富士通の2023年度(2024年3月期)第1四半期決算は減収減益、内容は計画通りで事業再編を除くと増収

富士通の2023年度(2024年3月期)第1四半期決算は減収減益、内容は計画通りで事業再編を除くと増収

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富士通の2023年度(2024年3月期)第1四半期決算

富士通が、2023年度(2024年3月期)第1四半期決算(2023年4月1日~6月30日)と通期予想を発表しましたので、概況を整理します。

富士通は、累計では前年同期に対して減収減益となりましたが、成長ドライバーのサービスソリューションは、売上収益が国内ビジネスを中心に2桁伸長し、調整後営業利益も採算性改善も計画通り進捗して増益となっています。

セグメントごとには大きな強弱があったものの、内容、水準ともに、計画通りで、売上収益は事業再編影響を除くと若干の増収となっているとしています。

売上収益は、前年同期に対して192億円(2.3%)減の7,996億円

調整後営業利益は、前年同期に対して254億円減の26億円(調整後営業利益率は、前年同期比3.1%悪化して0.3%)

営業利益は、前年同期に対して273億円減の△17億円(営業赤字)

税引前利益は、前年同期に対して298億円減の86億円

親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、前年同期に対して115億円減の74億円

親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年同期に対して129億円減の44億円

2023年度(2024年3月期)の通期決算予想は、前回予想を据え置いています。

富士通の2023年度第1四半期(2023年4~6月)連結業績

富士通の2023年度(2024年3月期)第1四半期決算

売上収益(累計)は前年同期に対して192億円(2.3%)減の7,996億円、営業利益(累計)は同273億円減の17億円赤字(調整後営業利益は同254億円減の26億円)

税引前利益(累計)は前年同期に対して298億円減の86億円、親会社の所有者に帰属する当期利益(累計)は同129億円減の44億円

セグメント別の業績

セグメント別の業績(四半期)は以下の通りで、サービスソリューションが増収増益、ユビキタスソリューションが減収増益、ハードウェアソリューションとデバイスソリューションが減収減益となっています。

■サービスソリューションは増収増益

売上収益が前年同期比197億円増の4,654億円、調整後営業利益は同119億円増の209億円

国内市場を中心にDXおよびモダナイゼーション商談が活発であり、また、Fujitsu Uvanceの売り上げが拡大したとしています。

  • ・売上収益は、国内市場においてDX・モダナイ商談が確実に伸長、Fujitsu Uvanceの売上は前年から153%伸長
  • ・調整後営業利益は、増収効果に加えて開発標準化の進捗により採算性改善、Uvance関連投資を拡大するも利益は前年同期の2.3倍

営業利益119億円増益の内訳は、以下の通りです。

  • ・Uvance開発費など成長投資△89億円に対し、
  • ・売上増収影響で+133億円(売上収益+430億円)と採算性改善で+75億円で、計+119億円(売上収益+430億円)

採算性改善+75億円(売上総利益率は1.6%の改善)は、開発標準化、自動化、内製化の進捗により、国内サービスの採算性は着実に向上しているとしてます。

成長投資△89億円は、Fujitsu Uvanceを中心としたオファリング開発、専門人材リソースの育成・リスキリング拡大・人材獲得、セキュリティ・IT基盤の強化

国内の受注状況(累計)の分野別は以下の通りで、全体では前年同期に対して118%で、DX/モダナイゼーション商談を中心に拡大しているとしています。

  • ・エンタープライズ(産業・流通・小売)は前年同期に対して107%
    サプライチェーンのDX化や基幹システムのモダナイゼーション案件を中心に堅調に推移し、製造、モビリティ、流通などで商談が活性化
  • ・ファイナンス(金融・小売)は同124%
    金融機関向けの基幹業務システムの大型商談に加えて、新紙幣対応の案件も獲得
  • ・パブリック&ヘルスケア(官公庁・自治体・医療)は同134%
    官公庁向け次期システムのモダナイゼーション案件を複数獲得し、電子カルテや医療情報システムの大型更改商談を開始
  • ・ミッションクリティカル他(ミッションクリティカル・ナショナルセキュリティ他)は同92%
    前年同期の大型案件の反動で下回っているが、年間では受注、売上ともに前年実績を上回る計画

一方、海外の受注状況(累計)の分野別は以下の通りで、全体では前年同期に対して104%で、EuropeとAsia Pacificは公共セクターを中心に伸長し、Americasは民需を中心に堅調に拡大しているとしています。

  • ・Europeは前年同期に対して104%
    英国で公共系商談を獲得
  • ・Americasは同137%
    民需系を中心に複数年のサービス商談を獲得し、前年から大きく伸長
  • ・Asia Pacificは同117%
    オセアニアでのM&A効果に加えて、公共商談を獲得

サブセグメント別の内訳は、以下の通りです。

特に、Japanは、産業、流通、金融、官公庁向けといった広範囲で、DXおよび基幹システムの刷新案件が増加して、採算性向上も着実に進んでいるようです。

一方、海外は、為替影響に加えて、欧州での公共セクターの拡大も貢献したが、赤字幅は拡大しており、APACでの好採算商談の終息の影響があったとしています。

海外事業は、全体の構造を変えるところには着手しており、第2四半期はぎりぎりの黒字化を計画し、通期では黒字化を最低限の目標としているとしています。

  • □グローバルソリューションは増収増益
    ・売上収益が前年同期比104億円増の1,042億円、調整後営業利益が同69億円増の△12億円(営業赤字)
    ・売上収益はFujitsu Uvanceを中心に増収、調整後営業利益は増収効果と採算性向上はあるが投資先行の段階
  • □リージョンズ(Japan)は減収増益
    ・売上収益が前年同期比33億円減の2,620億円、調整後営業利益は同67億円増の258億円
    ・売上収益の内、事業再編影響が△232億円
    ・売上収益は産業・流通・金融・官公庁向けにDXやモダナイゼーション案件が増加、調整後営業利益は増収効果に加え採算性向上で増益
  • □リージョンズ(海外)は増収減益
    ・売上収益が前年同期比109億円増の1,410億円、調整後営業利益は同17億円減の△36億円(営業赤字)
    ・営業利益は為替影響に加え欧州公共セクターの拡大で増収、調整後営業利益はAPACの高採算商談の終息影響等に伴い減益

■ハードウェアソリューションは減収減益

売上収益が前年同期比73億円減の2,168億円、調整後営業利益は同23億円減の26億円

  • ・システムプロダクトの売上収益は、部材調達影響の解消により、同66億円増の1,852億円
  • ・ネットワークプロダクトの売上収益は、北米向けモバイルシステム、フォトニクスともに昨年度の北米向け需要の反動減により、同140億円減の316億円
  • ・ネットワークプロダクトは、大型需要の一巡による売り上げ減少が見られるものの、高速、大容量、低遅延、低消費電力の実現が期待されるため次の成長に向けた開発投資を拡充

■ユビキタスソリューションは減収増益

売上収益が前年同期比19億円減の598億円、調整後営業利益は同36億円増の45億円

  • ・売上収益は、若干の減収も前年同期並み
  • ・調整後営業利益は、為替影響含めた部材価格上昇に対するコストダウン、価格転嫁が進んで増益

■デバイスソリューションは減収減益

売上収益は前年同期比367億円減の674億円、調整後営業利益は同241億円減の22億円

  • ・売上収益は、半導体パッケージの低調なデマンドが継続し減収
  • ・調整後営業利益は、物量減および操業低下により大きく減益したものの、年度後半から緩やかな回復を想定
  • ・2022年度第4四半期から低調なトレンドが続いており、物量減および工場の操業低下が影響し、減益幅が拡大したものの、年度後半からの緩やかな回復を想定
Fujitsu Uvanceの状況

2023年5月24日に発表した、2025年度を最終年度とする中期経営計画では、Fujitsu Uvanceを成長のドライバーとして、サービスソリューションを中心に全社の収益性拡大を目指すとして、2025年度の売上収益 7,000億円(2022年度実績:2,000億円)を目標にしています。

社会課題を起点として、クロスインダストリーでお客様の成長に貢献するデジタルサービスを提供するとして、社会課題を解決するクロスインダストリー4分野(Vertical)と支える3つのテクノロジー基盤(Horizontal)を定めています。

  • ・Vertical:Sustainable Manufacturing、Consumer Experience、Healthy Living 、Trusted Society
  • ・Horizontal:Digital Shifts、Business Applications、Hybrid IT

2023年度第1四半期の売上収益は、前年同期に対して53.4%増の704億円となっています。

  • ・2022年度1Q:459億円(Vertical:32億円、Horizontal:427億円)→2023年度1Q:704億円(Vertical:103億円、Horizontal:601億円)
  • ・売上構成比は、2022年度1Q:10%→2023年度1Q:15%

なお、売上収益の年度予測は、以下の通りとしています。

  • ・2022年度(実績):2,000億円(V 150億円、H 1,850億円)、構成比 10%
  • ・2023年度(予測):3,000億円(V 1,000億円、H 2,000億円)、構成比 14%
  • ・2025年度(予測):7,000億円(V 4,000億円、H 3,000億円)、構成比 30%

なお、Verticalは、顧客のSXを実現するオファリングを下期を中心に投入し、Horizontalは、3S商談(SAP、ServiceNow、Salesforce)を中核としたBusiness Applicationsのデマンドが旺盛であることからリソースを増強して需要に応えているとしています。

その他

キャッシュフローの状況

  • ・フリー・キャッシュフロー:前年同期比595億円増の1,256億円
    営業活動によるキャッシュ・フロー:同436億円増の1,682億円
    投資活動によるキャッシュ・フロー:同158億円増の△425億円
  • ・財務活動によるキャッシュ・フロー:同437億円増の△248億円
  • ・現金及び現金同等物の期末残高:同245億円減の4,659億円

資産、負債、資本の状況

  • ・資産:前年同期比255億円減の3兆2,400億円
  • ・負債:同845億円減の1兆4,442億円
  • ・資本(純資産):同589億円増の1兆6,420億円
    親会社所有者帰属持分(自己資本):同552億円増の1兆6,420億円
  • ・(参考)有利子負債:前年同期比226億円増の2,338億円
「Fujitsu MICJET コンビニ交付システム」のトラブルへの対応状況

富士通Japanが提供した「Fujitsu MICJET コンビニ交付システム」の不具合によるトラブルに関しては、重く受け止め、深く反省しているとして、まずは再発防止に取り組み、信頼の回復を図るとし、対応完了時期については明らかにしていません。

また、福岡県宗像市において、点検終了後に修正プログラムが反映されていなかった事態が発生し、123自治体を対象に調査を行った結果、同市を含めて44自治体で、修正プログラムが適用されていないことが明らかになったことに関しては、根本的な原因を調査中としています。

なお、点検および改修に関するコストの業績への影響については、経営上に重大な影響を及ぼすものではないとしていますが、推移を見ながら精査した結果を適時発表するとしています。

2023年度(2024年3月期)の通期決算予想

富士通の2023年度(2024年3月期)通期決算予想

2023年度(2024年3月期)の連結業績は、前回の予想を据え置いています。

Uvanceオファリングの確実なリリース、デリバリー変革への愚直な取り組みをしっかりと進めることで、サービスソリューションのボリューム、採算性も計画通りに伸ばしていけるとしています。

  • ・売上収益は、前年比1,462億円増の3兆8,600億円
  • ・調整後営業利益は、同191億円増の3,400億円
  • ・営業利益は、同43億円増の3,400億円
  • ・親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、同138億円増の2,180億円
  • ・親会社の所有者に帰属する当期利益は、同28億円増の2,180億円
セグメント別の業績予想

セグメント別の業績見通しは以下の通りで、ハードウェアソリューションとデバイスソリューションは減収減益を見込むものの、サービスソリューションとユビキタスソリューションが増収増益となり、全体で増収増益を見込んでいます。

  • ・サービスソリューション
    売上収益は前年比1,858億円増の2兆1,700億円、調整後営業利益は同920億円増の2,550億円
  • ・ハードウェアソリューション
    売上収益は前年比723億円減の1兆600億円、調整後営業利益は同206億円減の920億円
  • ・ユビキタスソリューション
    売上収益は前年比240億円増の3,100億円、調整後営業利益は同63億円増の150億円
  • ・デバイスソリューション
    売上収益は前年比76億円減の3,750億円、調整後営業利益は同254億円減の520億円

参考:電機各社の決算発表

富士通 株式会社(2023年7月27日発表)

日本電気 株式会社(2023年7月28日発表)

株式会社 日立製作所(2023年7月28日発表)

株式会社 東芝(2023年8月7日発表予定)

ソニー 株式会社(2023年8月9日発表予定)

パナソニック 株式会社(2023年7月31日発表予定)

三菱電機 株式会社(2023年7月31日発表予定)

シャープ 株式会社(2023年8月4日発表予定)

電機とITの決算

2023.07.29 2023年度第1四半期決算と通期予想:NEC

2023.07.28 2023年度第1四半期決算と通期予想:富士通

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