ハイプ・サイクル(ガートナー)2022年版、25の先進テクノロジを3つの包括的なトレンドに分類

ハイプ・サイクル(ガートナー)2022年版、25の先進テクノロジを3つの包括的なトレンドに分類

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先進技術におけるハイプ・サイクル(2022年版)

ハイプ・サイクル(2022年版)

出典:Gartner『Hype Cycle for Emerging Technologies, 2022』(2022年)

関連情報
 2023年08月21日 ハイプ・サイクル(ガートナー)2023年版の概要整理

現地時間2022年8月10日、米国の調査会社Gartner(ガートナー)が「先進技術におけるハイプ・サイクル2022年版」を公開しましたので、概要を整理します。

ハイプ・サイクル(2022年版)の概要

「先進技術におけるハイプ・サイクル2022年版」も、2019年版で方針を変更して以来、過去の同ハイプ・サイクルでは取り上げていなかった最新テクノロジを紹介しています。

そのため、「幻滅期(Trough of Disillusionment)」「啓発期(Slope of Enlightenment)」「生産の安定期(Plateau of Productivity)」のテクノロジがなくなっています。

また、2年から5年で主流に採用される可能性が高いものは少なく、多くは5年から10年以上かかるテクノロジとなっています。

テクノロジの初期段階の性質上、展開リスクは高くなりますが、アーリーアダプターにとってのメリットは潜在的に大きくなります。

今回の「先進テクノロジのハイプ・サイクル」は、2,000を超えるテクノロジや適用済みフレームワークを分析したうえでの知見を抽出し、注目すべき25の先進テクノロジおよび3つの包括的なトレンドとして簡潔にまとめています。

そこで、注目すべき25の先進テクノロジは、「イマーシブ・エクスペリエンスの進化と拡大」「人工知能 (AI) 自動化の加速」「テクノロジストによるデリバリの最適化」の3つのテーマに分類できるとしています。

なお、2021年版では、注目すべき25の先進テクノロジは、「信頼の構築」「成長の加速」「変化の形成」の3つの包括的なトレンドに集約していました。

2022年版、先進テクノロジ・トレンドを3つのテーマに分類

イマーシブ・エクスペリエンスの進化と拡大(Evolving/expanding immersive experiences)

これらのテクノロジの効果は、個人がアイデンティティとデータをより詳細に制御できるようにし、デジタル通貨と統合できる仮想空間とエコシステムに体験の範囲を拡大することである。

顧客にリーチして、新しい収益源を強化または開拓する新しい方法も提供する。

顧客のデジタル ツイン(DToC)は、行動をエミュレートして予測し、学習する顧客の動的な仮想表現で顧客体験(CX)を変更および強化する。

また、新しいデジタル化の取り組み、製品、サービス、機会をサポートするために使用できる。

  • ・先進テクノロジの組み合わせにより、これからのデジタル・エクスペリエンスは、さらに没入型のエクスペリエンスへと進化し、顧客や人は、より新しい体験をするようになる。
  • ・注目すべきテクノロジ
    メタバース、NFT(非代替性トークン)、スーパーアプリ、Web3、分散型アイデンティティ、デジタル・ヒューマン、顧客のデジタル・ツイン、インターナル・タレント・マーケットプレース

人工知能(AI)自動化の加速(Accelerated AI automation)

AIの採用を拡大することは、製品、サービス、ソリューションを進化させるための重要な方法で、特化したAIモデルの作成を加速し、開発とトレーニングにAIを適用し、それらを製品、サービス、ソリューションの提供に展開することを意味する。

その結果、より正確な予測と決定、期待される利益のより迅速な獲得が含まれ、そこでの人間の役割は、消費者、評価者、監督者であることに重点が置かれる。

オートノミック・システムは、加速されたAI自動化の例で、主流に採用されるまでには5年から10年かかるが組織に変革をもたらす。

  • ・AI自動化に関するテクノロジは、AI開発における人間の役割に改めて目を向けさせることになり、結果として、予測や意思決定の精度向上、期待される成果実現までの時間短縮をもたらす。
  • ・注目すべきテクノロジ
    オートノミック・システム、コーザルAI、ファウンデーション・モデル、ジェネレーティブ・デザインAI、機械学習コード生成

テクノロジストによるデリバリの最適化(Optimized technologist delivery)

これらのテクノロジは、デジタルビジネスを構築する際の主要な構成要素と、それらが使用するプラットフォームに焦点を当てている。

製品、サービス、ソリューションの提供を最適化および加速し、事業運営の持続可能性を高めるフィードバックと洞察を提供する。

クラウド・データ・エコシステムは、最適化されたテクノロジスト・デリバリーの例で、あらゆる範囲のデータ・ワークロードを適切にサポートし、展開、最適化、維持が簡単で合理化された配信と包括的な機能を提供するが、主流に採用されるまでには2年から5年かかる。

  • ・成功するデジタルビジネスは「購入する」ものではなく「構築する」もので、デリバリーの最適化関連テクノロジは、製品、サービス、ソリューションの構築者コミュニティと、そこで使用されるプラットフォームを重視する。
  • ・注目すべきテクノロジ
    拡張FinOps、クラウド・データ・エコシステム、クラウド・サステナビリティ、コンピュテーショナル・ストレージ、サイバーセキュリティ・メッシュ・アーキテクチャ、データ可観測性、動的リスク・ガバナンス、インダストリ・クラウド・プラットフォーム、実用最小限のアーキテクチャ (MVA) 、オブザーバビリティ駆動型開発、オープン・テレメトリ、プラットフォーム・エンジニアリング
3つのテーマ別テクノロジと主流の採用までに要する年数

黎明期

テーマ別、主流の採用までに要する年数(黎明期)

「過度な期待」のピーク期

テーマ別、主流の採用までに要する年数(過度な期待)

Gartner『Hype Cycle for Emerging Technologies, 2021』を参考にしてATY-Japanで作成

ハイプ・サイクルの2022年版と2021年版

ハイプ・サイクル(2022年版)

ハイプ・サイクル(2022年版)

出典:Gartner『Hype Cycle for Emerging Technologies, 2022』(2022年)

ハイプ・サイクル(2021年版)

ハイプ・サイクル(2021年版)

出典:Gartner『Hype Cycle for Emerging Technologies, 2021』(2021年)

ハイプ・サイクル(2022年版)では、注目すべき25の先進テクノロジは「イマーシブ・エクスペリエンスの進化と拡大」「人工知能 (AI) 自動化の加速」「テクノロジストによるデリバリの最適化」の3つのテーマに分類しています。

  • ・先進テクノロジには、ビジネスを変革する潜在能力があるが、CIOやテクノロジ・イノベーションのリーダーは、リソースの制約拡大に直面する中で、サステナビリティを向上させながらデジタル・ケイパビリティを拡張するという大きな課題を突き付けられている。
  • ・組織にとって重要なのは、先進テクノロジを巡る雑音に惑わされることなく、競争力のある差別化と効率化を強化するイノベーションを通じて、変化を加速させることである。

一方、2021年版では、注目すべき25の先進テクノロジは「信頼の構築」「成長の加速」「変化の形成」の3つの包括的なトレンドに集約しています。

  • ・デジタル・ビジネス・トランスフォーメーションに引き続き重点を置く企業は、変化を加速させる必要があり、先進テクノロジを巡るハイプ (過熱状態) に惑わされるべきではない。
  • ・企業は競争優位性を確保するために、非代替性トークン(NFT)、ソブリン(主権)クラウド、データ・ファブリック、ジェネレーティブAI、コンポーザブル・ネットワークなどの先進テクノロジを検討する必要に迫られる。

参考

ハイプ・サイクル(Hype Cycle)は、2,000を超えるテクノロジの中から、注目すべき先進テクノロジ及びトレンドとして簡潔にまとめたものとして、米国調査会社のガートナー(Gartner)が1995年からグローバル版を毎年発表しています。

縦軸に期待度、横軸に時間をとって曲線で表し、多くの技術がこの曲線上を動くという主張で、IT業界の最新動向や今後のトレンドを見ていく上で参考になります。

横軸の時間の流れは、技術(テクノロジ)を5段階に分類しています。

なお、2020年9月に、ハイプ・サイクルのフェーズの日本語表記が、「啓蒙活動期(修正前)」から「啓発期(修正後)」に変更しています。

黎明期(Innovation Trigger)

  • ・新しい技術が発表され、注目度が一気に上がる時期です。
  • ・初期の概念実証 (POC) にまつわる話やメディア報道によって注目が集まりますが、多くの場合、使用可能な製品は存在せず、実用化の可能性は証明されていません。

過度な期待のピーク(Peak of Inflated Expectations)

  • ・注目度が上がるにつれて、新しい技術に対する期待が高まる時期です。
  • ・「過度な期待」によって理想と現実にギャップがある状態で、例えば「コスト削減ができると思っている」「儲かると思っている」「すぐに使えると思っている」といった点が挙げられます。

幻滅期(Trough of Disillusionment)

  • ・新しい技術に対する実装が追いついていなかったり、周辺の技術が整っていなかったりして、期待外れを感じる時期です。
  • ・「冷静な判断」を行う時期でもあり、短期的には幻滅したとしても、中長期で見ると重要なテクノロジや考え方が存在する状態で、「本物と偽物の区別」が行われる時期でもあります。
  • ・また、需要側と供給側が歩み寄る現象が起こる時期でもあり、テクノロジが具体的な商品やサービスになり、市場が形成されていく時期でもあります。

啓発期(Slope of Enlightenment)

  • ・実装や周辺技術が追い付いてきた技術は、徐々に現実のビジネスで採用されていく時期です。
  • ・テクノロジが企業にどのようなメリットをもたらすのかを示す具体的な事例が増え始め、理解が広まり、第2世代と第3世代の製品が登場します。
  • ・但し、保守的な企業は慎重で、採用していません。

生産の安定期(Plateau of Productivity)

  • ・技術が安定し、広く普及していく時期です。
  • ・プロバイダーの実行存続性を評価する基準がより明確に定義され、テクノロジの適用可能な範囲と関連性が広がり、投資は確実に回収されつつあります。
Hype Cycle:Gartner

What’s New in the 2022 Gartner Hype Cycle for Emerging Technologies
August 10, 2022 Gartner

Gartner、「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2022年」を発表
2022年8月16日 ガートナー ジャパン株式会社

ハイプ・サイクル | ガートナー ジャパン株式会社

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