書籍 デジタル・ビジネスモデル 次世代企業になるための6つの問い/ピーター・ウェイル(著)

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デジタル・ビジネスモデル 次世代企業になるための6つの問い

ピーター・ウェイル(著)、ステファニー・L・ウォーナー(著)
出版社:日本経済新聞出版社(2018/11/17)
Amazon.co.jp:デジタル・ビジネスモデル

 

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自社が目指すDXがわかる

MIT著名教授らによる待望の書!

 

 

 

本書は、マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院情報システム研究センター(MIT CISR)の主任教授を務める著者らが、自社のデジタルトランスフォーメーションをどれぐらいまで目指せばよいのかをガイドした一冊です。

リーダーの方々が、6つの問いを自社に当てはめながら読み進め、自社のデジタル化の成功モデル4類型のどれを目標とすべきかを考える際のヒントを得ることができます。

特に本書は、既存企業、しかも大企業の視点から言及しており、自社にふさわしいデジタル・ビジネスモデルを見出し、構築していくためのステップを「6つの問い」として示してしますので、「デジタルによるビジネス改革」成功のポイントを理解することができます。

 

本書は、序章と6章、終章の3つで構成されているのに加え、「訳者あとがき」では「6つの問い」について日本企業が特に留意すべき点を含めて振り返っています。

序章では、デジタル化された世界での成功要因やデジタルディスラプションの3形態を解説し、本書のキモである「デジタル・ビジネスモデル(DBM)・フレームワーク」と「変革のための6つの問い」の要点を解説しています。

そして、第1章~第6章では、「変革のための6つの問い」を1章に一つずつ解説し、自社の位置づけを知る上で役立つ自己診断、業績上位企業のデータが提供されています。

  • ・第1章では、デジタル化により大企業が直面している様々な脅威と事業機会を考察し、自社の脅威レベルを判断することができます。
  • ・第2章では、実現可能な4つのビジネスモデル「デジタル・ビジネスモデル(DBM)・フレームワーク」に焦点を当てて、先進企業がビジネスモデルをどのように変化させてきたかを示しています。
    ここでは、必ずしも全ての企業がすぐにエコシステムドライバーになれるわけではなく、目指すべき中間目標があることを示しながら、自社にとっての最善策を判断することができます。
  • ・第3章では、競争優位の主な源泉を特定し活用する方法を説明し、先進企業は3つの能力の中から一つ又は複数を用いて競争していることの例を参考にしながら、自社の競争優位性を特定することができます。
  • ・第4章では、次世代企業の成功に欠かせないコネクティビティの重要性について考察し、事業機会があってもビジネスモデルの変革に必要な厳しい選択を行う意思を持って増収増益を達成した先進企業を紹介しながら、「管理されているモバイル機器やデジタル資産をどのように利用するか」を迫っています。
  • ・第5章では、過去にうまくいった経営手法の微修正レベルではデジタルエコノミーでは成功できないことを論じ、組織体制、スキル、組織改革の実践的活動に対して投資する必要があるとしています。
    そして、「デジタル文化と体制構築」と「イノベーションとコスト削減の二刀流」の2つの重要な活動について論じ、DBMフレームワークに立ち戻って「次世代企業に必要な8つの組織能力」を特定しています。
  • ・第6章では、次世代企業を構築する際にリーダーが果たすべき重要な役割について論じ、自社で不足しているリーダーシップを特定するのに役立つ診断ツールを提供し、次世代企業に向けた変革の始め方について提言しています。

迫りくるデジタルエコノミーにおいて、多くの企業は過去にうまくいった経営手法を少し変えたぐらいでは成功することはないだろう。

大企業は大きな顧客基盤と高い収益性を持っているが、顧客体験に統一性がないことがあるので、デジタルディスラプションの標的となるのは大企業の方である。

デジタル化された世界で成功するには、あらゆる規模の企業がビジネスモデル、従業員、組織構造、重要なコンピテンシー、企業文化を含めて自社を改革し、組織に大幅な変更を加える必要がある。

簡単に述べれば、あなたの会社が顧客と良い関係を作れるかは、顧客とやりとりするためのデジタル的な方法を新しく創り出せるかどうかにかかっている。

 

デジタルトランスフォーメーション

デジタルトランスフォーメーションは、技術の問題ではなく変化の問題であり、起こるかどうかではなく、いつ、どのようにして起こるかという問題である。

重要なのは、デジタル技術によって実現できる新しく魅力的な何かを顧客に提供し、顧客が訪問したいと思う場所を創り出すことで、自社の事業を差別化することである。

デジタルディスラプションは、「新規参入」「伝統的ライバル企業の新たなビジネスモデル」「業界を超えた参入」の3つの形で到来する。

 

デジタル・ビジネスモデル・フレームワーク

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本書を参考にして一部加筆

 

ほとんどの企業は、2つの側面から変革を模索しており、その側面をフレームワークの軸としている。

  • ■縦軸:自社の最終顧客についてのナレッジ
    ・顧客の属性、自社及び他社の購買履歴、顧客が成し遂げたいことを知ること
    ・自社の最終顧客が望むものを、よりよく理解し、提供する。
  • ■横軸:ビジネスデザイン
    ・誰が主要な意思決定をコントロールしているか(例えば、ブランド、契約、価格、質、参加者、知的財産権、データの所有権、規制)
    ・企業、デバイス、顧客がより強調したネットワークの中で事業を行い、全ての参加者にとっての価値を創出する。

 

今日の企業は、上かつ右に移動しなければならないが、そのためには自社の最終顧客についてさらに学び、かつビジネスのデザインを変革して、他社とのパートナーシップをさらに促進し、自社をよりオープンにする必要がある。

  • ・上に移動させる投資を行う。
    自社の顧客に関するナレッジの収集、統合、生成に力を入れることで、顧客体験を改善し、よりターゲットを絞った成功する製品やサービスを提供できるようになる。
  • ・右への移動を試みる。
    顧客に直接サービスを提供するという関係性から、パートナー企業を活用してより幅広いサービスを提供するという、より広がりのある関係性へと移行する。

通常、エコシステムドライバーに近づけば近づくほど、自社の企業としての強みを特定し、デジタルサービスを通じて他社がそれを利用できるようにすることが求められる。

大企業がエコシステムドライバーになろうと試みるとき、いくつかの業界において企業統合が進み、モジュラープロデューサーとともに現れる傾向がある。

 

1.サプライヤー

他の企業を通じて販売する生産者

例:代理店経由の保険会社、小売店経由の家電メーカー、ブローカー経由の投資信託など

自社の最終顧客に関して部分的にしかわかっておらず、通常は別企業のバリューチェーン、より有力な企業のバリューチェーンの中で事業を行っている場合が多い。

企業のデジタル化が進むと、サプライヤーはますます影響力を失い、継続的に値下げ圧力にさらされる可能性が高く、業界再編が加速することになる。

 

2.オムニチャネル

ライフイベントに対応するための、製品やチャネルを越えた顧客体験を創り出す統合されたバリューチェーン

例:銀行、小売、エネルギー企業など

企業は物理的チャネルやデジタルチャネルを含め、複数のチャネルにわたり顧客が自社製品にアクセスできるようにすることで、ゆり豊富な選択肢とシームレスな体験を提供している。

最終顧客とその目標やライフイベントに関するナレッジを増やしつつ、顧客の離脱を抑えて、DBMフレームワークの垂直軸を上昇することにチャレンジしている。

 

3.モジュラープロデューサー

プラグ・アンド・プレイの製品やサービスのプロバイダー

例:ペイパル、カベッジなど

生き残っていくためには、自社の中核的な活動領域において、最も優れたモジュラープロデューサーの一つになることである。

そして、自社の製品やサービスを常に変革し続け、顧客にとっての最善の選択肢かつ適切な価格であるようにしなければならない。

 

4.エコシステムドライバー

エコシステムの統括者
企業、デバイス、顧客の協調的ネットワークを形成して、参加者すべてに対して価値を創出する。

特定領域(例えばショッピングなど)において、多くの顧客が目指す場所であり、補完的サービスや時にはライバル企業の製品も含め、よりすばらしい顧客サービスを保証する。

例:アマゾン、フィデリティ、ウィーチャットなど

顧客のニーズを満たすため、自社サービスを補完するサービスを提供する他社と関係することにより、デジタルエコシステムを確立し、特定の顧客に対してフルラインサービスを提供する。

自社ブランドの強みを活かして参加者を引き付け、最高の顧客体験を保証し、ワンストップショッピングを提供する。

オムニチャネル企業と同様に、最終顧客についてのナレッジを増大させて顧客とのリレーションシップを「手の内に入れる」ことを目指し、特定の顧客にとって唯一の「目的地」になろうとする。

 

次世代企業に必要な8つの組織能力

大企業の多くは、変革に当たって上に移動してから右に移動する方法を選択し、オムニチャネルモデルを経由してエコシステムドライバーになることを目指す。

上と右への移動を推進したいのであれば、自己改革につながるようなオプションに投資を開始して、その過程で業績改善をしながらデジタル文化を創出し、デジタルエコノミーで成功するために必要なことを学ぶ。

DBMフレームワークで上へ移動するための能力
最終顧客に関するナレッジと、そのナレッジに基づいて行動する力を強化する。

  • 1.顧客のライフイベントに関する重要な情報を収集し、活用する。
  • 2.顧客の声を社内にしっかりと伝番させる。
    顧客中心主義を自社のあらゆる活動で徹底させる。
  • 3.顧客、オペレーション、市場、ソーシャルメディアのデータを活用して、データに基づく意思決定の文化を創出する。
  • 4.複数の製品やチャネルにまたっがて統合された顧客体験を提供する。

DBMフレームワークで右へ移動するための能力
ビジネスデザインをバリューチェーンからエコシステムへと移行させる。

  • 5.自社の特徴を際立たせ、最優良顧客に特定のニーズが生じたときに最初に訪問される場所になる。
  • 6.優れたパートナー及び買収先を見定め、関係を発展させる。
  • 7.自社の競争優位の源泉をサービス化する。APIを通じて外部に提供する。
  • 8.効率性、セキュリティ、コンプライアンスを企業の行動特性として根付かせる。

 

本書を通しておわかりのように、問われているのは、あなたの会社が生き残り繁栄するするために必要な変革を「行なうべきかどうか」ではなく、「いつ、どのように行うか」である。

デジタル時代に最も成功する企業は、イノベーションとコスト削減を両立できる「二刀流」にならなければならないだろう。

そしてこのような成功企業は、顧客について深く学ぶことに焦点を当てた革新を行うとともに、企業の垣根を取り払ってパートナーの力を最大限活用することになる。

さらに、業務の簡素化と自動化を通して年々徹底的なコスト削減を行い、より効率的な企業になるはずだ。

このような「二刀流」の力を身につけない限り、スタートアップ企業や他業界の企業、より俊敏なライバル企業に自社の事業を削り取られ、ほとんど何も残らなくなってしまうだろう。

 

まとめ(私見)

本書は、著者がMIT教授でありながら実践的な要素が強く、既存企業が「デジタルによるビジネス改革(デジタルシフト)」していく上での解説書となります。

特に、「デジタル・ビジネスモデル(DBM)・フレームワーク」は、デジタル時代における自社の位置付けや競争環境、今後進むべき方向を確認する際に参考となります。

そして、「次世代企業になるための6つの問い」に順番に答えていくとにより、DSMフレームワークを使用した変革を推進していく上でのガイドとなります。

さらに、「6つの問い」には自己診断があり、業界や業績上位企業の平均などのデータも紹介されいますので、自社の現在の位置づけや今後の活動の方向性を考えていく上で大変役立ちます。

なお、自己診断のスコアデータは海外の事例ですが、自社が改革していく上での議論の出発点となったり、必要な行動を見極めるのに役立つ強力なツールとなります。

 

「デジタル・ビジネスモデル(DBM)・フレームワーク」や「次世代企業になるための6つの問い(6ステップ)」は大変参考になりますが、やはり変革を実現していくためにはリーダーの存在が重要になってきます。

リーダーには、脅威に対する共通の理解をつくり上げ、自社が目指すポジションを決定し、ビジョンを全社に伝えることに加え、意思決定権や組織変革に関する難しい選択が求められます。

そして、教育やインセンティブ、投資、企業文化と整合した採用活動などを通じて、新たな企業文化を構築すると同時に、改革成果を評価し、適切な説明をしていくことが必要です。

デジタルによる業界構造が変わりつつある現在において、本書のフレームワークや6ステップは自社を変革していくためのガイドとなります。

本書に出てくる事例は、欧米の伝統的大企業の取り組みではありますが、日本企業や自社に読み替えながら比較していくと、変革への具体的な指標への参考になります。

特に、これまでの経営環境に最適化してきた既存企業にとっては、DX推進には様々な課題を解決していくことが必要となりますが、本書は既存企業、しかも大企業中心に対応策を解説してくれていますので、リーダーの方々にとってのフレームワークとなる一冊です。

 

目次

序 章 次世代企業の構築

第1章 デジタル化がもたらす脅威と事業機会とは何か

第2章 あなたの会社の未来にふさわしいデジタル・ビジネスモデルはどれか

第3章 デジタル競争優位を生み出すものは何か

第4章 モバイルやIotを使ってどのようにつながるか

第5章 あなたの会社には自社を改革する能力があるか

第6章 あなたの会社に変革を起こすリーダーシップはあるか

終 章 本書を振り返っての整理

 

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