書籍 富士通式! 営業のデジタルシフト | 友廣 啓爾(著)

書籍 富士通式! 営業のデジタルシフト | 友廣 啓爾(著)

このページ内の目次

富士通式! 営業のデジタルシフト

友廣 啓爾(著)
出版社:翔泳社 (2024/8/26)
Amazon.co.jp:営業のデジタルシフト

  • カルチャーを変え、売上の壁を超える方法

    生産性・利益率が大幅改善!
    巨大組織DX化の秘訣とは

本書は、富士通株式会社カスタマーグロース戦略室VPの著者が、営業部門のDX化のために立ち上げた専門チーム「デジタルセールス」をいかにして社内に浸透させていったのかを詳細に解説した一冊です。

実際に起こったエピソードを紹介しながら、周囲を巻き込んでDXを推進する方法を明らかにしていますので、ビジネスリーダーの方々が持続的に成長できる組織づくりのノウハウを学べます。

本書は4部8章で構成しており、営業DXの必要性から準備、実際の取り組みを通して組織全体へ拡大していくための変革ノウハウを詳細に解説しています。

第1部では、日本企業がDXに取り組む理由と背景を踏まえ、営業DX推進の障害となる要因を整理しています。

  • ・第1章では、日本企業の生産性が低い理由や習慣的な営業方法の問題を指摘たうえで、営業DXに取り組む効果を整理しています。
  • ・第2章では、日本の現在地は他国の企業と比べて後れを取っているとして、その背景にある課題を営業現場と経営とに分けて整理しています。

第2部では、営業DXを推進するための準備として、経営層や社内の各部門から協力を取りつける方法や、デジタルセールスの役割や成長戦略の描き方を紹介しています。

  • ・第3章では、デジタルセールスの組織づくりには2つの課題があるとして、営業や経営をはじめとするデジタルセールス外からの理解や協力を獲得するための「外向きの施策」を解説しています。
  • ・第4章では、課題の2つめの施策で、組織の役割を明確にし、今後の成長戦略を描く「内向きの施策」について、著者らの取り組み事例を紹介しながら具体的に解説しています。

第3部では、組織の拡大とメンバー増加に比例して生まれる新たな課題への対応策として、デジタルセールス内での人材育成とシステム構築の具体的な施策を解説しています。

  • ・第5章では、組織づくりの施策の1つめのヒトに着目した取り組みとして、採用やマネジメント、育成をキーワードに、メンバー全員が働きやすく、働き続けたいと思う組織マネジメントについて考察しています。
  • ・第6章では、2つめの施策として、メンバーの業務やコミュニケーションをデータでつなぐ役割を担い、組織を成長させていくための生命維持装置とも言えるシステム構築について解説しています。

第4部では、DXの効果を他部門を巻き込みながら拡大することで大きな成果に結びつくとして、営業DXから全社DXへ展開していくためのポイントを整理しています。

  • ・第7章では、「売り方」の変革を起点として、それを「売り物」と「売り先」の変革へと結びつけながら、DXの効果を全社展開していくための施策を紹介しています。
  • ・第8章では、今後の社会ではデータ活用が当たり前になり、データを簡単かつスムーズに活用できる環境整備が不可欠であるとして、社内でのデータ活用が当たり前になるように加速させる方法を紹介しています。

私はコロナ禍によって社会全体が大きく変わり始めた2020年に富士通株式会社に入社し、以来、営業活動のDX(営業DX)の実現に取り組んでいます。

私の前職は外資系企業で、幸運なことに複数の企業でDXによるビジネス変革を見る機会に恵まれました。

デジタル活用で先行するこれらの企業は、日本企業が目指す未来の経営を体現していました。

その取り組みと知見をフィードバックではなくフィードフォワードで富士通に導入したいと思ったのです。

生産性を伸ばすきっかけとなる営業DX

日本の企業(特に大企業)に共通するのは、成長の源泉である「ヒト・モノ・カネ」の全てにおいて競争力を失っている。

  • ・日本企業の多くは成長が止まった状態で、人材育成ができず、新商品の開発も停滞している。
  • ・給料の伸び悩みと非効率な業務によって、人材が他企業に流れている。

企業の成長力は「人員の数」と「生産性」の掛け算であり、生産性は「能率」と「効率」の掛け算で求められる。

日本は人口減少によって人員が増やせない不可抗力のハンディがあるため、成長のためには生産性を伸ばすしか方法はない。

日本は能率の点では世界トップクラスであるにもかかわらず生産性が低いのは、効率の低さに原因がある。

上意下達の企業文化や硬直的な組織運営といった旧態依然の企業体質が、日本企業の成長を鈍化させてきた。

この状態を変えるきっかけとなるのが営業DXであり、これにより営業活動が効率化て生産性が上り、成長性も高まることになる。

営業DX

営業体制の再構築

『富士通式! 営業のデジタルシフト』を参考にしてATY-Japanで作成

DXは営業活動の生産性を高め、営業体制の変革を促すのに加え、市場やニーズの変化に適応できる事業へと変わり、企業と事業のサステナビリティを高める。

営業DXは、営業活動に関わる部門や従業員がデータを共有し、活用できるようになり、以下の3つの効果がある。

効果1.営業活動の可視化

  • ・システムでデータ共有できる環境をつくれば、営業案件活動の進捗状況(パイプライン)を可視化できる。
  • ・各部門や各担当者の商談進捗や勝敗を管理でき、経営も各部門も確度が高い予算管理ができるようになる。
  • ・売上を増やすための改善策や戦略を描きやすくなる。

効果2.データ活用の促進

  • ・顧客、売上、市場などのデータを分析することで、日々の業務の中にある「ムリ・ムダ・ムラ」を抑えることができ、営業活動の生産性が向上する。
  • ・データ活用の環境を整えることで、顧客や市場が求めるものを導き出し、マーケットインの考え方で商品を開発、投入する考え方が浸透する。
  • ・営業活動が可視化され、実態がわかれば解決策も考えられる。

効果3.営業活動全体の再構築

  • ・御用聞きによる人間関係の構築、紹介を得るための信頼獲得といったアナログな取り組みから脱却する手段となる。
  • ・データ活用を基本とする新しい営業活動と組織体制に再構築する道を開く。
  • ・各部門の担当を明確にし、それぞれが各業務のプロフェッショナルとなって専門性を発揮すれば、営業部門全体の生産性を高めることにつながる。

皆さんにも、誰かが言い出すのを待つのではなく、最初の一人になっていただきたい、そんな背中をそっと押せる一冊になってほしいと願って止みません。

勇気と熱意を持って「言い出しっぺ」になってください。

そして、そのタイミングは「今」です。

失われた30年を取り戻すには遅いくらいです。

私たちもこれからです。

変革に終わりはなく、「これで十分」「もう大丈夫!」という状態になることはないでしょう。

本書が世に出た次の瞬間から、また新たな章の始まりです。

まとめ(私見)

本書は、営業部門のDX化のために新たに立ち上げた専門チーム「デジタルセールス」を設立してから3年間にわたる営業DXの推進を通じて得た実践知をまとめた一冊です。

著者は、コロナ禍によって社会全体が変わり始めた2020年に富士通株式会社に入社して以来、営業活動のDX推進に取り組んでいる方です。

その著者が、3年間で8,000人の営業部門をいかにしてDX化したのか、その取り組み過程における社内資料に加え、実際に起こったエピソードを惜しみなく紹介しながら詳細に解説していますので、ビジネスリーダーの方々が実践的な変革ノウハウを学べます。

なお、本書には体制や仕組み、デジタルツールの戦略的な活用も紹介していますが、投資規模や人材が豊富な大規模組織だけのもではなく、根底にある企業文化の変革に切り込んでいると読み取れます。

  • ・創業90年、営業部門8,000人、商談貢献350億円という富士通株式会社(大規模組織)のDX推進事例と読むのではなく、その取り組みの根本は中小規模の組織にも大変参考になります。
  • ・また、中途入社の著者だからこそ実現できた取り組みもありますが、多くのしがらみや長年培ってきた社内人脈のある既存リーダーの方々にとっても、DX推進に向けた多くの気づきを得ることができます。

多くの企業には、長い歴史の中で累積的に進化してきた営業スタイルがあり、さらには組織文化にまで刻み込まれています。

その営業活動を変革するのは、一朝一夕で実現できるもではないかもしれません。

しかし、急激に変化する経営環境に対応していくためには、誰かが旗振りを担わなければ永遠に変われません。

本書は富士通株式会社という巨大組織のDX化の取り組みであり、それを推進したの中途入社の著者でした。

歴史があり、しかも大きな組織には従来の営業スタイルや独自の文化が根付いているでしょうし、新たな取り組みや変わることへの抵抗もあったと思います。

それを中途入社の著者が3年で成果を上げられたのは、必要な戦略と実行、そして組織づくりに真正面から取り組んできたからであり、それを支援する経営陣やメンバーの存在があったからだと想像します。

現在、富士通株式会社は、Fujitsu Uvance(2021年10月7日発表)を成長のドライバーとして、サービスソリューションを中心に全社の収益性拡大を目指して、さまざまな構造改革を実行しています。

2024年度(2025年3月期)通期決算は、国内市場を中心にDXおよびモダナイゼーション商談が力強く伸長し、調整後当期利益(連結) は過去最高益を記録しています。

そして、2025年度(2026年3月期)を最終年度とした中期経営計画は、Fujitsu Uvanceの計画目標を達成する見込みです。

その背景には、多くの痛みも伴ったことでしょうし、本書で紹介している取り組みも貢献していると想像します。

DXを実現しても、「何のため」「誰のため」といった目的と、その目的を意地でも達成する熱意がなければ社会は変わらないと、著者は主張しています。

つまずくことがあっても他の責任にせず、常に熱意を失うことなく、継続してDX推進をやり切ることが重要です。

変革を継続していくためには、トップのリーダーシップに加え、推進リーダーが根気強く経営陣やメンバー個々に理解してもうように努め、周りを巻き込んで成功と失敗を繰り返し、その取り組みを組織文化にまで刷り込んでいかなければなりません。

本書は、DXという手段によって企業の競争力を高めていくための実践的なノウハウが詰まった一冊です。

目次

はじめに

第1部 営業DXの心得

 第1章 大きな組織に営業のDXが必要な理由

 第2章 DX推進が遅れる日本企業の課題

第2部 営業DXの準備

 第3章 営業と経営を味方にしてDX推進を加速

 第4章 デジタルセールスチームの発足とゴール設計

第3部 ウェルビーイングの確立と営業活動の可視化

 第5章 ウェルビーイングに着目した新たな組織づくり

 第6章 組織の成長を支えるシステム構築と活用

第4部 成果と組織全体への広がり

 第7章 DXの価値を他部門に広める

 第8章 企業を強くする持続的な営業DXの実現

出版に寄せて

おわりに

参考

富士通式! 営業のデジタルシフト カルチャーを変え、売上の壁を超える方法|翔泳社の本

富士通の営業変革チームが「50人の壁」を乗り越えるために組織から「徹底排除したこと」 | Japan Innovation Review powered by JBpress

関係する書籍(当サイト)

参考:デジタル化を牽引する新たな組織が必要性(当サイト)

参考:富士通の2024年度(2025年3月期)通期決算(当サイト)

富士通式! 営業のデジタルシフト

トップに戻る

関連記事

前へ

富士通とNECの中期経営計画と予想 | 富士通のFujitsu UvanceとNECのBluStellarともに目標達成見込み

Page Top