ハイプ・サイクル(ガートナー)2019年版発表、2018年版との比較で見えてきた先進技術の動向

ハイプ・サイクル(ガートナー)2019年版発表、2018年版との比較で見えてきた先進技術の動向

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ハイプ・サイクル(2018年版と2019年版の比較)

出典:Gartner『Hype Cycle for Emerging Technologies』

2020年08月25日 関連情報:ガートナー「ハイプ・サイクル2020年版」の概要を整理
2019年11月04日 関連情報:ガートナー ジャパンが「日本におけるハイプ・サイクル:2019年」を発表

現地時間2019年8月29日、米国の調査会社Gartner(ガートナー)から「先進技術におけるハイプ・サイクル2019年版」が公開されました。

ここでは、ハイプ・サイクル(Hype Cycle)の2018年版と2019年版を比較しながら、変化の概要を整理します。

2019年版の概要

「先進技術におけるハイプ・サイクル2019年版」では、2018年版に比べて方針を見直し、過去の同ハイプ・サイクルでは取り上げていなかった最新テクノロジを紹介することに注力しています。

そのため、「幻滅期(Trough of Disillusionment)」「啓蒙活動期(Slope of Enlightenment)」「生産の安定期(Plateau of Productivity)」の技術が少なくなっています。

また、2,000を超えるテクノロジを分析した上で知見を抽出し、注目すべき29の先進テクノロジ及び5つのトレンドとして簡潔にまとめ、提示しています。

「取り上げた29の先進テクノロジは、新たなエクスペリエンスを創出し実現する5つの先進テクノロジ・トレンドを形成するもので、人工知能 (AI) などを利用するこれらのテクノロジによって、企業は新しいデジタル・エコシステムを活用できるようになる」としています。

5つの先進テクノロジ・トレンドは、「センシングとモビリティ」「オーグメンテッド・ヒューマン」「ポストクラシカルなコンピューティングとコミュニケーション」「デジタル・エコシステム」「高度なAI/アナリティクス」で、基本的には現在注目されている「自律走行」「AI」「量子コンピュータ」「5G」「デジタル変革」「IoT」などのトレンドが継続するという見方を示しています。

センシングとモビリティ

  • ・IoTの中核を担うコンポーネントの1つであり、膨大な量のデータを収集し、インテリジェンスを活用することで、様々な知見を獲得する能力が実現し、多くのシナリオにこうした知見を適用できる。
  • ・活用を目指す企業は、3Dセンシング・カメラ、ARクラウド、軽貨物配送ドローン、自律型航空機/空飛ぶ車、自律走行 (レベル4/5) を検討すべきである。

オーグメンテッド・ヒューマン

  • ・認識能力/身体能力を向上させる機能の開発を可能にし、人間の身体に不可欠な要素となり、人間本来の能力を上回る特性を備えた人工装具が製造されている。
  • ・先進テクノロジの例としては、バイオチップ、パーソニフィケーション、拡張インテリジェンス、感情AI、イマーシブ・ワークスペース、バイオテクノロジ:培養組織や人工組織が挙げられる。

ポストクラシカルなコンピューティングとコミュニケーション

  • ・次世代テクノロジでは、まったく新しいアーキテクチャが採用され、これまでとは完全に異なるアプローチだけでなく段階的な改善も含まれ、そうした改善は劇的な影響をもたらす可能性がある。
  • ・企業は、5G、次世代メモリ、低軌道衛星システム、ナノスケール3Dプリンティングといったテクノロジを評価すべきである。

デジタル・エコシステム

  • ・デジタル化は、従来のバリューチェーンの破壊を促し、より強力かつ柔軟でレジリエンスの高い価値提供ネットワークを生み出し、絶えず変化して、改良された新しいプロダクトやサービスを創出する。
  • ・テクノロジの例としては、DigitalOps、ナレッジ・グラフ、合成データ、非中央集権型Web、非中央集権型自律組織が挙げられる。

高度なAI/アナリティクス

  • ・洗練された手法とツールを使ってデータやコンテンツを自律的または半自律的に検証する機能を備えており、従来のビジネス・インテリジェンス (BI) よりも一般に優れている。
  • ・テクノロジの例としては、アダプティブな機械学習、エッジAI、エッジ・アナリティクス、説明可能なAI、AI PaaS (サービスとしてのAIプラットフォーム)、転移学習、敵対的生成ネットワーク、グラフ分析が挙げられる。
2019年版の概要(2018年版からの変化)

ハイプ・サイクル(2019年版)

ハイプ・サイクル(2019年版)

出典:Gartner『Hype Cycle for Emerging Technologies, 2019』(2019年)

ハイプ・サイクル(2018年版)

ハイプ・サイクル(2018年版)

出典:Gartner『Hype Cycle for Emerging Technologies, 2018』(2018年)

「5G」が、2019年版の「過度な期待のピーク(Peak of Inflated Expectations)」に、新たに位置付けされました。

日本でも2019年から実証サービスが開始、2020年からは商用サービスが開始される予定となっていますが、実際にどのように活用していけるのかが明らかになっていくのは時間を要するため、2020年以降は「幻滅期(Trough of Disillusionment)」に陥る可能性もありそうです。

一方、「黎明期(Innovation Trigger)」から「過度な期待のピーク」に移行のは、「レベル5自律走行(Automous Driving Level5)」「エッジAI(Edge AI)」などがあります。

クラウドに対する動きとして「エッジコンピューティング」に大きな注目が集まり、エッジでのAI処理やデータ分析に大きな期待が集まっている状況を示しているといえます。

なお、2018年に続き「過度な期待のピーク」を維持しているのは、「バイオチップ(Biochips)」「AI Paas」などがあります。

さらに、2019年版で新たに加わった技術は、

  • ・「過度な期待のピーク」の位置には、「エッジアナリティクス(Edge Analytics)」「グラフ分析(Graph Analytics)」など
  • ・「幻滅期」の位置には「次世代メモリ(Next-generation Memory)」「3Dセンシング・カメラ(3D Sensing Cameras)」などがあります。

これらに対して「機械学習(Machine Learning)」は、2016年に続き2年連続でピークの位置となっていましたが、2019年版では消えています。

さらに、2016年には「黎明期」にもなかった「ディープラーニング(Deep Learning)」も、2017年にピークに新たに現れ、2018年もピークとなっていましたが、2019年版では消えています。

また、「IoTプラットフォーム(IoT Pratform)」も、2018年版では「過度な期待のピーク」でしたが、2019年版では消えています。

一方、「レベル4自律走行(Automous Driving Level4)」は、2018年に続き今回も「幻滅期」の位置となっています。

「レベル5自律走行」は「過度の期待のピーク期」で期待が集まっているのに対し、「レベル4」は規制や安全性の問題などの課題があるものの、完全自律運転の実現化への期待は引き続き高いことが垣間見えてきます。

参考

ハイプ・サイクル(Hype Cycle)は、2,000を超えるテクノロジの中から、注目すべき先進テクノロジ及びトレンドとして簡潔にまとめたものとして、米国調査会社のガートナー(Gartner)が1995年からグローバル版を毎年発表しています。

縦軸に期待度、横軸に時間をとって曲線で表し、多くの技術がこの曲線上を動くという主張で、IT業界の最新動向や今後のトレンドを見ていく上で参考になります。

横軸の時間の流れは、技術(テクノロジ)を5段階に分類しています。

黎明期(Innovation Trigger)

  • ・新しい技術が発表され、注目度が一気に上がる時期です。

過度な期待のピーク(Peak of Inflated Expectations)

  • ・注目度が上がるにつれて、新しい技術に対する期待が高まる時期です。
  • ・「過度な期待」によって理想と現実にギャップがある状態で、例えば「コスト削減ができると思っている」「儲かると思っている」「すぐに使えると思っている」といった点が挙げられます。

幻滅期(Trough of Disillusionment)

  • ・新しい技術に対する実装が追いついていなかったり、周辺の技術が整っていなかったりして、期待外れを感じる時期です。
  • ・「冷静な判断」を行う時期でもあり、短期的には幻滅したとしても、中長期で見ると重要なテクノロジや考え方が存在する状態で、「本物と偽物の区別」が行われる時期でもあります。
  • ・また、需要側と供給側が歩み寄る現象が起こる時期でもあり、テクノロジが具体的な商品やサービスになり、市場が形成されていく時期でもあります。

啓蒙活動期(Slope of Enlightenment)

  • ・実装や周辺技術が追い付いてきた技術は、徐々に現実のビジネスで採用されていく時期です。

生産の安定期(Plateau of Productivity)

  • ・技術が安定し、広く普及していく時期です。
Hype Cycle:Gartner

Gartner Identifies Five Emerging Technology Trends With Transformational Impact
August 29, 2019 Gartner

ガートナー、「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2019年」を発表
2019年8月30日 ガートナー ジャパン株式会社

Gartner Identifies Five Emerging Technology Trends That Will Blur the Lines Between Human and Machine
August 20, 2018 Gartner

関連情報(当サイト)

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