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LIFE SHIFT2: 100年時代の行動戦略
アンドリュー・スコット (著)、リンダ・グラットン (著)、池村 千秋 (翻訳)
出版社:東洋経済新報社 (2021/10/29)
Amazon.co.jp:LIFE SHIFT2: 100年時代の行動戦略
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この変わり続ける世界で、どう生きるか?
日本人の不安に応える『ライフ・シフト』最新版
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本書は、ロンドン・ビジネス・スクールの経済学と心理学の教授二人が、未来について考えるのを助け、新しい社会のあり方に興味をいだくよう促し、訪れる変化と波乱を主体的に乗り切る手立てをまとめた一冊です。
前著『ライフ・シフト――100年時代の人生戦略』(2016年、東洋経済新報社)では、長寿化に加え、テクノロジーの進化との組み合わせによる変化が、人びとのキャリアと人生のそれぞれのステージにどのような影響を及ぼすのか、前向きなメッセージを発信しました。
そして本書は、経済学と心理学の二つの視点を組み合わせ、テクノロジーの進化と長寿化の進展の相互作用を深く理解し、人類が繁栄するためにどのような社会的発明が必要か、幅広い見識を提供しています。
テクノロジーの進化と長寿化の進展がもたらす試練に対処する方法を具体的に示していますので、すべての方々が柔軟な働き方とキャリアの道筋や「ありうる自己像」を考えるうえで大変参考になります。
本書は3部8章で構成しており、世の中の動向を俯瞰したうえで、象徴的な7人の架空キャラクターがどのような道を選びうるかを描きながら、人生100年時代の「生き方」「働き方」「学び方」を示しています。
第1部では、目覚ましい進歩を遂げている人工知能(AI)とロボット工学について論じ、平均寿命と健康に関するトレンド、社会の高齢化の流れを見ていきながら、テクノロジーの進化と長寿化の進展の相互作用について理解を深めています。
- ・第1章では、テクノロジーが驚異的に進化していく中での人間の役割、雇用や働き方への変化について論じ、長寿化の到来による健康、家族や地域社会に及ぶ影響、医療機関や世代間関係のあり方を示しています。
- ・第2章では、テクノロジーの進化と長寿化の進展の時代には、人間特有のスキルを活かし、人間の潜在能力を開花させることが重要として、人生のあり方を設計し直すための、人間の本質に根差した3つの要素を示し、問題への対処法を導き出しています。
第2部では、「物語」「探索」「関係」を軸に、長寿の時代に適応するために一人ひとりが取るべき行動を論じながら、社会開拓者として、みずからが成し遂げられることはたくさんあることを示しています
- ・第3章は「物語」で、一貫性があって前向きな人生の物語を紡ぎ出すこととして、年齢・時間・仕事に対する考え方を変え、流動性の高いキャリアを歩み、「自分の人生ストーリー」を描くための問いを投げかけています。
- ・第4章は「探索」で、探索と実験と学習を行うこととして、長い職業人生を送るためには学び続ける必要があり、マルチステージの移行を成功させる方法を示しています。
- ・第5章は「関係」で、他の人たちとの関係を構築・維持することとして、家族、カップルの支え合いの関係、世代、コミュニティのそれぞれについて、具体的な関係構築の方向性を示しています。
第3部では、人びとの選択と決断は他者と無縁ではなく、教育機関、企業、政府との関係ではとりわけ顕著であるとして、これらの組織や制度も変わらなくてはならないことを示しています。
- ・第6章は「企業の課題」で、60年の職業人生の間に社員が経験する人生の変化を受け入れ、新しいテクノロジーが求める柔軟性を備えた慣行を両立し、「働く」という概念の変化に適応するための方策を示しています。
- ・第7章は「教育機関の課題」で、これまでの人生の序盤にすべての教育を澄ませるのではなく、人生のさまざまな段階で学ぶことができるよう、生涯学習のプロセスを確立し、幅広いコースを用意し、誰もが学習に取り組める社会のあり方を示しています。
- ・第8章は「政府の課題」で、誰もが社会的開拓者になれる環境をつくり、人生での移行により苦境に立たされている人たちの保護・支援体制を整える仕組みを示しています。
いま膨大な数の人たちが同じジレンマに直面し、同じ問いを発しているなかで、社会的発明の肥沃な土壌が生まれつつある。
はっきりしているのは、過去が未来への有効な道標にならないということだ。
過去の世代が選んでいた古い選択肢は、おそらくもう有効ではない。
これまで人生の枠組みとして有効だった社会の仕組みも、役に立たなくなっているのかもしれない。
あなたは、変化の潮流を知り、その知識に基づいて行動する勇気と意欲をもつ必要がある。
あなたがいま何歳だとしても、テクノロジーの進化と長寿化の進展の影響により、未知の環境に身を置くことになる。
そこで、ひとりひとりの個人が、家族が、そして企業や教育機関や政府が実験に取り組む意思をもたなくてはならない。
要するに、誰もが社会的開拓者として、新しい社会のあり方を切り開く覚悟をもつ必要がある。
これが本書の核を成すメッセージである。
長寿時代に適応するための行動(3要素)
『LIFE SHIFT2: 100年時代の行動戦略』を参考にしてATY-Japanで作成
人間の本質がどのような形で表面にあらわれるかは、自分たちが変化に対応して新しい人生の物語を生み出し、新しい世界を探索し、人間関係を深めて強固なものにできるかどうかに大きく左右される。
物語:自分の人生のストーリーを紡ぐ
自分の人生のストーリーを紡ぎ、そのストーリーの道筋を歩む。
未来に目を向ければ、「ありうる自己像」がいくつも見えてくるが、人生のストーリーを歩むうえでは「ありうる自己像」を掘り下げることが重要となる。
テクノロジーの進化と長寿化の進展により、人が生涯の間に経験する移行の回数も増え、移行と移行の間隔が短くなれば新しい人生のストーリーが必要となる。
自分が今後どのような道を歩むかによって、未来の足場が形づくられ、、どのような足場の上に立つかによって、将来どのような選択肢をもてるかが決まる。
長寿化の恩恵を満喫したければ、年齢の可変性を前提に行動すべきで、自分が取る行動の影響はやがて自分に返ってくる。
健康寿命が長くなれば与えられた人生の時間も長くなるが、それを生かせるかどうかは、時間という概念をどのように考えるか、その考えをどのように変えていくかによって決まる。
仕事は良好な生活水準を確保するという、人生の基礎的なニーズを満たすうえで重要であるが、個人のアイデンティティを形づくり、日々の生活の文脈をつくり出すうえでも大きな役割を果たしている。
ストーリーの全体を貫くテーマや目的も必要であるが、自分が紡ぐ人生の物語の土台を成すのは、よい人生を生きたいという欲求である。
問い
- ・私は、どのような仕事に就くのか?
- ・そのために、どのようなスキルが必要になるのか?
- ・どのようなキャリアを築くのか?
- ・老いるとは、どのような経験なのか?
探索:学習と移行に取り組む
学習と変身を重ねることにより、人生で避けて通れない移行プロセスを成功させることができる。
人生で経験する移行の回数が増えるのに伴い、探索と学習をおこない、新しいスキルを学習することの重要性が高まる。
新しい行動を実験することへの抵抗感もなくす必要もある。
いくつもの移行を繰り返しながら長い職業人生を送るためには、学び続ける必要がある。
学習の対象に強い興味と情熱をいだく、やり甲斐をもつなど、内発的な動機を持つことにより、最も充実した学習が可能となる。
中年期の移行でみずからの生産性を維持するためには、年齢を重ねるにつれて強化されるタイプの知能(結晶性知能)を最大限活用することである。
探索と学習の面で、未来の「ありうる自己像」に関する自分の考えが妥当かを検討する際は、未来を予測しようとするより、みずからが目指す未来を構築して探索するうえでどのようなステップが必要かという理解を深めることを重んじるべきである。
問い
- ・長寿化によりキャリアの選択肢が広がるなか、どのように選択肢を検討するのか?
- ・そのために必要なスキルは、どのようにして身につけるのか?
- ・どのような変化を試みて、これまでより多くの移行を経験する人生をどうやって歩んでいくのか?
関係:深い結びつきをつくり出す
深い絆をはぐくみ、有意義な人間関係を構築して維持する。
人生の幸福感と満足感に大きな影響を及ぼすのが、深くて豊かで長時間にわたる友情である。
人は人との関係を通じて、帰属意識をいだき、自分が評価されているという感覚を味わえる。
人は、愛し、愛されるとき、自分が幸せで、大切にされていて、尊重され、理解されていると感じられる。
深い人間関係や広い人間関係は、長い時間をかけなければ築けない。
マルチステージの人生は、柔軟性が高く、成長と進化を遂げるチャンスも多いが、人間関係を深めるために投資しなければ、移行の回数が増える結果として人生が細切れになる危険がある。
家族に関する社会規範が変われば、家族のあり方が多様化して生き方の選択肢も変わるし、新しいパートナーシップの形態も生まれ、相互依存の選択肢も増える。
平均寿命が伸びると同時期いくつもの世代が生きている状況が生まれるが、理想は、人びとが世代を超えて資源を共有し、互いに助け合い、大切にし合うことである。
世代のレッテルは、世代間の共通項よりも相違点を強調し、世代間の対立を生みかねない。
多くの人にとって、最も緊密な人間関係は家族や友人、職場の同僚との関係であるが、日々の生活の環境をつくり出すのはコミュニティであり、社会的発明を通じて新しいコミュニケーション手段が豊かな人間関係を駆使せずに補完するようにしなくてはならない。
長寿化により人生が長くなれば、人生というゲームの途中で梯子を見つけて大きく前進できる機会が増える半面、蛇に出くわして大きく後退するリスクも高まる。
変化に対応するためには、みずからの能力だけではなく、家族やコミュニティによる支援と安全装置も欠かせない。
問い
- ・家庭のあり方が変わりつつある状況に、どのように対応するのか?
- ・子どもの数が減り、高齢者の数が多くなる世界は、どのようなものになるのか?
- ・世代間の調和を実現するために、私やほかの人たちには何ができるのか?
私たちの生き方と学び方が根本から変わるプロセスは、まだ始まったばかりだ。
個人のレベルでも社会全体のレベルでも、私たちの人生の組み立て方、そして人間として開花するための学び方のあり方は、これから大きく変わっていく。
私たちは今後、ますます多くの画期的な発明について耳にし、さらにはそれを直接目の当りにするだろう。
人間の発明の才は、人工知能(AI)とロボット工学の分野で驚異的な進歩を実現させ、私たちの老い方も改善されるに違いない。
また、社会の高齢化、そして家族とコミュニティのあり方の多様性がもらたす影響もいっそうはっきり見えてくると思われる。
まとめ(私見)
本書は、正解のない時代に、不安を乗り越え、自ら未来をつくるための指南書となる一冊です。
本書には、世代を象徴する7人の架空キャラクターが登場していますが、「どこにでもいる誰か」の目を通して、環境変化に対する自分の人生について考える手助けをしてくれます。
また、第3章「物語」、第4章「探索」、第5章「関係」のそれぞれの章末には、章で取り上げた内容に関する問いかけがありますので、自分事として考えていくうえで役立ちます。
自分の将来の選択肢と老い方は、今どう行動するかによって決まります。
学習・労働・引退という3ステージの人生設計に基づく伝統的な価値観を変えていかなければなりません。
「新しい長寿時代」の核を成すのは、マルチステージの人生と幅広い選択肢です。
ひとつのつながりの人生ではなく、人生における段階が途切れたり、大きな変化のあったりする人生、より流動的で段階の多い人生を描いていくことになります。
そうすれば、自分が何者かを探求し、自分の価値観に近い生き方に到着するチャンスを得ることができます。
そして、自分の存在と知識が、常に進化し続けることを知り、興味の移り変わりと市場の変化に自分のスキルを合わせればいいとわかります。
本書では、社会全体における新しい取り組みの重要性、未来に向けて個人が自分で準備することの必要性を強調していますが、企業や教育機関、そして政府における新しい取り組みも提言しています。
- ・人々が自分の人生のストーリーを紡ぐためには、職を辞めたり、職に就いたりしやすい環境が必要であり、企業には柔軟性を重んじる文化を育むことを求めています。
- ・変化が激しい時代に人びとが可能性を開花させるためには、生涯学習が避けて通れないため、教育機関には新しい学びの場を提供することを求めています。
- ・政府は、多くの権限を持ち、変革を力強く推進できる存在であるため、社会による創意工夫だけではなく、政府による創意工夫も求めています。
人生のストーリーは「再帰的」な性格を持っていることを忘れてはならない。
今、自分がどのような行動を取るかによって、自分が将来どのような足場の上に立ち、どのような選択肢を得られるかが決まる。
人生の進路は、ある足場から出発して、いくつかの「ありうる自己像」に向けて進み、人生のステージごとに進路の方向が変わる可能性がある。
寿命が長くなり、多くの人がそれにふさわしい新しい働き方を見出していかなければなりません。
そして、テクノロジーの進展により、人間がさまざまな仕事から解放されようとしています。
また、技術的発明が猛スピードで進む一方で、社会的発明が遅れをとっており、人びとが生きる環境を形づくる構造やシステムといった社会のあり方が追いついていないのも事実です。
しかし、変化が人びとに好ましい結果をもたらすためには、一人ひとりの創意工夫が不可欠であり、誰もが社会的開拓者として、新しい社会のあり方を切り開く覚悟を持つ必要があります。
本書は、テクノロジーが急速に変化するなかで長い人生を生きるために、健康、スキル、人生の目的、雇用、人間関係を維持することがいかに重要かを認識させられる一冊です。
目次
はじめに
第1部 人間の問題
第1章 私たちの進歩
第2章 私たちの開花
第2部 人間の発明
第3章 物語
第4章 探索
第5章 関係
第3部 人間の社会
第6章 企業の課題
第7章 教育機関の課題
第8章 政府の課題
おわりに ―― 未来に向けて前進する
参考
ライフシフト2 LIFE SHIFT2|100年時代の行動戦略
人生100年時代を見据えながらコロナ後の働き方を考える リンダ・グラットン ロンドン・ビジネススクール 教授 | DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー
Home - Expert on Longevity and Ageing Society - Andrew J Scott
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