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ジャパン・ウェイ 静かなる改革者たち 毅然たるリーダーシップが変える経営
池上 重輔(著)、ハビール・シン(著)、マイケル・ユシーム(著)
出版社:日経BP 日本経済新聞出版 (2025/9/6)
Amazon.co.jp:ジャパン・ウェイ
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新しい日本型リーダーたちが企業文化を変え、再び世界を席巻する!
日米の気鋭の研究者が105社のトップに直接取材、その独自の理念と進化する経営に迫った話題書の日本語版。
本書は、早稲田大学ビジネススクール教授とペンシルベニア大学ウォートン校教授の著者らが、日本企業105社のトップに直接インタビューを実施して、その理念と実践から日本に胎動する新たなリーダーシップと着実に進む経営革新の深層を分析し、復権へと躍動する日本企業の実像を描き出した一冊です。
最近目覚ましく復活を遂げている日本企業群を支えた要因には新しい企業リーダーシップ・モデル(RJ:Resolute Japan)があるとして、その特徴を詳細に解説していますので、ビジネスリーダーの方々が自社の変革と復活を牽引するうえで大変参考になります。
本書は9章で構成し、新しいリーダーシップモデルと調査結果から得た知見を概観し、RJモデルの重要な要素を探ったうえで、日本向けに必要な要素を補足しています。
- ・第1章では、新しいリーダーシップモデルと、今回の調査から得た知見を概観しています。
RJモデルと伝統的な日本式経営 JTC(Japanese Traditional Company)モデル、現代インドモデル、現代中国モデル、アメリカ式株主価値モデルを比較しながら、それぞれの特徴を明らかにしています。
- ・第2章では、人間重視のリーダーシップやステークホルダーの利害のバランスなど、RJモデルの重要な要素を探っています。
RJモデルの主な構成要素について、調査企業の事例を紹介しながら詳しく解説しています。
- ・第3章では、前例踏襲型からRJ型リーダーシップへと転換させた原動力と仕掛け人を明らかにしています。
価値観を企業に根付かせたトップリーダーたちの特徴に加え、日本企業の経営者が最も重視するリーダーシップ・スキルに関する調査結果を示しています。
- ・第4章では、ビジネスリーダーがいかに現在の優位性を活かしながら、新たな分野をうまく探索してきたかを見ています。
既存市場を深掘りしつつ、ポートフォリオを再構築して新たな分野を開拓する際の成功要因を紐解いています。
- ・第5章では、ビジネスリーダーと一緒に取締役会がどのように変化し、自ら毅然とした姿勢をとるようになったかを取り上げています。
取締役会も変革の推進やRJモデル実現のために独立した力として役割を果たすようになってきたとして、取締役会の進化の方向を示しています。
- ・第6章では、経営幹部が雇用の安定性重視から、人材の能力重視へと変わったことを示しています。
RJモデルの受容を妨げてきた要因となっている雇用の保証について、安定雇用重視から人材マスタリー重視への変化を取り上げ、その特徴を解説しています。
- ・第7章では、日本企業のリーダーが、今後の課題に対してRJ型リーダーシップをさらに強化していることを明らかにしています。
RJモデルを実現させ、広く受け入れられるための原動力となるリーダーシップを、日本の大企業がどのように強化しているかを紹介しています。
- ・第8章では、日本企業の復活から、世界の企業が何を学びとれるか考察しています。
アメリカ、中国、インドの企業とRJ企業のリーダーシップモデルの特徴を比較しながら、各国のトップ企業が日本のリーダーシップ改革から何を学び、それをどのように自社の実践に活かせるかを探っています。
- ・第9章では、これまでの章から日本向けのポイントを抽出し、さらに日本向けに必要と思われるのもを補足しています。
RJ型リーダーとは対象の旧的リーダーたちの見解と事例を紹介したうえで、RJ型リーダーたちから学んだことを提言しています。
このターンアラウンドの兆しが見えたところに日本企業の実態を探ろうと、私たち3人(池上 重輔、ハビール・シンとマイケル・ユシーム)は2019年から2023年にかけて105社、106人の日本のビジネスリーダーにインタビュー調査を行った。
数十年にわたる大学教授や研究者としての経験と、グローバル・リーダシップ・スタイルに対する深い関心を持って調査に臨んだ。
そこで私たちが目にしたのは、一部の日本企業が長年の商慣行を残しつつ、かつては異端児されていた慣行も取り入れた新しいモデルへと変貌を遂げている姿だった。
本書では、Resolute(毅然とした)リーダーが率いる「RJ(リゾリュート・ジャパン)」モデルと名付けた、この新しいリーダーシップモデルについて紹介していく。
RJ(Resolute Japan)モデル
『ジャパン・ウェイ 静かなる改革者たち』を参考にしてATY-Japanで作成
日本企業が長年の商慣行を残しつつ、かつては異端視されていた慣行も取り入れた、Resolute(毅然とした)リーダーが率いる新しいリーダーシップモデルである。
RJモデルでは、以下を可能にすることにより、企業の変革と復活を牽引している。
- ・伝統的な日本的経営手法と革新的な課題を高いレベルで組み合わせる。
- ・ガバナンスを担う取締役会を受動的な監督者から能動的なパートナーへと転換させる。
- ・年功序列をやめて、より積極的な人材開発と配置を行う。
- ・企業幹部の個人的影響力を強化する。
RJ手法は、組織能力、経営慣行、企業文化の複合体として捉えることができ、他国の支配的なアプローチとはさまざまな点において異なる。
RJモデルは欧米の規範の主な要素と、企業の永続性と社会の安定に特別な価値を置く日本の伝統的な原則とを組み合わせたものである。
- ・決断力と先見性を兼ね備えた人間中心のリーダーシップ
- ・自らの長所を活かしつつ、新しい機会を積極的に取り込む「両利きの経営」
- ・株主だけでなく、顧客、従業員、地域社会などの多様なステークホルダーの利益にバランスよく重きを置くマルチステークホルダー
- ・経済的、社会的、自然災害など、さまざまなショックに耐えて回復する力であるレジリエンス
人材マスタリー重視への変換は、インプットよりアウトカムをより重視し、人が組織内で潜在能力を最大限に発揮することを目指す方向性である。
日本企業が改善などの伝統的な手法の良さを残しつつも伝統的な雇用保証(終身雇用と年功序列のセット)から脱却し、従業員の能力や業績を基準とした評価・報酬制度を導入し、適材適所の配置を推進することで、ビジョンや戦略と組織能力を整合させて個々人の成長と企業競争力の向上を図る仕組みである。
バブル経済期には一部に自信過剰が見られた日本人だが、昨今は比較的悲観的もしくは謙虚な自己評価をしがちだといわれている。
国外の見方も、そうした日本からの発信に影響を受ける。
本調査を開始する前の筆者たちは、日本のビジネスの現状に多くを期待していなかった。
しかし調査を進めてファクトが明らかになり、それをアメリカのウォートン校の教授陣が客観的に評価するなかで、日本のトップリーダーのなかに海外でも通用する優れた実践を見出した。
その結果、日本側の筆者の見方も大きく変わった。
まとめ(私見)
本書は、日本企業105社のトップに直接インタビューを実施することにより、その理念と実践から日本に胎動する新たなリーダーシップと着実に進む経営革新の深層を分析し、復権へと躍動する日本企業の実像を描き出した一冊です。
ローソン、リクルート、ソニー、パナソニック、良品計画、旭化成、ANA、ロイヤル、AGC、オムロン、中外製薬、豊田通商、カインズ、横河電機、Zホールディングス、ルネサス エレクトロニクス、モノタロウ、日立製作所など、最近目覚ましく復活を遂げている日本企業群を支えた要因を詳細に解説しています。
そして、さまざまな日本のビジネスリーダーと、それぞれのリーダーシップに見られる特徴的な能力を取り上げ、変革の成功要因を紐解いています。
長年の商習慣を残しつつ、かつては異端視されていた慣行も取り入れた新しいモデルへと変貌を遂げている新しいリーダーシップモデル(RJ:Resolute Japan)を詳細に解説していますので、ビジネスリーダーの方々が自社の変革と復活を牽引するうえで大変参考になります。
さらに、復活を牽引した企業の取り組みに加え、各社のリーダーたちのインタビューを随所で紹介していますので、それぞれの課題にどのように立ち向かい、意思決定し、実践してきたかを知ることができます。
著者らは、アメリカ、中国、インドでも同じようなトップマネジメントを研究しています。
そして本書は当初、日本発の新たなモデルを、特に欧米の読者に紹介することを目的としていたそうです。
さまざまな日本のビジネスリーダーと、それぞれのリーダーシップに見られる特徴的な能力を解説し、他国の特徴とも詳細に比較しているだけでなく、各国の企業経営者もRJモデルを自国と自社の文脈に合わせて取り入れていることも紹介しています。
RJモデルは、日本では一見当たり前のことのように感じるかもしれませんが、さまざまな点で伝統的な日本企業の経営とは異なり、世界にも通じると思います。
著者らによると、RJモデルを十分に導入しているのは、上場企業の5~10%に過ぎないそうです。
最近では、ジョブ型雇用や社外取締役の採用など、新たな取り組みを始めている企業もありますが、変革を実現している企業は多くないのが実態なのかもしれません。
それは、成功体験や過去に固執し、リスクを避け、ポートフォリオを大胆に変革することに消極的で、長期志向を標榜しつつも実態は短期志向で変化への対応に消極的な企業文化や価値観、そして旧来型リーダーの存在が原因であると言えます。
それを打ち破るには、新しいリーダシップが必要です。
意思決定、戦略、ガバナンス、組織や人材管理などにおいて、RJ型リーダーから学べるものは多いと思います。
長期的な視野で会社を舵取りし、リスクを取って決断し、未来志向でポートフォリオを変革し、信頼のためにコミュニケーションを図り、成長文化を育んで社員を鼓舞し、組織の舵取りを担っていく新しいリーダーが必要です。
そんなスーパーマンのようなリーダーは短期間で現れないと諦めるのではなく、現在リーダーの方々は本書のRJモデルを参考にして一つずつ変わり、その変わっていく姿を社内で見せ、合わせてポテンシャルの高い後継者を育成していくべきです。
現在の日本は、政治、経済、社会、技術など、さまざまな面で大きな転換期にあります。
不安定な国際関係や国際競争環境、少子高齢化、AI・デジタル技術の急速な進展など、これまでの価値観で見るとリスク要因と認識されます。
しかし見方を変えると、日本の特徴を活かして、価値観や考え方、やり方を変革することでチャンスであるともいえます。
本書では、直接インタビューと豊富な調査研究に基づいて、最近目覚ましく復活を遂げている日本企業群を支えた要因として、新しいリーダーシップモデル(RJ:Resolute Japan)を詳細に解説しています。
そして、それらの日本企業群は、世界に通用していることを明らかにしています。
日本には多くの希望があり、これまでの長い歴史のなかで、さまざまな課題を解決し、累積的に進化してきました。
本書は、新しいリーダーシップモデルを詳細に解説していますので、自社の変革と復活を牽引するうえで大変参考になる一冊です。
目次
はじめに
第1章 RJ(リゾリュート・ジャパン)という新しいリーダーシップモデル
第2章 日本で復活を遂げる企業
―― 最先端を行く
第3章 前例踏襲型からRJ型リーダーシップへ
―― RJモデルの原動力と仕掛け人
第4章 両利きの経営とポートフォリオの刷新
―― 既存のものを活用しつつ新しい経営を進める
第5章 監督役から意思決定する取締役へ
―― 経営責任を担う取締役会
第6章 安定雇用から人材マスタリーへ
―― 長寿化と生産性
第7章 ビジネスリーダーシップの強化
―― 経営幹部と取締役はいかに企業改革に備えるか
第8章 日本企業の復活から何を学べるか
―― 世界のビジネスリーダーが身につけたいリーダーシップ能力
第9章 日本のみなさんへ
参考
ジャパン・ウェイ 静かなる改革者たち | 日経BOOKプラス
はじめに:『ジャパン・ウェイ 静かなる改革者たち 毅然たるリーダーシップが変える経営』 | 日経BOOKプラス
ソニー、ローソン…社長100人インタビューで解明 日本発の新経営モデル:日経ビジネス電子版
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