書籍 DX実行戦略 デジタルで稼ぐ組織をつくる/DBTセンター・マイケル・ウェイド(著)

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DX実行戦略 デジタルで稼ぐ組織をつくる
Orchestrating Transformation

マイケル・ウェイド(著)、ジェイムズ・マコーレー(著)、アンディ・ノロニャ(著)、根来 龍之・武藤 陽生(翻訳)
出版社:日本経済新聞出版社(2019/8/23)
Amazon.co.jp:DX実行戦略 デジタルで稼ぐ組織をつくる

 

DX実行戦略 デジタルで稼ぐ組織をつくる

「サイロ化の罠」から抜け出せ!

社内に分散している人とデータをつなぎ合わせて「デジタル能力」を実装せよ。
ネット時代の勝者になるための企業変革手法。
GAFAにはできない、既存企業ならではの戦い方を提示。

 

 

本書は、IMD教授で、DBTセンターの所長を務める著者らが、デジタル・ディスラプションの脅威と向き合い、どのようにデジタルビジネス・トランスフォーメーション(DX)を実行していけばよいかを明らかにした一冊です。

DBTセンター(Global Center for Digital Business Transformation)は、米シスコシステムズと世界トップクラスのビジネススクールであるスイスのIMDのパートナーシップにより2015年6月23日に設立された組織で、「デジタル・ディスラプション」や「ビジネスモデル・イノベーション」「人やプロセス、テクノロジーの変化が関係する変革」などのテーマを中心にリサーチを行っています。

本書は、前著『対デジタル・ディスラプター戦略』(日本経済新聞出版社、2017年)の続編となりますが、前著が変革のための設計図というよりも「競争力を高めるためのマニュアル」であったのに対し、本書はデジタルビジネス・トランスフォーメーションを推進する「実践者」のために書かれています。

デジタルビジネス・トランスフォーメーション(DX)を実行していく際のフレームワークやツール、特に既存企業ならではの戦い方を提供してくれていますので、既存企業のビジネスリーダーの方々にとっての手引書となります。

 

本書は6章と終章で構成されており、現実の企業がいかにして「結びつきのアプローチ」で変革を推進したかについて紹介し、その過程で実用可能なツールを提供しながら、組織変革を「オーケストレート(編成)」するための方法論を展開しています。

  • ■第1章では、今日の企業が持つ3つの特徴として、「規模」「相互依存性」「ダイナミズム」について説明しています。
    そして、既存企業が抱える「変革のジレンマ」として、「組織のもつれ」がデジタルビジネス・トランスフォーメーションの達成を不可能にしている要因を紐解いています。
  • ■第2章では、前著の主要コンセプトである「カスタマーバリュー創出」「ビジネスモデル」「対応戦略」などを見直しています。
    そのうえで、「収穫」「撤退」「破壊」「拠点」の4つの対応戦略について改めて解説しています。
  • ■第3章では、企業の戦略的方向性を定める際に重要となる課題、変革を取り巻く現状について述べています。
    カスタマーバリュー創出を最優先事項として、組織を変革に導く「変革目標(guiding objectives)」、企業全体の取り組みを活性化させる「変革理念(transformation ambition)」を着想し設定するための方法を解説しています。
  • ■第4章では、「トランスフォーメーション・オーケストラ」について説明しています。
    ・組織を、変革の推進に不可欠なリソースを「楽器」に例えて、交響楽団になぞらえた組織変革の実行を提言しています。
    ・特定の課題に取り組むために足並みをそろえた組織リソースを「変革ネットワーク(transformation network)」と呼び、それらが迅速に行動し、組織内の至る所に存在するリソースを集めることの重要性を提言しています。
  • ■第5章では、「オーケストレーター」によって推進される具体的な行動を通じて、リソースを動員し、機能させることの意味を提示しています。
    そして、そのために必要な8つの「オーケストレーション能力」について述べています。
  • ■第6章では、力強いオーケストレーションを推進するための組織づくりを分析し、変革に向けたプログラムが組織でどのように管理されているかを俯瞰しています。
    そのために、オーケストレーターの権限や「変革推進室(transformation office)」の責任について解説しています。
  • ■終章では、組織変革のための「結びつきのアプローチ」を総括し、架空の企業「バイクコー」を例示しながら、フレームワークの実行を具体的に解説しています。
    そして、「結びつきのアプローチ」を採るに当って、企業がとるべき行動をアクションとして提示ています。

さらに巻末には、変革を実践していくうえで役立つ資料が整理されています。

  • ・「巻末資料1.デジタル・ディスラプション診断」は、自社の変革目標を設定ることに役立ちます。
    現在ならびに将来のカスタマーバリュー創出やビジネスモデル、対応戦略について、どのようなアプローチを採ればいいのかを特定することができます。
  • ・「巻末資料2.楽器ごとの組織リソース」は、トランスフォーメーション・オーケストラの各楽器について、主要な「人」「データ」「インフラ」のリソースの詳細を整理しています。
    自社が直面している課題にふさわしい組織リソースを検討していく際に、このリストをリファレンスとして使用することができます。
  • ・「巻末資料3.リソース能力評価ワークシート」は、楽器のリストを詳細に示しています。
    自社組織の能力を評価し、変革を推進していくうえで直面する課題と関連する最も重大なギャップを発見し、どこのリソースを動員して結びつきを機能させればよいかを知ることができます。
  • ・「巻末資料4.オーケストレーター虎の巻」は、企業がとるべき21のアクションを整理しています。
    デジタルビジネス・トランスフォーメーションの実行に当って最も重要な21のアドバイスを、いつでも参照することができます。

 

今日、デジタルビジネス・トランスフォーメーションの実行は急務であり、企業のリーダーたちは大きな関心を寄せている。だから本書ではその課題に取り組むことにした。

「どこから着手すればいいのか?」「何をもって成功とするか?」「どうやってロードマップを策定すればいいのか?」。

本書で扱うのはこういった疑問だ。

本書は、企業にとって重要かつ戦略的で大規模なデジタルビジネス・トランスフォーメーションを推進する「実践者」のために書かれた本であり、デジタル化やテクノロジー、企業変革にありがちな課題について説いた一般書ではない。

 

デジタルビジネス・トランスフォーメーション(DX)

本書での定義
デジタル技術とデジタル・ビジネスモデルを用いて組織を変化させ、業績を改善すること

1.企業業績を改善することが目的であること

2.デジタルを土台にした変革であること
一つ以上のデジタル技術が大きな影響を及ぼしていること

3.プロセスや人、戦略など、組織の変化を伴うものであること

 

組織のもつれ(entanglement)と変革のジレンマ

変革の失敗率が高い理由の一つは、自分たちが直面している問題を企業のリーダーが正しく理解していないことにある。

この間違った理解は、「組織が持つ3つの特徴」から生まれており、従来の変革手法によるデジタルビジネス・トランスフォーメーションを困難にしている。

1.規模:企業には、「管理する必要があるもの」であふれ返っている。

  • ・タスクや予算、プランニングサイクル、組織変革プログラムなど。
  • ・「数」の多さに加え、プロセスやデータ、システム、資産、構造、人など、さまざまな「性質」のものが存在しているため、企業は急性の情報過多に陥ってしまう。

2.相互依存:企業が管理しなければならないものには、相互関係がある。

  • ・相互依存には、「連続的相互依存」「共有的相互依存」「互恵的相互依存」の3種類があり、それぞれの相互依存関係のマネジメントや協働活動には、異なるアプローチが必要となる。
  • ・一般的な変革プログラムは、「プランニング」と「標準化」を重視し、よりシンプルな相互依存(連続的相互依存と共有的相互依存)の協働メカニズムに重点を置いていることが多いため、どのようにして「相互調整」すればいいのかわからなくなっている。

3.ダイナミズム:企業が管理しなければならないものと、企業が事業を行なっている環境(市場や規制など)は絶えず進化している。

  • ・「規模」と「相互依存」は、静的な世界であったとしても難しいものであるが、今日の環境変化のスピードは速い。
  • ・デジタル・ボルテックスは外部からの競争圧力であり、組織内ダイナミズムの駆動力でもあるが、もう一つの駆動力が「適応」である。

企業の組織環境における「規模」「相互依存性」「ダイナミズム」を把握し、そうした状況下で変革を実現するための方法を理解することには困難がつきまとう。

これが、実践者の前に立ちはだかる「変革のジレンマ」である。

 

「変革目標」と「変革理念」

「組織のもつれ」とデジタル・ボルテックスの「力学の不安定さ」は「複雑で変化のスピードが速い環境」そのもので、変革に向けた努力の多くは「ゴール」が明確でないために、始める前から失敗する定めにある。

そこで、「カスタマーバリュー創出」「ビジネスモデル」「対応戦略」の3つの要素を合わせた「変革目標(guiding objectives)」を設定することが重要となる。

「変革目標」が事業分野ごとに設定するのに対し、「変革理念」は企業全体の変革目標のアウトラインを定めた声明である。

この理念は、企業内の全部署、全事業の変革目標が持つ戦略的意図を集約し、変革に向けた目標を一つにまとめることで足並みをそろえた実行を可能にする。

変革理念は、「正確(Precise)」「現実的(Realistic)」「包括的(Inclusive)」「簡潔(Succinct)」「測定可能(Measurable)」でなければならない。

それにより、社内の誰にとっても、何がどうなったら成功なのか、何を優先しなければならないかが明確になる。

 

1.事業分野ごとの変革目標を策定する。
そこでは、会社が今後、顧客に提供する新しい魅力的な価値提案と、それを実現するために必要なビジネスモデルが特定される。

2.事業を手掛けている複数の市場での実現を目指す、防衛的戦略と攻撃的戦略をミックスさせた戦略ポートフォーリオを作成する。

3.変革目標を一つにまとめ、その後に続く作業全ての基準となる変革理念を、利害関係者全員に伝える。

4.戦略の方向性について、経営陣の強固な合意を取り付ける。

5.変化するための「結びつきのアプローチ」をオーケストレートする。

 

トランスフォーメーション・オーケストラ

トランスフォーメーション・オーケストラ

出典:Orchestrating Digital Business Transformation, IMD Reports

 

組織を「オーケストラ」としてイメージすれば、オーケストレーションがどのように機能するかがわかる。

企業を、セクションごとに分けられた「楽器」で構成される一団と考えると、彼らは一つになって一つの曲を演奏し、それぞれの異なる楽器は調和のとれた演奏に貢献する。

オーケストレートとは、「望みどおりの効果を得るために、リソースを動員し、機能させること」である。

  • ・変革目標の設定は、曲づくりに似ている。
  • ・事業部ごとの方向性を示した変革目標は、交響曲の「楽章」に該当する。
  • ・これらを全て集めると、企業が演奏しようとしている交響曲(変革理念)となる。

トランスフォーメーション・オーケストラのフレームワークを使えば、リーダーは「脱部門的」な考え方で組織のサイロから抜け出し、全社の目標を達成するために必要なリソースを集め、活用できるようになる。

  • ・楽器は、組織リソースを合理的に分類したもである。
  • ・各楽器は、新しい製品やサービスの立ち上げ、デジタルによる新たな顧客経験の提供、企業文化の変革といった特定の仕事を実現するために連携する。
  • ・変革に取り組むためには、組織のいたるところにあるリソース(楽器)をオーケストレートしなければならない。

 

3つのセクションと8つの楽器

華麗なオーケストラの演奏と同じように、デジタルビジネス・トランスフォーメーションを成功させるためには、「必要なとき」「必要な場所」に8つの楽器を参加させる。

変革の優先順位を決めることに加え、同じタイミングで協力し合うかたちで組織内の異なる要素が調和して奏でられることが必要である。

最も成功確率の高い変革は、「組織全体」と「全てのリソース」が関与している。

トランスフォーメーション・オーケストラによって、変革の境界線を設けることもできる。

他の楽器に与える影響と一連の変革目標を考慮したうえで、組織構造を変える。

組織構造の変革は、組織のもつれに適合し、結びつきを伴ったかたちで実行する。

 

市場セクション

  • 1.製品・サービス(会社が売る製品やサービス)
  • 2.チャネル(製品やサービスを顧客に届ける方法、市場までの道筋)

エンゲージメント・セクション

  • 3.顧客エンゲージメント(顧客とどのように関わっているか)
  • 4.提携業者エンゲージメント(提携業者のエコシステムとどのように関わっているか)
  • 5.ワークフォース・エンゲージメント(従業員や契約スタッフとどのように関わっているか)

組織セクション

  • 6.組織構造(事業部門やチーム、命令系統、プロフィットセンター、コストセンターの構造)
  • 7.インセンティブ(従業員のパフォーマンスや振る舞いがどのように報奨されるか)
  • 8.文化(会社の価値観や態度、信念、習慣)

 

楽器ごとの組織リソース

市場セクション

楽器ごとの組織リソース

マイケル・ウェイド『DX実行戦略』日本経済新聞出版社(2019年)を参考にしてATY-Japanで作成

 

「楽器」は、事業上の成果をあげるために団結した組織リソースの集合であり、変革を実行するために活用されなければならない。

必要なリソースについて、実践者が大きな視野で考えられるようになるためには、「楽器」についての捉え方が重要となる。

組織の目標を達成していくためには、全てのリソースが調和し、美しいハーモニーを奏でられるようにすることが重要である。

組織リソースには、「人」「データ」「インフラ」の3種類がある。

  • ・「人」は、変革の実行に必要な個人とチームを指す。
    製品やサービスの変革と関係する成果をあげるために活用され、組織のいたるところに存在している。
  • ・「データ」は、変革に必要な情報を指す。
    情報には、顧客や提携業者、価格、製品パフォーマンス、競合他社の製品やサービスのデータ、関連するシステムのリアルタイムデータ、サプライチェーン上で発生するデータなどがあり、組織のいたるところに存在している。
  • ・「インフラ」は、変革の実行に必要な全てであり、具体的な「モノ」を指す。
    施設や資本設備、IT資産などであり、組織のいたるとことに存在している。

 

「変革ネットワーク」の編成

組織リソースを「脱部門」な目で眺めて「ネットワーク化された実行モデル」を受け入れることは、オーケストレーション・ゾーンで活動し、変革のための「結びつきアプローチ」を採るうえでの核となる。

「変革ネットワーク」とは、変革に取り組む際に直面する特定の課題に対処するために、複数の楽器から集められた組織リソースによって編成されたネットワークである。

「変革ネットワーク」は、小規模で、集中的で、権限を与えられたものでなければならない。

「変革ネットワーク」の目的は、相乗効果を生み出すことにあり、リソースを動員し、協働を可能にする。

「変革ネットワーク」は一つの事業分野の変革目標達成に向けた課題に取り組むために用いられ、変革理念によって表される「企業全体の変革」に取り組むためには「複数」の「変革ネットワーク」が必要となる。

変革を迅速かつ効率的に達成するためには、新たな情報や関連する情報をもたらす多くの「弱い結びつき」に加え、組織に信頼と連帯感をもたらす少数の「強い結びつき」も必要となる。

 

オーケストレーションを機能させる8つの能力

リーダ-の努力の大半は個々のリソースのパフォーマンス改善に費やされており、この「リソース最適化」のアプローチでは特定のリソースを最大限活用することが仕事となる。

しかし、オーケストレーション・ゾーンでは、それだけでは不十分で、結びつきを機能させるための努力が必要となる。

結びつきを実現するための能力を使い、変化するための「結びつきアプローチ」で組織を動かす。

そのためには、「カスタマーバリュー創出」「ビジネスモデル」「対応戦略」を前面に押し出して、変革目標を実行プログラムの構造と結びつける。

 

リソースを動員する

変革目標を実行プログラムに落とし込む

  • 能力1.カスタマージャーニー・マップ作成
    顧客が購入に至るまでのプロセスを描いたもので、企業とのやりとりにおいて顧客がどんな体験をしているか、最初から最後まで理解することができる。
  • 能力2.ビジネスモデル設計
    顧客が何を期待し、何に消費するかを理解し、「デザイン思考」や「バリューモデリング」のスキルを活用して設計する。

組織の状態を把握する

  • 能力3.ビジネスアーキテクチャ
    組織リソースを動員したり、変革ネットワークを構築したりするのを支援する能力、組織内のノード(リソース)とリンク(リソース間の結びつき)のマップを作成する能力である。
  • 能力4.能力評価
    トランスフォーメーション・オーケストラの8つの楽器全てを網羅した能力を評価し、リソースが手に入るか、すぐに利用できるかを査定するプロセスも含む。

結びつきを機能させる

相乗効果を生む

  • 能力5.コミュニケーションとトレーニング
    明確なビジョンを伝えてストーリーを共有し、変革に向けた取り組みをことあるごとに説明し、利害関係者の理解を得るとともに、その意義についても説明する。
  • 能力6.社内プラットフォーム
    事業の支援や育成と成長を促す「社内プラットフォーム」を活用することにより、相乗効果をもたらし、拡張するための原動力となる。

変革を加速させる

  • 能力7.社内ベンチャーファンド
    一般的な企業では、予算は事業やチームごとに直線的に割り当てられているために、特に部門横断的な新たな取り組みを推進する場合には予算確保が障害となるため、一元的なファンドを確立する。
  • 能力8.アジャイルな作業方式
    変革の実行作業に限定したアジャイルな作業方式は「連続的なデリバリー・モデル」に移行でき、そのためには「実験と学習」の考え方が企業文化の奥底なで浸透しておくことが必要となる。

 

 

本書を通し、私たちは、増加の一途をたどる「規模」や「相互依存性」「ダイナミズム」によって特徴づけられる環境での組織変革において、誰もが直面するマネジメント上の課題を中心に論じてきた。

世界中の企業に見られる変革プログラムがいまのような状態になってしまったのは、基本的には、人間の脳は「組織のもつれ」のなかを効果的に航海することができないからだ。

(略)

企業がデジタル・ボルテックスに順応していくにつれ、今後数年のうちに、AIや自動化、IoT、5G、ブロックチェーンといったデジタル技術が大きな影響を持つようになるだろう。

(略)

その結果、今後数年のうちに変革ネットワークの動員と機能化は、はるかにインテリジェントで自動化されたものになる。

そこから貴重な情報が生成され、組織デザインやチーム編成、優先順位づけが最適化されるようになるだろう。

 

まとめ(私見)

本書は、変革実践者のマインドセットや変革の捉え方、どのようにして新しい目で組織そのものを捉えるかに主眼を置いた一冊です。

デジタルビジネス・トランスフォーメーション(DX)をどのように推進していくべきかを探っている既存企業のビジネスリーダーの方々に、フレームワークとツールを提供してくれています。

本書は、前著『対デジタル・ディスラプター戦略』(日本経済新聞出版社、2017年)の続編として、以降の調査・研究の成果にもとづいた集大成としています。

前著が変化に必要な組織能力を生み出す方法について論じたのに対し、本書は変革を実行するための仕組みについて論じていますので、二つを合わせることにより実務者の手引きとなります。

DBTセンターのデジタル・ディスラプションに関係する調査では、2017年の状況は2015年時点から大きく変化し、過去2年間の間でそのスピードが加速していることがわかります。

その調査結果によると、デジタル・ディスラプションが自社業界に与える影響は「大きい」もしくは「破壊的である」と考えているエグゼプティブは、2015年時点では26.8%であったのに対し、2017年では75.1%に達しているようです。

  • ・デジタル・ディスラプションは、自分たちの業界ですでに発生している
    2017年 50%(2015年 15%)
  • ・デジタル・ディスラプションは、取締役会で取り上げるような話題ではない
    2017年 17%(2015年 45%)
  • ・デジタル・ディスラプションは、自社業界に変革をもたらすほどのインパクトを持つ
    2017年 30%以上(2015年 1%)

これらの調査結果からは、多くのエグゼプティブはデジタル・ディラプションの影響を敏感に感じ取っていて変革の必要性を認識してはいるものの、デジタルビジネス・トランスフォーメーションを実際に成し遂げることに苦労している実態が明らかになっています。

 

また、前著『対デジタル・ディスラプター戦略』では、カスタマーバリュー創出能力や経営上の敏捷性などの破壊的なライバル企業の持つ特定な能力を、既存企業は模倣すべきであると提唱していましたが、それには危険が伴うと本書では指摘しています。

成功にばかり目を向けてしまうのも危険で、企業が良好な業績をあげているからといって、企業変革の有意義な例になるわけではないとしています。

リーダーシップや企業文化、コンプライアンス、顧客志向といった概念は曖昧で定義が難しいため、結果として「財務業績が良好な企業には、成功間違いなしの戦略がある」という思い込み(ハロー効果)で、業績好調な企業に潜む「隠れたDNA」の発掘に注力していると指摘しています。

そこで本書では、最良の企業が他社より秀でている点について論じているのではなく、「ほとんどの企業で、デジタルビジネス・トランスフォーメーションはうまくいっていない」という前提に立って、誰もが間違ってしまうポイントと、それを修正する方法について焦点を当てているのが特徴です。

 

変化が持つ「結びつき」の性質を論じるため、本書では「オーケストレーション」というコンセプトを用いて、さまざまな領域でオーケストラ化するためのアイデアや実用的な適用方法を探索する。

組織が持つ「ネットワーク的」な性質を認識し、変化に求められる「高度な結びつき」を獲得するという課題を通して、デジタルビジネス・トランスフォーメーション・プログラムの実行が(連続的かつ総合的に)何を意味するかを見直し、プログラムの成功確率をより高いレベルへと導く。

オーケストレーションとは、「相乗効果を生む形で組織リソースを結び付け、望みどおりの効果を得るために、それらを動員し、機能させること」と言えます。

 

そして、ありがちな失敗例から得られた教訓、破壊的なライバル企業に対抗するための戦略を策定し、それを実現するための組織変革の方法など、既存企業ならではの戦い方を解説してくれています。

  • ・社内に分散(サイロ化)している人とデータをつなぎ合わせて「デジタル能力」を実装し、既存企業ならではの戦い方
  • ・既存組織が抱える課題(組織のもつれ)を克服し、デジタルで稼ぐ力を手に入れるための企業変革手法「オーケストレーション」という、従来のチェンジマネジメント手法を超えたアプローチ
  • ・社内に分散している組織リソース(人、データ、インフラ)をかき集めて連携させることで、新たなカスタマーバリューを創出、あるいはデジタル・ビジネスモデルを実現
  • ・カスタマージャーニー・マップ作成、ビジネスアーキテクチャ、社内ファンド、アジャイルな作業方式などのリソース間の「結びつき」を機能させる能力、組織づくり、CDO(最高デジタル責任者:Chief Digital Officer)やCTO(最高トランスフォーメーション責任者:Chief Transformation Officer)、変革推進が果たすべき役割
  • ・デジタルビジネス・トランスフォーメーション(DX)を実行するに当って、企業がとるべき21の具体的アクション

本書には、デジタルビジネス・トランスフォーメーション(DX)を実行していくうえでの重要な組織アプローチ、それを実行可能にするツールを提供してくれている一冊です。

 

目次

序 章 なぜいまDXなのか

第1章 既存企業が抱える「変革のジレンマ」

第2章 戦略的な方向性を定める――変革目標とは何か

第3章 「変革目標」を打ち立てる

第4章 リソースをかき集め、協働させる――トランスフォーメーション・オーケストラ

第5章 オーケストレーションを機能させる8つの能力

第6章 オーケストレーションを推進する組織づくり

終 章 企業がとるべき21のアクション

巻末資料1 デジタル・ディスラプション診断
巻末資料2 楽器ごとの組織リソース
巻末資料3 リソース能力評価ワークシート
巻末資料4 オーケストレーター虎の巻

解説
「サイロ化の罠」から抜け出すための組織変革アプローチ
日本企業は「変革のジレンマ」を乗り越えられるか

 

参考

The Transformation Orchestra: A New Framework for Digital Execution

 

IMD
IMD Japan
エグゼプティブ教育で世界トップクラスのビジネススクール

Digital Vortex 2019、IMD

Orchestrating Digital Business Transformation、IMD

デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)
日本を代表するメンバー企業が集結し、ビジネスにイノベーションを起こすためのプラットフォームとして活動している。

デジタルビジネスアセスメント
企業のコアケイパビリティに関する数分のアセスメントを実施すると、暫定的な速報レポート、およびエグゼクティブレポートのリクエストをすることができる。

Column Digital Vortex、ディスラプトされるかディスラプトするか、DIGITAL X(デジタルクロス)

 

関係する書籍

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対デジタル・ディスラプター戦略 既存企業の戦い方

マイケル・ウェイド、ジェフ・ルークス、ジェイムズ・マコーレー(著)
出版社:日本経済新聞出版社(2017/10/24)
Amazon.co.jp:対デジタル・ディスラプター戦略

 

 

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