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TRACTION トラクション
ビジネスの手綱を握り直す 中小企業のシンプルイノベーション
ジーノ・ウィックマン(著)、福井 久美子 (翻訳)、カール・パイザー (翻訳)、久能 克也 (翻訳)
出版社:ビジネス教育出版社 (2020/12/10)
Amazon.co.jp:TRACTION トラクション
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世界85万部突破!
翻訳を許されなかった「禁断の書」が、遂に完全日本語化
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2022年06月18日 ジーノ・ウィックマン『GET A GRIP ゲット・ア・グリップ』ビジネス教育出版社 (2022/6/6)
本書は、起業家向けのコーチやコンサルタントである著者が、独自に開発した「起業家のための経営システム(EOS)」を紹介した一冊です。
EOSの「6つのモジュール」と12の二次的なツールを導入順に紹介しながら、それぞれのツールの使い方や組み合わせ方を詳細に解説していますので、起業家に限らず多くのビジネスリーダーの方々にとって、組織運営のポイントを理解するうえで大変役立ちます。
本書は10章で構成されており、「起業家のための経営システム(EOS)」の「6つのモジュール」と12の二次的なツールを導入順に紹介し、自分の組織を堅実で安定的に経営していくための手法を解説しています。
特に、第3章から第8章までは、「6つのモジュール」のそれぞれを章に分けて、ガイドとなるツールを具体的な事例を紹介しながら詳細に解説しています。
- ・第1章では、EOSモデルの「6つのモジュール」全体像を示しながら、それぞれのモジュールの要点を整理しています。
- ・第2章では、企業が次のレベルにたどり着くためには変化が必要であるとして、変化を起こす際の4つの基本的な信条を整理しています。
- ・第3章では、「6つのモジュール」の一つ目の「ビジョン」について、8つの質問に答えていきながら作成する「ビジョン・トラクションシート」、ビジョンを社員と共有するためのポイントを紹介しています。
- ・第4章では、二つ目の「人」について、「正しい人」を見分けて「正しい席」に座らせることの重要性に加え、それらを実現していくための手法を詳細に解説しています。
- ・第5章では、三つ目の「データ」について、データを作成して管理する方法を解説し、全社員が数字目標を共有することの重要性を説いています。
- ・第6章では、四つ目の「課題」について、成功できるかどうかは問題解決能力にかかっているとして、障害を取り除くための「課題リスト」と「課題解決トラック(IDS)」という二つのツールについて詳細に解説しています。
- ・第7章では、五つ目の「プロセス」について、限界という天井を突き破って、効率的な組織を構築するためにはシステム化が必要であるとして、プロセスを改善する方法、プロセスを簡素化する方法、プロセスに技術を適用する方法、そして組織全体で一貫性あるプロセスを維持する方法について解説しています。
- ・第8章では、六つ目の「トラクション(実行力)」について、「全員が具体的で測定可能な優先順位を設定すること」「社内でのミーティングの質を向上させること」という、トラクションをつけるために必要な二つの規律について解説しています。
- ・第9章では、「6つのモジュール」を強化して組み合わせることの重要性を説き、組織の状態を確認できる「組織チェックアップ」を紹介した後、会社全体でEOSを実行するためのポイントを整理しています。
- ・第10章では、7つの主要なツールについて、付随する12の二次的なツールと一緒に導入する順番を示し、成功ポイントを解説しています。
EOSの「6つのモジュール」は、会社の最も重要な六つの側面の根本に直接働きかけて強化する。
真の問題が解決されるため、枝葉の症状的問題はすべてなくなるだろう。
私のクライアントたちと同じように、この旅の途中であなたも「何だ、簡単じゃないか」と思うかもしれない。
そう、実に簡単だ。
あなたがMBAの授業で流行りそうな方法論を探しているのであれば、期待外れだ。
EOSは、多種多様な組織でテストされた、実践的かつ普遍的で、時代に影響されない原則からなる。
EOSがきわめて画期的なのは、これらのベストプラクティスが完全なシステムに統合されていて、このシステムを会社の組織構造や運営に応用すれば、会社は今後何十年も存続できるようになることだ。
EOSを構成する「6つのモジュール」
起業家のための経営システム(EOS)を構成するすべてのツールと要素が含まれている。
EOSは会社の六つの側面に働きかける、全体的で自立的なシステムである。
EOSの個々の要素をマスターすれば、それらの要素を強力なフレームワークへと統合でき、トラクション(実行力)が身につけば、会社のビジョンは実現に向かう。
EOSの「6つのモジュール」は、会社の最も重要な六つの側面の根本に直接働きかけて強化する。
- 1.明確なビジョンを全員と共有しながら業務を行う。
- 2.適切な人を配置する。
- 3.一握りの数字を毎週チェックすることで、事業の状態を把握する。
- 4.オープンで正直な環境のなかで、課題を素早く見つけて解決する。
- 5.プロセスを文書化して、全員にそのプロセスを順守させる。
- 6.各従業員のために優先事項を定め、各チームのなかで高い信頼性、コミュニケーション、結果責任を確保する。
6つのモジュール
『TRACTION トラクション』を参考にしてATY-Japanで作成
ビジョン:八つの質問、全員共有
- ・会社がどこを目指すのか、どうやってそこにたどり着くのかをはっきりとイメージし、それを組織の全員に示す。
- ・ビジョンが明瞭であればあるほど、それが実現する可能性は高くなる。
- ・ツール
・ビジョン・トラクションシート:ビジョンをシンプルに整理すれば、戦略を簡略化し、組織としてのあり方、どこを目指すかをはっきりと定義できる。
・マーケティング戦略(10年目標、3年イメージ、1年計画):ビジョンを効果的に伝え、全社員がそれを共有できるようになる。
人:正しい人、正しい席
- ・「正しい人」と「正しい席」という、偉大なチームに不可欠な二つの要素を実践的に理解してもらう。
- ・ツール
・ピープル・アナライザー(コア・バリュー):正しい人を見つけやすくなり、組織における人材採用、解雇、評価、報酬、表彰する際の手順も簡素化できる。
・アカウンタビリティ・チャート:組織内での役割や責任を明確に定め、組織を正しく構成し直すことができる。
・GWC(Get it、Want it、Capacity to do it):優秀な人材を採用するのに不可欠な3つの絶対条件(仕事を理解していること、やる気があること、遂行する能力があること)を定めることができる。
データ:スコアカード、測定可能な数字
- ・いくつかの判断基準を持ち、会社経営に役立てるために、データという要素を使うことで、焦点を合わせる数値がはっきりする。
- ・性格、エゴ、個人的な問題、感情、漠然としたものを管理する苦労から解放される。
- ・ツール
・スコアカード:組織にとって重要な5~15の数値が含まれた週次レポートで、毎週ビジネスの脈拍をフォローし、今後の展開を予測し、組織が目標から外れたら教えてくれる。
課題:課題リスト、課題解決トラック(IDS)
- ・ビジョンを実現するために克服すべき障害のことで、企業にも課題を解決する能力が求められる。
- ・課題を見つけたら率直に話し合ってみて、課題をすべて解決できれば、ビジョンは実現する。
- ・ツール
・課題リスト:あらゆる課題をカテゴリー別に分けて優先順位をつけられ、社員が安心して本音や不安を話せるオープンで誠実な文化を構築することができる。
・課題解決トラック(IDS):計測的かつ有意義な方法で組織の課題を効果的に見つけ出し、議論し、解決できる。
プロセス:文書化、全員実行
- ・ビジネスを行う「ウェイ(流儀)」のことで、自社のウェイをはっきりと認識し、絶えず磨きをかける。
- ・正しいプロセスでビジネスを進めれば、魔法のような効果を発揮し、結果的に簡素さ、スケーラビリティ(拡大可能性)、効率、収益性がもたらされる。
- ・ツール
・3ステップ・マニュアル・クリエイター:重要なプロセスをすべて特定し、取り組み、文書化することにより、構築しようとしている仕組みの骨格を整え、ビジネスモデルを文書に具体化させることができる。
トラクション(実行力):石、ミーティングのリズム
- ・成功のためには、経営者は「トラクション(実行力)」が必要で、どうすれば組織に目的意識、責任感、規律をもたらせるかを知る。
- ・恐怖心や規律不足のせいで、トラクションという要素は大多数の組織の共通の弱点となっており、実行されないビジョンがあちこちに見られる(絵に描いた餅)
- ・ツール
・石(90日間の優先事項):従業員に最も重要なことに集中してもらうことができる。
・ミーティングのリズム:全社レベルで導入することにより、全社員が目的意識を持って足並みをそろえて連携し合えるようになる。
7つの主要ツールの導入手順
7つのツールと12の二次的な支援ツールは、それぞれ独立したツールであるが、それらを組み合わせると組織運営に役立つ包括的なシステムとなる。
まずは経営チームだけでツールを実践し、経営チームがツールを完璧に理解した後に組織全体に導入する。
EOSプロセスの秘訣の一つは、常にトラクション(実行力)に着手してから、ビジョンに取り掛かることである。
アカウンタビリティ・チャート、石、ミーティングのリズム、スコアカード、ビジョン・トラクションシートは基本ツールと呼び、それらを全社に導入すると、EOSの効果の80%が得られる。
基本ツールの利用者を社内全体へと広げる際には、一階層ずつ導入する。
経営チームの時と同様に一つの階層の全員がツールを理解して受け入れてから、次の階層へと広げることが重要である。
EOSを導入するスピードは会社によって異なるが、一般的には1年くらいが目安となる。
7つのツールと12の二次的な支援ツールを導入したら、その導入、強化、管理の全体像を知っておくことが重要である。
1.アカウンタビリティ・チャート(ピープル・アナライザー、GWC含む)
- ・大局的な視点で、自分の組織に合った構造を決め、正しい人を正しい席に座らせる。
- ・誰が何の責任を負っているかが明確になるため、他のツールがより協力で効果的なものになる。
2.石
- ・90日ごとに石を設定してそれを達成することで、経営チームは進化する。
- ・経営チームにすぐに最も重要な優先事項に集中させ、その達成に向かって取り掛かることができる。
- ・四半期ごとに石を設定して達成するというプロセスを2~3回繰り返すと、やがて経営チームは石の設定・達成に熟達するようになり、四半期になるたびに合計で80%以上を達成できるようになる。
3.ミーティングのリズム(課題解決トラック(IDS)、10点満点ミーティング、四半期ミーティング、年間計画含む)
- ・毎週行う90分間の10点満点ミーティングを通して、チームは毎週重要な項目を特定し、優先度の高い課題を解決するようになる。
- ・改題解決トラック(IDS)を適切に使用することが重要で、対処すべき課題をすべて特定し、議論し、解決することができる。
4.スコアカード
- ・1~3カ月ほどかけて、強力な予測ツールに発展させる必要があり、経営チームはビジネスの脈拍をきめ細かくフォローできるようになる。
- ・測定すべき活動ベースの数字はどれで、その数字の究極的な責任者は誰かをはっきりと特定すると、確たる結果責任が生まれ、すぐに結果と責任感という形で現れる。
5.ビジョン・トラクションシート(コア・バリュー、コア・フォーカス、10年目標、マーケティング戦略含む)
- ・最初の四つの主要なツールで実行するための強固な基盤を構築してから、ビジョンを構築する。
- ・結果責任の強力な基盤をつくるという困難な作業をやると、はるかに真剣で生産的に計画を立てられるようになる。
- ・真剣に問うべきなのは、「これらのツールから最大のリターンを得るにはどうしたらいいか?」「どこへ行けば最短で最大の効果が得られるのか?」といった疑問である。
6.3ステップ・マニュアル・クリエイター
- ・「コア・プロセス」を文書化して従業員をトレーニングする。(通常、文書化から全員のトレーニングまでで6~12カ月かかる)
- ・導入済みのツールが順調に機能していて経営チームに余裕があれば、途中から導入してもかまわない。
7.全員に数字目標を持たせる
- ・最初の六つのツールが実施されていなければ効果がなくなる。結果責任、規律、管理体制が弱く、成果をしっかりチェックできない。
- ・しっかりした基盤を整えたうえで組織の全員が数字目標を持てば、成果を上げられる。
本書では、合計で七つの主要なツールと、十二の二次的な支援ツールを学んだ。
それぞれは独立したツールだが、これらを組み合わせると、組織運営に役立つ完全で包括的なシステムになる。
前述したように、まずは経営チームだけでツールを実践することをお勧めする。
組織全体に導入する前に、経営チームがこれらのツールをマスターすることが重要だ。
経営チームに小さなほころびがあると、他の従業員の目にはそれが大きな裂け目に見えてしまうため、このステップは非常に重要だ。
経営チームがツールを完璧に理解したとして、その他の従業員に紹介する方法を説明しよう。
まとめ(私見)
本書は、「起業家のための経営システム(EOS)」の「6つのモジュール」と12の二次的なツールを導入順に紹介しながら、それぞれのツールの使い方や組み合わせ方を詳細に解説した一冊です。
著者自身の経験に加え、チームの導入実績に裏打ちされた、EOSという成長を後押しするシステムを紹介していますので、起業家に限らず多くのビジネスリーダーの方々にとって、組織運営のポイントを理解するうえで大変役立ちます。
本書で解説しているEOSは、120以上の企業に著者自身が関与し、チームも9,000社以上の企業に導入した経験から、EOS導入のポイントや効果的な進め方を、惜しみなく解説しています。
特に、主なツールの記入例を随所で紹介していますので、自社版を作成する際の参考になります。
EOSの「6つのモジュール」は、成功している起業家は意識的または無意識的に習慣化しているとして、モジュールを強化して組み合わせると本当のイノベーションが起き、一流の組織をつくることができるとしています。
なお、主なモジュールに関しては、EOSサイトからダウンロードできますので、有効活用することができます。
変化は怖いが、今までの考え方を変えて会社を自立させなければならないし、そのためには、適切な「ビジョン」を明確にし、適切な構造をつくり、「正しい人」を「正しい席」に座らせる、という3つができれば、会社は進化して潜在能力が開花するとしています。
そこで、EOSは成長を後押しするシステムであり、その基本的な信条は以下の4つとして、受け入れる必要があるとしています。
- 1.本物の経営チームをつくり、維持しなければならない。
- 2.天井を突き破らなければならない。
- 3.会社は一つの経営システムでしか運営できない。
- 4.オープンマインドで、成長志向で、弱みをさらけださなければならない。
EOSモデルは「6つのモジュール(12の二次的なツール)」で構成されていますが、ほとんどの企業は50%以下しか完璧に実行していないようです。
すべての要素で100%を達成することは不可能であるが、80%まで実行できれば機能的な会社と言えるとしています。
そこで、「組織のチェックアップ」として20の問いを紹介していますので、その問いに答えることにより、自身の組織の現在位置を確認することができますし、目指すべき方向性を見いだすことができます。
事業が拡大していくと、組織・部門・個人の3つのレベルで天井にぶち当たり、組織の成長を阻むことになります。
ある程度の成功を収め、次のレベルを目指していくには挑戦が必要で、挑戦にはいくつもの障害が伴います。
本書は、組織の成長を阻む天井を突き破り、業務を変革し、事業をさらに拡大していくためのヒント満載の一冊です。
目次
はじめに
第1章 起業家のための経営システム(EOS)―6つのモジュールを強化する
第2章 つるから手を離す
第3章 ビジョン―従業員はあなたの言葉を理解しているか?
- ・八つの質問に答えよう
- ・全員共有
第4章 人―自分の周りをすぐれた人で囲む
- ・正しい人
- ・正しい席
第5章 データ―数値で冷静さを取り戻す
- ・スコアカード
- ・測定可能な数字
第6章 課題―決める!
- ・課題リスト
- ・課題解決トラック(IDS)
第7章 プロセス―会社のウェイ(流儀)を見つけよう
- ・コア・プロセスの文書化
- ・全員実行
第8章 トラクション(実行力)―アイデアを実行に移す
- ・石
- ・ミーティングのリズム
第9章 すべてのモジュールを合わせてEOSを実践する―壮大な旅
第10章 始めよう
参考
EOS - Entrepreneurial Operating System for Businesses
ダウンロードサイト
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出版社:日経BP(2021/3/18)
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ジェラルド・C・ケイン、アン・グエン・フィリップス、ジョナサン・R・コパルスキー、ガース・R・アンドラス(著)、三谷 慶一郎、船木 春重、渡辺 郁弥(監修)
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