ハイプ・サイクル(ガートナー)2024年版 | 日本における未来志向型インフラ・テクノロジに5項目追加

ハイプ・サイクル(ガートナー)2024年版 | 日本における未来志向型インフラ・テクノロジに5項目追加

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日本における未来志向型インフラ・テクノロジ

日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2024年

出典:ガートナージャパン『日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2024年』

関連情報
 2024年08月27日 ハイプ・サイクル(ガートナー)2024年版の概要整理

2024年8月7日、ガートナージャパン株式会社(本社:東京都港区)が、「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2024年」を発表したので概要を整理します。

ハイプ・サイクルでは、将来に向けて企業が注目しておくべき40項目のテクノロジやイノベーションを取り上げています。

2023年版ハイプ・サイクルでは、2022年版に掲載したものの一部を除外し、9項目のテクノロジやトレンドを新たに追加しています。

これに対して2024年版ハイプ・サイクルでは、2023年版に掲載したものの5項目を除外し、新たに5項目を追加しています。

なお、生成AIは、2023年版と同様に「『過度な期待』のピーク期」を進行しつつあり、AIに関する技術は今後さまざまな用途と業種に広がり、複数の技術を複合化させていくトレンドが継続するとしています。

ハイプ・サイクルの2024年版と2023年版

ハイプ・サイクル(2024年版)

日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2024年

出典:ガートナージャパン『日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2024年』

ハイプ・サイクル(2023年版)

日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2023年

出典:ガートナージャパン『日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2023年』

2024年版ハイプ・サイクルで追加した5項目

2024年版ハイプ・サイクルでは、2023年版に掲載したものの5項目を除外し、新たに5項目を追加しています。

検索拡張生成(RAG:Retrieval Augmented Generation):「過度な期待」のピーク期(2年未満)

  • ・大規模言語モデル (LLM) と検索 (サーチ) のハイブリッド・アプローチです。
  • ・このアプローチによって企業は自社データを生成AIの出力に組み込むことができるため、より業務に特化した生成AIの利用が期待されている。
  • ・多くの企業やエンジニアがRAGにチャレンジしているが、RAGの精度向上に苦心している状況である。
  • ・この状況が続くと生成AI全体の期待度の低下につながる可能性があため、生成AIを推進するリーダーは、ステークホルダーとの間で期待値コントロールをうまく行うことが重要である。
    『要約』など『無いよりまし』の領域で割り切って使うことで生産性向上を図るなどの工夫をすることが、生成AIやRAGの成功の鍵となる。

ヒューマノイド:黎明期(10年以上)

  • ・2024年以降、海外の主要な自動車企業はヒューマノイドを工場に投入することで、製造業に産業革命的インパクトをもたらそうとしている。
  • ・自動車業界を先行事例とし、すべての日本企業は、産業革命のトレンドへの対応が急務となっていく。
  • ・その際、単なる合理化としてではなく、People Centricの原理原則の下、働く人の労働負荷の軽減や、人間力を高めるためのケイパビリティやマインドセットを獲得すべく、人材投資を行いながら従業員とAIやヒューマノイドとの共生を図っていくことが、企業にとって極めて重要なテーマとなる。

エンボディドAI(Embodied AI):黎明期(5~10年)

  • ・実世界や仮想世界など、何らかの環境とのやりとりを通して学習すること。
  • ・自らの機能を、継続的に改善・進化させるAI技術のこと。

マシン・カスタマー:黎明期(10年以上)

LBM(Large Behavior Model:大規模振る舞いモデル):黎明期(10年以上)

2023年版ハイプ・サイクルから変化または除外した項目

変化した項目

  • ・サステナビリティ管理ソリューション
    2023年版:黎明期(5~10年)→ 2024年版:「過度な期待」のピーク期(5~10年)
  • ・自律分散型組織
    2023年版:黎明期(5~10年)→ 2024年版:「過度な期待」のピーク期(5~10年)
  • ・分散型アイデンティティ
    2023年版:「過度な期待」のピーク期(5~10年)→ 2024年版:幻減期(5~10年)
  • ・スマート・ワークスペース
    2023年版:「過度な期待」のピーク期(2~5年)→ 2024年版:幻減期(2~5年)
  • ・次世代型リアル店舗
    2023年版:幻減期(10年以上)→ 2024年版:啓発期(2~5年)
  • ・モノのインターネット
    2023年版:幻減期(5~10年)→ 2024年版:啓発期(2~5年)
  • ・ブロックチェーン
    2023年版:幻減期(2~5年)→ 2024年版:啓発期(2~5年)

除外した項目(2023年版の位置)

  • ・6G:黎明期(5~10年)
  • ・デジタル・メッシュ:黎明期(5~10年)
  • ・ファンデーション・モデル:「過度な期待」のピーク期(5~10年)
  • ・エッジAI:幻減期(2~5年)
  • ・スマート・ロボット:幻減期(5~10年)
テクノロジーと主流の採用までに要する年数

主流の採用までに要する年数

参考

デジタル化やイノベーションを推進するテクノロジ・リーダーは、まず本ハイプ・サイクルで取り上げるテクノロジ/概念の中から、自社に利益をもたらす可能性のあるものを見極め、その現在の成熟度と十分に成熟するまでの期間を理解し、自社が投資すべきテクノロジを判断することが重要です。

特にハイプ・サイクルの頂点の近くにあるものについては、期待値と現実のギャップが大きい点に十分に注意する必要があります。

テクノロジが未成熟な段階でリスクを取って投資をし、先行者利益を享受することをまずは考慮すべきですが、リスクを回避し、早期に導入した他社の状況を見つつ、テクノロジの成熟が進んでから採用することも得策となり得ます。

ハイプ・サイクル(Hype Cycle)は、2,000を超えるテクノロジの中から、注目すべき先進テクノロジー及びトレンドとして簡潔にまとめたものとして、米国調査会社のガートナー(Gartner)が1995年からグローバル版を毎年発表しています。

縦軸に期待度、横軸に時間をとって曲線で表し、多くの技術がこの曲線上を動くという主張で、IT業界の最新動向や今後のトレンドを見ていく上で参考になります。

横軸の時間の流れは、技術(テクノロジー)を5段階に分類しています。

なお、2020年9月に、ハイプ・サイクルのフェーズの日本語表記が、「啓蒙活動期(修正前)」から「啓発期(修正後)」に変更しています。

黎明期(Innovation Trigger)

  • ・新しい技術が発表され、注目度が一気に上がる時期です。
  • ・初期の概念実証 (POC) にまつわる話やメディア報道によって注目が集まりますが、多くの場合、使用可能な製品は存在せず、実用化の可能性は証明されていません。

過度な期待のピーク(Peak of Inflated Expectations)

  • ・注目度が上がるにつれて、新しい技術に対する期待が高まる時期です。
  • ・「過度な期待」によって理想と現実にギャップがある状態で、例えば「コスト削減ができると思っている」「儲かると思っている」「すぐに使えると思っている」といった点が挙げられます。

幻滅期(Trough of Disillusionment)

  • ・新しい技術に対する実装が追いついていなかったり、周辺の技術が整っていなかったりして、期待外れを感じる時期です。
  • ・「冷静な判断」を行う時期でもあり、短期的には幻滅したとしても、中長期で見ると重要なテクノロジーや考え方が存在する状態で、「本物と偽物の区別」が行われる時期でもあります。
  • ・また、需要側と供給側が歩み寄る現象が起こる時期でもあり、テクノロジーが具体的な商品やサービスになり、市場が形成されていく時期でもあります。

啓発期(Slope of Enlightenment)

  • ・実装や周辺技術が追い付いてきた技術は、徐々に現実のビジネスで採用されていく時期です。
  • ・テクノロジーが企業にどのようなメリットをもたらすのかを示す具体的な事例が増え始め、理解が広まり、第2世代と第3世代の製品が登場します。
  • ・但し、保守的な企業は慎重で、採用していません。

生産の安定期(Plateau of Productivity)

  • ・技術が安定し、広く普及していく時期です。
  • ・プロバイダーの実行存続性を評価する基準がより明確に定義され、テクノロジーの適用可能な範囲と関連性が広がり、投資は確実に回収されつつあります。
Hype Cycle:Gartner

Gartner、「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2024年」を発表
2024年8月7日 ガートナー ジャパン株式会社

Gartner、「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2023年」を発表
2023年8月17日 ガートナー ジャパン株式会社

ハイプ・サイクル | ガートナー ジャパン株式会社

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