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NECが、2021年度(2022年3月期)第3四半期決算(2021年4月1日~12月31日)と通期業績予想を発表しましたので、概況を整理します。
NECは、前年同期に対して増収減益となりました。
売上収益は、国内ITおよび5G事業の好調に加え、グローバルはAvaloqの連結とデジタル・ガバメントやデジタル・ファイナンスを中心に拡大しました。
調整後営業利益はオペレーション改善をしたものの、戦略的費用と一過性の損失が影響して、減益しました。
第3四半期累計(9ヶ月)は、以下の通りです。
売上収益は、前年同期に対して520億円(2.5%)増の2兆964億円
営業利益は、同351億円減の473億円(対売上収益比率2.3%)
調整後営業利益は、同211億円減の760億円(対売上収益比率3.6%)
税引前利益は、同367億円減の491億円
親会社の所有者に帰属する当期利益は、同296億円減の249億円
親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、同194億円減の443億円
なお、2021年度(2022年3月期)の通期決算予想は、前回予想に対して調整後営業利益で50億円上方修正して1,600億円、調整後当期利益を30憶円上方修正して930億円としています。
そして、2025中期計画の実現に向けた組織改革として、目指すべき組織の姿と2022年4月の改革内容を発表しています。
NECの2021年度第3四半期(2021年4~12月)連結業績
売上収益(累計)は前年同期比520億円(2.5%)増の2兆964億円、営業利益は同351億円減の473億円、当期利益は同296億円減の249億円
売上収益は、
- ・社会公共、社会基盤、ネットワークサービスの3セグメントが減収となったものの、エンタープライズ、グローバル、その他で増収となりました。
- ・国内市場はIT事業および5G事業が好調、またグローバル市場ではデジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンスを中心に拡大した結果、国内海外ともに増収しました。
調整後営業利益は、
- ・市況の回復を着実に取り込んで改善し、売上増に伴う改善に加えグローバルのポートフォリオ改革も寄与しました。
- ・前年比211億円減益の内訳は、株式や不動産売却による2020年度一過性損益△330億円や不採算案件(△60億円)などによる△75億円、部損不足による△70億円、戦略性費用△200億円に対し、不動産売却などの2021年度一過性損益80億円、市場回復と実業改善を合わせたオペレーション改善385億円となっています。
- ・戦略性費用200億円の内訳は、グローバル5Gで110億円、コアDXが25億円、社内DXが35億円、人材が30億円です。なお、第4四半期までに計画していた320億円は使い切る予定としています。
税引前利益は前年同期比367億円減の491億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同296億円減の249億円、親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は同194億円減の443億円
なお、ハードウェアを含む国内受注の動向は以下の通りで、大型案件による四半期変化が大きい海洋システムと非連結事業となったディスプレイ事業を除く全体では104%としています。
- ・社会公共事業が前年同期比97%
公共・医療向けは好調も、消防・防災向けが減少
- ・社会基盤事業が同101%(GIGAスクールを除く)
防衛向けは堅調に推移
- ・エンタープライズ事業が同107%
金融、製造業、流通・サービス業向け全てが堅調に推移
- ・ネットワークサービス事業が同99%
5G基地局は拡大したものの、固定系大型案件の反動減
- ・グローバル事業が同132%(海洋システムとディスプレイを除く)
Avaloq連結寄与/受注好調、Netcracker需要拡大
- ・ハードウェアの受注に関しては同94%
ITサービスは企業向けの堅調な需要で +2%増、5Gも基地局の拡大で高水準で推移しているとしています。
セグメント別の業績
セグメント別の業績は以下の通りで、前年同期に対して、社会公共、社会基盤、ネットワークサービスの3セグメントが減収減益、エンタープライズとグローバルが増収増益となりました。
社会公共は減収減益
- ・売上収益は前年同期に対して147億円(5.3%)減の2,595億円、調整後営業利益は前年同期から38億円減の76億円
- ・売上収益は、消防・防災向けや地域産業向けの減少が影響して減収
- ・調整後営業利益は、主に売上減に伴い減益
社会基盤は減収減益
- ・売上収益は前年同期に対して153億円(3.3%)減の4,452億円、調整後営業利益は前年同期から4億円減の349億円
- ・売上収益は、日本航空電子工業㈱の増加により増収したものの、前年度にGIGAスクール構想によるPC特需があり減収
- ・調整後営業利益は、売上増に伴い増益したものの、不採算案件が増加した影響で減益
エンタープライズは増収増益
- ・売上収益は前年同期に対して594億円(16.7%)増の4,138億円、調整後営業利益は前年同期から82億円増の344億円
- ・売上収益は、製造業、流通・サービス業、金融業向けの全領域で増加したのが貢献して増収
- ・調整後営業利益は、売上増に伴い増益
ネットワークサービスは減収減益
- ・売上収益は前年同期に対して157億円(4.3%)減の3,501億円、調整後営業利益は前年同期から41億円減の158億円
- ・売上収益は、前年のGIGAスクール案件の反動を受けたNECネッツエスアイは減少したものの、部材不足の影響はあるも国内5G事業の大幅拡大が貢献して増収
- ・調整後営業利益は、グローバル5G展開に向けた戦略費用増(110億円増)により減益
グローバルは増収増益
- ・売上収益は前年同期に対して293億円(9.0%)増の3,545億円、調整後営業利益は前年同期から100億円増の181億円
- ・売上収益は、デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンスを中心に増収。サービスプロバイダーソリューションも増加
- ・調整後営業利益は、売上増とポートフォリオ改革により増益
2025中期経営計画の進捗(トピックス)
グローバル5G
- ・国内は、2021年度は部材不足の影響もあり売上遅延が発生するも、中長期の見通しへの影響なし
- ・海外は、海外顧客からの需要は旺盛で、2022年度より出荷を開始し、売上見合いの限界利益が増益に寄与
- ・売上の拡大に伴って限界利益が増益に寄与することになり、商用受注案件が5件、トライアル実施は22件、プロスペクトは30件以上あるとしています。
- ・1月28日、基地局の無線機および制御ソフトウェアを手掛けるスタートアップ企業の米Blue Danube Systemsの買収に合意したことを発表(製品ラインアップの拡充と北米における顧客サポート強化)
デジタル・ガバメント(DG)/デジタル・ファイナンス(DF)
- ・年間目標に対し計画通りに進捗
- ・シナジー強化やオフショア集約などの収益性改善を推進
- ・Avaloqの受注好調(欧州、アジア)
- ・2021年度の通期計画に対しては80%の進捗率で上振れしており、通期計画に対しては10%上回ることになると見込んでいます。
コアDX
- ・コンサルおよび共通プラットフォームが順調に拡大し、年間目標に対し計画通りに進捗
- ・2022年4月にデジタルビジネスプラットフォームユニットへリソースを集約し、DXオファリングの訴求力強化・提供拡大
今回、2025中期計画の実現に向けた組織改革を発表しています。
約150の事業部レベルの組織数を3分の1の約50に再編するほか、CEOから担当者までに8階層あったレイヤーを6階層にしてフラット化を実現することにより、組織デザインの柔軟性、権限委譲と責任の明確化および強化を図るとしています。
目指すべき組織の姿は以下の通りとして、2022年4月の改革内容を明らかにしています。
目指すべき組織の姿
- ・意思決定をよりマーケットに近い立場で行い、アジャイル、スピーディに事業運営
- ・ダイナミックで柔軟なリソースアロケーションで事業成長を加速
- ・多様な人材の活躍と成長を促進
- ・プロフェッショナル人材がリスペクトされ、活躍する仕組みで価値創出を加速
2022年4月の改革内容
- ・組織の大括り化:事業部レベルの組織数を1/3に再編
- ・レイヤーのフラット化:現在の8階層を6階層に再編
- ・組織デザインの柔軟性
- ・権限委譲と責任の明確化・強化
その他
海外売上比率:26.2%の5,491億円(前年同期:25.0%の5,103億円)
キャッシュフローの状況
- ・フリー・キャッシュフロー:前年同期比808億円増の△274億円
営業活動によるキャッシュ・フロー:同813億円減の53億円
投資活動によるキャッシュ・フロー:同1,621億円増の△327億円
- ・財務活動によるキャッシュ・フロー:同1,993億円減の△866億円
- ・現金及び現金同等物の期末残高:同461億円増の4,138億円
資産、負債、資本の状況(2021年12月末)
- ・資産:2020年3月末に対して1,398億円減の3兆5,287億円(流動資産は同1,252億円減の1兆7,356億円、非流動資産は同146億円減の1兆7,931億円)
- ・負債:同1,690億円減の1兆9,378億円
- ・資本:同291億円増の1兆5,909億円
親会社所有者帰属持分:同231億円増の1兆3,312億円
親会社所有者帰属持分比率:同2.1ポイント増の37.7%
2021年度(2022年3月期)の通期決算予想
2021年度(2022年3月期)の通期決算予想は、前回予想に対して営業利益と当期利益を上方修正しています。
第3四半期までの部材不足と年度末までの影響、改善施策とその効果を検証するとともに、第3四半期までの業績の進捗、今後の見通しを精査した結果としています。
また、新型コロナウイルスの影響については、オミクロン株の感染が増加しているものの、ビジネス環境はノーマルに戻りつつあるとして、業績の上方修正につながっているようです。
- ・売上収益は、前年比60億円(0.2%)増の3兆円
- ・営業利益は同288億円減の1,250億円(前回予想から50億円上方修正)、調整後営業利益は同182億円減の1,600億円(前回予想から50億円上方修正)
- ・当期利益は同796億円減の700億円(前回予想から30億円上方修正)、調整後当期利益は同724億円減の930億円(前回予想から30億円上方修正)
半導体を中心とした部材不足による影響の年間営業損益△80億円は、年間予想 調整後営業損益1,600億円に織り込んでいます。
- ・年間での部材不足影響(営業損益△270億円)
- ・代替品への切り替え/代替部材への設計変更/販売価格の適正化に加え、不要不急な費用の抑制/効率化を実施(営業損益:+190億円)して業績への影響を最小化
80億円のマイナス影響のうち、50億円はネットワーク領域での出荷延伸によるもので、2022年度には解消できると考えており、当初足りなかった先端部品に関しては方向が見えてきたとしています。
また、足元で足りないアナログICなどの汎用部品は、部材の流通が正常化するのは2022年中まではかかると見ています。
設備投資・減価償却・研究開発費(前回予想を維持)
- ・設備投資
2019年度 674億円、2020年度 576億円、2021年度 700円
- ・減価償却
2019年度 1,234億円、2020年度 1,228億円、2021年度 1,250億円
- ・研究開発費
2019年度 1,098億円(売上収益比 3.5%)、2020年度 1,146億円(売上収益比 3.5%)、2021年度 1,350億円(売上収益比 4.5%)
セグメント別の業績予想
社会公共は減収減益
- ・売上収益は、前年同期比101億円(2.4%)減の4,150億円
- ・調整後営業利益は、同84億円減の310億円
社会基盤は減収増益
- ・売上収益は、前年同期比329億円(4.7%)減の6,600億円
- ・調整後営業利益は、同26億円増の620億円
エンタープライズは増収増益
- ・売上収益は、前年同期比469億円(9.3%)増の5,500億円
- ・調整後営業利益は、同48億円増の530億円
ネットワークサービスは増収減益
- ・売上収益は、前年同期比162億円(3.0%)増の5,550億円
- ・調整後営業利益は、同62億円減の350億円
グローバルは増収増益
- ・売上収益は、前年同期比100億円(2.2%)増の4,600億円
- ・調整後営業利益は、同145億円増の220億円
成長事業における2021年度の施策
デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンス
- ・売上収益
2020年度 1,931億円、2021年度 2,300億円、2025年度 3,000億円
- ・APACを含めた販売シナジーの創出
- ・オフシェア活用によるコストシナジーの創出
- ・小規模ボルトオン買収の継続
グローバル5G
- ・売上収益
2020年度 417億円、2021年度 800億円、2025年度 1,900億円
- ・国内市場でのシェア拡大
- ・海外での複数商用案件の獲得に加え、生産・販売体制の増強
- ・基地局、コア、運用管理ソフトの開発増強
コアDX
- ・売上収益
2020年度 1,410億円、2021年度 1,800億円、2025年度 5,700億円
- ・アビーム連携によるリソース活用強化と案件の獲得増
- ・行政DXの戦略提言・推進を加速
- ・ハイパースケーラーとの連携強化
参考:電機各社の決算発表
2022.01.31 2021年度第3四半期決算と通期予想:NEC
2022.01.28 2021年度第3四半期決算と通期予想:富士通
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