デジタルトランスフォーメーション(DX)の成熟度、人材の確保と活躍の環境整備の主なポイント

デジタルトランスフォーメーション(DX)の成熟度、人材の確保と活躍の環境整備の主なポイント

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出典
IDC Japan株式会社、2018年3月6日
国内デジタルトランスフォーメーション(DX)成熟度に関するユーザー調査結果を発表

先日(2018年3月6日)、「国内デジタルトランスフォーメーション(DX)成熟度に関するユーザー調査結果」が、IDC Japan株式会社から発表されました。

IDC Japanでは、IT環境の導入状況を客観的に評価する独自の手法を用いて、成熟度を5段階で評価しており、今回の調査結果では、国内企業の約40%がステージ3(標準基盤化)にあるとしています。

また、DXに取り組む企業は多いものの、その取り組みは短期的で、従来のビジネスの効率化が中心となっているようです。

IDC Japanの調査結果の概要

国内企業の約40%が「ステージ3(標準基盤化)」に位置しており、前年の調査結果と比べて成熟度に大きな進展はみられず、革新的な製品やサービスを連続的に創出し、市場に変革をもたらすレベルの企業は限られているようです。

  • ・ステージ1(個人依存):3.6%
  • ・ステージ2(限定的導入):17.9%
  • ・ステージ3(標準基盤化):42.6%
  • ・ステージ4(定量的管理):30.3%
  • ・ステージ5(継続的革新):5.6%

国内のDX成熟度は足踏み状態にあり、この状態を脱却できるか否かは、DX人材にかかっている。

国内企業は、組織の壁を超えた横断的かつ持続的な変革を推進できるDX人材の発掘や育成、確保を進め、DX人材が活躍できる環境を整備すべきであるとしています。

DX人材の活躍に向けて(私見)

現在、個別企業のIT化をご支援するとともに、各種支援団体主催のセミナーの講師をしています。

セミナーのテーマは、IOTやAIの動向、そしてデジタルトランスフォーメーション推進に関するものが最近は多いのですが、セミナー来場者との対話やアンケート結果において、今回のIDC Japanの調査結果と同様の傾向を感じています。

DXへの取り組みに関しては、一昨年は情報収集段階の企業が多かったのに対し、昨年後半からは、「実践している」「実践に向けて準備中」の企業が多くなってきています。

しかし、「DX人材の確保、活躍の支援」に関しては、セミナーの中でも重要性をお話し、参加されている方々も理解して頂けていますが、実際には苦労されている企業が多いようです。

DXを推進する体制としては、目的に応じて以下の4つの形態がありますが、その成否は人材にあることは言うまでもありません。

1.全社横断型:経営層の直下で、全社のデジタル戦略の策定と推進

  • ・全社最適及び展開
  • ・事業部門の取りまとめ

2.デジタル部門:事業部門と並列の組織で、デジタル化を推進

  • ・新たなビジネスモデルの構築
  • ・新サービスの開発

3.事業特化型:特定の事業部門内で、当該事業に特化したデジタル化を推進

  • ・事業個別のデジタル化の推進
  • ・事業部門内の変革

4.機能横断型:事業部門横断型で、共通機能のデジタル化を推進

  • ・事業部門の共通した機能のデジタル化の推進
  • ・業務の効率化、高度化
支援のあり方(DX人材が活躍できる環境整備)

DX推進に当っての「支援のあり方」に関して、個別にご支援又はセミナーに来場された方々とお話ししていると、共通して以下の様なご意見があります。

詳細につきましては改めますが、「DX人材が活躍できる環境」作りの主なポイントは以下と考えています。

1.トップの支援

  • ・「任せたから、後はガンバレ」ではなく、「一緒に推進していこう」という姿勢を見せる。
  • ・DX推進の取り組みの意義や重要性を全社に周知し、推進状況を適時確認する。
  • ・可能な限り、経営者としての想い、DX戦略や構想について一緒に議論する。

2.既存事業部門の協力

  • ・既存の仕組みの変革、成果が出るまでに時間を要することなどから、既存事業部門からの批判を受ける場合もあります。
    その際は、トップ又は部門長から協力の指示をする。
  • ・DXに関する取り組み状況を事業部門と適時情報交換し、課題や解決策を共有する。(情報システム部門とは別に組織化する場合は、情報システム部門も含む)

3.直属上司の理解

  • ・直属上司はDXに関して理解しているはずですが、DXの推進方針や取り組み内容、進捗状況など、常に情報交換する。
  • ・業績評価基準に関しても、事前に整合しておく。
    成果指標だけではなく、プロセス指標を明確にしておく。

4.経験者の助言

  • ・DX推進は新たな事業創出でもあり、精神的にも辛くなる場合もあります。
    社内の新規事業立ち上げ経験者のアドバイスは、プロジェクト推進の面でも精神的な面でも有効です。
  • ・推進内容に関しては限定的となりますが、技術動向や進め方などに関しては、社外の同じ立場の方々と意見交換することも有効です。

5.メンバーの確保・育成

  • ・当初から即戦力となるメンバーを確保できるとは限りませんが、候補となりそうな人を日頃から見出し、トップや事業部門長を都度説得する。
  • ・DX推進の重要性をメンバーと常に共有し、動機づけをする。

6.出口の明確化

  • ・DX推進の成功及び変更(撤退)の基準について、定量的又は定性的視点から事前に明確にし、トップと共有しておく。
  • ・プロジェクト終了後又は定期異動に際して、DX推進者のキャリアパスを考えておき、事前に了解を得ておく。

ほとんどの企業では、従来からDX推進組織があったわけではなく、既存の事業部門から異動され、新たにDX推進リーダーに任命されています。

DX推進リーダーの皆さんには、様々な悩みを持って推進していらっしゃるようですが、既存事業での豊富な経験に加え、成長意欲を持った前向きな性格であると、お話ししていて感じています。

人材の確保・育成に当たっては、社員の性格や仕事への取り組み姿勢などを見ておいて、既存事業の中でも新たな事業創出の経験を積み重ねておく必要があります。

DX推進は、正解のない、成果が現れるまでに時間を要する、新たな取り組みと言えます。

その意味においては、推進する方々には精神的な負担を軽減する「精神的な支援」に加え、「業務面の支援」「仮説検証のフィードバック支援」など、全社的な取り組みが重要になってきます。

今回のIDC Japan調査に関する補足

デジタルトランスフォーメーションの定義(IDC Japan株式会社)

企業が第3のプラットフォーム技術を利用して、新たな製品やサービス、ビジネスモデル、新しい関係を通じて価値を創出し、競争上の優位性を確立すること

成熟度(IDC MaturityScapeに基づいた評価)
ステージビジネス成果
【ステージ1】
個人依存
デジタル抵抗者 ・カスタマーエクスペリエンス戦略は遅れている
・デジタル技術は、競合からの脅威への対策のみ導入
【ステージ2】
限定的導入
デジタル探索者 ・デジタル技術を活用したカスタマーエクスペリエンス戦略を実施している
・企業内で、製品に一貫性はない
【ステージ3】
標準基盤化
デジタルプレイヤー ビジネスに一貫性はあるが、革新的な製品/サービス/カスタマーエクスペリエンスではない
【ステージ4】
定量的管理
デジタル変革者 デジタル技術による製品/サービス/カスタマーエクスペリエンスを提供するマーケットリーダー
【ステージ5】
継続的変革
デジタル破壊者 グローバル競争において、迅速に新しい製品/サービスを創出し、既存の市場を再構築する
今回の調査概要

調査方法

  • ・実施:2017年12月
  • ・対象:548人
    従業員1,000人以上の大規模企業に所属する、部長クラス以上、あるいは、予算・企画等の意思決定者である係長クラス以上
  • ・方法:Webアンケート調査

デジタル技術活用による企業のビジネス変革の可能性について、リーダーシップ変革、オムニエクスペリエンス変革、ワークソース変革、運用モデル変革、情報変革の5つの側面から調査

参考

国内デジタルトランスフォーメーション(DX)成熟度に関するユーザー調査結果
2018年3月6日 IDC Japan株式会社

デジタルトランスフォーメーション関係(当サイト)

デジタルトランスフォーメーションにおける既存企業の戦い方

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デジタルトランスフォーメーションの実際

ベイカレント・コンサルティング(著)
出版社:日経BP社(2017/12/8)
Amazon.co.jp:デジタルトランスフォーメーションの実際

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デジタルトランスフォーメーション

ベイカレント・コンサルティング(著)
出版社:日経BP社(2016/9/14)
Amazon.co.jp:デジタルトランスフォーメーション

digital-vortex

対デジタル・ディスラプター戦略 既存企業の戦い方

マイケル・ウェイド、ジェフ・ルークス、ジェイムズ・マコーレー(著)
出版社:日本経済新聞出版社(2017/10/24)
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