NECの2020年度通期決算は減収増益、コロナ影響で減収も営業利益・率ともに中計目標を達成

NECの2020年度通期決算は減収増益、コロナ影響で減収も営業利益・率ともに中計目標を達成

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NECの2020年度(2021年3月期)通期決算

NECから2020年度(2021年3月期)通期決算(2020年4月1日~2021年3月31日)と2021年度(2022年3月期)通期業績予想が発表されましたので、概況を整理します。

NECは、前年同期に対して、売上収益は減収したものの、営業利益及び当期利益は増益となりました。

特に、調整後当期利益は、2期連続で過去最高益を更新しています。

また、当該年度は中期経営計画の最終年度でしたが、営業利益(計画値1,500億円)、利益率(同5.0%)、フリー・キャッシュ・フロー(同1,000億円)ともに、計画値を達成しています。

売上収益は、前年同期に対して1,012億円(3.3%)減の2兆9,940億円

営業利益は、前年同期に対して262億円増の1,538億円(利益率:5.1%)

調整後営業利益は、前年同期に対して324億円増の1,782億円(利益率:5.9%)

税引前利益は、前年同期に対して338億円増の1,578億円

親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年同期に対して496億円増の1,496億円

親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、前年同期に対して542億円増の1,654億円

なお、新型コロナウイルス感染症拡大を起因とする年間営業利益への影響は、5月期初めは約△500億円、10月時点では約△650億円のマイナス影響とし、前回1月は△500億円のマイナス影響としていましたが、最終的には△420億円のマイナス影響となったとしています。

△420億円のマイナス影響への対応としては、費用節減で170億円、New Normal需要の獲得で120億円、資産売却で330億円を実行した結果、200億円のプラスにカバーしています。

2021年度(2022年3月期)の通期決算予想は、2020年度(2021年3月期)に対して増収減益を見込んでいます。

  • ・売上収益は、前年比0.2%増の3兆円
  • ・営業利益は、同338億円減の1,200億円
    調整後営業利益は、同232億円減の1,550億円
  • ・当期利益は、同862億円減の670億円
    調整後当期利益は、同754億円減の900億円

NECの2020年度通期(2020年4月~2021年3月)連結業績

NECの2020年度(2021年3月期)通期決算

売上収益は前年同期比1,012億円(3.3%)減の2兆9,940億円、営業利益は同262億円増の1,538億円、当期利益は同496億円増の1,496億円

売上収益は、

  • ・新型コロナウィルス感染症の拡大による影響があったものの、5G 基地局の出荷本格化、リモートワーク商材やGIGAスクール特需の拡大などのNew Normal需要を獲得することにより抑制したとしています。
  • ・ネットワークサービス事業および社会基盤事業が増収したものの、社会公共事業や、エンタープライズ事業、グローバル事業などが減収となったことによります。

営業利益は、前年同期比262億円増の1,538億円

  • ・売上収益が減少したものの、不採算プロジェクトの抑制による収益性の改善や、費用の効率化による販売費及び一般管理費の改善に加え、土地売却益および子会社株式売却益の計上によるその他の損益の改善があったことなどによります。

調整後営業利益は、前年同期比324億円増の1,782億円

  • ・主としてネットワークサービスとグローバルが改善し、不採算案件の抑制などの収益性改善、急激な環境変化に対して費用節減や特別対策を実行したことによります。
  • ・2020中期経営計画を過達しています。

親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年同期に対して496億円増の1,496億円

  • ・調整後当期利益は、前年同期に対して542億円増の1,654億円
  • ・調整後当期利益は、2期連続で過去最高益を更新しています。

なお、ハードウェアを含む国内受注の動向は以下の通りで、全体では前年同期比2%増としています。

  • ・社会公共事業が前年同期比88%
    4Qの大型案件により増加したものの、通期を通してビジネスPC需要が減少したことが影響(1Qの受注は前年同期比△31%と2Qで同△12%と減少し、3Qは自治体向け堅調で同△5%、4Qに同+16%に回復)
  • ・社会基盤事業が同110%
    通期を通してGIGAスクールが寄与(1Qの受注は前年同期比+9%から2Qで同+41%と大幅伸長に加え3Qは同+20%、4Qに同△12%に減少)
  • ・エンタープライズ事業は前年同期並み
    下期のIT投資が回復傾向に転じたことが貢献(1Qの受注は前年同期比△21%に対し2Qは同△3%に回復し、3Qは同+5%に転じて4Qで同22%に拡大)
  • ・ネットワークサービス事業が同113%
    下期に5G基地局出荷が本格化したことが貢献(1Qの受注は前年同期比+1%に対し2Qは同+26%に拡大し、3Qは同+48%と大幅増、4Qは同△6%)
  • ・グローバル事業が同107%
    下期にディスプレイ事業を非連結化したものの、通期を通して海洋事業の大型案件の受注が貢献(1Qの受注は前年同期比+75%に対し2Qは同+38%、3Qはディスプレイ事業の非連結化に伴い同△27%、4Qも同△32%)
セグメント別の業績

セグメント別の業績は以下の通りで、ネットワークサービス事業が前年同期に対して増収増益、社会公共・グローバル事業は減収増益、社会基盤が増収減益、エンタープライズ事業は減収増益となっています。

社会公共は減収増益

  • ・売上収益は前年同期比533億円(11.1%)減の4,251億円、調整後営業利益は前年同期から51億円増の394億円
  • ・売上収益は、消防・防災は堅調に推移したものの、医療向けや地域産業向けの減少に加え、ビジネスPCの更新需要の一巡により減収
  • ・調整後営業利益は、費用節減や不採算案件の減少などによる収益性の改善、前期に計上した一過性費用の減少により増益

社会基盤は増収減益

  • ・売上収益は前年同期比141億円(2.1%)増の6,929億円、調整後営業利益は前年同期から48億円減の594億円
  • ・売上収益は、本体は、中央省庁向けITサービスやGIGAスクール構想を背景とした教育機関向けパソコンが寄与し増収したものの、連結子会社(日本航空電子工業)は前年並み
  • ・調整後営業利益は、本体は売上の増加および前期に計上した一過性の減により増益、連結子会社(日本航空電子工業)は減益

エンタープライズは減収減益

  • ・売上収益は前年同期比467億円(8.5%)減の5,031億円、調整後営業利益は前年同期から39億円減の482億円
  • ・売上収益は、前年大型案件の減少やビジネスPCの更新需要の一巡に加え、製造業や流通・サービス業におけるIT投資抑制により減収
  • ・調整後営業利益は、不採算プロジェクトを抑制したものの、売上減による減益

ネットワークサービスは増収増益

  • ・売上収益は前年同期比561億円(11.6%)増の5,388億円、調整後営業利益は前年同期から106億円増の412億円
  • ・売上収益は、5G導入に伴う移動ネットワーク領域および固定ネットワーク領域の増加に加え、連結子会社増加より増収
  • ・調整後営業利益は、売上増により増益

グローバルは減収増益

  • ・売上収益は前年同期比431億円(8.7%)減の4,500億円、調整後営業損益は前年同期から107億円増の75億円(黒字化)
  • ・売上収益は、海洋システムの増加に加え、Avaloq社の新規連結によりセーファーシティが増加したものの、ディスプレイ事業の減少および非連結化により減収
  • ・調整後営業損益は、サービスプロバイダソリューションやセーファーシティの収益性改善に加え、前年度の一過性費用の減により増益
その他

海外売上比率:23.5%の7,032億円(前年同期:24.3%の7,520億円)

キャッシュフローの状況

  • ・フリー・キャッシュフロー:前年同期比254億円悪化の1,524億円(特殊事項を除くと、同266億円増の2,044億円)
    営業活動によるキャッシュ・フロー:同130億円改善の2,749億円(運転資金および税引前利益が改善)
    投資活動によるキャッシュ・フロー:同385億円支出増の1,225億円の支出(有価証券および有形固定資産の売却による収入が増加したものの、アバロク・グループ社の買収に伴う子会社の取得による支出を計上)
  • ・財務活動によるキャッシュ・フロー:14億円の収入(リース負債の返済、社債の償還および長期借入金の返済による支出があったものの、長期借入れ、株式の発行、非支配持分への子会社持分売却および社債の発行による収入など)
  • ・現金及び現金同等物:同1,641億円増の5,233億円

資産、負債、資本の状況

  • ・資産:2020年3月末に対して5,453億円増の3兆6,686億円
  • ・負債:同980億円増の2兆1,067億円
  • ・資本:同4,473億円増の1兆5,618億円
    親会社所有者帰属持分:1兆3,082億円(持分比率:同6.5ポイント改善の35.7%)

2021年度(2022年3月期)の通期決算予想

NECの2021年度(2022年3月期)通期決算予想

2021年度(2022年3月期)の通期決算予想は、2020年度(2021年3月期)に対して増収減益を見込んでいます。

  • ・売上収益は、前年比0.2%増の3兆円
    ディスプレイ事業を展開する子会社の非連結化に伴う減収があるものの、アバロク・グループ社の連結化による増収などによる。
  • ・営業利益は、同338億円減の1,200億円
    「2025中期経営計画」に基づいた収益構造を変革するための戦略的費用を積極投入することに加え、2020年度に計上した土地売却益および子会社株式売却益がなくなることなどによる。
  • ・調整後営業利益は、同232億円減の1,550億円
    長期利益の最大化に向けた戦略的費用の投入のため減益を見込む。
  • ・当期利益は、同862億円減の670億円
  • ・調整後当期利益は、同754億円減の900億円
セグメント別の業績予想

社会公共は減収減益

  • ・売上収益は、前年同期比2.4%減の4,150億円
  • ・調整後営業利益は、同84億円減の310億円

社会基盤は減収増益

  • ・売上収益は、前年同期比4.7%減の6,600億円
  • ・調整後営業利益は、同26億円増の620億円

エンタープライズは増収増益

  • ・売上収益は、前年同期比9.3%増の5,500億円
  • ・調整後営業利益は、同48億円増の530億円

ネットワークサービスは増収減益

  • ・売上収益は、前年同期比3.0%増の5,550億円
  • ・調整後営業利益は、同62億円減の350億円

グローバルは増収増益

  • ・売上収益は、前年同期比2.2%増の4,600億円
  • ・調整後営業損益は、同145億円増の220億円

参考:電機各社の決算発表

富士通 株式会社(2021年4月28日発表)

日本電気 株式会社(2021年5月12日発表)

株式会社 日立製作所(2021年4月28日発表)

株式会社 東芝(2021年5月14日発表)

ソニー 株式会社(2021年4月28日)

パナソニック 株式会社(2021年5月10日発表)

三菱電機 株式会社(2021年4月28日発表)

シャープ 株式会社(2021年5月11日発表)

電機とITの決算

2021.05.26 2020年度通期決算と2021年度通期予想:日立製作所、東芝、三菱電機

2021.05.22 2020年度通期決算と2021年度通期予想:ソニー、パナソニック、シャープ

2021.05.15 NECが「2025中期経営計画」を発表:戦略と文化を結びつけて目標達成

2021.05.14 2020年度通期決算と2021年度通期予想:NEC

2021.04.30 富士通の2020年度経営方針進捗:売上・収益拡大と採算性改善の活動を強化

2021.04.29 2020年度通期決算と2021年度通期予想:富士通

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