ハイプ・サイクル(ガートナー)2019年日本版を発表、2018年日本版及び2019年世界版とを比較

ハイプ・サイクル(ガートナー)2019年日本版を発表、2018年日本版及び2019年世界版とを比較

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日本ハイプ・サイクル(2018年版と2019年版の比較)

出典:ガートナー ジャパン『日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2019年』

2020年08月25日 関連情報:ガートナー「ハイプ・サイクル2020年版」の概要を整理

2019年10月31日、調査会社 ガートナー ジャパン株式会社から「日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2019年」が発表されました。

ここでは、日本におけるハイプ・サイクル(Hype Cycle)の2018年版と2019年版を比較しながら、変化の概要を整理します。

日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2018年の概要

日本のハイプ・サイクル(2018年版)

出典:ガートナー ジャパン『日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2018年』

日本のICT市場においては、ITリーダーがデジタル・ビジネスを推進する際の重要な役割を担う代表的な40のキーワード (テクノロジ、サービス、方法論、プラクティス、コンセプトなど) を取り上げています。

2018年においては、「モバイル」「ソーシャル」「クラウド」は、ある意味利用して当たり前のものになりつつあり、モノのインターネット(IoT)、人工知能、ブロックチェーンなどの新しいトレンドが注目を集めていました。

一方、このような個々のテクノロジとは別に、自社で運用・構築するITシステムをオープンにし、社内外のビジネス・エコシステムと連携することで、より大きな成果を得ようという発想が有望視され始めています。

このような発想を実現するものとして、ガートナーは2016年から「デジタル・ビジネス・テクノロジ・プラットフォーム」を紹介しています。

しかし、「デジタル」のさまざまな動きが活発化する中で、問題も顕在化し始めていると指摘しています。

  • ・セキュリティ(特に、サイバーセキュリティ)への対応は、ITリーダーにとって緊急の課題となっている。
  • ・既存のレガシー・システムの近代化も、ITリーダーを悩ませ続けている課題となっている。
  • ・データや情報を分析しビジネスに生かしていくための課題も、依然として根深く存在してる。
2017年版からの変化

人工知能、ブロックチェーン

  • ・2017年「過度な期待のピーク期」から「幻滅期」へと移行しつつある。
  • ・今後、概念実証 (POC) や先行事例の結果が公表され、取り組みの困難さが顕在化するにつれて、慎重な姿勢が企業間に広まるものと予想される。

デジタル・ビジネス・テクノロジ・プラットフォーム

  • ・未だに新しいコンセプトと位置付けられており、市場からの期待は急速に高まっている。

ビッグ・データ

  • ・「幻滅期」の谷底から上昇しており、「安定期」に達する前に陳腐化すると再評価される。
  • ・ビッグ・データの活用に向けた検証や試行は、医療、製造、公共サービス分野、さらには顧客とのエンゲージメントといったさまざまな業種や業務において今後も進むと考えられる。
  • ・しかし、対象が曖昧な『ビッグ・データ』という表現は使われなくなり、業種・業務特化型ソリューションの一部として広がっていくとみている。

日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2019年の概要

日本のハイプ・サイクル(2019年版)

出典:ガートナー ジャパン『日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2019年』

2019年版のハイプ・サイクルでは、2018年度版のキーワードを見直して、ITリーダーが今押さえておくべき代表的な40のキーワードを再選出しています。

モノのインターネット、人工知能、ブロックチェーン

  • ・「幻滅期」に位置付けられています。
  • ・概念実証 (POC) などの取り組みを通し、単に期待を抱いていたところからリアリティに直面するようになった困難の表れと言えるとしています。
  • ・これは決して悪いことではなく、こういった時期だからこそ冷静に、基本に立ち返ってテクノロジの真価や導入のタイミング、採用/導入領域を見極めるタイミングが訪れているとしています。

5G

  • ・「過度な期待のピーク期」に入ったと評価しています。
  • ・これには、新たなテクノロジの活用とその普及がもたらし得るさらなる破壊に対する期待が影響しているとしています。
2018年版からの変化

「黎明期」に位置付けられている技術

  • ・新たに登場したのは、主流の採用までに要する年数が10年以上の技術として、
    メインフレーム・トランスフォーメーション、デジタル・メッシュです。
  • ・新たに登場した5~10年後の主流採用技術は、
    コンポーネント・インフラストラクチャ、スマート・ワークスペース、デジタル・エクスペリエンス・プラットフォームが位置付けられています。
  • ・「黎明期」に留まっている技術はIoTセキュリティで、若干上昇したものの、10年以上後の主流採用技術として位置付けられています。

「過度な期待のピーク期」に位置付けられている技術

  • ・新たに登場したのは、主流の採用までに要する年数が5~10年の技術として、
    5G、ベース・レイヤ・アプリケーション技術が位置付けられています。
  • ・新たに登場した2~5年後の主流採用技術は、
    アジャイル・プロジェクト・マネジメント、プライバシー・バイ・デザイン(PbD)、エッジ・コンピューティング、ポストモダンERPが位置付けられています。
  • ・「過度な期待のピーク期」に留まっている技術は、デジタル・ビジネス・テクノロジ・プラットフォームが上昇して頂点になり、IoTプラットフォームが頂点を超えて下降し「幻滅期」に近づいています。

「幻滅期」に位置付けられている技術

  • ・「幻滅期」に留まっている技術は、モノのインターネット(若干の下降)、クラウドソーシング、OTとITの融合の他、CRM顧客エンゲージメント・センターとウェアラブル・デバイスが「啓蒙活動期」近くまで移行しています。
  • ・2018年は「過度な期待のピーク期」に位置付けられていたが2019年「幻滅期」に移行した技術は、モバイル・アプリ開発プラットフォーム、ブロックチェーン(主流採用:5~10年後→2~5年後)、ロボティック・オートメーション、人工知能、デジタル・ビジネス・コンサルティング・サービスがあります。
  • ・ビッグ・データは、安定期に達する前に陳腐化する技術として、2018年は「幻滅期」に位置付けられていましたが、2019年版には消滅しています。

「啓蒙活動期」に位置付けられている技術

  • ・新たに登場したのは、主流の採用までに要する年数が2~5年の技術として、情報漏洩防止(DLP)が位置付けられています。
  • ・「啓蒙活動期」に留まっている技術は、ソーシャル・アナリティクス(主流採用:2~5年後→2年未満)、クラウド・コンピューティング、レガシー・アプリケーションの近代化、ベンダー管理オフィスがあります。
  • ・2018年に「啓蒙活動期」に位置付けられていた、モバイル・コンピューティング、アナリティカル・インメモリ・データベースなどの技術は、2019年では消滅しています。

2019年版の世界と日本の比較

ハイプ・サイクル(2019年版)の世界と日本

出典:出典:Gartner『Hype Cycle for Emerging Technologies』

現地時間2019年8月29日、米国の調査会社Gartner(ガートナー)から『先進技術におけるハイプ・サイクル2019年版』が公開されています。

『先進技術におけるハイプ・サイクル2019年版』では、2018年版に比べて方針を見直し、過去の同ハイプ・サイクルでは取り上げていなかった最新テクノロジを紹介することに注力しています。

そこで、2,000を超えるテクノロジを分析した上で知見を抽出し、注目すべき29の先進テクノロジ及び5つのトレンドとして簡潔にまとめ、提示しています。

一方、今回の『日本におけるハイプ・サイクル:2019年』では、2018年度版のキーワードを見直し、ITリーダーが今押さえておくべき代表的な40のキーワードを再選出しています。

選出条件が必ずしも一致していないかもしれませんが、両者の違いについて簡単に整理します。

5Gは、世界版では2018年「黎明期」から2019年「過度な期待のピーク期」に移行したのに対し、日本版では2019年「過度な期待のピーク期」初期段階に初めて登場しました。

一方、以下の技術は、世界版では2019年に新たに登場しましたが、日本版にはまだ登場していません。

  • ・「過度な期待のピーク期」に登場した技術:「エッジアナリティクス(Edge Analytics)」「グラフ分析(Graph Analytics)」など
  • ・「幻滅期」に登場した技術:「次世代メモリ(Next-generation Memory)」「3Dセンシング・カメラ(3D Sensing Cameras)」など
「自動運転関連」では、世界版では登場していますが、日本版にはまだ登場していません。
  • ・「レベル5自律走行(Automous Driving Level5)」は2018年「黎明期」から2019年「過度な期待のピーク期」に移行、「レベル4自律走行(Automous Driving Level4)」は2018年に続き「幻滅期」の位置にあります。
  • ・「レベル5自律走行」は「過度の期待のピーク期」で期待が集まっているのに対し、「レベル4」は規制や安全性の問題などの課題があるものの、完全自律運転の実現化への期待は引き続き高いことが垣間見えてきます。

参考

ハイプ・サイクル(Hype Cycle)は、2,000を超えるテクノロジの中から、注目すべき先進テクノロジ及びトレンドとして簡潔にまとめたものとして、米国調査会社のガートナー(Gartner)が1995年からグローバル版を毎年発表しています。

縦軸に期待度、横軸に時間をとって曲線で表し、多くの技術がこの曲線上を動くという主張で、IT業界の最新動向や今後のトレンドを見ていく上で参考になります。

横軸の時間の流れは、技術(テクノロジ)を5段階に分類しています。

黎明期(Innovation Trigger)

  • ・新しい技術が発表され、注目度が一気に上がる時期です。

過度な期待のピーク(Peak of Inflated Expectations)

  • ・注目度が上がるにつれて、新しい技術に対する期待が高まる時期です。
  • ・「過度な期待」によって理想と現実にギャップがある状態で、例えば「コスト削減ができると思っている」「儲かると思っている」「すぐに使えると思っている」といった点が挙げられます。

幻滅期(Trough of Disillusionment)

  • ・新しい技術に対する実装が追いついていなかったり、周辺の技術が整っていなかったりして、期待外れを感じる時期です。
  • ・「冷静な判断」を行う時期でもあり、短期的には幻滅したとしても、中長期で見ると重要なテクノロジや考え方が存在する状態で、「本物と偽物の区別」が行われる時期でもあります。
  • ・また、需要側と供給側が歩み寄る現象が起こる時期でもあり、テクノロジが具体的な商品やサービスになり、市場が形成されていく時期でもあります。

啓蒙活動期(Slope of Enlightenment)

  • ・実装や周辺技術が追い付いてきた技術は、徐々に現実のビジネスで採用されていく時期です。

生産の安定期(Plateau of Productivity)

  • ・技術が安定し、広く普及していく時期です。
Hype Cycle:Gartner

ガートナー、「日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2019年」を発表
2019年10月31日 ガートナー ジャパン株式会社

ガートナー、「日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2018年」を発表
2018年10月11日 ガートナー ジャパン株式会社

Gartner Identifies Five Emerging Technology Trends With Transformational Impact
August 29, 2019 Gartner

ガートナー、「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2019年」を発表
2019年8月30日 ガートナー ジャパン株式会社

Gartner Identifies Five Emerging Technology Trends That Will Blur the Lines Between Human and Machine
August 20, 2018 Gartner

関連情報(当サイト)

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