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NECの中期経営計画経営方針と決算資料を参考にしてATY-Japanで作成
今回(2021年5月14日)の2020年度通期決算発表に合わせて、「2025中期経営計画」も発表されましたので、その概要を整理します。
今回の中期経営計画は、2021年4月1日付で社長兼CEOに就任した森田隆之氏が初めて発表する経営目標となります。
「デジタルガバメントおよびデジタルファイナンス市場において、グローバルトップクラスのバーチカルSaaSベンダーを目指す」と宣言し、以下の目標値をあげています。
- ・売上収益:3兆5,000億円(2020年度実績:2兆9,940億円)、2020年度比成長率:3.2%
- ・調整後営業利益:3,000億円(同1,782億円)、売上収益比:8.6%(同6.0%)
- ・調整後当期利益:1,850億円(同1,496億円)、売上収益比:5.3%(同5.0%)
- ・EBITDA:4,500億円(同2,958億円)、売上収益比:12.9%(同9.9%)
- ・ROIC:6.5%(同4.7%)
- ・非財務指標
エンゲージメントスコア:50%(同25%)
女性および外国人役員の構成比:20%
女性管理職:20%
NECは、安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現を目指します。
NECは、パーパスとして「Orchestrating a Brighter world」を2013年に掲げて取り組んでいますが、今回の中期経営計画では、「戦略」と「文化」とを結びつけて実現を目指し、そのためには、テクノロジーを最大活用し、世界に一歩先んじて、目指す未来像を提示し、『未来の共感』を創ることが必要であるとしています。
戦略では、
- ・目標指標は、EBITDA成長率を年平均9%
- ・テクノロジーを強みに、グローバル成長と国内事業のトランスフォーメーションを加速し、長期利益の最大化と短期利益の最適化を目指す。
- ・NECの成長モデル、「長期利益の最大化」と「短期利益の最適化」、サスティナブルな成長を支える非財務基盤の確立に取り組む。
文化では、
- ・目標指標は、エンゲージメントスコア50%
- ・NEC Wayのもとに多様な人材が集い、イノベーションを追求する会社を実現し、選ばれる会社(Employer of Choice)を目指す。
- ・人・カルチャーの変革、ビジネスインフラの整備、顧客との未来の共感創りに取り組む。
さらに今回、「NEC 2030 VISION」を策定し、「環境」「社会」「暮らし」の3点から取り組むことを発表しています。
「NEC 2030 VISION」は、各部門の代表者や役員が策定に参画し、未来の生活者を思い、ありたい姿を具体化し、社会実装に向けた活動を開始することになるとしています。
「2020中期経営計画」の振り返り
「2020中期経営計画」の目標と2020年度(2021年3月期)の実績は、以下の通りです。
2017年度 | 2020中期経営計画 | 2025中期経営計画 | ||
---|---|---|---|---|
実績 | 目標 | 実績 | 目標 | |
売上収益 | 2兆8,444億円 | 3兆円 | 2兆9,940億円 | 3兆5,000億円 |
営業利益 売上収益比 |
639億円 2.2% |
1,500億円 5.0% |
1,538億円 5.1% |
|
調整後営業利益 売上収益比 |
725億円 2.6% |
1,782億円 6.0% |
3,000億円 8.6% |
|
当期利益 売上収益比 |
459億円 1.6% |
900億円 3.0% |
1,496億円 5.0% |
|
調整後当期利益 売上収益比 |
503億円 1.8% |
1,654億円 5.5% |
1,850億円 5.3% |
|
フリー キャッシュ・フロー |
1,158億円 | 1,000億円 | 1,524億円 | |
ROE 自己資本利益率 | 5% | 10% |
NECの中期経営計画経営方針と決算資料を参考にしてATY-Japanで作成
調整後営業損益 = IFRS営業損益 - 調整項目
「2020中期経営計画」の振り返りとしては、継続的成長投資ができる収益性確保 と実行力の改革により営業利益率 6%を達成し、グローバル成長と国内事業のさらなる収益性向上を目指すと振り返っています。
財務目標としていた、営業利益 1,500億円、利益率 5.0%、フリー・キャッシュ・フロー 1,000億円の主な目標値を達成しています。
「2020中期経営計画」であげた3つの方針については、主に以下取り組みを実行ています。
収益構造の改革
- ・特別転進支援施策の実施
- ・エネルギー事業縮小、ディスプレイ事業合弁会社化
- ・NECプラットフォームズ生産体制効率化、筑波研究所売却
成長の実現
- ・KMD Avaloq 買収
- ・NTT、楽天との戦略的協業
- ・DX事業創出、デジタルプラットフォーム / オファリング等の整備
実行力の改革
- ・dotData / NEC X 設立、創薬事業への参入
- ・NEC Way改定、役員の委任契約、外部人材登用
2025中期経営方針
NECの強みは、効率がいいR&Dと日本で長年に渡り社会インフラやネットワーク基盤を支えてきたクオリティの高い実装力である。
この強みを価値に転換するために、自社の強い技術を共通基盤として整備するとともに、M&Aなどにより、適宜、外部補完することで、グローバルと日本で高い収益力とキャッシュ創出力を実現する。
そこで「2025中期経営計画」では、以下の目標達成に向けて取り組むとしています。
2020中期経営計画 | 2021年度 | 2025中期経営計画 | ||
---|---|---|---|---|
目標 | 実績 | 予想 | 目標 | |
売上収益 | 3兆円 | 2兆9,940億円 | 3兆円 | 3兆5,000億円 |
調整後営業利益 売上収益比 |
1,500億円 5.0% |
1,782億円 6.0% |
1,550億円 5.2% |
3,000億円 8.6% |
調整後当期利益 売上収益比 |
900億円 3.0% |
1,654億円 5.5% |
900億円 3.0% |
1,850億円 5.3% |
EBITDA 売上収益比 |
2,958億円 9.9% |
3,000億円 10.0% |
4,500億円 12.9% |
|
ROIC | 4.7% | 6.5% |
NECの中期経営計画経営方針と決算資料を参考にしてATY-Japanで作成
調整後営業損益 = IFRS営業損益 - 調整項目
EBITDA = 売上総利益 - 販売管理費 + 減価償却費/償却費
ROIC = (調整前営業利益 - みなし法人税<30.5%>) ÷ (期末有利子負債 + 期末純資産<非支配株主持分含む>)
成長事業
日本を含むグローバルでフォーカスする事業領域は、デジタルガバメント(DG)/デジタルファイナンス(DF)、グローバル5Gである。
国内IT事業のトランスフォーメーションでは、コンサルティング領域から実装力までを一体化した強みや、優位性がある共通技術と共通基盤などをコアDXと位置づけ、これを、成長を実現するためのキードライバーとする。
社会変化や企業変革のDXを支援するとともに、国内の既存IT事業においても競合を上回る高い収益性を実現したい
成長事業には、「DG/DF」「グローバル5G」「コアDX」「次の柱となる成長事業」の4点をあげ、「成長事業は、競争優位獲得強化のために優先的に資源配分を進め、増収増益をけん引。成長事業以外で構成するベース事業では、慎重な事業環境を前提にした上で収益性の改善に軸足を置く」としています。
そして、成長事業の売上収益に対する構成比と調整後営業利益率について、以下を計画しています。
- ・売上収益に対する構成比:2025年度 32.9%(2020年度:12.7%)
- ・調整後営業利益率:2025年度 成長事業 12.9%、ベース事業 10.0%
(全体:2025年度 8.6%、2020年度 5.1%)
1.デジタルガバメント(DG)/デジタルファイナンス(DF)事業
- ・グローバルトップクラスのバーチカルSaaSベンダーを目指すとして、買収した欧州3社(Northgate Public Services、KMD、Avaloq)のアセットと、NECが持つ生体認証技術やAI技術、エンジニアリング力を組み合わせて、事業基盤の再構築による融合と安定化を実現し、事業シナジーの本格追求と新たな成長領域の創出によって、事業拡大を目指す。
- ・売上収益
2025年度目標 3,000億円(2020年度実績 1,931億円)、CAGR 4%
内、欧州3社 2,100億円(同 1,251億円)
- ・調整後営業利益率
2025年度目標 12%(2020年度実績 4%)
EBITDAマージン 20%(同 17%)
2.グローバル5G事業
- ・国内での基地局ハードウェア供給業者からソフトウェア領域への事業拡大を含め、2030年にOpen-RAN市場でグローバルシェア20%を獲得しトップポジションを目指す。
- ・2022年度までの取り組みをフェーズ1として、NTTや楽天との協業による世界初の商用実績をベースに圧倒的なTCO性能と差別化技術で、グローバルでのOpen-RANのリーディングベンダーのポジションを獲得する。
- ・2025年度までをフェーズ2として、アプリケーション領域を含むエンド・トゥ・エンドのケイパビリティをさらに強化することで、軸足をソフトウェア、サービス事業にシフトし、事業の拡大とももに、高収益事業に育てる。
- ・売上収益
2025年度目標 1,900億円(2020年度実績 417億円)、CAGR 35%
- ・調整後営業利益率
2025年度目標 10%(2020年度実績 -31%)
3.コアDX事業(4つの取り組みを推進)
- ・国内IT事業のトランスフォーメーション(DX)においては、個別最適から全体最適へコアDX事業を梃にベース事業を変革し、国内IT事業営業利益率を2020年度 8%から2025年度 13%に改善する。
・これまでの個別最適から、DXによる全体最適へと転換することで営業利益率を高め、そのためにNECの強みである技術力を踏まえて共通基盤化を実施するとともに、外部活用を含めて顧客にとって価値が見える化できる仕組みを提供する。
・コンサルティングからデリバリーまでの一貫した形により、顧客視点での価値提案型アプローチを強化し、NECの差別化技術を含むICT共通基盤とオファリングの標準化によって、リピータブルな活用を実践することでコスト競争力を向上させる。
- ・取り組み1.コンサルからデリバリーまで一貫したアプローチで提供価値拡大
ABeamの国内5,000人のコンサルティング力とNECのデリバリー力をつなげてコンサル人材とDX人材を強化し、お客様のCxOやエンドユーザー部門へのアプローチを推進し、社会や企業のDXを支援する。
- ・取り組み2.ICT共通基盤技術とオファリングによる売上総利益改善と価格戦略
企業のDXに有効なNECの技術をプラットフォーム(ICT共通基盤)化し、リピータブルに活用することで原価低減を実現するとともに、提供ソリューションの標準化により価値提供型のプライシングによる競争力向上を目指す。
- ・取り組み3.ハイブリッドIT(クラウド/DC/オンプレ)アライアンスや自社製最適化により競争力強化
AWSやAzureなどのハイパースケーラーとのグローバル協業と、セキュアなNECクラウドを組み合わせたマルチクラウドの提供力を強化するとともに、デジタルガバメント に向けて、DC/クラウドの自社保有による高セキュアなクラウド環境を提供する。
- ・取り組み4.新たな事業機会(社会/企業改革)、技術/政策連動/エンド・トゥ・エンド(E2E)の実装力を活かしDX領域拡大
デジタル庁創設で加速する国や自治体のDX化や、スーパーシティによる都市構築、インフラ協調型モビリティなど、社会変革を後押しするフラッグシッププロジェクトに、NECが政策連動しながらリードしていく。
- ・売上収益
2025年度目標 5,700億円(2020年度実績 1,410億円)、CAGR 32%
- ・調整後営業利益率
2025年度目標 13%(2020年度実績 -3%)
- ・ベース事業の収益性改善については、高・中収益事業は競合を上回る利益率獲得を維持し、低収益事業はモニタリング体制を整備し収益性を改善する。
個別にターンアラウンド計画を策定し、これを担当する役員をアサインして進捗モニタリングを行い、重点領域へのリソースアロケーションを進め、計画未達の場合にはエグジット戦略も検討する。
4.次の柱となる成長事業の創造
- ・2025中期経営計画の期間中を超える形で、次の成長の柱となる事業を創造する。
- ・量子暗号やレーザー通信などの防衛技術、個人情報保護型データ分析技術など、現在の主流技術を破壊することになるディスラプティブ技術のほか、海外を含む先端顧客や研究機関との協業、dotDataやAI創薬などで培ってきた新事業開発のノウハウを活用し、事業化を進める。
- ・ヘルスケア・ライフサイエンス事業では、AIを活用した個別化治療、統合的病院サービス、ライフサポートを実現するもので、AI創薬や内視鏡画像解析、健康状態の可視化などにより、2025年度の事業価値で5,000億円を目指す。。
- ・カーボンニュートラル関連事業では、脱酸素社会に向けて、エネルギーマネジメントの効率化、最適化を目指すリソースアグリゲーション事業に取り組んでおり、脱炭素経営ソリューションやサーキュラーエコノミーの事業化探索、CO2削減に向けた貢献を行っていくとして、リソースアグリケーション事業では2025年度に120億円の売上規模を目指す。
戦略的費用の積極投入による収益構造の変革
2025年度の大きな飛躍のため、成長戦略/経営基盤変革への戦略的費用を積極投入し、費用対効果を測定しマネジメントする。
2021年度、前年比で320億円の戦略投資を増加
- ・成長事業:開発費用 95億円、グローバル体制増強 75億円
これにより、2025年度のNet調整後営業利益 1,200億円増
- ・ベース事業 50億円(既存顧客の更新需要獲得)
- ・ビジネスインフラ基盤 80億円(業務プロセス/IT整備、DX人材強化/次世代リーダー育成)
これにより、2025年度のNet調整後営業利益 200億円増
- ・構造改革 20億円(海外拠点機能の選択と集中)
これにより、SGA削減 15億円/年
2021年度の他投資では、設備投資で125億円、研究開発費で1,300億円に増加させる。
文化と経営基盤の改革
エンゲージメントスコア50%を2025年度目標(2020年度 25%)として、「人・カルチャーの変革」「ビジネスインフラの整備」「顧客との未来の共感創り」の3点に取り組むとしています。
- ・NEC Wayのもとに多様な人材が集い、イノベーションを追求する会社を実現し、選ばれる会社(Employer of Choice)を目指す。
- ・人・カルチャーの変革、ビジネスインフラの整備、顧客との未来の共感創りに取り組む。
さらに今回、「NEC 2030 VISION」を策定し、「環境」「社会」「暮らし」の3点から取り組むことを発表しています。
「NEC 2030 VISION」は、各部門の代表者や役員が策定に参画し、未来の生活者を思い、ありたい姿を具体化し、社会実装に向けた活動を開始することになるとしています。
1.人・カルチャーの変革
- ・イノベーションの源泉であるダイバーシティの加速、多様なタレントのワークスタイルを支える働き方改革を推進する。
- ・2025年度目標:女性および外国人役員 20%、女性管理職 20%
- ・働き方マインドセット改革を推進し、オフィスを作業空間からコミュニケーションハブやハイブリッド型の共創空間へと転換するとともに、ジョブ型マネジメントの採用による適時適所適材の実現、リーダー育成やDX人材育成によるタレントマネジメントを強化する。
2.ビジネスインフラの整備
- ・コーポレートトランスフォーメーションという視点で改革を推進するために、CEO直下に業務プロセス改革、財務制度改革、全社ITシステム改革に責任を持つTransformation Officeを新設し、三位一体の改革を実行する。
- ・人事、調達などの全社基幹システムのクラウドシフト、ITと一体化したプロセスや制度の再設計、データドリブン経営への移行を進める。
3.顧客との未来の共感創り
- ・発信の中核となる総研機能の強化と、外部知見を集めたアドバイザリーボードを新設し、変革を推進する。
- ・Thought Leadership活動を本格的に開始し、社会/市場の洞察に基づく未来像の探索、社会システム変革への発信活動、総研機能の強化と外部知見との融合を推進する。
参考
「2025中期経営計画(PDF)」日本電気 株式会社(2021年5月12日発表)
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