富士通の2018年度(2019年3月期)第3四半期決算は減収減益、本業は国内伸長も事業再編が影響

富士通の2018年度(2019年3月期)第3四半期決算は減収減益、本業は国内伸長も事業再編が影響

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先日は、NECの2018年度第3四半期(2018年4月1日~12月31日)の概況を整理しました。

NECは、前年同期に対して、売上収益と営業損益は増収増益となり、当期損益は減益したものの黒字を維持しています。

特に、国内の事業環境は良好であり、年間計画に対する上振れが期待でき、現時点では足元の数字については減速の兆候はないとしています。

そこで今回は、NECと同様にICT領域中心の富士通の2018年度第3四半期(2018年4月1日~12月31日)の概況を整理します。

富士通は、前年同期に対して、売上収益は減収となったものの、営業損益と税引前損益は増益、当期損益は減益となっています。

売上収益は、本業ではSIビジネスによる国内サービスを中心に伸長して増収となったものの、個人向けPCや携帯端末事業の再編が影響して減収しています。

富士通の2018年度第3四半期連結業績

売上収益は前年同期比3.9%減の2兆8,119億円、営業損益は同72.7%(280億円)増の665億円

  • ・売上収益は、本業ではSIビジネスによる国内サービスを中心に伸長して100億円の増収となったものの、個人向けPCや携帯端末事業の再編影響で1,250億円の減収が影響
  • ・営業損益は、本業ではサービスやシステムプロダクトの国内ビジネスが増加して90億円の増益、退職給付制度変更影響で900億円の増益
  • ・営業損益のマイナス影響としては、ビジネスモデル変革費用で436億円、事業譲渡関連で277億円

税引前損益は同26.2%(190億円)増の914億円、当期純損益は同7.2%(40億円)減の515億円

  • ・金融損益などで90億円の減益
    PC事業譲渡に伴う株式再評価影響で約115億の増益、前年同期の株式持合い直しに伴う売却益の反動で273億円の減益
セグメント別の業績

セグメント別の業績は以下の通りで、テクノロジーソリューションのみが増収し、営業損益は主要3セグメント全てが減益となっています。

テクノロジーソリューションは増収減益

  • ・売上収益が前年同期比1.1%増の2兆1,734億円、営業損益は同10.2%(75億円)減の668億円
    第3四半期は国内サービスが大きく伸長したものの、欧州でのプロダクトビジネスの再編などに関連してビジネスモデル変革費用を244億円計上したことにより減益(本業では140億円の増益)
  • ■サービス事業は増収増益
    ・売上収益が同1.7%増の1兆8,688億円、営業損益が同16.3%(117億円)増の843億円
    ・内、ソリューション/SIは、公共分野で伸長したのに加えて、製造、流通分野も好調を維持し、さらなる上積みを実現
    公共分野では大規模プロジェクトを計画通りに獲得
    中小規模の商談を確実に積み上げたことに加え、インフラサービスからのプロジェクト移管のプラス影響を除いたベースで過去最高の売上を更新
    ・一方、インフラサービスは、国内は堅調に推移したものの、海外は欧州や北米が低調に推移したことが影響
  • ■システムプラットフォーム事業は減収減益
    ・売上収益が前年同期比2.9%減の3,045億円、営業損益は同193億円減の174億円の赤字(ビジネスモデル変革費用を232億円計上したことが影響)
    ・内、システムプロダクトは、IAサーバが国内と海外ともに堅調に推移し、ソフトウェアも増加したことが貢献
    ・一方、ネットワークプロダクトは、国内向け携帯電話基地局の低調が影響

ユビキタスソリューションは減収減益

  • ・売上収益が前年同期比24.3%減の3,684億円、営業損益は前年同期に対して323億円減の206億円の赤字
  • ・売上収益では、携帯端末事業の再編と個人向けPC事業が連結売上の対象外となり、事業再編影響が約880億円の減収
  • ・売上収益は、個人向けPCおよび携帯電話が連結対象から外れたことでの事業再編の影響がマイナス370億円
    これを除くと第3四半期には約4.5%の減収、欧州で法人向けPCが減少
  • ・営業損益は、ビジネスモデル変革費用を186億円計上したことが影響

デバイスソリューションは減収減益

  • ・売上収益は前年同期比5.7%減の3,972億円、営業損益は同57.4%(66億円)減の49億円
  • ・スマートフォン向けLSIの所要が低調で、電子部品では半導体製造装置およびPC向けも低調に推移したことが影響

なお第3四半期においては、「その他/消去または全社」の営業損益で75億円悪化の317億円の赤字を計上
AI関連の投資を集約(昨年度までは各事業部門が自部門のためにAIを考えコストをかけていたが、全体をコントロールできないという問題があり、本社で全社投資として集約

その他

海外売上比率:38.4%の1兆785億円(前年同期:37.5%の1兆986億円)

2018年6月21日に退職給付制度を変更
富士通企業年金基金の一部制度変更を行い、これまでの確定給付型年金(DB)から第3の企業年金制度のリスク分担型制度へと移行

2018年度の通期決算予想

2018年度の通期決算予想は、前回値を据え置いています。

  • ・売上収益は、前年比4.8%減の3兆9,000億円
  • ・営業利益は、同425億円減の1,400億円
  • ・当期利益は、同593億円減の1,100億円

第1四半期に退職給付制度の変更、PC事業譲渡に関する利益計上はあるものの、年初から計画していた第4四半期に発生する大型商談は計画通りに獲得できており、これらを含めて国内ビジネスの受注残高はサービス及びプロダクトともに積み上がっているとしています。

また、ビジネスモデル変革については、プログラムごとに詳細を詰めている段階で、今年度中に大きく進捗させるとしています。

データセンターサービス事業を富士通に吸収

連結子会社である富士通エフ・アイ・ピーのデータセンターサービス事業を富士通に吸収することを発表

  • ・グループ会社の数が多ければコストもかかるため、できる限り集約して余ったリソースを必要となるところにシフトする。
  • ・売上、収益、受注を最大化していくのが狙いであり、結果的に人が減少するかもしれないが減らすだけが目的ではなく、効率化を考えている。
5,000人のリソースシフトについて

5,000人規模のリソースシフトによる成長領域の増強、間接及び支援機能の効率化・適正化(間接部門の25%が対象)

  • ・対象にしている人への説明が終わり、シフト先とのマッチングやフィッティングを始めているところ。
  • ・働いてほしいというのが会社の希望であるが、マッチングしなかった一部の人に対しては、希望退職の募集ということもあり、全体的には計画した通りに進んでいる。
経営方針の進捗状況

サービスオリエンテッドカンパニーとして、つながるサービスで収益力を高め、成長を目指し、この実現に向けて「形をかえる」と「質をかえる」取り組みをしており、今後は「質をかえる」取り組みに集中

  • ・当初の計画では、2015年からの2年間で「形を変え」「質を変え」、3年目、4年目に効果を刈り取りたいとしてきたが、それからは相当遅れている状況である。
  • ・有効であったこと、有効ではなかったことを分別して、取り組みを加速していく必要があるとしています。
主要子会社の社長が2019年1月1日付で交代

富士通研究所、富士通マーケティング、富士通エフ・アイ・ピー、富士通ネットワークソリューションズの社長が2019年1月1日付で交代しています。

各社の新社長は富士通の役員を兼務するという人事、そして今回発表された富士通エフ・アイ・ピーのデータセンター事業を4月1日付で富士通に統合することも、富士通への吸収を含めたグループ会社の再編・統合に向けた動きなのかもしれません。

  • ・㈱富士通研究所 代表取締役社長:2019年1月1日付
    兼務:富士通㈱ 執行役員専務(テクノロジーソリューション部門長)
  • ・㈱富士通マーケティング 代表取締役社長:2019年1月1日付
    兼務:富士通㈱ 執行役員専務(営業部門長)
  • ・富士通エフ・アイ・ピー㈱ 代表取締役社長:2019年1月1日付
    兼務:富士通㈱ 執行役員常務(テクノロジーソリューション部門デジタルインフラサービスビジネスグループ長)
  • ・富士通ネットワークソリューションズ㈱ 代表取締役社長:2019年1月1日付
    兼務:富士通㈱ 執行役員常務(テクノロジーソリューション部門副部門長)

2018年度(2019年3月期)第3四半期決算と通期予想

電機各社の決算発表

富士通 株式会社(2019年1月31日発表)

日本電気 株式会社(2019年1月30日発表)

株式会社 日立製作所(2019年2月1日発表)

株式会社 東芝(2019年2月13日発表)

ソニー 株式会社(2019年2月1日発表)

パナソニック 株式会社(2019年2月4日発表)

三菱電機 株式会社(2019年2月4日発表)

シャープ 株式会社(2019年1月30日発表)

電機とITの決算

2019.02.06 2018年度第3四半期決算:富士通

2019.02.05 2018年度第3四半期決算:NEC

2018.11.10 富士通の経営方針の2018年度進捗レビュー

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