書籍 デジタル時代のイノベーション戦略/内山 悟志(著)

書籍 デジタル時代のイノベーション戦略/内山 悟志(著)

このページ内の目次

デジタル時代のイノベーション戦略
THE STRATEGY OF DIGITAL INNOVATION

内山 悟志(著)
出版社:技術評論社 (2019/6/7)
Amazon.co.jp:デジタル時代のイノベーション戦略

  • これまで実現できなかった新たな価値を創出するには?

    日本におけるITアナリストの草分け的存在として、30年以上のキャリアを誇る著者の視点と方法論を集大成

関連書籍
 2021年06月01日 トニー サルダナ『なぜ、DXは失敗するのか?』東洋経済新報社 (2021/4/2)
 2021年05月12日 西山 圭太『DXの思考法』文藝春秋 (2021/4/13)

本書は、株式会社アイ・ティ・アールの創業者で、現在はエグゼクティブ・アナリストとして、大手企業のIT戦略立案・実行及びデジタルイノベーション創出のためのアドバイスやコンサルティングを提供している著者が、デジタルトランスフォーメーション時代の成功法則を体系化した一冊です。

日本のITアナリストの草分けとして30年以上のキャリアを誇る著者が、企業が5年後、10年後に生き残っていくために何をすべきかを、独自の視点と方法論の集大成として整理していますので、デジタルイノベーションを推進しているビジネスリーダーの方々にとってのガイドとなります。

本書は7章で構成されており、これまでの著者の活動の中で得られた数多くの失敗や成功の経験をもとに、イノベーションの必要性とその方向性、デジタルイノベーションのビジネスモデル、創出のための環境整備と企業内改革の進め方を整理しています。

  • ・第1章では、デジタルによる変化として「時間の単位」と「仮想的な体験や価値」をあげて、デジタルイノベーションの必要性を提言し、注目すべき4つのデジタル領域について業種別に整理しています。
  • ・第2章では、デジタルイノベーション推進を「Why」「Where」「What」「How」の4つのステージを定義し、その遂行プロセスや行動様式を整理しています。
  • ・第3章では、デジタルイノベーションを起こしていく際の対象領域と適用パターンを理解することが重要として、「提供する価値×顧客層の観点」でイノベーションのポートフォリオを示しています。
    そして、デジタルイノベーションの事例を分類し、「データに着目したイノベーション」と「つながりに着目したイノベーション」のそれぞれ7つ、計14のパターンがあることを具体的な事例を紹介しながら整理しています。
  • ・第4章では、デジタルビジネスの位置取りを決めることが重要として、デジタルエコシステムとプラットフォーム戦略を説明し、活用することが有効となる特徴的なビジネスモデルとして「シェリングエコノミー」「APIエコノミー」「製品のスマート化」を詳細に解説しています。
  • ・第5章では、デジタルイノベーションを創出するための方法論やプロセスについて、「外部環境変化を起点とした新C-NESアプローチ」や「イノベーション創出のための発想法」など、従来のビジネス戦略や業務プロセス改革の手法とは違う、デジタルイノベーションの特徴を考慮したアプローチを示しています。
  • ・第6章では、イノベーションを実現するための企業内の環境整備に向けて、環境整備の成熟度を5段階に分け、求められる5つの企業内変革を示しながら、立ちはだかる2つの壁を超える方法を提示しています。
  • ・第7章では、企業全体を変革していくための仕組みや仕掛けを提言しています。
    特に、デジタルイノベーションに向けた「意識」「組織」「制度」「権限・プロセス」「人材」のそれぞれの成熟度を5段階で示し、レベルアップに向けた対応策を提示しています。

従来の製造業、小売業、金融業などのビジネスがすぐになくなるわけではありませんが、事業のあり方や顧客への価値提供の方法は大きく変わっていくことが予想されます。

「不確実性の時代」といわれる今日において、過去の常識や成功体験に基づいて立案した戦略や、これまで培ってきた競争優位が、今後何年にもわたって有効に機能することはないと考えるべきです。

先行きの予測が困難な時期には、「何もしないで嵐が通り過ぎるのを待つ」という姿勢が蔓延しがちですが、それで乗り切れる情勢ではなくなっており、自ら行動を起こして変革の渦の中に飛び込んでいかなければなりません。

デジタルイノベーション

デジタルイノベーションとは、デジタル技術やデジタル化された情報を活用することで、企業がビジネスや業務を変革し、これまで実現できなかった新たな価値を創出することである。

現在の「デジタル」という言葉で表現される変化

  • ・時間の単位
    技術が生まれてから多くの人がそれを利用するまでの時間が急速に短くなっている。
  • ・仮想的な体験や価値
    デジタル技術が作り出す仮想空間で、モノの交換、仕事や遊び体験、人と人とのつながりが実現できるようになった他、「モノを買って所有する」という価値観も変化してきた。

デジタル技術を使うことで、イノベーションへの取り組みを、安く手軽に始められるようになり、イノベーションによって以下のようなことが期待できる。

  • ・過酷な価格競争から脱却する。
  • ・これまでとは異なる優位性を獲得する。
  • ・全く新しい市場や顧客層を開拓する。
  • ・新製品や新サービスを生み出す。
デジタルイノベーションで注目すべき領域

ビジネストランスフォーメーション

  • ・デジタル技術を使って事業や業務を変革する。
  • ・例:3D技術を使ったモノづくり、スマート物流、無人レジ、設備の遠隔点検など

カスタマーエンゲージメント

  • ・顧客のデジタル武装に対応する。
  • ・例:ソーシャルマーケティング、顧客の声(VoC)分析、店舗内の顧客導線分析、問合せロボットなど

フューチャーオブワーク

  • ・新しい働き方と組織運営を切り開く。
  • ・例:業務の自動化・省人化、テレワーク・在宅勤務、会議改革、意思決定プロセス変革など

デジタルエコノミー

  • ・デジタルを前提とした事業や業態を創出する。
  • ・例:異業種間連携、プラットフォームビジネス、シェアリングサービス、データ提供サービスなど

デジタルイノベーションの推進ステージと遂行プロセス

digital-innovation-process

本書『デジタル時代のイノベーション戦略』を参考にしてATY-Japanで作成

イノベーションのゴールは、「会社全体がイノベーティブな会社に生まれ変わる」ことである。

企業風土や制度を含め、イノベーションを生み出す環境が整備され、社内のだれもが意識することなく、当たり前のようにイノベーションを創出できる状態になることであるが、多くの企業には4つの壁がある。

Whyの壁:なぜ、イノベーションが注目されており、必要なのか?

  • ・経営者や現場スタッフを含む全ての人が、イノベーションの重要性を理解し、変革意識を持って臨まなければならない。
  • ・経営者を含む全社員の変革意識を醸成する。

Whereの壁:イノベーションによって、どこを目指すのか?

  • ・仮説でもかまわないので、変革の先に目指す自社の姿を示すことが重要である。
  • ・初期段階では、デジタルイノベーションのビジョンを描き、変革対象に関する方針を立てる。
  • ・「イノベーションの環境整備と企業内変革」は、「デジタルイノベーションの創出及び推進」と同時並行的に進めていくが、どのような企業像を目指すかを決めることは重要である。

Whatの壁:イノベーションに向けて、何をすべきなのか?

  • ・どの分野に取り組むか、その際に社内の制度や組織の変更といった環境整備が必要な場合は、どこから着手するかなどをきめなければならない。
  • ・組織や制度及びプロセスなど、具体的に何を変えていくのかの施策を立案する。
  • ・対象領域を変革するための具体的な施策、課題解決や事業化のための具体的な施策を立案する。

Howの壁:イノベーションを、どのように進めるか?

  • ・対象となる変革要素をどのように変えていくかを決定する。
  • ・どのような技術で、どのようなサービスやビジネスモデルで、実現していくかを決定する。
デジタルネイティブ企業の行動様式

デジタル技術の活用を前提としたビジネスをコアコンピタンスとして設立された企業「デジタルネイティブ企業」は、一般的に以下の行動様式を持っている。

顧客中心

  • ・顧客を中心にすえ、顧客にとっての体験を完璧なものにすることに力を注ぐ。

リスクテイク

  • ・行動するリスクを、行動しないリスクと比較してポートフォリオを管理する。

計画より実験

  • ・アイデアを探求し、テストする。実験が失敗したら、別のことを試す。
  • ・ビジネスモデルを流動的に扱い、随時分析をしてモデルを発見したり、洗練させたりする。

自前主義と脱自前主義のメリハリ

  • ・自社で持つべきものと、他社を利用するものとを明確に分ける。
  • ・デジタルエコシステムを巧みに形成し、まわりを巻き込み、競争相手とさえ部分的に協調する。

迅速かつ民主的な意思決定

  • ・客観的データと関係者ひとり一人の意見を重視する。
  • ・フラットな組織を構成し、現場を知るメンバーの意見を反映したオープンな意思決定を探り入れる。

個人の重視

  • ・正解がない時代だからこそ、自分たちでゴールを設定する必要がある。
  • ・個人を尊重し、評価や報酬、働き方、職場環境などに気を配る。
  • ・経営トップからの情報発信や社内コミュニケーションを大切にする。

クレイトン・クリステンセン教授の『イノベーションのジレンマ』(翔泳社)の邦訳が出版されてから約20年が経過しました。

その頃、さまざまな業界の経営者やCIO(最高情報責任者)と『イノベーションのジレンマ』について議論したことを今でもよく覚えています。

(略)

アマゾン、ウーバーなどに代表されるデジタルディスラプターや、金融業界を脅かすフィンテックベンチャーが巻き起こしているのは、「モノ」のイノベーションではなく、「コト」のイノベーションです。

(略)

デジタルイノベーションへの取り組みにおいて、日本はほかの国・地域から水をあけられているといわざるをえません。

(略)

もう1つ、日本の特に大企業にとってイノベーションを阻害する重大な要因があります。それは、組織マネジメントの問題です。

(略)

一方、これまでも日本企業は幾多の難を乗り越えてきたことも事実です。

(略)

本書を手に取って最後まで読んでいただいたなら、小さくてかまいませんので、ぜひとも最初のひと転がりのチャレンジをしてみてはどうでしょうか。

そうした1人1人の小さなチャレンジの積み重ねが、全社全体を、そして日本を変えていくと信じています。

まとめ(私見)

本書は、デジタルトランスフォーメーション時代の成功法則を体系化した一冊です。

日本のITアナリストの草分けとして30年以上のキャリア経験を持つ著者が、独自の視点と方法論を提言しています。

  • ・デジタルイノベーションで注目すべき4つの「デジタル領域」
  • ・デジタルイノベーションの遂行プロセス
  • ・デジタルネイティブ企業を支える6つの「行動様式」と、8つの「実践する制度や活動」
  • ・「データに着目」と「つながりに着目」の両面から、革新の方程式をまとめた14の「デジタルイノベーションのパターン」
  • ・イノベーションのアイデア創出のための「新C-NESアプローチ」
  • ・求められる5つの企業内変革として、「意識・組織・制度・権限・人材」を変革する方法、そのための5段階の「成熟度」

どの内容も、デジタルイノベーションを推進しているビジネスリーダーの方々にとって、自社及び自らの事業の「変革の方向性」を考えていくうえで大変参考になります。

例えば第1章では、デジタルイノベーションで注目すべき4つの「デジタル領域」を示しながら、デジタル化による変革を業種ごとに整理されていますので、自身の業種に当てはめて考えていくうえでのヒントになります。

本書では、デジタルイノベーションを推進していくための具体的なフレームワークや手法などは示してはいませんが、デジタル技術を活用したイノベーションの領域から、適用パターンとアプローチ方法、イノベーションに向けた環境整備に至るまで、変革に向けた考え方を幅広く整理しています。

今や様々な業界において、デジタルディスラプター(破壊者)と呼ばれる新勢力が台頭してきています。

デジタルディスラプターは、デジタル技術を武器に、これまでとは全く異なるビジネスモデルで既存の業界構造や商習慣を破壊し、既存企業の優位性を大きく揺るがす存在となってきています。

イノベーションは、一部の組織や人が推進して実現できるもではありません。

経営者から現場スタッフを含む全員が、イノベーションの重要性を理解し、変革意識を持って挑んでいくことが必要となります。

会社全体がイノベーティブな会社に生まれ変わる
企業風土や制度を含め、イノベーションを生み出す環境が整備され、社内のだれもが意識することなく、当たり前のようにイノベーションの創出に状態となる。

本書は、デジタルとイノベーションの本質を理解し、自社や自らの事業が「今後生き残っていくために何をすべきか」を考えていくうえで大変参考になる一冊です。

目次

はじめに

第1章 なぜイノベーションが必要なのか

1.1 デジタルとイノベーションの本質とは

1.2 デジタルディスラプターがあらゆる業界を揺るがす

1.3 注目すべき4つのデジタル領域

第2章 イノベーションによってどこを目指すか

2.1 企業の意識とステージを把握する

2.2 デジタルイノベーションの方針をつくる

2.3 デジタルネイティブ企業の6つの行動様式に学ぶ

第3章 どのようなイノベーションを起こすのか

3.1 イノベーションの方向性を見定める

3.2 データに着目した7つのイノベーションの14のパターン

3.3 つながりに着目した7つのイノベーション

第4章 デジタルイノベーションのビジネスモデルとは

4.1 エコシステムとプラットフォーム戦略

4.2 シェアリングエコノミーの台頭

4.3 API公開によるビジネス価値創造

4.4 IoTを活用した製品のスマート化

第5章 どのようにイノベーションを進めるか

5.1 アイデア創出のプロセスを見直す

5.2 イノベーション創出のための発想法

第6章 どのようにイノベーション創出の環境を整えるか

6.1 イノベーションに向けた環境整備

6.2 2段階方式で進めるイノベーション

第7章 どのように企業内変革を進めるか

7.1 イノベーションが「企業風土」といえるほど浸透するよう意識を改革する

7.2 全社的な視点を持ち,組織横断的な活動が進められる組織を作る

7.3 活動を抑制する制度を緩和し,挑戦しやすくなるよう整備する

7.4 だれもが自由に,素早く活動できるよう権限とプロセスを変革する

7.5 イノベーションを担う人材を確保し,育成する

おわりに

参考

企業のIT戦略アドバイザー ITR

[特集]デジタルイノベーションの潮流

関係する書籍
デジタルトランスフォーメーション関係(当サイト)
デジタル時代のイノベーション戦略

トップに戻る

関連記事

前へ

書籍 ザ・モデル THE MODEL(MarkeZine BOOKS) /福田 康隆(著)

次へ

デジタルイノベーションの方向性と適用パターン、環境整備に向けた企業内変革と成熟度

Page Top