ハイプ・サイクル(ガートナー)2023年版 | 4つのトレンドに分類し、生成AIは過度な期待のピーク期

ハイプ・サイクル(ガートナー)2023年版 | 4つのトレンドに分類し、生成AIは過度な期待のピーク期

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先進技術におけるハイプ・サイクル(2023年版)

ハイプ・サイクル(2023年版)

出典:Gartner『Hype Cycle for Emerging Technologies, 2023』

関連情報
 2024年08月27日 ハイプ・サイクル(ガートナー)2024年版の概要整理
 2024年08月15日 日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル

現地時間2023年8月16日、米国の調査会社Gartner(ガートナー)が「先進技術におけるハイプ・サイクル2023年版」を公開しましたので、概要を整理します。

ハイプ・サイクル(2023年版)の概要

「先進技術におけるハイプ・サイクル2023年版」も、2019年版で方針を変更して以来、過去の同ハイプ・サイクルでは取り上げていなかった最新テクノロジーを紹介しています。

そのため、「幻滅期(Trough of Disillusionment)」「啓発期(Slope of Enlightenment)」「生産の安定期(Plateau of Productivity)」のテクノロジーがなくなっています。

また、2年から5年で主流に採用される可能性が高いものは少なく、多くは5年から10年以上かかるテクノロジーとなっています。

テクノロジーの初期段階の性質上、展開リスクは高くなりますが、アーリーアダプターにとってのメリットは潜在的に大きくなります。

今回の「先進テクノロジーのハイプ・サイクル」では、「過度な期待のピーク(Peak of Inflated Expectations)」のほぼ中央にGenerative AI(生成的AI)が位置し、2年から5年で主流に採用される可能性が高いとしています。

そして、2,000を超えるテクノロジーや適用済みフレームワークを分析したうえでの知見を抽出し、注目すべき25の先進テクノロジーを4つの包括的なトレンドとして簡潔にまとめています。

そこで、注目すべき25の先進テクノロジーは、「新興 AI:Emergent AI」「開発者エクスペリエンス(DevX):Developer experience (DevX)」「普及型クラウド:Pervasive cloud」「人間中心のセキュリティとプライバシー:Human-centric security and privacy」の4つのテーマに分類しています。

なお、2022年版では、注目すべき25の先進テクノロジーは、「イマーシブ・エクスペリエンスの進化と拡大」「人工知能 (AI) 自動化の加速」「テクノロジストによるデリバリの最適化」の3つの包括的なトレンドに集約していました。

2023年版、先進テクノロジー・トレンドを4つのテーマに分類

新興 AI:Emergent AI

生成 AIに加えて、他のいくつかの新興 AI技術は、デジタルの顧客体験を強化します。

その結果、より適切なビジネス上の意思決定を行い、持続可能な競争上の差別化を構築する可能性をもたらします。

注目すべきテクノロジー

  • ・AI シミュレーション、因果関係 AI、連合機械学習、グラフ データ サイエンス、ニューロシンボリック AI、強化学習

開発者エクスペリエンス(DevX):Developer experience (DevX)

DevX は、開発者と、ソフトウェア製品およびサービスを開発および提供するために協力するツール、プラットフォーム、プロセス、および人々の間の対話のあらゆる側面を指します。

DevXの強化は、ほとんどの企業の成功にとって重要であり、優秀なエンジニアリング人材を引きつけて維持し、チームの士気を高く保ち、仕事にモチベーションとやりがいを与えるためにも重要です。

注目すべきテクノロジー

  • ・AI 拡張ソフトウェア エンジニアリング、API 中心 SaaS、GitOps、社内開発者ポータル、オープンソース プログラム オフィス、バリュー ストリーム管理プラットフォーム

普及型クラウド:Pervasive cloud

今後10年間で、 クラウドはテクノロジー イノベーション プラットフォームから普及し、ビジネス イノベーションに不可欠な推進力となるように進化します。

クラウド投資の価値を最大化するには、自動化された運用スケーリング、クラウドネイティブ プラットフォーム ツールへのアクセス、適切なガバナンスが必要となります。

注目すべきテクノロジー

  • ・拡張 FinOps、クラウド開発環境、クラウドの持続可能性、クラウドネイティブ、クラウドアウトからエッジ、業界クラウド プラットフォーム、WebAssembly (Wasm)

人間中心のセキュリティとプライバシー:Human-centric security and privacy

組織のデジタル設計にセキュリティとプライバシーの構造を織り込み、人間中心のセキュリティとプライバシー プログラムを実装することで、組織の回復力を高めることができます。

多くの新興テクノロジーにより、企業は多くのチーム間の意思決定において相互信頼と共有リスクの認識の文化を築くことができます。

注目すべきテクノロジー

  • ・AI TRISM、サイバーセキュリティ メッシュ アーキテクチャ、生成サイバーセキュリティ AI、準同型暗号、ポスト量子暗号
4つのテーマ別テクノロジーと主流の採用までに要する年数

黎明期

テーマ別、主流の採用までに要する年数(黎明期)

「過度な期待」のピーク期

テーマ別、主流の採用までに要する年数(過度な期待)

Gartner『Hype Cycle for Emerging Technologies, 2023』を参考にしてATY-Japanで作成

ハイプ・サイクルの2023年版と2022年版

ハイプ・サイクル(2023年版)

ハイプ・サイクル(2023年版)

出典:Gartner『Hype Cycle for Emerging Technologies, 2023』(2023年)

ハイプ・サイクル(2022年版)

ハイプ・サイクル(2022年版)

出典:Gartner『Hype Cycle for Emerging Technologies, 2022』(2022年)

ハイプ・サイクル(2023年版)では、「新興 AI:Emergent AI」「開発者エクスペリエンス(DevX):Developer experience (DevX)」「普及型クラウド:Pervasive cloud」「人間中心のセキュリティとプライバシー:Human-centric security and privacy」の4つのテーマに分類しています。

  • ・AIは現在注目されていますが、変革の可能性を秘めた他のテクノロジーにも目を向ける必要がある。
  • ・他のテクノロジーには、開発者の経験を向上し、普及したクラウドを通じてイノベーションを推進し、人間中心のセキュリティーとプライバシーを提供するものが含まれている。

一方、2022年版では、注目すべき25の先進テクノロジーは「イマーシブ・エクスペリエンスの進化と拡大」「人工知能 (AI) 自動化の加速」「テクノロジストによるデリバリの最適化」の3つのテーマに分類しています。

  • ・先進テクノロジには、ビジネスを変革する潜在能力があるが、CIOやテクノロジ・イノベーションのリーダーは、リソースの制約拡大に直面する中で、サステナビリティを向上させながらデジタル・ケイパビリティを拡張するという大きな課題を突き付けられている。
  • ・組織にとって重要なのは、先進テクノロジを巡る雑音に惑わされることなく、競争力のある差別化と効率化を強化するイノベーションを通じて、変化を加速させることである。

日本におけるハイプ・サイクル(2023年版)

日本におけるハイプ・サイクル(2023年版)

出典:Gartner『日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2023年』

2023年8月17日、ガートナージャパン株式会社(本社:東京都港区)も、「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2023年」を発表しています。

今回のハイプ・サイクルでは、今後すべての企業にとって重要となる、未来志向型と捉えられるテクノロジや、トレンドとなっているキーワード40項目を取り上げています。

そこで、2023年版ハイプ・サイクルでは、2022年版に掲載したものの一部を除外し、9項目のテクノロジやトレンドを新たに追加しています。

参考

ハイプ・サイクル(Hype Cycle)は、2,000を超えるテクノロジの中から、注目すべき先進テクノロジー及びトレンドとして簡潔にまとめたものとして、米国調査会社のガートナー(Gartner)が1995年からグローバル版を毎年発表しています。

縦軸に期待度、横軸に時間をとって曲線で表し、多くの技術がこの曲線上を動くという主張で、IT業界の最新動向や今後のトレンドを見ていく上で参考になります。

横軸の時間の流れは、技術(テクノロジー)を5段階に分類しています。

なお、2020年9月に、ハイプ・サイクルのフェーズの日本語表記が、「啓蒙活動期(修正前)」から「啓発期(修正後)」に変更しています。

黎明期(Innovation Trigger)

  • ・新しい技術が発表され、注目度が一気に上がる時期です。
  • ・初期の概念実証 (POC) にまつわる話やメディア報道によって注目が集まりますが、多くの場合、使用可能な製品は存在せず、実用化の可能性は証明されていません。

過度な期待のピーク(Peak of Inflated Expectations)

  • ・注目度が上がるにつれて、新しい技術に対する期待が高まる時期です。
  • ・「過度な期待」によって理想と現実にギャップがある状態で、例えば「コスト削減ができると思っている」「儲かると思っている」「すぐに使えると思っている」といった点が挙げられます。

幻滅期(Trough of Disillusionment)

  • ・新しい技術に対する実装が追いついていなかったり、周辺の技術が整っていなかったりして、期待外れを感じる時期です。
  • ・「冷静な判断」を行う時期でもあり、短期的には幻滅したとしても、中長期で見ると重要なテクノロジーや考え方が存在する状態で、「本物と偽物の区別」が行われる時期でもあります。
  • ・また、需要側と供給側が歩み寄る現象が起こる時期でもあり、テクノロジーが具体的な商品やサービスになり、市場が形成されていく時期でもあります。

啓発期(Slope of Enlightenment)

  • ・実装や周辺技術が追い付いてきた技術は、徐々に現実のビジネスで採用されていく時期です。
  • ・テクノロジーが企業にどのようなメリットをもたらすのかを示す具体的な事例が増え始め、理解が広まり、第2世代と第3世代の製品が登場します。
  • ・但し、保守的な企業は慎重で、採用していません。

生産の安定期(Plateau of Productivity)

  • ・技術が安定し、広く普及していく時期です。
  • ・プロバイダーの実行存続性を評価する基準がより明確に定義され、テクノロジーの適用可能な範囲と関連性が広がり、投資は確実に回収されつつあります。
Hype Cycle:Gartner

What’s New in the 2023 Gartner Hype Cycle for Emerging Technologies
August 23, 2023 Gartner

Gartner Places Generative AI on the Peak of Inflated Expectations on the 2023 Hype Cycle for Emerging Technologies
August 16, 2023 Gartner

Gartner、「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2023年」を発表
2023年8月17日 ガートナー ジャパン株式会社

ハイプ・サイクル | ガートナー ジャパン株式会社

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