ハイプ・サイクル(ガートナー)2021年版、25の先進テクノロジを3つの包括的なトレンドに集約

ハイプ・サイクル(ガートナー)2021年版、25の先進テクノロジを3つの包括的なトレンドに集約

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ハイプ・サイクル(2021年版)

出典:Gartner『Hype Cycle for Emerging Technologies, 2021』(2021年)

関連情報
 2022年08月20日 ハイプ・サイクル(ガートナー)2022年版の概要整理
 2021年11月09日 「日本におけるセキュリティのハイプ・サイクル:2021年」発表(Gartner Japan)

現地時間2021年8月23日、米国の調査会社Gartner(ガートナー)から「先進技術におけるハイプ・サイクル2021年版」が公開されましたので、概要を整理します。

2021年版の概要

「先進技術におけるハイプ・サイクル2021年版」も、2019年版で方針を変更して以来、過去の同ハイプ・サイクルでは取り上げていなかった最新テクノロジを紹介しています。

そのため、「幻滅期(Trough of Disillusionment)」「啓発期(Slope of Enlightenment)」「生産の安定期(Plateau of Productivity)」の技術がなくなっています。

今回の「先進テクノロジのハイプ・サイクル」は、1,500を超えるテクノロジを分析した上で知見を抽出し、注目すべき25の先進テクノロジ及び3つの包括的なトレンドとして簡潔にまとめ、提示しています。

デジタル・ビジネス・トランスフォーメーションに引き続き重点を置く企業は、変化を加速させる必要があり、先進テクノロジを巡るハイプ (過熱状態) に惑わされるべきではないとコメントしています。

そこで、注目すべき25の先進テクノロジは、「信頼の構築」「成長の加速」「変化の形成」の3つの包括的なトレンドに集約できるとしています。

なお、2020年版では、30の先進テクノロジを5つの先進テクノロジ・トレンドとして、「デジタル・ミー」「コンポジット・アーキテクチャ」「フォーマティブAI」「アルゴリズムによる信頼」「シリコンの先へ」をあげています。

2021年版、先進テクノロジ・トレンドの3つのテーマ

信頼の構築(Engineering Trust)

  • ・信頼にはセキュリティと信頼性が求められ、ITがビジネス価値を提供するための回復力のあるコア/基盤として、イノベーションの構築にも拡張できる。
  • ・基盤は、設計済みで再現性があり信頼できる、実証されたスケーラブルな作業プラクティスとイノベーションによって構成されなくてはならない。
  • ・注目すべきテクノロジ
    ソブリン・クラウド、非代替性トークン(NFT)、機械可読法、分散型アイデンティティ、分散型金融 (DeFi)、準同型暗号、アクティブ・メタデータ管理、データ・ファブリック、サービスとしてのリアルタイム・インシデント・センター、従業員コミュニケーション・アプリケーション

成長の加速(Accelerating Growth)

  • ・信頼できるコア・ビジネスが確立されると、回復と成長が可能になり、企業は、テクノロジ・リスクとビジネス・リスク許容度のバランスを取り、短期的な目標を達成できるようにする必要がある。
  • ・イノベーション主導のコア・ビジネスのスケーラビリティが高まると、成長が加速し、デリバリと価値が拡大する。
  • ・注目すべきテクノロジ
    マルチエクスペリエンス、インダストリ・クラウド、AI主導のイノベーション、量子機械学習 (ML)、ジェネレーティブAI、デジタル・ヒューマン

変化の形成(Sculpting Change)

  • ・変化とは、従来破壊的なものであり、カオス (混沌) につながりがちであるが、企業はイノベーションによって変化を形作り、カオスに秩序をもたらすことができる。
  • ・そのために必要なのは、変化のニーズを予測し、それに合わせて自動的に調整できる技量である。
  • ・注目すべきテクノロジ
    コンポーザブル・アプリケーション、コンポーザブル・ネットワーク、AI拡張型設計、AI拡張型ソフトウェア・エンジニアリング、物理学に基づくAI、インフルエンス・エンジニアリング、デジタル・プラットフォーム・コンダクター・ツール、データ指向ネットワーキング、自己統合型アプリケーション
3つのテーマ別、主流の採用までに要する年数

黎明期

テーマ別、主流の採用までに要する年数

Gartner『Hype Cycle for Emerging Technologies, 2021』を参考にしてATY-Japanで作成

「過度な期待」のピーク期

テーマ別、主流の採用までに要する年数

Gartner『Hype Cycle for Emerging Technologies, 2021』を参考にしてATY-Japanで作成

2021年版と2020年版

ハイプ・サイクル(2021年版)

ハイプ・サイクル(2021年版)

出典:Gartner『Hype Cycle for Emerging Technologies, 2021』(2021年)

ハイプ・サイクル(2020年版)

ハイプ・サイクル(2020年版)

出典:Gartner『Hype Cycle for Emerging Technologies, 2020』(2020年)

2021年版では、注目すべき25の先進テクノロジは「信頼の構築」「成長の加速」「変化の形成」の3つの包括的なトレンドに集約され、企業は競争優位性を確保するために、非代替性トークン(NFT)、ソブリン(主権)クラウド、データ・ファブリック、ジェネレーティブAI、コンポーザブル・ネットワークなどの先進テクノロジを検討する必要に迫られるとしています。

一方、2020年版では、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) のパンデミックに関連する「ヘルス・パスポート(Health Passport)」と「ソーシャル・ディスタンシング・テクノロジ(Social Distancing Technologies)」が新たに登場し、ハイプ・サイクル上を急速に推移し、2年未満で生産性の安定期に達するものと見込まれいます。

  • ・「ヘルス・パスポート」は、市場への浸透度が対象ユーザーの5~20%のテクノロジであるのもかかわらず登場するのは稀で、中国 (Health Code) とインド (Aarogya Setu) では公共の場所や交通機関を利用するために必須であり、何億もの人々に利用されているとしています。
  • ・「ソーシャル・ディスタンシング・テクノロジ」は、「過度な期待のピーク(Peak of Inflated Expectations)」から初登場した稀なテクノロジで、主にプライバシー上の懸念からメディアで大きな注目を集めているとしています。

また、2020年版の「黎明期(Innovation Trigger)」には、これまでは大きな枠組みで位置付けられていたテクノロジが細分化して新たに登場しています。

参考

ハイプ・サイクル(Hype Cycle)は、2,000を超えるテクノロジの中から、注目すべき先進テクノロジ及びトレンドとして簡潔にまとめたものとして、米国調査会社のガートナー(Gartner)が1995年からグローバル版を毎年発表しています。

縦軸に期待度、横軸に時間をとって曲線で表し、多くの技術がこの曲線上を動くという主張で、IT業界の最新動向や今後のトレンドを見ていく上で参考になります。

横軸の時間の流れは、技術(テクノロジ)を5段階に分類しています。

なお、2020年9月に、ハイプ・サイクルのフェーズの日本語表記が、「啓蒙活動期(修正前)」から「啓発期(修正後)」に変更しています。

黎明期(Innovation Trigger)

  • ・新しい技術が発表され、注目度が一気に上がる時期です。
  • ・初期の概念実証 (POC) にまつわる話やメディア報道によって注目が集まりますが、多くの場合、使用可能な製品は存在せず、実用化の可能性は証明されていません。

過度な期待のピーク(Peak of Inflated Expectations)

  • ・注目度が上がるにつれて、新しい技術に対する期待が高まる時期です。
  • ・「過度な期待」によって理想と現実にギャップがある状態で、例えば「コスト削減ができると思っている」「儲かると思っている」「すぐに使えると思っている」といった点が挙げられます。

幻滅期(Trough of Disillusionment)

  • ・新しい技術に対する実装が追いついていなかったり、周辺の技術が整っていなかったりして、期待外れを感じる時期です。
  • ・「冷静な判断」を行う時期でもあり、短期的には幻滅したとしても、中長期で見ると重要なテクノロジや考え方が存在する状態で、「本物と偽物の区別」が行われる時期でもあります。
  • ・また、需要側と供給側が歩み寄る現象が起こる時期でもあり、テクノロジが具体的な商品やサービスになり、市場が形成されていく時期でもあります。

啓発期(Slope of Enlightenment)

  • ・実装や周辺技術が追い付いてきた技術は、徐々に現実のビジネスで採用されていく時期です。
  • ・テクノロジが企業にどのようなメリットをもたらすのかを示す具体的な事例が増え始め、理解が広まり、第2世代と第3世代の製品が登場します。
  • ・但し、保守的な企業は慎重で、採用していません。

生産の安定期(Plateau of Productivity)

  • ・技術が安定し、広く普及していく時期です。
  • ・プロバイダーの実行存続性を評価する基準がより明確に定義され、テクノロジの適用可能な範囲と関連性が広がり、投資は確実に回収されつつあります。
Hype Cycle:Gartner

Gartner Identifies Key Emerging Technologies Spurring Innovation Through Trust, Growth and Change
August 23, 2021 Gartner

Gartner、「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2021年」を発表
2021年8月24日 ガートナー ジャパン株式会社

ハイプ・サイクル

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