書籍 CLEAR THINKING 大事なところで間違えない「決める」ための戦略的思考法

書籍 CLEAR THINKING 大事なところで間違えない「決める」ための戦略的思考法

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CLEAR THINKING(クリア・シンキング) 大事なところで間違えない「決める」ための戦略的思考法

シェーン・パリッシュ (著)、土方 奈美 (翻訳)
出版社:日経BP (2024/2/15)
Amazon.co.jp:CLEAR THINKING

  • 一流の意思決定ができる世界トップから引き出した、クリアに考え、幸せになる16原則

    切れ味鋭く、抜群におもしろい、世界トップからごっそり引き出した幸せになる16原則

本書は、起業家である著者が、20年にわたって集めた、優れた思考、判断、行動につながる知見をまとめた一冊です。

成功を左右するのは日頃のありふれた瞬間の判断の積み重ねであるとして、判断すべきタイミングを認識するスキルや、優れた判断を下すためのプロセスを解説していますので、すべての方々にとって、効果的な思考法をマスターするうえでの実践的ガイドです。

本書は5部26章で構成しており、クリア・シンキング(明晰な思考)や優れた判断をするための方法を紹介しています。

第1部から第3部では、クリア・シンキングのためのスペース(余地)をつくる方法として、クリア・シンキングを阻む敵(脳のデフォルト反応)を明らかにし、強みを強化し、弱みをコントロールするための実践可能な方法を紹介しています。

  • ・第1部では、生物的本能のなかで脳が自動的に実行する最も危険なものとして、4つのデフォルト反応について章を独立して詳細に解説しています。
  • ・第2部では、弱点を管理する方法の一つで、後天的弱点を克服するために磨くべき4つの重要な強さを紹介しています。
  • ・第3部では、弱点を克服する二つ目の方法で、強さだけでは克服するのが難しいさまざまな弱さを抑える5つのセーフガード戦略に加え、失敗にうまく対処するための4つのステップを紹介しています。

第4章と第5部では、クリア・シンキングを実践する方法として、本書のキモとなる意思決定のプロセスにおける16の原則と、原則それぞれのセーフガードやヒントを詳細に解説したうえで、意思決定の要諦を紹介しています。

  • ・第4部では、「定義する」「模索する」「評価する」「実行する」の意思決定のプロセスに準じて、それぞれの原則、セーフガードやヒントを詳細に解説しています。
  • ・第5部では、優れた意思決定の要諦について、「求めるものを手に入れる方法を知る」と「求める価値があるのもの知る」という二つの視点から掘り下げています。

何千という対話から一つ、決定的な気づきが得られた。

望みどおりの結果を得られるために、私たちがやるべきことは二つある。

まずモノを考え、感じ行動するときに論理的思考の入り込むスペース(余地)をつくらなければならない。

次にそのスペースをクリアな思考のために意識して使わなければならない。

このスキルを習得すれば、圧倒的強みになる。

クリア・シンキングによって意思決定をしていると、徐々にあなたの立場は強くなっていく。

成功はその積み重ねからしか生まれない。

CLEAR THINKING(クリア・シンキング)

CLEAR THINKING(クリア・シンキング)

『CLEAR THINKING』を参考にしてATY-Japanで作成

クリア・シンキングによって意思決定していると、徐々に自分の立場は強くなっていく。
成功は、その積み重ねからしか生まれない。

クリア・シンキングの敵は、人間の原始的な本能である。
本能は状況をわからなくし、厄介ごとを増やす。

一流の人々が常に優れた判断ができるのは、待ったなしの状況で判断を迫られることがないからである。

  • ・判断力を高める最善の策は、良いポジションで判断できるようにすることである。
  • ・時間は、正しいポジションをとった者に味方し、ポジションの悪い者の敵になる。

人間の「初期設定(デフォルト)」

4つの行動は脳のデフォルト反応であり、自然淘汰の結果としてDNAに深く刻み込まれた行動プログラムである。

思考、感情、行動のデフォルト反応とは、他者や外部環境からの刺激に反応して無意識のうちに動作するアルゴリズムのようなものである。

人は一緒にいる人々の習慣を知らず知らずのうちに身に着けるので、まわりにいる人によって目標達成は容易にもなれば困難にもなる。
一緒に過ごす時間が増えるほど、相手と同じように考え、行動するようになりやすい。

トリガーが発動したときに一呼吸おいて思考する時間を確保しなければ、脳は自動的にこれを実行する。

デフォルト反応をコントロールできる人は、実社会ですばらしい成果を発揮できる。

デフォルトを意識することで、自分の過去の行動にどんな意味があったかがはっきり見えてくるだけでなく、周囲の人々がデフォルト状態に陥っているときにそれに気づくようになる。

デフォルト反応を改善するには、意志の力に頼ってはいけない。
理想とする行動が、デフォルトとして実行されるような環境を意識的につくることである。

意識的に環境を変えるのに有効な方法は、理想とする行動がデフォルトとなっている集団に加わることである。

感情デフォルト反応

根拠や事実よりも感情に反応する。

考えなしに行動すると、後から考えれば明らかな失敗を犯しやすくなる。
感情的に反応するときには、自分がよく考えるべき状況にあると気が付いてさえいないことが多い。
その場の状況しか見えなくなると、どれほどすばらしい思考法を身に着けていても役に立たない。

感情は、積み上げてきたすべてをゼロにすることもある。
どれだけ真剣に考え、努力してきたことであっても、たった一瞬で無に帰することもある。

感情は、クリア・シンキングを妨げ、どれほど優れた人をも愚者にしてしまう。

陥っている可能性が高い状況(当てはまる人は要注意)

  • ・睡眠不足、空腹、疲労
  • ・感情、注意散漫、時間的プレッシャーから生じるストレス
  • ・不慣れな環境
エゴデフォルト反応

自尊心あるいは集団の序列で自らの立場を脅かすものに反応する。

「成功者に見えること」と「成功者であること」とは違う。

自尊心のせいで、自分を過剰評価しがちになる。
放置すれば、自信は自信過剰や傲慢さに変化するかもしれない。

望む成果を手に入れたいと思うなら、労せずして手に入れた自信には気を付けなければならない。

労せずして手に入れた知識は、拙速な判断を招く。
必要なことはわかった気になり、確率が低いことは起こらないと自分に言い聞かせ、最善のシナリオだけを考える。
新たな(そして誤った)自信があるため、他の人には起こるかもしれない問題も自分には起こらないと思う。

自尊心は、知識や能力を高めることより、社会的序列のなかでの自分のポジションを維持あるいは改善することに目を向けさせる。

人は、自分が実際にどれほどすばらしい人間であるかより、すばらしい人間に見えるかどうかを気にしがちである。

気持ちがよくなりたいという欲望は、正しくありたいという欲望を凌駕する。

多くの人は、自分が正しいと思いながら日々生きている。
自分とは意見の合わない人は、間違っていると考える。
「こうあってほしい」世界を現実と誤認する。

陥っている可能性が高い状況(当てはまる人は要注意)

  • ・自分の間違いを認めるのが苦手である
  • ・「わからない」と言えない
  • ・他人を羨ましいと思ってばかりいる
  • ・自分は正当に評価されたためにがないと感じている
社会性デフォルト反応

所属する大きな社会集団の規範に従おうとする。

同調行動を促し、「社会的圧力」の表れである。

集団に従うことによる社会的報酬は、集団に歯向かうことによるメリットよりもずっと早く受け取れる。

思考、価値観、成果を、他社に丸投げするよう働きかけてくる。

善人シグナルを発信させる。
自分の表向きの信念を周囲に受け入れてもらう、褒めてもらおうとする行為である。

ほとんどの人は、社会資本を失う恐怖の方が、社会規範を逸脱するメリットを上回り、規範を受け入れる。

同じ考えの人々、同じ振る舞いをする人々に囲まれていると、安心感がある。
群衆の知恵が生きる場面もあるが、集団でいることの安心感を自分の行動が正しい証だと誤認する。

成功するためには恥を捨てなければならないし、失敗も同じである。
他人とは違うことをすると成果が落ちるかもしれないが、それまでの常識を一変させる可能性もある。

まわりと同じことをしていれば、まわりと同じ結果しか出ない。
人並み以上の成果を出したいならクリアに思考しなければならないし、クリアに思考するとは自分の頭で考えるということである。

自分の頭で考える意欲を持ち、他の誰もやっていないことをやり、そのために愚か者に見えるリスクをとったとき、初めて変化は起こる。

陥っている可能性が高い状況(当てはまる人は要注意)

  • ・自分は集団に溶け込むことに膨大なエネルギーを割いている
  • ・他の人々を失望させるのではないかと、びくびくしている
  • ・つまはじきになることを恐れている
  • ・軽蔑されるリスクを思うと不安でいっぱいになる
慣性デフォルト反応

習慣化し、安心を求める。変化には抵抗し、なじみのある考えや手順や環境を好む。

現状維持を促す。
新しいことを始めるのは大変だが、何かを止めるのも大変である。
たとえ変えるのが最善の選択であっても、私たちは変化に抗う。

次に何が起こるかが予想でき、予想がかなりの確度で実現する状況には、安心感がある。

  • ・物事をあるがままの状態にしておくことは、労力がほぼかからない。
  • ・新しいことを試すと、これまでより悪い結果につながる可能性がある。(変化には非対称性がある)

環境が変われば、適応しなければならない。
しかし、慣性が働くと視野が狭まり、これまでのやり方を変えようとする意欲はしぼんでしまう。

公の場での発言は慣性の原因となり、慣性は困難なことを先送りする原因となる。

集団にも特有の慣性が生じる。
集団は、有効性よりも一貫性を重んじ、現状を維持しようとする人々を優遇する。

陥っている可能性が高い状況(当てはまる人は要注意)

  • ・集団のなかで言うべきことがあるのに口をつぐんでしまう
  • ・「これまでずっとそうしてきた」というだけの理由で、特定の方法にしがみついたり変化に抗ったりしている

意志の力だけではデフォルト反応を抑え込めない。

意識下で作動するデフォルト反応を抑え込むには、無意識を正しい方向へ引き戻す、同じくらい強い力が必要だ。

それが習慣であり、ルール、環境である。

デフォルト反応を覆すためには、見えないものを可視化して、拙速な行動を防ぐようなセーフガードを取り入れる必要がある。

また説明責任、知識、規律、自信といった、自分を正しい道筋に導き、そこにとどめるような資質を養う必要がある。

まとめ(私見)

本書は、著者が20年にわたって集めた、優れた思考、判断、行動につながる知見をまとめた一冊です。

成功を左右するのは日頃のありふれた瞬間の判断の積み重ねであるとして、判断すべきタイミングを認識するスキルや、優れた判断を下すためのプロセスとその原則を解説した実践的ガイドです。

著者が他の人びとから学んだ知恵に加え、自らが実践するなかで得た経験をまとめ、普遍的かつ実用的な内容ですので、すべての方々が効果的な思考法をマスターすることができます。

また、訳者は苦労されたと思いますが、難しい文章表現をわかりやすく訳してくださっていますので、非常に読みやすく、キーワードや解説内容は腹落ちする表現になっています。

納得する、記憶しておきたいキーワードや文章が、随所に記述されています。

なお、『THINK BIGGER 「最高の発想」を生む方法』シーナ・アイエンガー(NewsPicksパブリッシング、2023年11月)では、複雑な問題を解決するために新しい選択肢を生み出す方法を解説しています。

Think Biggerの6つのステップでは、課題を定義し、分解し、戦術を徹底的に探し、それらを新規かつ有用な方法で組み合わせて、課題の当事者にとって意味ある解決策を生み出し、実行に移すことができます。

イノベーションという事業視点だけでなく、「よりよい人生を送るために創造的な選択をする」という視点でも参考になります。

これに対して本書では、一般的な「選択」と「決断」を区別しています。

本書での「選択」とは、さまざまな代替案のなかからなんとなく一つの選択肢を選ぶことを指しており、「決断」とは意識的思考を伴う選択であると言及しています。

『THINK BIGGER 「最高の発想」を生む方法』でも、「選択」とは誰かに与えられた選択肢の中から選ぶことだけでなく、自分で選択肢を生み出し、選び取ることであると強調していますので、本書と同じような思考であると思います。

私たちは、人生において選択を繰り返しています。

それが習慣となり、習慣が進んでいく道を決め、その道が結果を決めることになります。

「大きな決断に集中しなさい」と言われるが、成功を左右するのは、大きな決断よりも日頃のありふれた瞬間の判断の積み重ねであると、本書では警告しています。

そして、判断して行動する際には、生物的本能の「感情デフォルト反応」「エゴデフォルト反応」「社会性デフォルト反応」「慣性デフォルト反応」の4つのデフォルト反応があるとして、それらをコントロールする方法を詳細に解説しています。

  • ・感情デフォルト反応
    自分を翻弄し、本当に大切な目標を犠牲にしてでも、そのとき夢中になった何かを追いかけさせる。
  • ・エゴデフォルト反応
    たとえ自分や周囲の人たちの幸福や健康を犠牲にしてでも、富、地位、権力といったものを追いかけろと説得する。
  • ・社会性デフォルト反応
    たとえ自分とはまったく違う環境で生きている人の目標であっても、他人の目標をそのまま受け入れろとそそのかす。
  • ・慣性デフォルト反応
    たとえ達成したところで、自分は幸せになれないとわかってしまった目標であっても、かつての目標をいつまでも追い続けろとささやく。

また、デフォルト反応を改善するには、理想とする行動が、デフォルトとして実行されるような環境を意識的につくることであると主張しています。

意識的に環境を整える方法は、理想とする行動がデフォルトとなっている集団に加わることが有効であると理解できます。

デフォルト反応に対して意志の力だけに頼って対応するのは難しいので、デフォルト反応を利用するということになるのかもしれません。

そして、誰にも弱点があると認め、空腹や疲労や認知バイアスといった先天的弱点に対してはセーフガード(安全装置)を準備し、後天的弱点に対しては強さを磨く(養う)ことを提言しています。

行動した結果がすぐにわかれば、その場で反省し、改善することはできますが、行動と結果の間にタイムラグがあると、悪い選択であっても見過ごして身についてしまいます。

悪い選択は反復を通じて習慣となり、習慣によって身につき、慣性の結果定着します。

後になって判断ミスだったことがわかるのですが、それは判断すべき場面だとは気が付かず、無意識が行動を支配しているからです。

そこで本書では、優れた判断力を身に着けたければ、自らに二つの問いを投げかけることから始めるよう提案しています。

  • ・私は、人生に何を望むのか
  • ・それは、本当に望む価値のあるものだろうか

一つひとつのありふれた瞬間は、未来を生きやすくするし、あるいは困難にする機会になります。

明晰な思考ができるかどうか、優れた判断ができるかどうかにかかっています。

但し、途中のプロセスをうまく実行したとしても、結果は運によるところもあります。

成功したとしても、失敗したとしても、自分の人生はもちろん、組織におけるリーダーは、その結果に対して責任を負わなければなりません。

成功する確度を上げるためには、本書の「16の原則」が役に立ちます。

本書は、知恵を身に着けるために、デフォルト反応を抑える能力、論理的に思考し、自らを振り返る時間的スペースをつくる能力、効果的な決定を下すための原則やセーフガードを活用する能力を教えてくれます。

日頃の活動において、選択して決断し、実行する場面で、すぐに手に取って読み返せるよう、そばに置いておきたい一冊です。

目次

はじめに

序章 日常のクリア・シンキングが未来を決める

第1部 クリア・シンキングの敵

第2部 強さを磨く―本能を手なづけ追い風に変える

第3部 弱さをコントロールする

第4部 決断する―クリア・シンキングの実践

第5部 本当に大切なものを追い求める

おわりに クリア・シンキングの意義

訳者あとがき

参考

CLEAR THINKING(クリア・シンキング) 大事なところで間違えない「決める」ための戦略的思考法 | 日経BOOKプラス

はじめに:『CLEAR THINKING(クリア・シンキング) 大事なところで間違えない「決める」ための戦略的思考法』 | 日経BOOKプラス

クリア・シンキング | 日経BOOKプラス

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