ソニーとパナソニック及びシャープの2017年度第3四半期決算(2017年4月~12月)と通期予想

ソニーとパナソニック及びシャープの2017年度第3四半期決算(2017年4月~12月)と通期予想

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ソニーパナソニックシャープから2017年度第3四半期決算(2017年4月1日~12月31日)と通期予想が発表されましたので、概況を整理します。

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3社ともに主力事業が好調で、第3四半期は前年同期に対して増収増益となっています。

  • ・ソニーは、主軸事業のコンシューマエレクトロニクス事業の立て直しに取り組むみながら、「ソニーらしさ」の製品やサービスを打ち出し始めてきました。
  • ・パナソニックは、BtoBへシフトする中で、車載関連や住宅関連の事業成長により回復基調に転じてきています。
  • ・シャープは、全体の売上高の約半分を占め、液晶ディスプレーやテレビの販売を手掛けているアドバンスディスプレイシステム事業が好調を維持しています。

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2017年度第3四半期(2017年4月1日~12月31日)の各社の決算概況は、以下の通りです。

ソニー

2017年度第3四半期累計

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売上高と営業利益及び純利益ともに、前年同期に対して増収増益となっています。

売上高は、前年同期比15.7%増の6兆5,930億円となっています。

スマートフォンの販売台数の減少などが影響したモバイル・コミュニケーション分野のみが減収となりましたが、他の分野で増収となっています。

ゲーム&ネットワークサービス分野は、前年同期比2,313億円増の1兆4,992億円
PS4の累計実売は年末商戦についても好調に推移し、昨年の12月末日時点で7,360万台を超えたようです。

音楽分野は、同1,229億円増の5,936億円
モバイル向けゲームアプリの『Fate/Grand Order』が業績に大きく貢献した他、ストリーミング売上高についても引き続き伸びており、当四半期は前年同期から37%の増収となっています。

ホームエンタテインメント&サウンド分野は、同1,624億円増の9,876億円
4Kテレビを中心とした高付加価値モデルへのシフトや為替の好影響などによるものです。

半導体分野は、同1,115億円増の6,836億円
主にモバイル向けイメージセンサーの販売数量増によるものです。

営業利益は、前年同期比5,184億円増の7,127億円となっています。

モバイルコミュニケーションが同84億円の減益となったものの、半導体分野の同1,859億円、映画分野の1,229億円の大幅増益が貢献しています。

当四半期における営業利益の増益要因は、

  • ・映画分野の大幅な増益1,173億円は、前年同期に営業権の減損1,121億円を計上していたことによるものです。
  • ・半導体分野の増益334億円は、主にモバイル向けイメージセンサーの販売数量増によるものです。
  • ・金融分野の当四半期における増益273億円は、投資用不動産の売却益を計上したことや、市場リスクのヘッジを目的としたデリバティブ取引の損益改善によるものです。

純利益は、同4,620億円増の5,076億円となっています。

2017年度の通期決算予想

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2017年度の通期決算予想は、売上高のみ前回予想を据え置き、他の指標は上方修正しています。

売上高は、前回予想を据え置き

  • ・ゲーム&ネットワークサービス分野(△600億円)、モバイル・コミュニケーション分野(△400億円)及び半導体分野(△300億円)で減収を見込むものの、金融分野(800億円)及び音楽分野(500億円)で増収を見込むことにより、前回予想を据え置いています。
  • ・スマートフォンの販売台数見通しは、前回想定から150万台引き下げて、1,400万台に下方修正しています。

営業利益は、前回予想から900億円上方修正して7,200億円

  • ・その他/全社(共通)及びセグメント間取引消去の見通しに含まれていた様々なリスク(500億円)を今回の見通しには織り込んでいないこと、音楽分野(160億円)、半導体分野(50億円)、金融分野(50億円)及びホームエンタテインメント&サウンド分野(40億円)での増益を見込んでいます。
  • ・為替の影響額は、エレクトロニクス5分野合計で、約600億円を見込んでいます。
  • ・なお、構造改革費用は前回想定から変更なく、グループ全体で約150億円(2016年度実績は602億円)を見込んでいます。

純利益は、前回予想から1,000億円上方修正して4,800億円

  • ・営業利益の上方修正に加え、2017年度第3四半期に米国の税制改正の影響による税務ベネフィットの計上があったことなどで、税金費用の減少が見込まれることによるものです。

「第2次中期計画」の最終年度となる今年度において、「目標として掲げた経営数値を上回る業績を見通せるようになった」としています。

また、社長兼CEOを、平井一夫氏(2012年就任)から副社長兼最高財務責任者(CFO)の吉田憲一郎氏に引き継ぐことが発表されました。

平井一夫氏が2012年に就任された時期は、テレビのグローバル競争に敗れた他、国内電機各社にとって厳しい状況にありました。

  • ・パナソニックは、プラズマテレビ事業を推進した大坪文雄氏から、プラズマテレビ事業のリストラに挑んでいた津賀一宏氏が社長に就任
  • ・シャープは、液晶事業を推進してきた片山幹雄氏から、奥田隆司氏が社長に就任
    その後も業績は回復せず、奥田社長から高橋興三社長へ交代したところで、鴻海グループ傘下に入ることが決定

2011年度(2012年3月期)は、ソニーは4年連続となる赤字を計上して最終赤字は4,567億円になり、パナソニックは過去最悪となる7,720億円の最終赤字、シャープは当初の黒字見通しから一転して3,760億円の最終赤字を計上しています。

ソニーは、BtoCからBtoBへシフトしたパナソニックとは異なり、主軸事業のコンシューマエレクトロニクス事業の立て直しに取り組んできました。

特に、テレビ事業の改革を最優先して、2004年に赤字に転落して以来10年連続で赤字を計上して累計赤字額が7,900億円となった事業を、2014年度に黒字化し、以降も黒字を維持しています。

事業規模を半分以下としても、損益を均衡させる事業構造への転換が功を奏したことになります。

ターゲットとする顧客層を絞り込み、それに合わせた規模へ販売台数を縮小し、液晶パネルは複数の企業から調達する機動的な体制へと転換し、販売会社の費用を含めた固定費を大幅に削減したことが、再生に成功した要因と思われます。

テレビ事業の改革と併せて、コンシューマエレクトロニクス事業全体の業績改善に取り組み、安定した収益をあげられる事業構造に変革しています。

さらに、2012年にTS事業準備室を設置して、かつての「ソニーらしさ」を取り戻すため、自由な発想で様々な商品を開発し、いくつかの製品を市場に投入し始めています。

今回の好業績を確固たるものにするためには、ソニーブランドを力強く牽引する事業、「ソニーらしさ」を体現する製品やサービスを生み出し続けることにかかっています。

パナソニック

2017年度第3四半期累計

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売上高と営業利益及び純利益ともに、前年同期に対して増収増益となっています。

車載向け先行投資などの固定費増などで、オートモーティブが前年同期に対して営業利益が減益となったものの、他のセグメント全てが増収増益となったことが貢献しています。

売上高は、前年同期比9.0%増の5兆9,122億円となり、5四半期連続で増収となっています。

国内売上は堅調に推移したことに加え、フィコサ社・ゼテス社の新規連結及び為替の影響によるものとしています。

アプライアンスは、前年同期比4%増の1兆9,464億円
欧州や中国でエアコンの好調、テレビは日本や中南米で堅調に推移し、美容家電が中国やアジアを中心に販売を伸ばしたことによるものです。

エコソリューションズは、同4%増の1兆1,238億円
ソーラーの減収はあったものの、ハウジングシステム事業が国内で販売好調、電設資材事業が国内外で増販に転じたことなどが貢献しています。

コネクテッドソリューションズは、同8%増の7,551億円
プロセスオートメーション事業でスマートフォンや自動車・ICT業界向けの実装機の好調、モバイルソリューションズ事業でゼテス社の新規連結と国内パソコンや決済端末の好調などによるものです。

オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、同16%増の2兆746億円
オートモーティブ事業でフィコサ社の新規連結と欧州・北米でのインフォテイメントシステムの好調、エナジー事業での車載電池の好調、インダストリアル事業での車載・産業向けのデバイスの好調などによるものです。

営業利益は、同410億円増の3,167億円となっています。

原材料価格高騰や先行投資による固定費が増加したものの、オートモーティブ事業やインダストリアル事業などの増収したことによるものです。

純利益は、同26億円増の2,001億円となっています。

2017年度の通期決算予想

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2017年度の通期決算予想は、全ての指標を上方修正しています。

売上高は、前回予想から1,500億円上方修正して7兆9,500億円

  • ・2014年3月期以来の4年ぶりとなる増収となります。
  • ・コネクテッドソリューションズのプロセスオートメーション事業は、ICT業界向け実装機の販売が当初想定を上回ったとしています。
  • ・オートモーティブ&インダストリアルシステムズのオートモーティブ事業は、インフォテインメントにおいて日米での販売が伸張し、フィコサ社も堅調に推移しているとしています。
  • ・同セグメントのインダストリアル事業は、車載・産業向けに転地を進めており、メカトロニクスを中心に大きく売上を伸ばしているとしています。
  • ・同セグメントのエナジー事業は、北米における車載電池販売の期ずれを反映したとしています。
    米電気自動車(EV)メーカー、テスラの新型車「モデル3」で生産遅延が発生した影響でテスラ向けの車載用2次電池の売り上げが期初予想に比べて約900億円減ると見込んでいます。

営業利益は、前回予想から150億円上方修正して3,500億円

  • ・アプライアンスが原材料費の高騰の影響により50億円、オートモーティブ&インダストリアルシステムズが車載電池の販売計画を見直して70億円下方修正しています。
  • ・一方、コネクテッドソリューションズが、260億円上方修正しています。

純利益は、前回予想から500億円上方修正して2,100億円

  • ・10年ぶりとなる2,000億円超えとなります。
  • ・税引前利益の増加に加え、法人税の良化や非支配持分利益の控除額が減少したことなどによるものとしています。

パナソニックは、BtoCからBtoBへのシフトを打ち出し、テレビ事業においてもプラズマテレビからの撤退するとともに、テレビ向け液晶パネルは他社からの調達に切り替えて、付加価値モデルにラインアップを集中し、自社生産は医療分野向けなどの用途に限定してきました。

BtoBへシフトする中で、車載関連や住宅関連の事業が成長することにより、回復基調に転じてきているようです。

シャープ

2017年度第3四半期累計

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売上高と営業利益及び純利益ともに、前年同期に対して増収増益となっています。

売上高は、前年同期比22.7%増の1兆8,294億円となっています。

特に、アドバンスディスプレイシステム事業は、全体の売上高の約半分を占め、液晶ディスプレーやテレビの販売を手掛けている事業で、前年同期比38%増の8,363億円となっています。

液晶テレビが、台数及び金額ともに前年同期に対して2倍に伸び、特に中国市場が全体を牽引しているようです。

中国市場におけるシャープの薄型テレビの販売台数は、2017年4~6月で前年同期比約250%、直近の10~12月期でも同140%と伸びている調査結果(IHSマークイット)もあります。

2017年10~12月期には、韓国サムスン電子やLeTV及びハイセンスが初めて前年同期の出荷台数を下回って売上を落としている中で、シャープの飛躍が際立っています。

営業利益は、前年同期比271.4%増の703億円となり、前年同期の3.7倍と大幅に改善しています。

当四半期は、売価減による355億円の減益があったものの、コスト削減で311億円と販売増による154億円の増益があり、全体では前年同期の1.5倍以上の297億円となっています。

純利益は553億円となり、前年同期の△411億円の赤字から黒字転換しています。

営業外損益が改善したことにより経常利益が711億円となり、大幅に改善しています。

当四半期のセグメント別の結果は、

  • ・スマートホームの売上高は、前年同期比15.5%増の1,489億円(営業利益:同3.6倍の106億円)
    「AQUOS Rシリーズ」を中心とした携帯電話が増収した他、コードレス掃除機「RACTIVE Air」などの掃除機や洗濯機が好調に推移したことによります。
  • ・スマートビジネスソリューションの売上高は、同10.8%増の801億円(営業利益:同12.9%減の36億円)
    販路投資の効果により、海外の複合機が好調だったことによります。
  • ・IOTエレクトロデバイスの売上高は、同34.8%増の1,893億円(営業利益:同9.3%減の51億円)
    スマートフォン向けカメラモジュールの大幅な増加の他、センサモジュール、半導体などの独自デバイスの販売増によるものです。
  • ・アドバンスディスプレイシステムの売上高は、同28.2%増の3,146億円(営業利益:同19.8%増の131億円)
    大手顧客向けなどのスマートフォン用パネル販売は減少したものの、タブレットや車載用などの中型パネルが増加し、中国やアジア及び欧州での液晶テレビの売上が伸張したことが貢献してたとしています。

財務体質も改善しており、2017年12月末の自己資本比率は18.7%と2017年3月末から2.1%ポイント改善し、棚卸資産(2,144億円)も2017年9月末(1,860億円)に対して増加しています。

そかし、月商比で棚卸残高は1.06ヶ月と前年同期の1.27ヶ月に低下しており、引き続き適正な在庫水準を維持するとしています。

2017年度の通期決算予想

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2017年度の通期決算予想は、全指標を前回予想を据え置いており、4年ぶりの黒字を見込んでいます。

2017年度のテレビ販売台数の目標は1,000万台を見込む

  • ・対前年度比約2倍という計画ですが、「現時点での進捗状況は順調」としています。
  • ・2019年には、鴻海が約1兆5,000億円を投資して中国・広州に建設した第10.5世代のディスプレー工場の稼働が始まり、そのパネルを使ったシャープ製の超大型テレビの販売も開始される予定です。
  • ・100万人を超える鴻海グループの従業員を動員した「天虎計画」と呼ばれるプロジェクトが、売上拡大を牽引しているとも言われています。
    従業員やその家族を含めた関係者への販促を行ったり、不動産デベロッパーと提携し、テレビ備え付けのマンションを販売してもらったり、努力しているようです。

今後は、これまでの業績改善が持続可能なのか、8Kテレビや車載ディスプレイなどの新規事業を早期に立ち上げることができるのか、今後の動向が注目されます。

2017年度(2018年3月期)

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電機各社の決算発表

富士通 株式会社(2018年1月31日発表)

日本電気 株式会社(2018年1月30日発表)

株式会社 日立製作所(2018年1月31日発表)

株式会社 東芝(2018年2月14日発表)

ソニー 株式会社(2018年2月2日発表)

パナソニック 株式会社(2018年2月5日発表)

三菱電機 株式会社(2018年2月2日発表)

シャープ 株式会社(2018年1月31日発表)

電機とITの決算

2018.2.18 2017年度第3四半期決算:ソニー、パナソニック、シャープ

2018.2.15 2017年度第3四半期決算:日立、東芝、三菱電機

2018.2.10 NEC「2020中期経営計画」達成には相当の努力が必要

2018.2.03 2017年度第3四半期決算:富士通

2018.2.01 NECが「2020中期経営計画」を発表

2018.1.30 2017年度第3四半期決算:NEC

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