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ワーク・シフト(WORK SHIFT)
孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025>
リンダ・グラットン(著)、池村 千秋(翻訳)
出版社:プレジデント社 (2012/7/31)
Amazon.co.jp:ワーク・シフト(WORK SHIFT)
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これからずっと「食えるだけの仕事」でいいですか?
働き方革命は、あなたから始まる。
「食えるだけの仕事」から「意味を感じる仕事」へ
「忙しいだけの仕事」から「価値ある経験としての仕事」へ
「勝つための仕事」から「ともに生きるための仕事」へ。
関連書籍
2022年02月09日 アンドリュー・スコット『LIFE SHIFT2』東洋経済新報社 (2021/10/29)
本書は、ロンドンビジネススクール教授であり、経営組織論の世界的権威で英タイムズ紙の選ぶ「世界のトップビジネス思想家15人」のひとりである著者が、2025年を想定した「働き方に大きく影響する『5つの要因(32の要素)』」に対し、「働き方を変える『3つのシフト』」を示した一冊です。
本書の構成は、以下の通りです。
- ・未来を形づくる「5つの要因(32の要素)」を詳細に解説しています。
- ・2025年、「5つの要因」がマイナスに作用した5人の架空の未来ストーリーの中から、未来イメージを生み出している要素を解説し、
- ・一方では、「主体的に築く」明るい未来ストーリーを組み立てた4人の、コ・クリエーション(協創)の未来、「ソーシャルな」参加の未来、ミニ起業家と創造的な生き方の未来を描きながら、働き方を「シフト」するための方向性を整理し、
- ・仕事の世界で必要となる資本を切り口に、「3つのシフト」について、詳細に解説しています。
- ・最後のエピローグでは、働き方の未来についてのメッセージとして、「子供たち」「企業経営者」「政治家」の3者それぞれに宛てた手紙が添えられています。
2025年といえば、あと13年後です。
- ・自分は、どこでどんな仕事して、どんな生活を送っているのでしょうか?
- ・自分たちの子供たちや孫たちは、どうでしょうか?
本書で示されている「5つの要因」は、私たちひとり一人に与える要因も影響度も様々だと思いますし、他に未来を形成する要因はあるかもしれません。
しかし、社会全体の大きなトレンドが「自分たちの職業生活にどんな意味を持つのか」を理解し、様々な選択肢の良い点を問題点を把握し、自分の働き方や生き方を主体的に決めることが必要であると思います。
「65歳定年」の議論が始まっていますが、今後の社会保障制度、ましてや「自分の生きがい」を考えると、「70歳代でも現役で働いていたい」と思っている方もいらっしゃるのはないでしょうか。
未来が予測通りになる保証はありませんが、
- ・自分が好きなこと、情熱を注ぎこめることを仕事に選び、
- ・生涯にわたって学習と自己研鑽を重ね、絶えず成長を続けていく。
ことの必要性を、本書は改めて考えるきっかけとなりました。
帯折り返しからの引用
2025年、私たちはどんなふうに働いているだろうか?
「漠然と迎える未来」には孤独で貧困な人生が待ちうけ、
「主体的に築く未来」には自由で創造的な人生がある。
「5つの要因」が繰り出す2025年の職業生活
(未来ストーリー)
マイナスに作用した5人の架空の未来ストーリー
- ・ロンドンで暮らす女性マネージャーのジル
いつも時間に追われていて、高度な専門技能をじっくりと学ぶことができない。
- ・インドのムンバイで暮らす脳外科医のローハン、エジプトのカイロに住むフリーランスプログラマのアモン
やりがいのある職業生活を送っているようには見えるが、家族や気軽な仲間との結びつきが得られず、孤独な生活を送っている。
- ・アメリカのオハイオ州に暮らす28歳のブリアナ、ベルギー南部で暮らすアンドレは、アルバイトで生活している。
グローバルな人材市場に加われず、先進国の住人でありながらグローバル下層階級の一員となっている。
「主体的に築く」明るい未来ストーリー
- ・ブラジルのリオデジャネイロに住む29歳のミゲル
都市計画に関する専門技能と知識に磨きをかけ、「ビッグアイデア・クラウド」の一員としてアイデアを交換し、実りある経験とやりがいのある仕事の日々を送っている。
- ・バングラデシュ南東部チッタゴン近郊の村でボランティアをしているジョンとパートナーのスーザン
男女の職業意識や役割が変化する中、自分にとって何が本当に大切かを理解し、その優先順位にそった職業生活を送っている。
- ・中国中部の河南省でオーダーメイドのドレスを一貫生産販売しているシュイ・リー(その娘と孫)
企業に属さずにミニ起業家として働いているが、孤立しているわけではなく、他の大勢のミニ起業家たちと結びついて創造的な仕事をしている。
未来を形づくる5つの要因と32の要素
なにが働き方の未来を変えるのか?
要因1.テクノロジーの進化
①テクノロジーが飛躍的に発展する。
②世界の50億人がインターネットで結ばれる。
③地球上のいたるところで「クラウド」を利用できるようになる。
④生産性が向上し続ける。
⑤「ソーシャルな」参加が活発になる。
⑥知識のデジタル化が進む。
⑦メガ企業とミニ起業家が台頭する。
⑧バーチャル空間で働き、「アバタ―」を利用することが当たり前になる。
⑨「人工知能アシスタント」が普及する。
⑩テクノロジーが人間の労働者に取って代わる。
要因2.グローバル化の進展
①24時間・週7日休まないグローバルな世界が出現した。
②新興国が台頭した。
③中国とインドの経済が目覚ましく成長した。
④倹約型イノベーションの道が開けた。
⑤新たな人材輩出大国が登場しつつある。
⑥世界中で都市化が進行する。
⑦バブルの形成と崩壊が繰り返される。
⑧世界のさまざまな地域に貧困層が出現する。
要因3.人口構成の変化と長寿化
①Y世代の影響力が拡大する。
②寿命が長くなる。
③ベビーブーム世代の一部が貧しい老後を迎える。
④国境を越えた移住が活発になる。
要因4.社会の変化
①家族のあり方が変わる。
②自分を見つめ直す人が増える。
③女性の力が強くなる。
④バランス重視の生き方を選ぶ男性が増える。
⑤大企業や政府に対する不信感が強まる。
⑥幸福感が弱まる。
⑦余暇時間が増える。
要因5.エネルギー・環境問題の深刻化
①エネルギー価格が上昇する。
②環境上の惨事が原因で住居を追われる人が現れる。
③持続可能性を重んじる文化が形成されはじめる。
ワーク・シフト:3つのシフト
第一のシフト:ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ
- ・ゼネラリスト的な技能から専門技能の連続的習得へシフト
- ・資本:知的資本
- ・資質:①専門技能の連続的習得、②セルフマーケティング
- ・対応:広く浅い知識を持つのではなく、いくつかの専門技能を連続的に習得する。そのためには、時間とエネルギーをつぎ込む覚悟をする。
- ・高い価値を持つ専門技能の条件
①価値を生み出す、②希少性がある、③模倣されにくい。
- ・いくつもの小さな釣り鐘が連なって職業人生を形作る「カリヨン・ツリー型」のキャリアが主流となる。
第二のシフト:孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ
- ・個人主義、競争原理から人間同士の結びつき、コラボレーション、人的ネットワークへシフト
- ・資本:人間関係資本、人的ネットワークの強さと幅広さ
- ・対応:高度な専門知識と技能を持つ人たちと繋がり合って、イノベーションを成し遂げることを目指す姿勢に転換する。仕事とそれ以外の要素のバランスを取り、新たに重要となる活動に時間を割く。
- ・人的ネットワーク
①ボッセ:同じ志を持ち、頼りになり、長期にわたる互恵的な関係(少人数)
②ビックアイデア・クラウド:大きなアイデアの源となる群衆
③自己再生のコミュニティ:頻繁に会い、リラックスしできる人達
第三のシフト:大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ
- ・貪欲に大量のモノを消費し続けるライフスタイルから質の高い経験と人生のバランスを重んじる姿勢へシフト
- ・資本:情緒的資本、自分の選択について深く考える能力、勇気ある行動を取るための強靭な精神を育む能力
- ・対応:際限ない消費に終始する生活をやめ、情熱を持って何かを生み出す生活に転換する。やりがいとバランスのとれた働き方に転換する。
- ・「お金のためだけに働く」という古い考えでなく、「働くのは、充実した経験をするためで、それが幸せの土台」となる。自分の生き方と選択に責任と理解を持つ。
自分の未来予想図を描くためのプロセス
1.不要な要素を捨てる。
2.重要な要素に肉づけをする。
3.足りない要素を探す。
4.集めた要素を分類し直す。
5.一つの図柄を見いだす。
未来に押しつぶされないキャリアと専門技能
1.今後価値が高まりそうなキャリアの道筋
- ・草の根の市民活動
- ・社会起業家
- ・ミニ起業家
2.特にに重要性を増す専門技能
- ・生命科学・健康関連
- ・再生可能エネルギー関連
- ・創造性・イノベーション関連
- ・コーチング・ケア関連
欧米社会の「4つの世代」
- ・1928~45年頃の生まれ:トラディショナリスト(伝統主義者)世代
- ・1945~64年頃の生まれ:ベビーブーム世代
- ・1965~79年頃の生まれ:X世代
- ・1980~95年頃の生まれ:Y世代
(1995年以降の生まれ:Z世代)
Y世代の特徴(2025年には、45~60歳)
- ・それ以前のどの世代よりも、長い思春期を経験した世代。
- ・以前の世代よりも、経済のグルーバル化を明確に理解している世代。
- ・コスモポリタン化したライフスタイルの世代。
- ・本当の意味で、世界中の人々が結びついた世代。
- ・バーチャルなコミュニティを舞台に活動する世代。
- ・学習と成長の機会が得られることに、仕事での重きを置く世代。
- ・協力志向が高い世代(ベビーブーム世代:競争意識が高い)
- ・短期志向で、プロジェクト単位で働く意識が強い世代
(X世代:長期志向で、キャリア全体の事を考えて勤める)
ダニエル・レヴィティン(心理学者、1957年サンフランシスコ生まれ)
多くの高度な専門技能を習得した人々を調べた結果、すべての人に共通する性質は、技能を磨くために長時間集中して打ち込むことが苦にならないこと。
技能を自分のものにできるまでの時間は、おおむね10,000時間を費やせるかが試金石。
例えば、一日に3時間割くとして、10年はかかる計算。
この見解は本書でも紹介されていますが、私が研修講師をしている際には必ず話をしている言葉の一つです。
自分の働き方を主体的に選び、何を優先させ、何を諦めるかを決める。
そのためには、未来にどの様な変化が待っているのかを想定(予測)して準備おく必要があると思っています。
本書は、調査会社やコンサルティング企業が出す「数値を多用(駆使)した分析(予測)資料」ではありませんが、2025年を想定した自分たちの将来、そして子供や孫の時代に、働き方に影響を与える「5つの要因」と働き方を変える「3つのシフト」は納得感がありました。
特に「3つのシフト」の納得感を強めたのは、途中に登場する9名の未来ストリーで、どれも可能性が高いシナリオとして非常にうまく描けているところでした。
「要因3.人口構成の変化と長寿化」について
「世界の人口の変化」「日本の人口の変化」「世界及び主要国の人口構成(人口ピラミッド)」「主要国の平均寿命」について調べてみました。
ワーク・シフトの要因「人口構成の変化と長寿化」を調べてわかったこと
参考
著者のインタビュー記事(2012年9月20日、PRESIDENT Online)
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ワーク・シフト
― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉リンダ・グラットン(著)、池村 千秋 (翻訳)
出版社:プレジデント社 (2012/7/31)
Amazon.co.jp:ワーク・シフト
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