書籍 STARTUP(スタートアップ)/ダイアナ・キャンダー(著)

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STARTUP(スタートアップ)
アイデアから利益を生みだす組織マネジメント
all in startup
LAUNCHING A NEW IDEA
WHEN EVERYTHING IS ON THE LINE

ダイアナ・キャンダー(著)、牧野 洋(翻訳)
出版社:新潮社(2017/8/25)
Amazon.co.jp:STARTUP(スタートアップ)

 

20180319startup

最強ビジネスモデルのすべてを解き明かす
UCLA、コロンビア大など全米70校が「アントレプレナーシップ」の教科書に続々採用!
起業家の挫折と逆転の物語を読み進むことで、スタートアップという新しい時代の経営手法を「実体験」できる、新事業や新商品開発のための必読書。

 

本書は、起業家兼コンサルタントで、数百人に上る企業家と一緒に仕事をしてきた著者が、起業で失敗する確率を大幅に減らすためには何をすべきなのかを明かした一冊です。

著者自身も含め、多くの起業家との実体験を統合して物語としてまとめられており、スターアップの失敗・成功を疑似体験できますので、起業を目指す方々、そして企業で新規事業を立ち上げを担っているリーダーにとっての指南書となります。

 

本書は、4部で物語が構成されており、起業で成功の確率を上げる(=失敗する確率を減らす)ための重要な原則を、疑似体験しながら学ぶことができます。

スタートアップとは、優れた解決策を発案して、『市場で受け入れてもらえたらいいな』と願うのではない。

スタートアップとは、まず顧客を理解したうえで、顧客の生活に付加価値をもたらす商品をつくること。

 

スタートアップのための原則は、「スタートアップでの失敗経験がないと本当には分からない」と言われていますが、本書の物語で疑似体験することができます。

大手コンサルティング会社を辞め、中古自転車事業に挑戦するオーエン・チェース(主人公)が、「偶然出場した世界ポーカー選手権で出会った先輩起業家のサムから教えを請い、立て直しの方策を練る」という物語を通して、スタートアップの原理原則を自分事として入り込んでいきます。

また、ポーカーという身近なゲームになぞらえて分かりやすく教えてくれているのも、本書の魅力の一つです。

成功する起業家とプロのポーカー選手は似ており、どちらも自己資金を投じて大きなリスクを取るギャンブラーと思われがちですが、現実は違うことを本書では語っています。

どちらも単に運に恵まれているように見えるが本当は違い、彼らは勝つチャンスがあると確信できる場合に限ってオールイン(一度に全額を投じる行為)に出ています。

 

スタートアップの4つの原則

1.スタートアップの目的は顧客を見つけることであって、商品を売ることではない

アイデア ⇒ 顧客 ⇒ 商品作り ⇒ ブランド

2.人は製品やサービスを買うのではなく、問題の解決策を買う

  • ・顧客が解決すべき問題を抱えているかどうかを見極めるために
  • ・アイデアが問題解決に役立つかどうか検証するために

自分自身で顧客に直接会って、話を聞く。

3.起業家は探偵であり、占い師ではない

事実を集めて仮説を検証すれば、最小限の時間と資金を投じるだけで済む。

仮説が正しいかどうか判断するには現実の世界で検証するしかない。
これによって、何が憶測で、何が事実なのか判定できる。

4.成功する起業家はリスクを取るのではなく、運を呼び込む

緻密に計算して、何度も小さく賭ける。

何度も小さく賭けているうちに、いずれチャンスに巡り合える。(運を呼び込める)
その時になって、初めて持てるすべてを賭ける。

 

問題の存在を証明

アイデアを明確にし、なぜそのアイデアに価値があるのかを明確にする。

そのためには、顧客・問題・解決策について短く説明する。
それが具体的であるほど、顧客を見つけるのも、仮説を検証するのも容易になる。

 

私は、[顧客]が[問題]を解決できるよう、[解決策]を提供する。

私は、解決すべき問題があると理解している。

なぜなら、

1.私の顧客は、_____である。

2.顧客の問題は、_____である。

3.顧客は現在_____によって問題を解決している。

4.顧客はこれまでにも_____によって問題解決を試みている。

5.十段階評価で言うと、この問題の深刻さは_____である。

6.この問題を解決するために、顧客は_____ドル投じる。

 

顧客インタビューで成功するためのルール

解決すべき問題を発見しただけでは、成功するとは限らない。
顧客が解決策を欲していると証明する必要がある。

潜在顧客に会ってインタビューし、彼らが直面する実際の問題を見極め、どんなニーズがあるのかを把握する。

そうすれば、ニーズを勝手に推測する場合よりも、強力なポジションを立上げで築ける。

顧客インタビューは、創業者自身で行う。
部下に任せると、創業者が求めている回答を聞き出し、聞きたくないような悪いニュースは決して伝えない。

 

1 相手に自由に回答してもらえるようにインタビューする。

2 潜在顧客が、積極的に時間と資金を投じて問題を解決しようとしていなければならない。
正真正銘のニーズが存在しなければ、大した問題ではない。

3 狙っている顧客層に、相手が属していることを確認してからインタビューする。
手当たり次第に誰でもインタビューすればいいわけではない。

5 インタビュー開始時に売りつけるつもりはないと、はっきりさせておく。
そうすると、潜在顧客は胸襟を開いて自分の問題を語ってくれる。

7 「~しますか?」で終わる質問は禁じ手である。
これは、誘導尋問になるし、相手から嘘をつかれる。

11 他にインタビューできる人がいるかどうか、必ず潜在顧客に聞いておく。

15 潜在顧客に、痛みについて正直に語ってもらう。
決して誘導してはいけない。

17 相手が座っているときにインタビューする。
歩いている人や立っている人と比べると、座っている人はより多くを語ってくれるし、多くの質問にも答えてくれる。

21 完全に仕事モードにならない。
気軽におしゃべりしている雰囲気にすると、より多くを相手に語ってもらえる。

 

その他

スタートアップは、大企業の小型版ではない。

スタートアップは、良いビジネスモデルを見出すための一時的な器にすぎない。

問題を見つけるとか解決するとかだけではなく、ビジネスモデル全体である。
どんな営業スタッフを雇うか、どのくらい人件費がかかるのか、どうのようにして資材を調達するか、どのくらいの経費がかかるのか、事業からどのくらいの収入が見込めるのかなど

成功する起業家は、失敗ときちんと向き合える。

 

スロットマシン対ポーカー

スロットマシンで勝つには運が必要であるが、ポーカーで勝つにはスキルが必要となる。

運に助けられて大きく買っても、浮かれずに保守的プレーに徹する。

試合中は計算の上でリスクを取り、潜在的な損失を最小化し、新しい情報分析を怠らない。

すでに投じた賭け金のことで悩んだり悔んだりしないで、今後のゲーム展開を常に考えてプレーする。

誤ったときに損失を最小限にとどめておけば、生き残って次のゲームに参加できる。

強いカードを手にするまでは待ち、本当に強いカードに恵まれたら全てを賭ける。

 

目標は、究極の顧客行動までの道のりを最短にすること

解決すべき問題を発見しただけで成功するとは限らない。
顧客が解決策を欲していると証明する必要がある。

相手が本当に解決策を欲しているのかどうかを確認する唯一の方法は、予約注文したり、契約書にサインしてもらったりするなど、究極の行動を実際に起こしてもらうことである。

 

ティルトの選手

ティルト(損失を取り戻そうとして合理的判断ができなくなった状態)の選手

  • ・感情的になり過ぎている選手
  • ・手持ちのチップを減らし過ぎて、以前と同じ戦略では勝てなくなっている選手

ティルトの選手は、生き残るためにスキルよりも運に頼ろうとする。
そして、最後には運を使い果たしてしまう。

たとえチャンスに恵まれず失敗は必至と考えていても、まだやれる時間が残っているならば思い切って行動する。

正しく判断・行動するように集中していれば、いい結果を出せる。

 

起業家として成功するためには「秘密のDNA」を持つ必要はないし、「遺伝子版宝くじ」に当たる必要もない。

超一流の学歴・職歴があるからといって、スタートアップのゾンビ化を回避できるわけでもない。

本書の教えをぜひ学習・応用してほしい。

「起業家ごっこをする」のと「本物の事業を創造する」のとでは全然違う。

本書の教えを実践するかどうかでそれぐらいの違いが出てくる。

 

まとめ(私見)

本書は、起業とポーカーのギャンブル性をかみ合わせながら、物語調で展開されていますので、非常に読みやすくなっています。

世界ポーカー選手権の試合の展開、そこで出会った先輩起業家との会話を通して、起業家の挫折と逆転の物語をワクワクしながら読み進んでいくうちに、スタートアップの苦悩を疑似体験しながら、原理原則を学ぶことができます。

自分が考え・つくった製品やサービスは売れるはずだと思い込んで、事業計画を策定し、ターゲット顧客を想定してマーケティングやプロモーションを展開するものの、思うように事業が拡大しない。

私にも経験がありますし、多くの方々にも思い当たるところがあるのではないでしょうか?

そこには、本書でも指摘しているように、「顧客の真の問題を理解し、解決策を提供する」ことができていないのかもしれません。

緻密に計算して何度も小さく賭け、何度も小さく賭けているうちにチャンスに巡り合える。

チャンスが訪れた時に、「オールイン(ポーカーで、手持ちのチップを一度に全て賭ける)」する。

スタートアップを学ぶ方法は、自らがスタートアップの「失敗」と「成功」を体験することであると言っても、その機会はなかなかありません。

そこで、本書を読めば、それを疑似体験することができます。

昔、本書と同様に物語調で書かれた「ザ・ゴール」シリーズを読んで「全体最適化」を勉強し始めた時のように、大きな衝撃を受けた一冊でした。

 

目次

序文

トム・リューエからの手紙

はじめに

第一部 人はビジョンを買わない

1 最初の印象で人を判断してはいけない

2 これ以上だましてはいけない

3 営業トークだけでは何も売れない

4 プレーし続けるカギは、どう勝つかではなく、どう負けるか

5 本当のプロは全ゲームで勝負しない

6 スタートアップにとって重要な数字を覆い隠す「バニティメトリクス(虚栄の数字)」

7 遠慮していては助言者は見つからない

8 まずは顧客と顧客ニーズ、自分のビジョンは二の次でいい

9 一か八かは駄目、小さく賭けてチャンスをつかむ

10 新しいことをやるなら専門家でも用意周到な準備が必要

11 人はビジョンを買わない、問題の解決策を買う

12 解決すべき問題を発見したかどうか言えるのは顧客だけ

第二部 仮説で勝負するのは危険

13 幸運を期待するのは戦略ではない

14 仮説の検証に遅過ぎるということはない

15 顧客インタビューの成功のカギは誘導尋問を回避し、オープンエンド(自由回答)型の質問をすること

16 顧客インタビューを上手にこなすには練習あるのみ

17 自分の仮説の誤りに気付くのは、正しさを証明するのと同じぐらい重要

18 新しい仮説を検証せずに新しいアイデアにピボット(方向転換)するな

19 運に最も恵まれないときに備えてチップを節約せよ

20 成功する起業家は再挑戦するために、失敗を認め、フォールドし、生き残る

21 アイデアに大金を投じる前に仮説を検証せよ

第三部 正解を知るのは顧客だけ

22 冷静さを保てば運を呼び込める

23 成功する起業家は例外なく成功より失敗を多く経験している

24 頑張れば頑張るほど運に恵まれる

25 有望顧客を見つけるチャンスはどこにも転がっている──探す努力さえすれば

26 緻密なインタビューによって潜在顧客から最高のフィードバックを得る

27 大損しないために「バニティメトリクス」を認識せよ

28 偏頭痛級の問題を見つけるまで顧客インタビューを続けよ

29 偏頭痛級の問題について聞かれると人は語りたくて仕方なくなる

30 得られた情報の良しあしに関係なく、インタビューは客観的に

31 人が商品を欲していると証明できなければ何をやっても無意味

32 運を呼び込む人はどこに行っても新たな経験を求め、新たなチャンスを見いだす

33 ポーカーでも事業でも運頼みは良い戦略ではない。よい戦略こそが運を呼び込む

第四部 仮説を証明し勝負に出る

34 究極の顧客行動への道のりを最短にせよ

35 不運に備えて蓄えろ

36 恐れて何もしないのは最悪、事業のアイデアを台無しにしてしまう

37 ティルトのときの自分の性向を理解し、対策を取る

38 偏頭痛級の問題に出会ったら、すぐに分かる

39 誤っても、うろたえない

40 小さく賭けて仮説の正しさを検証する、それまでオールインに出るな

41 二度目のチャンスはめったにこない、一度目のチャンスを逃すな

42 たとえ偏頭痛級の問題を見つけても、解決策作りには警戒心と見直しが必要

43 顧客が商品を欲し、それを実現するビジネスモデルが存在すると証明せよ。 それまでオールインは禁物

44 当初のアイデアの良さ(あるいは最初の手札の強さ)は常に相対的なもの

あとがき

 

参考

Diana Kander(著者サイト)

Our approach to innovation is dead wrong | Diana Kander | TEDxKC

 

関係する書籍(当サイト)

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ジョブ理論(Jobs to Be Done)

クレイトン・M・クリステンセン (著)、タディ・ホール (著)、カレン・ディロン (著)
出版社:ハーパーコリンズ・ ジャパン(2017/8/1)
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ゼロ・トゥ・ワン
君はゼロから何を生み出せるか

ピーター・ティール、ブレイク・マスターズ(著)
出版社:NHK出版(2014/9/25)
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リーン・スタートアップ(Lean Startup)
ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす

エリック・リース(著)、伊藤 穣一(解説)、井口 耕二(翻訳)
出版社:日経BP社 (2012/4/16)
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ザ・ベロシティ Velocity
製造業・起死回生のシナリオ
ディー・ジェイコブ、スーザン・バーグランド(著)、三本木 亮(訳)、久道 雅基(解説)
出版社:ダイヤモンド社
Amazon.co.jp:ザ・ベロシティ Velocity

 

STARTUP(スタートアップ)

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