富士通が幹部社員向け早期退職、富士通とNECの主な事業改革と人員再配置の歴史、中期経営計画の進捗

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富士通とNECの業績推移

富士通とNECの決算資料を参考にしてATY-Japanで作成

 

2022年3月8日、富士通が2022年2月末まで募っていた早期希望退職に、国内グループ企業に勤める50歳以上の幹部社員3,031人が応募したことを明らかにしました。

国内の従業員約80,000人の4%弱に当る規模で、原則2022年3月末で退職する予定としています。

そのため、退職金の割り増しなどで650億円の費用を2022年3月期決算に計上し、2022年1月27日に発表した2021年度(2022年3月期)通期予想を修正しました。

そこで、富士通とNECの過去の構造改革と人員再配置について主な歴史を確認し、両社の中期経営計画の進捗について整理します。

 

富士通とNECの主な事業改革と人員再配置の歴史

事業環境の変化に伴い、求められるスキルも目まぐるしく変化する中、従業員の自律的なキャリア形成を促進するとともに、グループ全体での人材の流動性を高め、キャリア・スキルチェンジや適所適材の考え方のもとでスピーディーに人材の最適配置を行っています。

また、従業員にはグループワイドでのポスティング制度など継続的な成長機会の提供やリスキリング支援を行うとともに、新卒採用やキャリア採用により、積極的に必要な人材の獲得を進めていきます。

 

富士通の大規模な人員削減は、2019年3月末に2,850人が早期希望退職して以来です。

今回の施策は、お客様および自身のDX化を強力に推進するDX企業への変革を加速する中、「DX企業への変革を加速するための人材施策」の一環となります。

そして、今回の取り組み以下としています。

1.ビジネスプロデューサーへの変革

  • ・国内グループの全営業職約8,000人を対象にスキルアップ・スキルチェンジ研修や保有スキルの見える化を実施

2.適所適材の実現に向けた人材の最適配置

  • ・2020年度から幹部社員へのジョブ型人事制度の導入
  • ・国内グループの従業員が自らの意思で別の仕事にチャレンジできるポスティング(社内募集制度)などを実施(2021年度のグループワイドポスティングによる異動・再配置は約2,000人)

3.期間を限定したセルフ・プロデュース支援制度の拡充

  • ・グループの外において新たなキャリアにチャレンジ・活躍を希望する従業員に対して、期間を限定して従来のセルフ・プロデュース支援制度を拡充
  • ・対象者は、国内グループ会社に所属する主に50歳以上の幹部社員(正規従業員、定年後再雇用従業員)で、2022年2月28日までに3,031人が応募

4.取り組みに伴う財務影響

  • ・期間を限定したセルフ・プロデュース支援制度の拡充を実施することにより、ワンショットの費用650億円が発生
  • ・2022年1月27日発表の2021年度(2022年3月期)通期予想の修正
    営業利益:1月公表 2,750億円、今回 2,100億円(△650億円)
    当期利益:1月公表 2,050億円、今回 1,600億円(△450億円)

 

富士通は、事業内容に合わせた人材の入れ替えを急いでおり、2020年4月には年功序列型の賃金から「職責の内容に応じて賃金を決める新しい人事制度」を国内幹部社員15,000人に導入し、2022年度中には一般社員に広げることを目指しています。

これまで、グループ会社の統廃合を繰り返しながら、幹部ポストを増やさず、シニアディレクターやエキスパートなどの役職を増やしてきたのを、今回一挙に整理し、中高年や再雇用の一般社員にも広げていくようです。

DX事業にシフトしていくうえでは新たなポストを設けていますが、変革を加速するためには、従来型ビジネスに慣れた中高年の職種転換ではなく、中途採用を含めた若手の再配置の方が早いと判断したのかもしれません。

富士通とNECの主な事業改革と人員再配置の歴史(2001年度~2016年度)

富士通とNECの主な事業改革と人員再配置の歴史(2017年度以降)

富士通とNECのの決算資料を参考にしてATY-Japanで作成

 

富士通とNECの業績推移と中期経営計画の進捗

富士通の業績推移と中期経営計画の進捗

富士通の業績推移と中期経営計画

富士通の決算資料を参考にしてATY-Japanで作成

 

2019年9月26日、時田社長が就任して以来初めてとなる経営方針を発表しました。

2022年度のテクノロジーソリューションの売上高を3兆5,000億円(年平均成長率3%)、営業利益率10%を目指すというものです。

そのために、DX(デジタル・トランスフォーメーション)を含むデジタル領域を成長させるとともに、従来型ITについても強固なビジネス基盤をベースに収益拡大するとしています。

「IT企業からDX企業へ」という目指す姿を掲げ、「これからはテクノロジーをベースにして、社会やお客さまに価値を提供する会社になる。その意味でDX企業になると定義した」というのが発表の狙いとなります。

 

1.基本方針
DXを含むデジタル領域を成長させるとともに、従来型ITについても強固なビジネス基盤をベースに収益拡大

2.経営目標

  • ・持続的な成長と収益性の向上
    2022年度のテクノロジーソリューションの売上高を3兆5,000億円(年平均成長率3%)、営業利益率10%を目指す。
  • ・2022年度のデジタル領域の売上高1兆3,000億円(内、3,000億円のビジネス創出)
    デジタル領域の売上高、2018年度実績8,300億円(全体売上高の26%)、2019年度予想9,500億円(同30%)、2022年度まで年平均成長率3%の1兆3,000億円(同37%)を目指す。
  • ・単年度1,500億円以上の安定的なフリーキャッシュフロー(FCF)創出を目指すを目指す。
  • ・非財務面での取り組み
    責任ある世界企業として(グローバルれレスポンシブルビジネス)

 

この目標に対して、2022年1月27日に2021年度第3四半期決算とあわせて発表した2021年度(2022年3月期)業績予想は、テクノロジーソリューションの売上高が3兆1,000億円、今回の人員削減の影響を反映していない状況での営業利益は2,050億円(営業利益率:6.6%)としています。

テクノロジーソリューションは部材供給遅延が想定より拡大するとして、売上収益は2021年10月予想に対して△500億円の3兆1,000億円(営業利益は同△150億円の2,050億円)に下方修正しました。

この状況からすると、2022年度(2023年3月期)を最終年度とする売上利益率(目標)10%の達成が厳しい状況であり、今回の人員削減の効果を期待することになります。

 

NECの業績推移と中期経営計画の進捗

NECの業績推移と中期経営計画

NECの決算資料を参考にしてATY-Japanで作成

 

2021年5月14日、2020年度通期決算発表に合わせて、2025年度(2026年3月期)を最終年度とする「2025中期経営計画」を発表しました。

今回の中期経営計画は、2021年4月1日付で社長兼CEOに就任した森田隆之氏が初めて発表する経営目標となりました。

「デジタルガバメントおよびデジタルファイナンス市場において、グローバルトップクラスのバーチカルSaaSベンダーを目指す」と宣言し、以下の目標値をあげています。

  • ・売上収益:3兆5,000億円(2020年度実績:2兆9,940億円)、2020年度比成長率:3.2%
  • ・調整後営業利益:3,000億円(同1,782億円)、売上収益比:8.6%(同6.0%)
  • ・調整後当期利益:1,850億円(同1,496億円)、売上収益比:5.3%(同5.0%)
  • ・EBITDA:4,500億円(同2,958億円)、売上収益比:12.9%(同9.9%)
  • ・ROIC:6.5%(同4.7%)
  • ・非財務指標
     エンゲージメントスコア:50%(同25%)
     女性および外国人役員の構成比:20%
     女性管理職:20%

 

2022年1月31日の発表では、グローバル5G、デジタル・ガバメント(DG)/デジタル・ファイナンス(DF)、コアDXの事業の進捗状況に加え、2025中期計画の実現に向けた組織改革を発表しています。

約150の事業部レベルの組織数を3分の1の約50に再編するほか、CEOから担当者までに8階層あったレイヤーを6階層にしてフラット化を実現することにより、組織デザインの柔軟性、権限委譲と責任の明確化および強化を図るとしています。

目指すべき組織の姿は以下の通りとして、2022年4月の改革内容を明らかにしています。

目指すべき組織の姿

  • ・意思決定をよりマーケットに近い立場で行い、アジャイル、スピーディに事業運営
  • ・ダイナミックで柔軟なリソースアロケーションで事業成長を加速
  • ・多様な人材の活躍と成長を促進
  • ・プロフェッショナル人材がリスペクトされ、活躍する仕組みで価値創出を加速

2022年4月の改革内容

  • ・組織の大括り化:事業部レベルの組織数を1/3に再編
  • ・レイヤーのフラット化:現在の8階層を6階層に再編
  • ・組織デザインの柔軟性
  • ・権限委譲と責任の明確化・強化

 

まとめ(私見)

富士通とNECの両社は、国内ITおよび5G事業の好調に支えられて、今のところ業績を維持しています。

しかし、2020年からのコロナウィルス感染症、そして最近の半導体・電子部品の供給遅延による影響など、業界を取り巻く環境は激しく変化しています。

これまでの環境変化に対しては、両社はグループ会社の統廃合を繰り返しながら対応してきました。

また人材施策においては、人員削減や再配置といった対策を都度講じ、幹部ポストを増やさず、シニアやエキスパートなどの役職を増やしてきました。

両社は、DX(デジタル・トランスフォーメーション)事業にシフトしていくことを計画していますが、自社自身の変革を加速しなければなりませんし、これまでのような中高年の職種転換やキャリヤシフトでは難しくなっていることは認識しているはずです。

既存の顧客を維持していくためにはベテラン社員が重要な役割を担うことになりますが、変革を迅速に進めるうえでは中途採用を含めた若手の再配置が有効となります。

また、利益を拡大するためには、業績に貢献できない中高年や雇用延長などの社員の処遇も明確にしていかなければなりません。

顧客がDXで変革しようとしているのに、それを支援する両社が旧体質のままではいけないことは理解していると思いますので、両社の今後の人材施策に注目していきたいと思います。

 

参考

DX企業への変革を加速するための人材施策について : 富士通

「連結業績予想の修正に関するお知らせ」における XBRL データの書式の一部訂正について(PDF) : 富士通

 

参考(当サイト)

 

2021年度(2022年3月期)第3四半期決算と通期予想

2022.01.31 2021年度第3四半期決算と通期予想:NEC

2022.01.28 2021年度第3四半期決算と通期予想:富士通

 

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