し、それを最大限に引き出すには、自分の限界を押し広げる必要があります。

進歩の目的とは、単に優秀になることではなく、進歩し向上し続けること自体に価値があり、それ自体が大きな成果であることを再認識できます。

重要なのは、どれほど努力したかという量よりも、どれほど人間として成長したか、という質です。

そこで本書では、将来を左右するような「特別な力」を性格特性(心の力)として4つに整理し、さまざまな事例の中でどのように機能しているのかを掘り下げています。

「心の力」は、積極性や向社会性、自己統制力、意志力であり、知識や技能よりも遥かに長い期間にわたり、そして結果としてより深く、内に定着し続けるものとしています。

  • ・積極性
     どれくらい自発的に質問や発言、行動をしたか。
     情報を得るために自主的に外部と関わって学ぼうとしたか。
  • ・向社会性
     どれくらい他者と交流し、共同作業が行えたか。
  • ・自己統制力
     さまざまな衝動を抑えて、どれほど活動に集中したか。
  • ・意志力
     困難な問題にどれくらい挑戦し、与えられた以上の課題をこなし、障害を乗り越えたか。

なお、「性格スキル」が備わっていれば目標を達成できるわけではないとして、二つの仕組みづくりの必要性を示しています。

仕組みの一つ目は、モチベーションを高め、困難を克服するのに効果を発揮する「足掛け(スキャフォールディング)」です。

この「足掛け」とは、独力では到達不可能な頂点を極めるための一時的な支援で、独力では見出せない道を発見し、着実な進歩を遂げられるよう支えるものです。

仕組みの二つ目は、組織のあり方を根本から見つめ直し、誰もが等しくチャンスを掴めるような環境を整備することです。

誰もが生まれ持った才能を存分に発揮し、より高い目標へと手を伸ばせる社会を実現するために、取り巻く仕組みそのもを変革する取り組みです。

人と会ったとき、「この方はすごい」とか「何かオーラを感じる」と感じたことが、誰にもあると思います。

もちろん、名声や肩書だけではなく、外見や話し方、雰囲気などから感じる場合もあるかもしれません。

そかし、その人が今あるのは、困難な状況にあってもその時々の感情や直感に流されることなく、ご自身が本当に大切にしている価値観や信念に基づいて、粘り強く行動し続けてきた結果であるはずです。

大切なのは、苦労や困難に直面したときに、その人がどのように考え、どのように行動し、それをどう乗り越えてきたか、そしてそこから何を学んだかです。

しかし、その人にとっては苦労や困難であっても、他の人にとっては違うかもしれません。

個々の人生における試練の度合いを客観的に比較することはできませんが、挫折や停滞を経験した後の成功は、「その人は可能性を秘めている」ことの証となります。

本書で探求している「性格・人格」とは、その人の人間的な器の大きさや、精神的な深みといったものを指しています。

その基になるのが「心の力(性格スキル)」であり、それは後天的に磨き上げていくことができるとしています。

「性格スキル」とは、自身に備わっている行動パターンを超え、自身が大切にする信条に忠実であり続けることを可能にする力です。

目標達成に至る長い道のりにおいては、不快感と向かい合い、困難に挑む勇気、情報を積極的に吸収し応用する能力、不完全さを受け入れる覚悟が必要です。

但し、完璧主義は「性格スキル」にとってはネガティブに作用し、さまざまな副作用があるようです。

成功とは、完璧を追及するのではなく、自分の基準を高く設定することが有効であり、取り組みの過程でどれほどの困難を乗り越えてきたかであると教えてくれています。

そのためには、自らの欠点を受容することで成長し、理想的な目標から達成可能な目標に自制心をもって意識を転換して、その目標を終わらせて迅速に改良を繰り返すことが重要であるとアドバイスしてくれています。

人の成功というものは、生まれ持った才能や能力で決まるものではなく、新しいことを学び取ろうとする力、成し遂げようとする強い意志、そういった内面的な資質こそが人の将来を大きく左右するものであると理解できます。

本書では、「チャンスを迎え入れるための扉は、自分でつくらねばならない」と、語りかけています。

人間性や性格は才能よりも重要であり、「性格スキル」こそが人生における成功を予測し、実際に生み出します。

この「性格スキル」は、適切な機会と、それを活かそうとする強い意欲(モチベーション)、そして何よりも、意識的にそれを養い育てていく努力が必要不可欠です。

そして、「性格スキル」は年齢に関係なく、何歳からでも伸ばすことができるようです。

本書は、、困難を乗り越え向上していくためのスキルを明らかにし、モチベーションを高めたり成長の機会を増やしたりする仕組みについて詳細に解説していますので、自らの殻を破って成長していくための指針となります。

「性格スキル」は、「年齢に関係なく今からでも伸ばせる」「それを可能にするのは自分自身である」と、勇気が湧いてくる一冊です。

目次

はじめに

プロローグ 誰もが内に可能性を秘めている。それをいかにして解き放つか――

Part1 性格スキル――この「心の力」を伸ばす
 人はどうやって困難を乗り越え向上していくのか

Chapter1 「不快な経験」こそ最高の成長剤
 ――学びに伴う「居心地の悪さ」を受け入れる

Chapter2 「人間スポンジ」のように生きる
 ――あらゆる経験を、成長の糧に変える

Chapter3 「完璧」という幻想を捨てる
 ――欠点を受け入れ、成長の「最適点」を探る

Part2 モチベーションをいかに高めるか
 困難を克服するための「足場かけ」

Chapter4 単調な日々に「遊び心」を
 ――「やらなければ」を「もっとやりたい」に変える練習の科学

Chapter5 「行き詰まり」の先に隠れている宝
 ――停滞の壁を、飛躍への扉に変えていく

Chapter6 今のままでは、たどり着けない場所へ
 ――個人の限界を乗り越えていく力

Part3 誰もが輝ける「仕組み」がある
 すべての人の内に眠る「可能性」を育むために

Chapter7 一人ひとりの「最高」を引き出す技術
 ――フィンランドの教育に学ぶ、「ポテンシャル」を最大化する仕組み

Chapter8 「集合知」を、いかにして生み出すか
 ――一人ひとりの個性というチームの「武器」

Chapter9 「才能」はこうして開花していく
 ――見過ごされている「真の価値」に光を当てる

エピローグ 最後までやり抜いた人だけに見えてくる景色

監訳者解説―――楠木建
 誰もが自分の未来を切り拓ける――
 普遍にして不変の本質を見極める

参考

HIDDEN POTENTIAL 可能性の科学 | 三笠書房

Books, Podcast, TED Talks, Newsletter, Articles | Adam Grant

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