書籍 ザ・モデル THE MODEL(MarkeZine BOOKS) /福田 康隆(著)

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ザ・モデル THE MODEL(MarkeZine BOOKS)
マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス

福田 康隆(著)
出版社:翔泳社(2019/1/30)
Amazon.co.jp:ザ・モデル(THE MODEL)

 

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SaaS時代の成長戦略とオペレーションの全体像がわかる究極のプレイブック

顧客の購買プロセスの半分以上は、営業に会う前に終わっている

 

 

本書は、日米のオラクル、セールスフォース・ドットコムを経て、株式会社マルケト日本法人の代表を務める著者が、自らつくり上げてきた営業・マーケティング戦略の粋を解説した一冊です。

リード(見込み客)を獲得して受注に至るプロセスの中心となる機能を、マーケティング、インサイドセールス、営業(フィールドセールス)、カスタマーサクセスの4つとして、その分業スタイルのメリットを理解しながらも、共業していくための新たな方法論を解説しています。

著者がアメリカで経験した「営業を科学する」方法論に加え、顧客購買検討プロセスや企業の成長に伴う近年の変化を考慮した、新たなマーケティングと営業のあり方を提言しています。

その上で、著者が新たにつくり上げた「レベニューモデル」を提示しながら、それを実際にオペレーションしていく方法を詳細に解説していますので、営業プロセスの改革に取り組んでいるビジネスリーダーの方々にとって大変参考になります。

 

本書は5部で構成され、マーケティングオートメーション(MA)を中心に解説しながら、戦略論から組織マネジメントに至るまで幅広く展開しています。

第1部では、日米のオラクルからセールスフォース・ドット・コムを経て、マルケト日本法人の代表を務めるまでの著者の経験を俯瞰しながら、著者が学んだことを紹介しています。

  • ・特にセールスフォース・ドット・コムで経験したマーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス(営業)の分業体制による活動を紹介しています。
  • ・マーケティングと営業プロセスのパターンの一つである「ザ・モデル」を紹介しながら、日本で実践した経験がまとめられています。

第2部では、著者が学び、実践してきたビジネスの考え方を整理しています。

  • ・分業プロセスである「ザ・モデル」を「マーケティングが獲得した新規リードをインサイドセールスが素早くフォローして、商談として進められるものを選別し、営業に引き渡す」という分業だけでは、もはや通用しない時代になってきたことを指摘し、部門間の共業の必要性を提言しています。
  • ・その上で、著者が10数年、改善をくり返してつくり上げてきた、実践で使える「レベニューモデル」を紹介しています。

第3部では、マーケティングからカスタマーサクセスに至る、売上をつくり出すプロセスについて詳細に解説しています。

  • ・「レベニューモデル」において、顧客のステージを支える「マーケティング」「インサイドセールス」「営業」「カスタマーサービス」の各ステージ別に解説しています。
  • ・各ステージの役割に加え、設計時の留意事項や評価指標などについて、詳細に解説しています。

第4部では、プロセスを機能させ、ビジネスを成長させるために重要な「市場戦略」「リソースマネジメント」「パフォーマンスマネジメント」について、著者が日本法人を立ち上げた経験を紹介しながら解説しています。

第5部では、プロセスを動かすのは人であるとして、経営者のあり方やマインド、チームの育成などについて解説しています。

 

1996年に社会人になって以来、幸運なことに急成長した企業で経験を積むことができた。

その過程で「成功モデルを作り上げる過程に関わっていた人と、できあがった後に加わった人の間には大きな隔たりがある」ということに気がついた。

成功モデルとは完成したモデルではなく、完成に至る過程で行われた何百何千という意思決定プロセスそのものだからだ。

それを自分のものにすれば、環境や条件が変化しても自ら対応できる。

これこそ、私がビジネスで最も大事だと考えている「再現性」だ。

 

営業プロセスと主な役割

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本書『ザ・モデル』を参考にしてATY-Japanで作成

 

インサイドセールス(SR:Sales Representative):リードを商談化

フィールドセールス(AE:Account Executive):商談から受注

カスタマーサクセスマネージャー(CSM:Customer Success Manager):受注した顧客のリテンション(維持)

アウトバウンドのインサイドセールス(EBR:Enterprise Business Representative):ターゲットとする企業や業種から商談化

  • ・ADR:Account Development Representative
  • ・BDR:Business Development Representative

 

使われている主な用語

営業支援システム(SFA:Sales Force Automation):営業が商談管理を行うツール
基本的な機能:営業の活動記録、日報管理、コンタクト情報の管理、商談情報の管理など

リード(Lead):見込み客
展示会で獲得した名刺情報、Webサイトの入力フォームから獲得したコンタクト情報など

  • ・MQL(Marketing Qualified Lead)
    マーケティング部門が評価し、営業部門に引き渡してよいと認定したリード
  • ・SQL(Sales Qualified Lead)
    インサイドセールスが評価し、営業部門に引き渡してよいと認定したリード

クオリフィケーション(Qualification):一定の基準を満たしているかの判断
マーケティングからインサイドセールス、インサイドセールスから営業へリードや商談をパスする時に、それぞれの部門間で事前に合意した基準を満たしているかを確認すること

パイプライン(Pipeline):商談が受注に至るまでのプロセス管理
提案、見積提出、最終交渉などのフェーズ別管理

 

レベニューモデル

認知拡大 → リード獲得 → リード育成(育成対象外) → 有望リード → アポイント訪問 → 商談 → オンボーディング、アップセル・クロスセル

 

リード獲得
Webサイトの他、フォーム入力や名刺の獲得などを通じて、コンタクト情報を取得する。

有望リード
情報提供を通じて育成されたリードは、リードスコアリングや インサイドセールスによって、商談につながるかどうかのクオリフィケーションが行われる。

商談
実際に営業が「アポイント訪問」を実施し、クオリフィケーションが正しいことを確認する。

オンボーディング
受注後の顧客ステージで、サービス提供や活用のフェーズに入る。
顧客になってからは、コンサルティング、カスタマーサポート、トレーニング、コミュニティ、カスタマーサービスなどが一体となって顧客体験を支えていく。

リサイクル
・「リード育成」から「有望リード」へのクオリフィケーションで落ちたもの、アポイントにに至らなかったもの、商談まで進んだが失注したものなどを全て格納し、再度検討プロセスに戻す。
・直線型ではなく、循環型のモデルを構築することができれば、ビジネスは成長してく。

 

実際のオペレーションに活かすためには、顧客ステージの設計が重要である。

顧客ステージを設計する上では、「チャネル」「施策・コンテンツ」「移行判定基準」が重要な概念となる。

  • ・顧客をステージから次のステージへと動かす目的で行われるのが、企業と顧客とのコミュニケーションである。
  • ・コミュニケーションとは、伝えたいメッセージを「コンテンツ」化し、オンライン・オフラインを問わず様々な「チャネル」を通じて行われる。
    この過程でデジタルな「チャネル」を通じて顧客のデータを収集し、よりパーソナライズしたコミュニケーションを行う。
  • ・そのデータを活かして、現在顧客がどのステージにいるかを判断する。
    そのために、顧客が次のステージに移行したことを判断する客観的な「移行判定基準」が必要となる。

 

ステージ別の設計ポイントと評価指標

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本書『ザ・モデル』を参考にしてATY-Japanで作成

 

マーケティング・コミュニケーションの役割

  • ・目的は見込み客を次のステージに進めることであるため、次のステージへ動かすためには、どのようなチャネルが有効なのかを考える。
    認知拡大:Web広告、トップページ、オウンドメディア
    リード獲得:Webコンテンツ、展示会、セミナー
    リード育成:会員サイト、情報提供メール、キャンペーン
    有望リード:ファーストコール(インサイドセールス)
    アポイント/訪問:インサイドセールス、営業
    商談:営業
    受注:営業、カスタマーサクセス
  • ・ステージごとに有効なチャネルをマッピングし、それぞの施策を実行し、その効果を検証する。
  • ・顧客ステージ・チャネル・施策の一貫した関係をつくり、マーケティングの可視化を図る。

インサイドセールスの役割

  • ・営業とマーケティングとの間で「商談化の基準を合わせる」ことが重要であると同時に、どこにボトルネックが発生しているかを見つけ、常にこの基準を調整し続ける。
    → 部門と部門とのつなぎ目で起きていることに注視
  • ・どれだけ業務効率を上げられるかが成果に直結し、マーケティングオートメーション(MA)の登場により活動も変化してきた。
  • ・インサイドセールスや営業がフォローすべき基準を満たすリードを選別する仕組みである「リードスコアリング(属性スコア・行動スコア)」で、フォローの優先順位を決める。
  • ・MAでリードフォローのタイミングを設定し、アプローチを自動化する。
  • ・リサイクルリードを定期的に掘り起こす。
    購入は今でないというリードは新規リード全体の65%程度であり、この65%を商談化に結びつける。

カスタマーサクセスの役割

  • ・顧客と自社の利害が一致したところに生まれる部署であり、競合他社との差別化につながる。
    = 会社の文化
  • ・「オンボーディング」というサービス提供や活用のフェーズに入り、カスタマーサポート、トレーニング、コミュニティ、プロダクト、カスタマーサクセス、コンサルティングなどが一体となって顧客体験を支える。
  • ・顧客の利用状況をトラッキングして解約リスクを検知する。
  • ・満足度が高まった顧客は契約更新や「アップセル/クロスセル」につながり、ロイヤルカスタマーとして新しいリードや市場への認知に貢献してくれる。
    = 終点はロイヤルカスタマー獲得という直線的なモデルではなく、ロイヤルカスタマーから再び認知拡大へとつながっていくループ型である。
  • ・向いている人材
    = 「活用支援」と「契約更新」に分けた保有スキル、社内のハブになれる人、「顧客に教える」ではなく「顧客に学ぶ」姿勢がある人
  • ・営業との融合が重要
    = 新規契約の獲得よりも、中長期的に利用・拡大につなげられる能力を持った人材が中核的な存在となる。

 

私はこれまでの20数年間、常にITベンダーとしてERP、CRM、MAなどのソリューションを提供する側にいた。

ITツールは、導入すればすぐに効果が出る魔法の杖ではない。

(略)

ITはまさしく人間の能力を増幅する、人類が産み出した道具の1つである。

だからこそ、自分に合ったものを選ばなければならない。

(略)

だから、ツールの選択を人任せにしないでほしい。

理念にあったITツールを選ぶことができれば、必ずあなたの会社や社員の能力を何倍にも増幅してくれるだろう。

 

まとめ(私見)

本書は、著者の成功体験に加え、失敗例やその判断理由なども詳しく紹介されていますので、主にBtoB企業における営業とマーケティングの組織作りから戦略構築までを学ぶことができます。

さらに、経営やマネジメントの視点からの基本戦略として、市場の捉え方、リソースマネジメント、パフォーマンスマネジメントについても解説されていますので、営業・マーケティング戦略に限定した書籍ではありません。

「プロセス」では、顧客ステージの遷移を的確に進めるために、複数の部門が連携して、どのように顧客ステージを管理し、適切にアプローチしていくかのルールが重要となります。

かつては、Webサイトのフォーム入力、展示会などで集めた名刺から得られる会社名や役職及びメールアドレスなどの属性情報を基に営業がフォローしていました。

しかし現在では、顧客との接点は多様化しています。

マーケティングオートメーション(MA)を活用することにより、基本的な属性情報の他に、Webサイトへのアクセスやメール開封・クリックなどのオンラインチャネルの行動情報もトラッキングできるようになります。

顧客とのコミュニケーションがより重要視される中、顧客に関わる多くの情報をMAで事前に蓄積し、関心がありそうな情報を選んでパーソナライズして提供することもできます。

さらに、顧客のデジタルシフトが進めば進むほど集まるデータが増加し、より精度の高い顧客プロファイル分析が可能になります。

MAは単なる「マーケティングの自動化」ではなく、「マーケティングと営業に対する有能なサポート部隊」となり得ます。

 

本書の大部分(第2部と第3部)は、著者が10数年、改善をくり返してつくり上げてきた「レベニューモデル」の顧客ステージに基づいて、各プロセスの役割や設計時の留意点、計算式や具体的な数値を示した評価基準などを詳細に解説していますので、自社及び自らの事業に当てはめて活用することができます。

さらに第4部では、プロセスを機能させビジネスを成長させるための基本戦略「市場戦略」「リソースマネジメント」「パフォーマンスマネジメント」、第5部では、プロセスを動かすための人材・組織・リーダーシップのあり方について、著者が日本法人を立ち上げた経験から解説しています。

この第4部と第5部は、ベンチャービジネスや事業創造などにおける解説というよりも、新たな事業を始めるに当って、マーケティングや営業プロセスを機能させていくためのガイドとして活用できます。

 

マーケティング、インサイドセールス、営業、カスタマーサクセス

かつては、それぞれの部門が独立して効率化を目指してきましたが、顧客との接点が多様化している現在では、全ての部門が共業して顧客体験価値を高めていかなければなりません。

そのためには、全社員が自社のビジョン・ミッション・バリューを理解して、顧客とのリレーションシップを全社で高めいく仕組みが必要です。

営業プロセスの管理だけではなく、戦略、プロセス、人材・組織・リーダーシップという一連の観点から、自社にとっての「ザ・モデル」を構築していくためのヒントを得ることができる一冊でした。

 

目次

序文 アレン・マイナー

はじめに

第1部 アメリカで見た新しい営業のスタイル

第1章 マーク・ベニオフとの出会い

第2章 営業のプロセス管理

第3章 「ザ・モデル」のその先へ

第2部 分業から共業へ

第4章 2つの変化

第5章 分業の副作用

第6章 レベニューモデルの創造

第3部 プロセス

第7章 マーケティング

第8章 インサイドセールス

第9章 営業(フィールドセールス)

第10章 カスタマーサクセス

第4部 3つの基本戦略

第11章 市場戦略

第12章 リソースマネジメント

第13章 パフォーマンスマネジメント

第5部 人材・組織・リーダーシップ

第14章 人材と組織

第15章 リーダーシップ

おわりに

 

参考

THE MODEL(MarkeZine BOOKS)特設サイト、翔泳社

 

マルケトの「エンゲージメントマーケティングプラットフォーム」

 

【世界で6000社が採用】マーケティングオートメーション(MA)のツールならマルケト

「マーケティングチームは何をしているのかわからない」と言われないために、成果を数字で説明する

改めて聞きたいマーケティングオートメーション(MA)とは何か?

顧客管理(CRM)とマーケティングオートメーション(MA)の関係性と違い、導入のメリットとは?

マーケティングオートメーション(MA)とは

 

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