このページ内の目次
NECが、2023年度(2024年3月期)第1四半期決算(2023年4月1日~6月30日)と通期業績予想を発表しましたので、概況を整理します。
NECは、前年同期に対して増収増益(営業利益は赤字)となり、年間予想の達成に向けて順調に進捗していると評価してます。
今年度からセグメントを再編しましたが、ITサービスと社会インフラの2セグメントが増収増益したことが貢献しています。
第1四半期累計(3ヶ月)は、以下の通りです。
売上収益は、前年同期に対して469億円(7.1%)増の7,065億円
営業利益は、同72億円増の△81億円
調整後営業利益は、同74億円増の5億円(前年同期の赤字から黒字に転換)
税引前利益は、同42億円増の△25億円
親会社の所有者に帰属する当期利益は、同65億円増の△74億円
なお、2023年度(2024年3月期)の通期決算予想は前回予想を据え置いています。
NECの2023年度第1四半期(2023年4~6月)連結業績
売上収益(累計)は前年同期比469億円(7.1%)増の7,065億円、営業利益は同72億円増の△81億円、当期利益は同65億円増の△74億円
第1四半期は想定通りに進捗して増収増益(Non-GAAP営業利益も黒字化)となり、セグメント別では、ITサービスと社会インフラが増収増益となりました。
特に、ITサービスは、受注動向が好調であり、ソリューションイノベータの稼働率も前年同期比プラスで推移し、需要トレンドは引き続き強いと評価しています。
売上収益は、前年同期に対して469億円(7.12%)増の7,065億円
営業利益は、同72億円増の△81億円
調整後営業利益は、同74億円増の5億円(前年同期の赤字から黒字に転換)
Non-GAAP営業利益は、同138億円増の6億円
税引前利益は、同42億円増の△25億円
親会社の所有者に帰属する当期利益は、同65億円増の△74億円
Non-GAAP当期利益は、同113億円増の△13億円
EBITDAは、同159億円増の380億円
売上収益は、前年同期比469億円(7.12%)増の7,065億円
- ・ITサービスと社会インフラの2セグメントが増収増益したことが貢献しています。
- ・ITサービスは、国内の企業向け・官公庁向けが好調に推移して増収しています。
- ・社会インフラは、テレコムサービスの海洋システムやOSS/BSSを中心とした海外向け売上が増加したことにより増収しています。
調整後営業利益は、前年同期比74億円増の5億円
- ・ITサービスは、売上増に伴う利益増に加えて、SIの収益性向上も寄与して増益しています。
- ・社会インフラは、売上増に伴って増益しています。
税引前利益は前年同期比42億円増の△25億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同65億円増の△74億円
なお、今回の決算から公表しているNon-GAAP営業利益は、買収によって認識した無形資産の償却費、M&A関連費用、一過性損益である構造改革関連費用、減損損失、株式報酬などを営業利益から排除したもので、「根源的な事業の業績を測る利益指標」としています。
セグメント別の業績
セグメント別の業績は以下の通りで、前年同期に対して、ITサービスと社会インフラが増収増益、その他が減収減益となりました。
■ITサービスは増収増益
売上収益は前年同期に対して305億円(8.6%)増の3,858億円、調整後営業利益は前年同期から171億円増の178億円
- ・売上収益は、国内の企業向け・官公庁向けが好調に推移
- ・調整後営業利益は、売上増に伴う利益増に加えてSIの収益性向上も寄与して増益
- ・国内外の構成は、以下の通りです。
国内の売上収益は前年同期比11.4%増の3,203億円、調整後営業利益は同169億円増の168億円
海外(DG/DF)の売上収益は前年同期比3.3%増の655億円、調整後営業利益は同2億円増の10億円
サブセグメント別の売上構成は以下の通りで、エンタープライズ、パブリックは旺盛な需要を取り込み好調を維持しています。
国内:前年同期比11.4%増の3,203億円(構成比:83%)
- ・パブリック:前年同期比10.4%増の730億円(構成比:18.9%)
官公庁向けが好調
- ・エンタープライズ:同13.5%増の1,593億円(同:41.3%)
金融は大型案件の計上もあり大幅増、製造はマイナスも5%増の成長で堅調、流通・サービスは案件の増加
- ・クロスインダストリー:同2.5%増の207億円(同:5.4%)
2015年度がピークだった消防・防災システムの更新需要を控えており、2023年度から受注が始まり、2024年度以降でピークを迎える見込み
- ・Digital Platform(DPF)他:同10.6%増の673億円(同:17.4%)
海外 Digital Government(DG) / Digital Finance(DF):前年同期比3.3%増の655億円(構成比:17.0%)
SWS-UK(NEC Software Solutions UK)が牽引
■社会インフラは増収増益
売上収益は前年同期に対して176億円(8.9%)増の2,150億円、調整後営業利益は前年同期から31億円増の△21億円(営業赤字)
- ・売上収益は、テレコムサービスの海洋システムやOSS/BSSを中心とした海外向け売上が増加し増収
- ・調整後営業利益は、売上増に伴う利益
サブセグメント別の売上構成は、以下の通りです。
- ・テレコムサービス:売上収益は前年同期比11.9%増の1,715億円、調整後営業利益は同22億円増の△32億円(営業赤字)
- ・Aerospace and National Security(ANS):売上収益は前年同期比1.5%増の3,435億円、調整後営業利益は同9億円増の11億円
■その他は減収減益
売上収益は前年同期に対して13億円(1.2%)減の1,057億円、調整後営業利益は前年同期から26億円減の3億円
- ・日本航空電子工業の影響により減益
トピックス
生成AI
- ・日本市場向け生成AIを開発・提供開始
世界トップクラスの日本語性能を有する軽量なLLM*を開発
ニーズに合わせた専用ハードウェア、ソフトウェア、コンサルティングサービスなどを提供
生成AI活用のためのプログラムを約10の企業・大学と共に立ち上げ
プロフェッショナル人材からなる専門組織を新設
- ・7月6日の発表後、数日で数百件の引き合いがあり、国内市場で先行し事業拡大を目指す。
DGDF:NECの子会社であるスイスのAvaloqと、米資産運用会社のBlackRockによる戦略的パートナーシップを締結
- ・ウェルスマネージャーやプライベートバンク向けに両社の統合ソリューションを提供し、幅広い層にアプローチすることで事業拡大を図る。
経営インフラの高度化
- ・経営インフラの整備・高度化に向けたフラグシップとして基幹システムを刷新(2020年度からSAPを活用したグループ基幹システムを移行)
中計達成に向けてITやプロセス・組織、制度、データ・人といった経営基盤を徹底的に共通化・高度化
- ・2023年度から1stフェーズが稼働、商談プロセスの高度化・システム化を実現
商談プロセスにおける情報を蓄積・可視化することでバリュープライシングやオペレーションを改善
- ・2024年度には2stフェーズ、2025年5月には3stを稼働させ、データドリブン経営への移行を促進する計画
その他
海外売上比率:28.0%の1,975億円(前年度:29.5%の1,944億円)
キャッシュフローの状況
- ・営業活動によるキャッシュ・フロー:前年同期比210億円増の863億円
投資活動によるキャッシュ・フロー:同30億円増の△130億円
- ・財務活動によるキャッシュ・フロー:同407億円増の△264億円
- ・現金及び現金同等物の期末残高:同517億円増の4,776億円
資産、負債、資本の状況(2023年6月末)
- ・資産:2023年3月末に対して320億円増の4兆161億円(流動資産は同602億円減の1兆9,356億円、非流動資産は同923億円増の2兆804億円)
- ・負債:同158億円減の2兆554億円
- ・資本:同479億円増の1兆9,606億円
親会社所有者帰属持分:同429億円増の1兆6,668億円
親会社所有者帰属持分比率:同0.7ポイント増の41.5%
- ・D/Eレシオ(倍):同0.01ポイント増の0.38
- ・ネットD/Eレシオ(倍):同0.03ポイント増の0.09
- ・現金及び現金同等物の期末残高:同582億円増の4,777億円
2023年度から事業領域による区分へ変更
2023年度第1四半期から開示セグメントを、従来の市場/顧客区分から事業領域による区分へと変更していますが、主な事業・市場・顧客は以下の通りです。
1.ITサービス
1-1.国内
- ・パブリック:中央省庁・自治体向け
- ・エンタープライズ:企業向け(金融、製造、流通・サービス)、NECファシリティーズ
- ・クロスインダストリー:レジリエンス(消防防災)、スマートシティ(交通、エネルギー)、放送メディア
- ・Digital Platform(DPF)他:アビームコンサルティング、NECフィールディング、販売店向け
1-2.海外
- ・Digital Government(DG) / Digital Finance(DF):NEC Software Solutions UK、KMD、Avaloq、海外向けデジタルID
2.社会インフラ
- ・テレコムサービス:通信事業者向け通信インフラ(含むグローバル5G)、海洋システム、OSS/BSS、NECネッツエスアイ
- ・Aerospace and National Security(ANS):航空・宇宙・防衛領域
3.その他/調整額
- ・その他:ヘルスケア・ライフサイエンス、日本航空電子工業、コーポレート主管会社
- ・調整額:研究所/コーポレート費用、その他調整勘定
2023年度(2024年3月期)の通期決算予想
2023年度(2024年3月期)の通期決算予想は、前回予想を維持しています。
- ・売上収益は、前年度比670億円(2.0%)増の3兆3,800億円
- ・調整後営業利益は、同145億円増の2,200億円(対売上収益比率:同0.3%増の6.5%)
- ・営業利益(Non-GAAP)は、同230億円増の2,200億円(対売上収益比率:同0.6%増の6.5%)
- ・当期利益(Non-GAAP)は、同72億円増の1,400億円
- ・EPS(Non-GAAP)は、同34億円増の526億円
- ・EBITDAは、同122億円増の3,600億円
- ・フリーキャッシュフローは、同475億円増の1,500億円
セグメント別の業績予想
ITサービスは増収増益
- ・売上収益は、前年度比450億円(2.6%)増の1兆8,000億円
好調な国内需要の継続を見込み、民需向けを中心に増収を計画
- ・調整後営業利益は、同90億円増の1,770億円(営業利益率:9.8%)
国内での売上増に伴う利益増と、DGDFの収益性改善を計画
社会インフラは増収増益
- ・売上収益は、前年度比228億円(2.1%)増の1兆850億円
テレコムサービスおよびANSともに増収を計画
- ・調整後営業利益は、同212億円増の950億円(同 8.8%)
テレコムサービスにおける前年度の一過性要因の解消もあり大幅増を計画
その他は減収増益
- ・売上収益は、前年度比8億円(0.2%)減の4,950億円
- ・調整後営業利益は、同32億円増の270億円(同 5.5%)
調整額
- ・調整後営業利益は、同189億円増の△790億円
参考:電機各社の決算発表
2023.07.29 2023年度第1四半期決算と通期予想:NEC
2023.07.28 2023年度第1四半期決算と通期予想:富士通
関連記事
前へ
富士通の2023年度(2024年3月期)第1四半期決算は減収減益、内容は計画通りで事業再編を除くと増収
次へ
ハイプ・サイクル(ガートナー)2023年版 | 4つのトレンドに分類し、生成AIは過度な期待のピーク期