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日立製作所が、2021年度(2022年3月期:2021年4月1日~2022年3月31日)通期決算と2022年度(2023年3月期)通期業績予想を発表しましたので、概況を整理します。
2021年度の売上収益は、5セクター、Astemo、日立建機・日立金属の上場子会社ともに増収し、前年度比18%増の10兆2,646億円となりました。
調整後営業利益は、前年度から2,430億円増の7,382億円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期純利益は、前年度から818億円増の5,834億円となり、過去最高を更新しました。
2022年度予想は、売上収益は今回再編した3セクターとAstemoは5%増収するものの、上場子会社再編の影響により、全体では前年度比7%減の9兆5,000億円となる見通しです。
Adjusted EBITAは、3セクターとAstemoの514億円増益も、上場子会社再編による減益により、全体では前年度から353億円減の8,200億円となる見通しです。
日立製作所の2021年度(2022年3月期)連結業績
売上収益は、5セクター、Astemo、日立建機・日立金属の上場子会社ともに増収し、前年度比18%増の10兆2,646億円となりました。
調整後営業利益は、前年度から2,430億円増の7,382億円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期純利益は、前年度から818億円増の5,834億円となり、過去最高を更新しました。
- ・IT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフの5セクター全体は、市場回復傾向に加え、パワーグリッド事業・GlobalLogic買収影響により増収増益。
- ・Astemoは、日立Astemo統合影響により増収増益。
- ・日立建機・日立金属の上場子会社は、市場回復傾向により増収増益。
セグメント別の業績
セグメント別では、ライフが減収減益、ITが増収減益となりましたが、エネルギー、インダストリーモビリティの3セグメントが増収増益となりました。
IT
売上収益は前年度比5%増の2兆1,536億円、調整後営業利益は前年度から13億円減の2,681億円
- ・全体では、Lumada事業やGlobalLogicが堅調に推移して増収したものの、半導体不足の影響やGlobalLogic買収に伴う無形資産などの売却費、統合に向けた一時的費用などの関連費用により減益。
- ・フロントビジネスは、交通分野の投資抑制の影響などがあったものの、Lumada事業が堅調に推移して増収増益。
- ・サービス&プラットフォームは、半導体不足の影響があったものの、GlobalLogicが堅調に成長して増収増益。
エネルギー
売上収益は前年度比31%増の1兆4,479億円、調整後営業利益は前年度から658億円増の181億円
- ・原子力BUの作業高減少による減収も、エネルギーBUでの一部案件の対策強化の終了、原子力BUやエネルギーBUでの原価低減や固定費圧縮などにより増益。
- ・日立エネルギーは、材料価格高騰の影響があったものの、買収影響により増収増益。
インダストリー
売上収益は前年度比9%増の9,007億円、調整後営業利益は前年度から367億円増の822億円
- ・産業・流通BUは、市場回復に伴う売上増に加え、固定費削減により増収増益。
- ・水・環境BUは、市場が堅調に推移したことによる売上増に加え、固定費削減により増収増益。
- ・インダストリアルプロダクツ事業は、市場回復に伴う売上増加により増収増益。
モビリティ
前年度比19%増の1兆4,257億円、調整後営業利益は前年度から126億円増の874億円
- ・ビルシステムBUは、部材価格高騰の影響があったものの、中国事業拡大や為替影響などにより増収増益。
- ・鉄道システムBUは、COVID-19の影響があったものの、作業高増加および為替影響により増収増益。
ライフ
売上収益は前年度比18%減の1兆294億円、調整後営業利益は前年度から1億円減の792億円
- ・全体では、画像診断関連事業の売却により減収。
- ・生活・エコシステム事業は、Lumada事業が拡大したものの、海外家電事業の売却影響により減収減益。
- ・計測分析システム事業は、インダストリアル・ソリューション事業の一部事業撤退影響により減収したものの、アナリティカル・ソリューション事業の拡大により増益。
日立Astemo
売上収益は前年度比62%増の1兆5,977億円、調整後営業利益は前年度から240億円増の587億円
- ・半導体不足の影響による自動車メーカーの減産、部材価格の高騰、ロックダウン影響による部品供給減少などの影響があったものの、総合影響により増収増益。
日立建機
売上収益は前年度比26%増の1兆249億円、調整後営業利益は前年度から601億円増の917億円
- ・鋼材価格を中心としたコスト増加影響があったものの、中国を除く市場回復や米州での価格調整および為替の円安影響により増収増益。
日立金属
売上収益は前年度比24%増の9,427億円、調整後営業利益は前年度から317億円増の268億円
- ・自動車向け需要増加など、市場回復および事業構造改革効果により増収増益。
2022年度(2023年3月期)の通期決算予想
売上収益は、今回再編した3セクターとAstemoは5%増収するものの、上場子会社再編の影響により、全体では前年度比7%減の9兆5,000億円となる見通しです。
Adjusted EBITAは、3セクターとAstemoの514億円増益見通しも、上場子会社再編による減益により、全体では前年度から353億円減の8,200億円(調整後営業利益は、同382億円減の7,000億円)となる見通しです。
親会社の所有者に帰属する当期純利益は、前年度から165億円増の6,000億円となる見通しです。
なお、2022年度から収益性の主要KPIを従来の調整後営業利益からAdjusted EBITAに変更しています。
Adjusted EBITA=調整後営業利益-買収に伴う無形資産等の償却費+持分法損益
- ・デジタルシステム&サービス、グリーンエナジー&モビリティ、コネクティブインダストリーズの3セクターは、売上収益は前年度比4%増の6兆9,400億円、Adjusted EBITAは前年度から48億円増の6,670億円。
- ・Astemoは、供給制約の緩和、市場回復傾向により、売上収益は前年度比13%増の1兆8,000億円、Adjusted EBITAは前年度から466億円増の1,090億円。。
- ・上場子会社は、日立建機の一部株式および日立金属株式の売却により、売上収益は前年度比61%減の7,600億円、Adjusted EBITAは前年度から868億円減の440億円。
2022年度からセグメント構成を、従来5セグメントから今年度から3セグメントに変更しました。
- ・デジタルシステム&サービス
フロントビジネス(金融BU、社会BU)、ITサービス(日立ソリューションズ、日立システムズ)、サービス&プラットフォームBU
- ・グリーンエナジー&モビリティ
原子力BU、エネルギーBU、パワーグリッドBU、鉄道BU
- ・コネクティブインダストリー
ビルシステムBU、日立グローバルライフソリューションズ、日立ハイテク、インダストリアルデジタルBU、水・環境BU、インダストリアルプロダクツ事業
セグメント別の業績予想
セグメント別では、デジタルシステム&サービス、グリーンエナジー&モビリティ、コネクティブインダストリーズの全セグメントで増収増益を見込んでいます。
デジタルシステム&サービス
売上収益は前年度比6%増の2兆2,900億円、Adjusted EBITAは前年度から185億円増の3,000億円
- ・半導体供給不足影響やウクライナ情勢などの不確実性があるものの、国内外のデジタル需要を刈り取り、継続的に成長を維持することにより増収増益。
- ・GlobalLogicは、ウクライナにおける従業員とその家族の安全・健康を最優先に対応するとともに、事業への影響を極小化。
グリーンエナジー&モビリティ
売上収益は前年度比6%増の2兆1,700億円、Adjusted EBITAは前年度から596億円増の1,520億円
- ・原子力・エネルギーは、エネルギーBUの風力発電システム事業の戦略変更により前期比減収も、収益性の向上により増益。
- ・日立エナジーは部材価格高騰影響が継続も、事業の堅調な推移や収益性向上、為替影響により増収増益。
- ・鉄道システム事業は、作業高増加および収益性改善により増収増益。
コネクティブインダストリーズ
売上収益は前年度比1%増の2兆7,700億円、Adjusted EBITAは前年度から471億円増の3,050億円
- ・ビルシステムBUは、原価低減などにより増益。
- ・生活・エコシステム事業は、海外家電事業の売却による減収減益影響があるものの、固定費削減により増益。
- ・計測分析システム事業は、アナリティカル・ソリューション事業およびナノテクノロジー・ソリューション事業の需要拡大により増収増益。
- ・インダストリアルデジタルBUは、デジタルソリューション事業などの拡大により増収も、R&Dなどの成長投資の増加により減益。
- ・水・環境BUは、空調システム事業部などが堅調に推移することに加え、固定費削減により増収増益。
- ・インダストリアルプロダクツ事業は、事業の堅調に伴う売上増により増収増益。
日立Astemo
売上収益は前年度比13%増の1兆8,000億円、Adjusted EBITAは前年度から466億円増の1,090億円
- ・半導体不足の影響による自動車メーカーの減産が継続も、下期での市場回復により増収増益。
日立建機
売上収益は前年度比79%減の2,200億円、Adjusted EBITAは前年度から821億円減の180億円
- ・一部株式売却により連結合計には第1四半期のみ計上。
日立金属
売上収益は前年度比43%減の5,400億円、Adjusted EBITAは前年度から47億円減の260億円
- ・株式売却により連結合計には第1四半期のみ計上。
その他、主なトピックス
2021中期経営計画においては、コスト構造の見直し、収益力強化、事業ポートフォリオ改革を実行して、安定した経営基盤を構築できたとしています。
- ・親会社の所有者に帰属する当期純利益は5,834億円となり、過去最高を更新。
- ・日立金属株式、日立建機の一部株式に加え、日立物流株式の売却を決定。
- ・2019年5月10日発表「2021中期経営計画」の主な目標値に対する2021年度の結果
収益性(調整後営業利益率):目標 10%超 → 結果 7.2%
投下資本利益率(ROIC):目標 10%超 → 結果 7.7%
海外比率:目標 60% → 結果 59%
今回の決算発表と合わせて「2024中期経営計画」も発表し、主な目標は以下の通りです。
- ・データとテクノロジーでサステナブルな社会を実現して人々の幸せを支える。
- ・2021年度-2024年度の目標
売上成長:5%-7%(売上収益:10兆円)
Adjusted EBITA Margin:12%(ROIC:10%)
EPS成長:10%-14%
コアFCF(3年累計):1.4兆円(うち約1/2を株主に還元)
- ・セグメント別
グリーンエナジー&モビリティ:売上収益 2.6兆円、Adjusted EBITA 10%、ROIC 8%
デジタルシステム&サービス:売上収益 2.6兆円、Adjusted EBITA 15%、ROIC 10%
コネクティブインダストリー:売上収益 3.2兆円、Adjusted EBITA 13%、ROIC 13%
日立Astemo:売上収益 2.0兆円、Adjusted EBITA 9%、ROIC 11%
- ・成長戦略
事業ポートフォリオ強化:Lumadaを中心に、デジタルとグリーンに関する事業ポートフォリオの強化を継続
Lumada事業:2021年度 売上収益 1.4兆円、Adjusted EBITA 0.2兆円 → 2024年度 売上収益 2.7兆円、Adjusted EBITA 0.4兆円
2021年度通期決算と2022年度予想
参考:電機各社の決算発表
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