デジタルトランスフォーメーションの動向-配車システムをめぐるタクシー業界-

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タクシーは、個別のニーズに柔軟に対応でき、人々の生活にとって、身近で、社会経済活動に不可欠な輸送手段です。

利用者の安全・安心を確保し、高齢化、人口減少、訪日外国人の急増などの社会変化を背景に生まれている新たなニーズを捉え、事業の活性化を図り、地域を支える公共交通として、タクシー事業の持続性を確保するための人材確保や経営効率化を図っていくことが必要となっています。

特に、自動車・自動車関連産業を取り巻く環境は、クルマの電動化やITとの統合、エネルギーや交通インフラといった社会システムの変化など、大きな転換点を迎えています。

タクシー業界においても、従来の運用・慣習等にとらわれずに、新しい技術の利点を最大限に活用するなどで、転換点を大きなビジネスチャンスとして自ら需要を創出するなどの積極的な姿勢が必要となります。

 

タクシー業界は、2002年2月の規制緩和により、新規参入と増車料金の多様化が進んだ結果、競争が激化し、供給過剰や労働条件の悪化などが顕在化しました。

そして、2009年10月の「適正化特措法」による過当競争の緩和や労働条件の改善、2014年1月の「改正タクシー特別措置法」による特定地域での減車義務化や公定幅運賃などが定められました。

この様な経緯の中、経営者の高齢化や後継者問題、大手私鉄のタクシー部門の再生、売上縮小・設備や車両の更新経費の重荷など、構造的な課題への対応も必要となっています。

タクシー業界の動向を整理すると以下の通りとなりますが、タクシー各社は生き残りをかけて、M&A(1996年1月~2016年6月の約20年間で119件)を含めた様々な努力をしています。

  • ・規制緩和以降、タクシーの台数は飛躍的に増加し、供給過多の構造となり、1台あたり収益は低下している。
    さらに、景気の冷込みや経費削減などで、利用者は減少傾向にある。
  • ・ポイントサービス、スマートフォンによる配車、電子決済の導入など、付加価値による競争優位を確保しようと努力している。
  • ・妊婦や育児支援、ドアサービス、マナー向上のための乗務員教育にも努めてる。

そこで、トヨタとJapanTaxi、ソニーとタクシー会社6社、第一交通産業とウーバー(Uber)を中心に、タクシー配車における最近の動きについて整理します。

各社の動向の背景にあるのは、総走行距離に占める営業収入の対象となる走行距離の比率(「実車率」)の向上にあります。

「ハイヤー・タクシー年間2017」によると、2016年度の実車率は、東京都で45.2%、大阪府で44.2%、愛知県で39.8%という状況でした。

タクシー配車システムは、地域の天候やイベントの開催状況などの情報を集め、タクシーに乗る人の需要がある地域を予測し、その地域にタクシーを重点的に配備する機能が中心となります。

もう一つ派生的な動きとして、「需給対応型の運賃設定」という規制緩和への働きかけもありそうです。

需要が増えそうなところの運賃を他よりも高く設定できるようにしてタクシーを集め、効率的に収益を上げることができます。

 

一方、営業資格のない自家用でのタクシー営業(「白タク」)やライドシェアの危険性は、乗客と運転者の間に安全運行・事故対応などの保証はありません。

日本においては「白タク」行為は法律で禁止されており、見知らぬ他人と同乗することに対する安全性への懸念などから、それらのサービスに対しては否定的な意見もあります。

しかし、インターネットを活用したプラットフォーム企業は、独自のビジネスモデルで業界に参入し、提供するサービスは実社会との結び付きが強くなってきています。

プラットフォーム企業も実社会における社会的責任を負うべき段階にきており、法律もその実情に追い付きつつあるようですが、国内においては安心・安全を第一優先としながらIT武装していくことが必要となります。

 

タクシー配車における各社の動向

トヨタとJapanTaxi

JapanTaxi:2017年に累計91.5億円の資金調達

  • ・お客様の乗車体験を高めることに加え、タクシー事業者に対しても業務効率の高いオペレーションシステムなどの開発・提供を強化することで、タクシー事業者が抵抗感なくデジタライゼーションを促進できる環境を整備
  • ・急速に変化する外的環境に対応するために、「全国タクシー」アプリの操作性の向上や配車時間の短縮、革新的な新機能などを追加

2016年8月5日 トヨタ

  • ・全国ハイヤー・タクシー連合会との協業を発表
  • ・東京エリアで通信型ドライブレコーダーを活用した実証実験、タクシー業界の効率化を図る研究とサービスの開発へ取り組み

2017年6月 JapanTaxi
トヨタも出資している「未来創生ファンド」から5億円の資金調達

2017年10月 JapanTaxi
「タクシー会社(社名は非公表)2社」から総額1億円の資金調達

2018年2月8日 トヨタがJapanTaxiに約75億円を出資
タクシー事業者向けサービスの共同開発等を検討することにJapanTaxiと合意

2018年2月26日 JapanTaxi
「未来創生ファンド」から10.5億円の資金調達

2018年3月9日 トヨタ、JapanTaxi、KDDI、アクセンチュア
人工知能を活用したタクシーの「配車支援システム」を開発し、東京都内で試験導入を開始(2018年度中の実用化を目指す)

  • ・人工知能(AI)を活用して東京都内500mメッシュ毎のタクシー乗車数を30分単位で予測
  • ・タクシーに搭載されたタブレットの地図上に、予測されたタクシー乗車数、周辺の直前の空車タクシー台数も同時に表示し、ドライバーは需要と供給のバランスを見ながらタクシーを運行
  • ・今回の試験導入では、実際に本システムを利用したドライバーの2月の売り上げが平均で前月よりも1日あたり20.4%増加(ドライバー全体の増加率9.4%を上回る成果)

JapanTaxi株式会社

  • ・タクシー配車アプリ「全国タクシー」を2011年より提供開始
  • ・2017年12月 累計400万ダウンロードを突破
    47 都道府県6万台超(全国のタクシー台数の25%)
  • ・2020年までに配車可能タクシー台数を9万台(全国のタクシー台数の約40%のシェア)に、累計アプリダウンロード数を1,600万件に伸ばす予定

 

ソニーとタクシー会社6社

2018年2月20日 AI技術を活用した配車サービス事業に関する意向確認書締結

  • ・タクシー6社:グリーンキャブ、国際自動車、寿交通、大和自動車交通、チェッカーキャブ無線協同組合、日の丸交通
  • ・タクシー会社6社とソニーペイメントサービスは、配車サービスアプリなどを開発・運営する新会社を2018年春に設立を目指す
  • ・ソニーは、タクシーの需要予測などに向けたAI技術などを提供

新会社の業務

  • ・AI技術を活用した配車サービスの開発と運営、配車サービスを利用するためのアプリケーションや関連サービスの開発と運営、タクシーデータの利活用、決済代行サービスの提供、タクシーを活用した生活支援サービスなどの企画運営
  • ・提供するサービスは、参画を希望する全国のタクシー事業者が利用できるプラットフォーム上で提供する予定

タクシー会社6社

  • ・会社の枠を越えて配車サービスなどを活用することで、お客様が必要な時に、必要な台数のタクシーを用意できるようにするなど、お客様の利便性向上につなげることが目的
  • ・都内最大規模の計1万台を超えるタクシー車両を所有

 

第一交通産業とウーバー(Uber)

2018年2月19日 配車サービスのUber(ウーバー)の配車アプリでもタクシー配車を可能にすることについて協議、検討を開始

  • ・外国人観光客がなじみのある配車アプリによってタクシーを使いやすい環境を整備
    外国人観光客をターゲットとした「白タク」行為の排除へもつなげる
  • ・滴滴出行と協業することにより、中国人観光客をウーバーと連携することで欧米や東南アジアからの訪日客を取り込む
    また、ウーバーと滴滴出行以外の配車サービス企業との連携も検討

配車サービス大手のUber(ウーバー)及び中国の配車サービス大手である滴滴出行(ディディチューシン)の両社へは、ソフトバンクグループも出資している。

第一交通産業グループ

  • ・2017年3月期の在籍車両:8,458台
  • ・タクシー子会社120社、約200営業所のスケールメリット
  • ・スマートフォンでタクシーが呼べる自動配車アプリ「モタク」を展開中
    自動配車運用(2018年3月15日現在:6,095台)

 

その他

2018年1月18日 国土交通省と東京ハイヤー・タクシー協会が「相乗りタクシー」実証実験

  • ・東京23区と武蔵野市、三鷹市で、2018年1月22日~3月11日まで実施
  • ・大和自動車グループ4社から649台、日本交通グループ11社から300台が参加

サービス概要

  • ・利用者は配車アプリに表示される地図で乗車位置と降車位置、乗車条件などを指定し、利用規約にも同意する。
  • ・アプリ側は利用者から指定された条件に基づき、同じ方向に向かい、かつ条件が合う利用者を探索し、マッチングさせる。
  • ・運賃は同乗者と折半する形で自動算出されて、かつ乗車前に確認でき、クレジットカードでの決済となる。(マッチングが成立しなければキャンセル)

 

2017年9月4日 ディー・エヌ・エー(DeNA):人工知能(AI)技術を活用したスマートフォン向けタクシー配車アプリ「タクベル」の実証実験

  • ・神奈川県タクシー協会と協力し、横浜市の対象エリアで、2017年9月12日~10月31日まで実施
    横浜市の中区、西区、JR横浜線沿線(東神奈川~長津田)周辺で、タクシー約200台を走行
  • ・AIを使ってタクシーと乗客のマッチングを効率化し、乗客のストレスや運転手の負担を減らす狙い

サービス概要

  • ・アプリ上で、配車依頼やタクシーの到着予想時間の事前確認、指定の場所への配車依頼が可能
  • ・ユーザーの周辺を走るタクシーを地図上に表示し、空車状況も確認可能
  • ・事前にクレジットカードなどを登録しておけば、アプリ上での決済も可能

 

タクシー事業に関係する主な法改正

昭和45年(1970年) 「大都市におけるタクシーサービスの改善対策」を施行

平成14年(2002年) 「道路運送法」改正
参入規制が免許制から許可制とされるなどの制度が変更

  • ・事業者間の競争環境が醸成されサービス多様化による利便性の向上などの効果がみられた。
  • ・地域によってはタクシー車両が大幅に増加し、同時に発生していた需要の減少傾向と相まって、タクシー事業の経営環境は大変厳しいものとなった。
    とりわけ賃金の低下を通じて運転者の労働環境の悪化を招き、タクシーの安全性や利便性を低下させ、利用者の利益を大きく損なっているとの懸念が指摘されていた。

輸送の安全と運転者の質の確保・向上を図るための運転者登録制度の対象地域を拡大

  • ・平成17年(2005年)に設置
    交通政策審議会「タクシーサービスの将来ビジョン小委員会」
  • ・平成20年(2008年)に設置
    交通政策審議会「タクシー事業を巡る諸問題に関する検討ワーキンググループ」

平成21年(2009年)法律64号
「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法」(「タクシー特措法」)策定

  • ・供給過剰進行地域における対策、自主的な減車
  • ・一定の供給輸送力の削減と運転者賃金の上昇が見られたものの、当初の期待ほどの効果とはならなかった。

平成25年(2013年)11月成立の議員立法
「タクシー特措法」、「道路運送法」(昭和26法律第183号)、「タクシー業務適正化特別措置法」(昭和45年法律第75)改正

  • ・2013年東京でタクシーが起こした人身事故:4,157件(全自動車の事故数に占める割合は9.9%)
  • ・1989年:3,151件(同5.8%)

平成27年(2016年)1月
「新しいタクシーのあり方検討会」を国土交通省自動車局に設置

  • ・「生産性の向上」「サービスの向上」「安全・安心の向上」を3本柱
  • ・事業者による主体的な取組及び国・自治体等による諸制度の適切な運用について方針をとりまとめ

 

参考

新しいタクシーのあり方検討会
国土交通省自動車局

 

トヨタとJapanTaxi関連

トヨタ、JapanTaxi、KDDI、アクセンチュアの4社、人工知能を活用したタクシーの「配車支援システム」の試験導入を開始
2018年3月9日 JapanTaxi株式会社

トヨタ、JapanTaxi、KDDI、アクセンチュアの4社、人工知能を活用したタクシーの「配車支援システム」の試験導入を開始
2018年3月9日 KDDI株式会社

全国タクシー|4倍速で400万DL達成!
2018年1月12日 JapanTaxi株式会社

 

JapanTaxi株式会社

  • ・日本交通株式会社を母体とし、モビリティ分野のソフトウェア・ハードウェア開発を行うITベンチャー企業
  • ・タクシーアプリ「全国タクシー」、タクシー車内サイネージ広告「TOKYO PRIME」、多言語対応・決済機付きタブレットなど、新しい公共交通のインフラを構築

 

未来創生|SPARX Asset Management

  • ・スパークス・グループ株式会社を運営者とし、トヨタ自動車株式会社、株式会社三井住友銀行を加えた3社の出資で、2015年11月より運用を開始
  • ・2017年12月末時点では、上記3社を加えた計20社から出資

 

ソニーとタクシー会社6社関連

AI技術を活用した配車サービス事業に関する意向確認書の締結について
2018年2月20日 Sony Japan ニュースリリース

 

第一交通産業とウーバー(Uber)関連

第一交通産業グループ

本日の一部報道(ウーバー社)について(PDF)
2018年2月19日 第一交通産業株式会社

第一交通産業グループの自動配車アプリ「モタク
第一交通産業グループ

 

その他

平成30年1月から「相乗りタクシー」実証実験開始
2017年12月19日 国土交通省

DeNA、AIを活用したタクシー配車アプリの実用実験を今夏に開始
2017年6月23日 株式会社ディー・エヌ・エー

『賢く』タクシーがよベル。タクシー配車サービス「タクベル
株式会社ディー・エヌ・エー

 

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