書籍 ジョブ理論(Jobs to Be Done)/クレイトン・M・クリステンセン(著)

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ジョブ理論(Jobs to Be Done)
イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム

クレイトン・M・クリステンセン (著)、タディ・ホール (著)、カレン・ディロン (著)
出版社:ハーパーコリンズ・ ジャパン(2017/8/1)
Amazon.co.jp:ジョブ理論(Jobs to Be Done)

 

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なぜ、あの商品は売れなかったのか?

「イノベーションのジレンマ」の著者による、21世紀のベスト・オブ・ビジネス書!

どんな「ジョブ(用事、仕事)」を片づけたくて、あなたはそのプロダクトを「雇用」するのか?

 

本書は、「破壊的イノベーション論」の提唱者で、世界で最も影響力のある経営学者である著者が、人がモノを買う行為そのもののメカニズムを解き明かす、予測可能で優れたイノベーションの創り方を解説した一冊です。

イノベーションの成否を分けるのは、顧客データや市場分析、スプレッドシートに表れる数字ではなく、「顧客の片づけたいジョブ(用事・仕事)」にあるとして、実例を例示しながら解説しています。

全体を通して、片づけるジョブの見つけ方から、組織での取り組み方など、テーマに沿ってわかりやすく解説されていますので、リーダーの方々にとって、イノベーションを成功させる方法につての新たな発見につながります。

何が顧客にその行動をとらせたのかを真に理解していないかぎり、賭けに勝つ確率は低い。

だが、イノベーションとは本来、もっと予測可能で、もっと確実に利益をあげられていいはずだ。

必要なのは、ものの見方を変えること、だいじなのはプログレス(進歩)であって、プロダクト(商品)ではない。

本書は、3部10章で構成されています。

  • ・第1部では、イノベーションにとって大切な因果関係のメカニズムの視点からジョブ理論が概説されています。
  • ・第2部では、理論から実践にシフトし、雑然とした現実世界に理論を応用する際に留意すべき点が説明されています。
  • ・第3部では、理論と組織及びリーダーシップとの関わりとして、片づけるべきジョブを重視することで、降りかかる難題、享受できる恩恵について解説されています。

各章の冒頭の「章のテーマ」と末尾の「章のまとめ」に加え、中核の2~9章には「リーダへの質問」として、自分の組織について問うべき質問項目が簡潔に整理されています。

本書は、ジョブ理論に特化し、改めて理論を再整理することに加え、組織改革アプローチを紹介し、機能分化・部分最適が進行して顧客の声が届かない、あるいは対応できない企業への処方箋が示されています。

それは、顧客が進歩を求めて苦労している点は何かを理解し、彼らの抱えるジョブ(求める進歩)を片づける解決策と、それに付随する体験を構築することにあるとしています。

また、顧客の「属性」と「欲しいもの」の間には相関こそあっても因果はないとし、因果関係のないデータを分析して商品を開発するのは「運を天に任せたやり方」であると警告しています。

ジョブ理論は、相関関係がわかればイノベーションを成功させられると期待する世界から、因果関係のメカニズムを踏まえてイノベーションを成功させる世界へと案内してくれます。

顧客が新しい商品を人生に引き入れる決断を下したとき、その根底に存在した因果関係とはなにか?

どんなジョブ(用事、仕事)を片づけたくて、その商品を「雇用」したのか?

顧客のジョブを理解する基盤を築き、戦略を立てれば、運に頼る必要はなくなる。運任せの状況にある他社を尻目に、あなたは運に克つことができる。

競争する相手が変わり、優先順位が変わり、そして何よりだいじな、結果が変わる。

 

ジョブ理論の概要

ジョブとは、ある特定の状況で人が遂げようとする「進歩」と定義し、重要なのは顧客が「なぜその選択をしたのか」を理解することにある。

ジョブとは、進歩を引き起こすプロセスであり独立したイベントではないし、特定の問題を苦労して解決するという形をとることが多いが、苦労や問題を伴わないジョブもある。

ジョブの定義に「状況」が含まれるのは、なし遂げたい進歩の性質が状況に強く影響されるためであり、ジョブは生じた特定の文脈に関連して定義でき、その解決策も特定の文脈に関連してもたらすことができる。

ジョブには、機能面だけでなく社会的及び感情的な側面もあり、現実は消費者の社会的及び感情的なニーズが機能的な欲求よりも大きいことがある。

競争優位は、顧客のジョブを理解することによってのみ得られるものではなく、顧客がプロダクト/サービスを購入し使用する時に求める体験を築くことも必要である。

  • ・優れたプロダクト/サービスを開発するためには、その過程でプロダクト/サービスに付随した体験を構築する。
  • ・ジョブを一貫して捕捉できるように、社内の能力とプロセスを統合する。

 

ジョブ考察の視点

1.その人がなし遂げようとしている進歩は何か?

  • ・求めている進歩の機能的、社会的、感情的側面はどのようなものか。
  • ・帰納面だけではなく、社会的・感情的な側面も深く掘り下げ、水平方向にも広く目を向ける。

2.苦労している状況は何か?

  • ・誰がいつどこで何をしている時か。

3.進歩をなし遂げるのもを阻む障害物は何か?

4.不完全な解決策で我慢し、埋め合わせの行動をとっていないか?

  • ・ジョブを完全には片づけない商品やサービスに頼っていないか。
  • ・複数の商品を継ぎはぎにして一時しのぎの解決策をつくっていないか。

5.その人にとって、よりよい解決策をもたらす品質の定義は何か?
また、その解決策のために引き換えにしてもいいと思うものは何か?

 

ジョブ理論の奥行きと可能性

新しいプロダクトが成功するのは、その特徴や性能が優れているからではなく、それに付随する「体験」が優れているからである。

ジョブそのものは、進歩を遂げようとしている顧客の立場から状況を組み立てるのに対し、ジョブスペックは、イノベーターの視点からジョブを捉えたものである。

ジョブスペックは解決策の要件であり、リストアップした後は、購入及び使用してもらうための障害物を取り除き、適切な体験を構築することができる。

  • ・顧客が求める進歩と受け入れるトレードオフ
  • ・打ち負かすべき競合
  • ・乗り越えるべき障害物を明らかにする機能的・感情的・社会的な側面

ジョブの解決策は、中核のプロダクト/サービスだけで成り立つわけではなく、たとえ物理的な製品であっても「サービス」として捉えることである。

パーパス(目的)ブランドとは、顧客が重視するジョブと関連づけられるブランドのことである。

  • ・社外の人にとっては、あなたの会社が何を体現してくれるのかを理解する指針となる。
  • ・社内の人にとっては、意志決定と行動を導く指針となる。

 

ジョブの3層に適合した行動

1.ジョブの特定

  • ・ジョブとは、ある状況下で求める進歩である。
  • ・どのジョブにも、機能的、感情的、社会的側面があり、それぞれの重要性は文脈に依存する。

2.求められる体験

  • ・3つの側面を踏まえ、ジョブ遂行に伴う体験を構築する。
  • ・購入時、使用時の優れた体験が、顧客がどこのプロダクトを選ぶのかの基準となる。

3.ジョブ中心の統合

  • ・ジョブのまわりに社内プロセスを統合し、求められる体験を提供する。
  • ・ジョブと統合されたプロセスは模倣が難しく、競争優位をもたらす。

 

片づけるべきジョブの組織

顧客のジョブを遂行する機能を中心に組織を統合することは、他社が模倣できない独自のプロセスとなり、競争優位の源となる。

ジョブ中心の組織に移行するためには、正しいプロセスを慎重に設定して統合し、正しく測定し、時間をかけてジョブを企業文化の中心に埋め込んでいく。

  • ・ジョブを解決する体験を正しく提供するためには、新しいプロセスを慎重に定義し、複雑化している機能群を調整する。
  • ・顧客が求める体験の最も重要な要素を問い、そのパフォーマンスを追跡する測定基準を定める。
  • ・ジョブの解決の仕方は時間とともに変化するため、状況に応じて体験を改良していけるように柔軟性を考慮しておく。

「スタックの誤謬」アンシュー・シャーマ(ストームベンチャー社)

  • ・技術者が自分の持つテクノロジーの価値を高く評価しすぎ、顧客の問題を解決するための下流アプリケーションを低く評価しすぎる傾向のことを指す。
  • ・人のつくったものの上に何かを積み重ねることは簡単だという、間違った思い込みである。

 

イノベーションのデータの3つの誤謬

大きな成功を収めた企業であっても、顧客のジョブに集中することを忘れ、自分のジョブしか見えなくなることがある。

そのため、解決するジョブではなく、売り出すプロダクト/サービスが自分たちの仕事を定義するかのように行動し始める。

  • ・解決するジョブ例:4分の1インチの穴
  • ・売り出すプロダクト/サービス例:4分の1インチのドリル

1.能動的データと受動的データの誤謬

  • ・規模拡大中の企業は、ジョブの複雑さを特色付けるデータ(受動的データ)を重要視しつづける代わりに、業務に関連したデータ(能動的データ)を生成し始め、見せかけ上の客観性と精密さに誘惑されやすい。
  • ・これにより、企業は片づけるべきジョブより、プロダクトや顧客特性を中心とした組織に変貌してしまう。

2.見かけ上の成長の誤謬

  • ・企業が大きな投資をする時、顧客に売るプロダクトの数を増やしたり、解決するジョブの種類を広げたりして、成長を勢いづけようとしがちである。
  • ・見かけ上の成長は、中核のジョブを解決していくのとは正反対に位置する。

3.確証データの誤謬

  • ・既存のビジネスモデルに合うようなデータをマネージャーが生成しようとする。
  • ・自身の視点にとって支えとなる情報のみに注目し、ある種の確証バイアスのもとで動いている。
    本当の意味で客観的ではなく、顧客のジョブを反映していない。

データには根本的な問題があり、数字で表した定量的なデータの方が、定性的なデータよりも客観的で信頼できると思われているが、その客観的なデータはどこからきているのかが問題である。

データには、故意か無意識かは別にして、それをつくり出した人の意図が入り込む。

  • ・「つくり出すべきデータは何か」をますは決定する。
  • ・現象のどの面のデータを収集し、その面を無視すべきかを決める。

 

ジョブを重視した組織のメリット

1.意志決定の分散化

  • ・明確な目的を共有し、意志決定を分散できる。
  • ・組織の全社員が、ジョブにフォーカスした適切な決断を、創造力豊かに、自律的に下すことができる。

2.資源の最適化

  • ・重要なことに資源を分配し、重要でないことから資源を解放できる。
  • ・何がジョブにとって重要かに合わせて資源を配分でき、バランスをとることができる。

3.意欲の向上

  • ・社員のやる気を引き出し、好きなことができるような文化をつくり上げられる。
  • ・自分の仕事が、顧客の進歩につながっていることがわかる。

4.適切な測定能力

  • ・顧客の進歩、社員の貢献、意欲など、重要な点を測定できる。
  • ・ジョブを中心とした測定基準を求め、それで評価しようとする機運が自然に生まれる。

 

デザイン思考との関係

デザイン思考の中心要素は、プロダクトの属性よりも顧客の体験に優先順位を割り当てており、ジョブ理論と共通の土台にある。

デザイン思考は、様々なアイデアや実践方法に適用され、核心では問題解決の方法論であり、顧客への深い共感的理解と発散思考及び解決策の機敏な反復を重視している。

ジョブ理論は、「なぜ顧客が他のものでなく、そのイノベーションを受け入れるのか」の因果関係を説明し、「顧客にとって何が本当に重要か」というインサイト(購買意欲の核心)を深くすることにあるため、デザイン思考を補完し、互換関係にある。

ジョブ理論は、デザイン思考が必要とする顧客についての深いインサイトを構築し、顧客が真に購入して使用したいと望む解決策を触発するためのツールセットとなる。

 

この最終章で伝えたいことが3つある。

ひとつ目は、ジョブ理論によってイノベーションは運任せでなくなるということ。

ふたつ目は、ジョブ理論ももちろん万能ではなく、説明できることとできないことがある。限界を知るのはたいせつなことで、本来の範囲を超えて理論を適用しようとすれば、価値がぼやけ、先を予測する力が消失してしまう。

ジョブ理論のレンズを通して探求できる問いは広く、深い。そのことを伝え3つ目に、読者のみなさんの好奇心を刺激していけたらと思う。

 

まとめ(私見)

本書は、経営学者が事例を調べた後知恵ではなく、著者らが立ち上げたイノベーションに特化したコンサルティング会社(イノサイト社)が、約20年の歳月をかけて開発しながら実践してきた理論です。

ジョブ理論を用いて新たな事業の機会を見つけるだけでなく、その事業を最大化し、組織全体を顧客志向にする際の考え方も提供してくれています。

破壊的イノベーション理論は、複数の反応が競合して同時に起こる競争反応のモデルとして現在も有効ですが、次の新しい機会をどこで探せばよいかは教えてくれないとしています。

それに対してジョブ理論は、実績ある優良企業を弱体化させたり、新しい市場を形成したりできるロードマップを示してくれています。

例えば、ミルクシェイクのジレンマにあるように、朝の車通勤者と夕方の子連れの父親、ミルクシェイクを購入することが最高の解決策と判断された結果は同じでも、購入者の間には人口統計学的な共通要素はなく、そこに至る基準は全く違っています。

そのため、車通勤者と父親は、同じミルクシェイクを全く違うジョブのために雇用しているため、それぞれのジョブの競合相手は全く異なります。

ジョブの定義文
【顧客※1】は【状況※2】において、【ジョブ※3】を解決したい。

  • ・通勤者の場合
    ※1:車通勤する人、※2:長い通勤、※3:退屈しないで、お腹を満たす
  • ・夕方の子連れの父親の場合
    ※1:子供の世話をしている父親、※2:一緒に過ごす休日の夕方(夕食前)、※3:優しい父親気分を味わいたい

顧客が生活に何らかのプロダクトやサービスを取り込もうとする原因を理解でき、イノベーションのガイドに留まらず、真の差別化と長期的な競争優位を築き、顧客の行動を組織が理解することに役立つ一冊でした。

ジョブの4要素

  • ・ジョブ:顧客が「やらないといけない」「やりたい」コト
  • ・目的:「採用基準」を決定づけるジョブの機能的・感情的・社会的な目的
  • ・ジョブを片づけることを困難にする要因
  • ・代替解決策:現状の解決策として用いている製品・サービスや「使いこなし」

「人は、形にして見せて貰うまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ」
スティーブ・ジョブズが言って、マーケティング調査を実施していなかったことを思い出しました。

なお、イノサイト社の主要メンバーは、これまでもジョブ理論についてノウハウを公開してきています。

例えば、『ホワイトスペース戦略』『イノベーションへの解―実践編』『ザ・ファーストマイル』には、顧客のジョブを把握し、そのジョブを中心に新たな成長ビジネスを立ち上げるノウハウが記されています。

 

目次

序章 この本を「雇用」する理由
まちがったことに上達する /どんなジョブのためにそのプロダクトを「雇用」したのか

第1部 ジョブ理論の概要

第1章 ミルクシェイクのジレンマ
朝のミルクシェイク/マーガリンのレジュメ/ジョブ理論とイノベーション

第2章 プロダクトではなく、プログレス
「何を」ではなく、「どう」考えるか/ジョブの定義/機能面、社会面、感情面の複雑さ/ジョブとは何か/ジョブでないもの/ジョブを見きわめるには/競争の勢力図の変化/ジョブ理論の限界/コペルニクス的転回

第3章 埋もれているジョブ
無と競争する/ジョブの適用範囲は深くて広い/B2Bにおけるジョブ/価格2倍で機能半分/顧客の人生に寄り添う

第2部 ジョブ理論の奥行きと可能性

第4章 ジョブ・ハンティング
ジョブはどこにある?/1生活に身近なジョブを探す/2無消費と競争する/3間に合わせの対処策/4できれば避けたいこと/5意外な使われ方/感情面の配慮/魔法は必要ない

第5章 顧客が言わないことを聞き取る
顧客のストーリーをつくる/マットレス購入までの道程/衝動買いの裏に/アドビルかレッドブルか、新しいマットレスか/ジョブとインサイト

第6章 レジュメを書く
ジョブを解読する/体験とプレミアム価格/障害物を取り除く/ウーバーの体験/ジョブに適していることをどう伝えるか/パーパスブランド

第3部「片づけるべきジョブ」の組織

第7章 ジョブ中心の統合
秘伝のソース/ジョブ中心に組織をつくる/測れることは実行できる/オンスターのジョブ

第8章 ジョブから目を離さない
イノベーションのデータの3つの誤謬/1能動的データと受動的データの誤謬/2見かけ上の成長の誤謬/3確証データの誤謬/データの出所が問題をつくり出す/受動的なデータを能動的に捕まえる

第9章 ジョブを中心とした組織
直観的な作戦ノート/両面コンパス/だいじなことを測定する/ジョブがすべてを変えた/文脈を見失わない

第10章 ジョブ理論のこれから
本当に理論と呼べるのか/理論が〝誤って〟いるとき/理論の限界/ジョブ理論の適用範囲の深さと広さ/個人的なジョブ/公教育/医療/人生のジョブ/ジョブ理論とともに

 

本書に関連する書籍

20171117

ザ・ファーストマイル
イノベーションの不確実性をコントロールする
スコット・D・アンソニー(著)、山田 竜也、津田 真吾、津嶋 辰郎(監修)
出版社:翔泳社(2014/12/2)
Amazon.co.jp:ザ・ファーストマイル

 

20171117_3

ホワイトスペース戦略
ビジネスモデルの<空白>をねらえ

マーク・ジョンソン(著)、池村千秋(翻訳)
出版社:CCCメディアハウス(2011/3/29)
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20171117_4

イノベーションへの解 実践編
利益ある成長に向けて

スコット・アンソニー (著)、マーク・ジョンソン(著)
出版社:翔泳社(2008/9/19)
Amazon.co.jp:イノベーションへの解 実践編

 

ジョブ理論(Jobs to Be Done)

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ジョブ理論(Jobs to Be Done)

クレイトン・M・クリステンセン (著)、タディ・ホール (著)、カレン・ディロン (著)
出版社:ハーパーコリンズ・ ジャパン(2017/8/1)
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