富士通とNECの構造改革と人員再配置の歴史、国内事業に下支えらている両社の今後の課題

このページ内の目次

先日2018年2月19日、富士通が2018年10月26日付で公表していた「成長に向けたリソースシフト」の一環として、キャリア転進支援策に2,850名の応募があったことを明らかにしました。

残る2,000名強は配置転換となり、人事や総務などに所属する人材の一部は研修を受けたうえで、営業やシステムエンジニアなどITサービスに関わる職種に転換することとなります。

そこで、富士通とNECの過去の構造改革と人員再配置について、主な歴史を確認し、国内事業に支えられている両社の今後の課題について整理します。

 

富士通とNECの主な事業改革と人員再配置の歴史

富士通の今回の「成長に向けたリソースシフト」計画では、5,000名規模のリソースシフトによる成長領域の増強、間接・支援部門の効率化・適正化に取り組むとしていました。

今回の退職者には、特別加算金を別途支給する他、希望者には再就職支援を行う方針で、この施策に伴う費用として約461億円の損失を計上する予定としています。

一方、NECも今年度(2019年3月末まで)に約3,000人の人員削減を計画しており、2018年12月28日を退職日とした特別転進支援施策に対して2,170人が応募(約200億円の費用を計上、当初計画では300億円)し、グループ外企業への出向・転籍などで約400名を予定しています。

  富士通 NEC
主な構造改革 人員削減 主な構造改革 人員削減
2001年度
(2002年3月期)
全体で22,000人削減
・海外:16,400人
・国内半導体工場:2,500人
配置転換:6,000人
4,000人削減
2002年度
(2003年3月期)
2,000人削減
2009年度
(2010年3月期)
【半導体事業】
分社化
2,000人削減
2011年度
(2012年3月期)
【PC事業】
レノボと統合
【携帯事業】
合弁会社に移行
【PC事業】
レノボに売却
10,000人削減
2013年度
(2014年3月期)
【半導体事業】
パナソニックと新会社設立
半導体事業:5,000人
・海外:2,000人
・国内:3,000人
他事業:4,500人
【半導体事業】
非持分化
【プロバイダ事業】
Biglobe売却
2015年度
(20167年3月期)
【PC事業】
分社化
【携帯事業】
分社化
2016年度
(2017年3月期)
【携帯事業】
合弁会社解散
【半導体事業】
保有株売却
2017年度
(2018年3月期)
【プロバイダ事業】
ニフティ売却【モバイルウェア事業】
富士通テンをデンソーに譲渡
【携帯事業】
株式譲渡
【電池事業】
持ち株を譲渡
2018年度
(2019年3月期)
5,000人の配置転換
・2,850人早期退職
・2,000人強を配置転換
【電池事業】
家庭用小型を終了
3,000人削減
・2,170人が応募
・グループ外企業への出向など:約400名

 

国内の事業環境の良好に下支えされている富士通とNEC

富士通やNECは、2000年代以降の韓国や中国勢との競争激化に伴い、パソコンや半導体などの事業を他社との統合や売却で対応してきました。

そして近年は、本業であるシステム構築などに経営資源を集中させてきていますが、この分野でもAIやIOT及びクラウド事業などでグローバル競争が激化しており、事業構造の改革を実施するとともに、新たな事業分野の開拓などの対応が迫られている状況です。

先日、両社が発表した2018年度(2017年4月1日~2018年3月31日)の通期決算予想は以下の通りで、SIビジネスによる国内サービスが下支えしています。

  • ■富士通
    ・売上収益:前年比4.8%減の3兆9,000億円
    ・営業利益:同425億円減の1,400億円
    ・当期損益:同593億円減の1,100億円
  • ■NEC
    ・売上収益:前年比0.5%減の2兆8,300億円
    ・営業損益:同139億円減の500億円
    ・当期損益:同209億円減の250億円

 

国内の事業環境と今後の動向(予測)

SIビジネスによる国内サービス好調の両社ですが、その主な要因は基幹業務システムの改修や刷新によるものです。

企業や公共分野の基幹システムは、個別開発やERP(統合基幹業務システム)パッケージ導入を中心として過去30年来使われてきています。

昨年2018年8月21日に㈱矢野経済研究所が発表したレポートによると、以下の通り2018年は増加傾向にあるものの、クラウド化が進めばERP市場の増減もこれまでとは異なり緩やかになる可能性があると予測しています。

  • ・2017年のERPパッケージライセンス市場は前年比0.8%増の1,097億9,000万円(エンドユーザ渡し価格ベース)で前年比ではほぼ横ばい
  • ・2018年はユーザ企業の高い投資意欲の継続が見込めるなどから、前年比2.9%増の1,129億6,300万円に回復すると予測

また、同社が2018年11月13日に発表したレポートでは、国内民間企業のIT市場規模(ハード・ソフト・サービス含む)は、2018年度以降もIT投資に対する前向きな流れは続くと予測しています。

  • ・2017年度が前年度比2.3%増の12兆1,530億円で、2018年度が前年度比2.9%増の12兆5,050億円、2019年度は同2.2%増の12兆7,800億円、2020年度は同1.6%増の12兆9,840億円と予測
  • ・この背景にはデジタルを活用して企業やビジネスに新しい価値をもたらせるデジタルトランスフォーメーション(DX)への取組みが進み始めており、今後も計画的なIT投資を行うとの回答が増加傾向

この国内SIビジネスの増加傾向に加え、2020年に実用化を目指している5Gへのネットワークインフラの取り込みも追い風となることも予想されます。

 

エンジニア不足の問題

一方、昨年2018年9月7日に発表した『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』では、DXを実現していく上でのITシステムに関する現状の課題やそれらへの対応策がまとめられています。

このレポートでは、DXによりビジネスをどう変えるかといった経営戦略の方向性を定め推進していくことの必要性を指摘していますが、一方では、既存システムが老朽化・複雑化・ブラックボックス化しているために、データの利活用・連携が限定的であり、その効果も限定的となってしまうといった問題があることも指摘しています。

また、既存システムの維持、保守に資金や人材を割かれ、新たなデジタル技術を活用したIT投資にリソースを振り向けることができず、そして、ますます維持・保守コストが高騰する(技術的負債の増大)とともに、既存システムを維持・保守できる人材が枯渇し、セキュリティ上のリスクも高まることも懸念しています。

 

富士通とNECの課題

2025年にかけては、SAPのERP「SAP ERP」のサポート切れに伴う基幹システム刷新の需要が急速に高まるとの予測もあります。

しかしながら、基幹システムを改修・刷新していくためには業務知識が必要となり、その業務知識を習得していくためには時間がかかります。

ユーザ側のIT知識が向上していて、クラウドシステム導入や単独で改修・刷新できる可能性もありますが、ITベンダーに頼る部分も残ります。

富士通やNECの近年の構造改革や人員の再配置では、新たな事業分野の開拓などへの対応が優先となり、これまで基幹システムを担当してきた人材への処遇が後手になっている可能もあります。

基幹システムを担当してきた人材はベテランが多く、高齢化による自然減に加え、今回の人員再配置の矛先になるようであれば、ますます人材不足への対策は急務となります。

富士通やNECの両社ともに、かつての売上高は5兆円規模構ありましたが構造改革により今や本業に集中していくしか道はない状況の中で、両社の今後の舵取りに注目していきたいと思います。

 

参考

ERP市場動向に関する調査を実施(2018年)
2018年8月21日 矢野経済研究所

国内企業のIT投資に関する調査を実施(2018年)
2018年11月13日 矢野経済研究所

ERP及びCRM・SFAにおけるSaaS利用状況の法人アンケート調査を実施(2018年)
2019年1月23日 矢野経済研究所

 

デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会の報告書『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』
2018年9月7日 経済産業省)

 

参考(当サイト)

2019.02.06 2018年度第3四半期決算:富士通

2019.02.05 2018年度第3四半期決算:NEC

 

2018.11.10 富士通の経営方針の2018年度進捗レビュー

2018.02.10 NEC「2020中期経営計画」達成には相当の努力が必要

2018.02.01 NECが「2020中期経営計画」を発表

 

トップに戻る

関連記事

前へ

書籍 HUMAN+MACHINE 人間+マシン: AI時代の8つの融合スキル/ポール・R・ドーアティ(著)

次へ

総務省が「IoT国際競争力指標(2017年実績)」を公表、日本はIoT製品スマート工場分野で世界トップシェア

Page Top