このページ内の目次
今回(1月30日)の2017年度第3四半期の決算発表に合わせて、「2020中期経営計画」も発表されました。
「2018中期経営計画」では、2018年度の目標は売上高が3兆円、営業利益を1,500億円としていましたが、特に営業利益の2017年度予想では600億円となっており、達成は困難な状況にあります。
「2018中期経営方針」では、「収益構造の立て直しとして営業利益率5%を実現する収益構造の立て直し」、「成長軌道への回帰として注力事業への集中」を挙げていましたが、改善目標は概ね順調としながら、既存事業が予想以上に落ち込んでいると評価しています。
例えば、2014年度まで営業利益率8%を超えて600億円以上の利益を向上していたテレコム事業は、国内通信基地局向けの需要が一巡して、2016年度は195億円に縮小しています。
そこで、目標値を2020年に延期し、「成長軌道に回帰するために必要な投資を実現すべく、固定費の削減を含む抜本的な収益構造改革に踏み切る」として、以下の方針を新たに策定しています。
1.収益構造の改革
- ・国内で3,000人の人件費などの固定費削減
- ・テレコムキャリやエネルギー事業の構造改革
- ・国内生産体制の効率化
2.成長の実現
- ・国内:2020年度売上目標2兆1,100億円
市場の変曲点を捉えた事業成長、ビジネスモデルの変革
- ・グローバル:同8,900億円(海外比率29.7%)
セーフティ事業へ集中・拡大、グローバル事業の専任体制化、M&Aの推進(施策枠2,000億円)
3.実行力の改革
- ・最新技術を活かした顧客価値創造への挑戦
- ・社員の力を最大限に引き出す改革
NECは、過去様々な構造改革を繰り返しており、2000年度(2001年3月期)には売上高5兆4,000億円(営業利益1,851億円)あった企業規模も、2017年度(2018年3月期)予想は売上高2兆8,300億円(営業利益600億円)と半減しています。
かつての勢いを取り戻すためには、今回の「2020中期経営計画」を実行することが必須となりますが、「収益構造の改革」もさることながら「成長の実現」を軌道に乗せていかないと、一時的な対策となってしまいます。
今期決算で微減と予想している本業のSI事業の成長戦略の再構築、そして「2020中期経営計画」であげているセーフティー事業の国内とグルーバルへの展開の成否にかかっています。
「2020中期経営計画」の業績目標
継続的に営業利益率5%を実現する体質に改革
2016年度 | 2017年度 | 2020年度 | |
---|---|---|---|
実績 | 予想 | 目標 | |
売上高 | 2兆6,650億円 | 2兆8,300億円 | 3兆円 |
営業利益 営業利益率 |
418億円 1.6% |
600億円 2.1% |
1,500億円 5.0% |
当期利益 | 273億円 | 400億円 | 900億円 |
フリー・キャッシュ・フロー | 990億円 | 1,000億円 | 1,000億円 |
ROE 自己資本利益率 |
3% | 5% | 10% |
2020中期経営方針
Ⅰ.収益構造の改革
1.SGA:人件費・経費削減
- ・人件費:△300億円
国内で3,000人の構造改革(間接部門、ハードウェア事業領域)
- ・経費:△130億円
オフィスフロアの効率化などによる不動産費用、自社デジタルトランスフォーメーションの加速などによるIT費用、使途見直しなどによるマーケティング費用、
2.事業構造:テレコムキャリア事業/エネルギー事業
- ・テレコムキャリア事業
テレコム市場で培ったネットワークの強みを、IOTや5G時代の新たなネットワーク事業などの他の領域にも展開
- ・エネルギー事業
全方位経営を改め、ファイナンスやアライアンスなどの新たなスキームを活用した成長の実現に向けたエネルギーSI事業に集中(小型蓄電、電極事業を撤退)
新たな経営体制の下で成長を目指す
3.生産体制:グローバルなバリューチェーンを再編し、国内生産体制を効率化
国内外全工場の生産プロセス・システムを共通化
- ・国内外全工場の生産プロセス・システムを共通化
- ・工場IoTやAIを活用したタイ新工場を積極活用
- ・国内9工場の再編により、更なる効率化
- ・間接人員のスリム化
Ⅱ.成長の実現
2016年度 | 2017年度 | 2020年度 | |
---|---|---|---|
実績 | 予想 | 目標 | |
売上高 | 2兆6,650億円 | 2兆8,300億円 | 3兆円 |
売上高(国内) | 2兆940億円 | 2兆1,000億円 | 2兆1,100億円 |
売上高(海外) | 5,710億円 | 7,300億円 | 8,900億円 |
海外比率 | 21.4% | 25.8% | 29.7% |
1.国内:2020年度売上高2兆1,100億円(2017年度予想2兆1,000億円)
- ・市場の変曲点を捉えた事業成長、サービス型ビジネスモデルへの変革
- ・主に3つの分野で成長を実現
安全・安心で豊かなSafer Citiesの構築、持続可能なスマートサプライチェーンの形成、安全・快適なコネクテッドカーの実現
- ・ビジネスモデルの変革
社会課題解決のためのソリューションをお客様とパートナーリンクなどによりサービス型で提供
2.グローバル:同8,900億円(同7,300億円)
- ・グローバルカテゴリリーダーの実現
セーフティ、グローバルキャリア、リテール
- ・成長エンジンとしてのセーフティー事業への注力:2020年度海外売上2,000億円(2017年度予想500億円)
- ・3つのプラットフォームによる新しいビジネスモデル
水平展開可能な共通業務、データの解析や予測、データの収集・統合
- ・成長を支えるグローバル体制、グローバル専任体制化
- ・M&Aの推進:施作枠2,000億円(内、Northgate Public Services社を700億円で買収)
Ⅲ.実行力の改革
1.最新技術を活かした顧客価値創造への挑戦
- ・自前主義からの脱却
- ・共創型ソリューション開発の推進
- ・既存の枠組みを超えた新たな社会価値の創造
2.社員の力を最大限に引き出す改革
- ・経営の結果を厳しく問う
- ・イノベーティブな行動や挑戦を促す
- ・市場の変化・複雑化にスピーディーに対応する
事業ポートフォリオの方向性
1.事業構造の改革
- ・テレコムキャリア事業
- ・エネルギー事業
2.堅守(国内)
- ・ICTサービス事業
ビジネスモデルを変革し、新たな成長機会を創造・獲得
- ・社会インフラ事業
差別化のための投資を実行し、収益基盤を盤石化
- ・プラットフォーム事業
競争力を高めつつ、効率化を徹底
3.成長(グローバル)
- ・全社の成長の柱として、数千億円規模の事業を確立
- ・国内事業とのシナジー(技術・顧客・ソリューション)
セグメント別 中期経営計画
上段:売上高 下段:営業損益 | 2016年度 | 2017年度 | 2020年度 |
---|---|---|---|
実績 | 予想 | 目標 | |
パフリック | 7,662億円 332億円(4.3%) |
9,550億円 530億円(5.5%) |
9,870億円 760億円(7.7%) |
エンタープライズ | 4,086億円 397億円(9.7%) |
4,050億円 340億円(8.4%) |
4,240億円 380億円(9.0%) |
テレコムキャリア | 6,004億円 181億円(3.0%) |
5,700億円 130億円(2.3%) |
5,800億円 400億円(6.9%) |
システム プラットフォーム |
7,198億円 296億円(4.1%) |
7,100億円 320億円(4.5%) |
7,000億円 500億円(7.1%) |
その他 | 1,700億円 △200億円(-) |
1,900億円 △150億円(-) |
3,090億円 80億円(2.6%) |
調整額 | - △587億円 |
- △570億円 |
- △620億円 |
計 | 2兆6,650億円 419億円(1.6%) | 2兆8,300億円 600億円(2.1%) | 3兆円 1,500億円(5.0%) |
参考
2018.2.18 2017年度第3四半期決算:ソニー、パナソニック、シャープ
2018.2.15 2017年度第3四半期決算:日立、東芝、三菱電機
2018.2.10 NEC「2020中期経営計画」達成には相当の努力が必要
2018.2.03 2017年度第3四半期決算:富士通
2018.2.01 NECが「2020中期経営計画」を発表
2018.1.30 2017年度第3四半期決算:NEC
関連記事
前へ
NECの2017年度第3四半期決算、パブリック部門の伸長で増収増益し、通期予想も上方修正
次へ
富士通の2017年度第3四半期決算、円安と国内堅調もニフティ売却で減収、不採算案件で営業利益減