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LEAP ディスラプションを味方につける絶対王者の5原則
How to Thrive in a World
Where Everything Can Be Copied
ハワード・ユー(著)、東方雅美(翻訳)
出版社:プレジデント社(2019/11/29)
Amazon.co.jp:LEAP ディスラプションを味方につける絶対王者の5原則
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LEAP(跳躍)かFALL(凋落)か
決め手はテクノロジーよりストラテジー!LEAPは絶え間ない市場の変化と、ほぼ時間差のない競合からの追い上げという過酷な環境のなかで企業が繁栄し続けるための戦略と実践の書
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本書は、世界トップクラスのビジネススクールIMD(スイス・ローザンヌ)の教授で、同スクールのエグゼクティブ向けコースAMPディレクターの著者が、「すべてがまねできる世界で、企業はどのようにして成功するのか」という謎を解明した一冊です。
著者は2011年にIMDビジネススクールの教授陣にフルタイムで加わり、それ以降続けてきた研究の集大成として本書を位置付けています。
さまざまな先行企業の歴史を例示しながら後発企業の追い上げに打ち勝ってきた要因を解説し、今後のトレンド(3つのレバレッジ・ポイント)への対応策を示していますので、企業リーダーの方々にとって事業の持続的な競争優位を考えていくうえで大変参考になります。
本書は3部で構成されています。
- ・第1部では、歴史を紐解くことによって過去を理解し、そこから新たな知識にリープ(跳躍)できることを示しています。
企業にとってリープすることがなぜ大切なのか、大きく成長した企業がどのようにリープ(跳躍)してきたかを解説しています。
- ・第2部では、未来に目を向け、「知的なマシンの止めようのない進歩」と「ネットワーク上であらゆる端末が常時接続するユビキタスな世界の台頭」という、二つのトレンドが絡み合って、全ての企業を追い立てていることを示しています。
リープ(跳躍)を成功させることは「待つための鍛錬」と「飛び込むための決断力」という一見矛盾する能力をマスターし、バランよく組み合わせることの重要性を示しています。
- ・第3部では、トップとボトムアップのアプローチを混ぜた戦略について述べています。
伝統ある企業が自社を再構築しようとするときに、その戦略で最後のハードルをどのように超えていくかを説明しています。
「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」という言葉がある。
この表現は、本書の精神をとらえている。
本書全体を通じて、わたしは業界の歴史を比較し、さまざまな企業がとった行動を比較する。
その行動の成果を比較することによって、わたしは五つの原則を導き出した。
この原則は、人材や情報や資金が簡単に、安価に、ほぼ瞬時に動く時代に、企業がどのようにして成功することができるかを、説明し、予測するものだ。
成功するための5原則
リープ(跳躍)
ハワード・ユー『LEAP ディスラプションを味方につける絶対王者の5原則』を参考にしてATY-Japanで作成
長期にわたって成功するための唯一の方法は、「リープ(跳躍)」することである。
先行企業はそれまでとは異なる知識分野に跳躍して、製品の製造やサービスの提供に関して、新たな知識を活用するか、創造しなければならない。
そうした努力が行われなければ、後発企業が必ず追いついてくる。
先行企業がリープ(跳躍)できない理由は、企業幹部らが現在の事業の目標達成に関して大きなプレッシャーを受けていることであり、長期的な視点でよいと思われることは短期的には犠牲を伴うことにある。
リープ(跳躍)は、豊かな知識を備えていた場合でも困難が多く、どんな企業でも適切に行われるわけではない。
実行できた企業も、忍耐力や大胆さ、先見性、時には幸運があったからこそ成し遂げられた。
異なる知識分野への移行が非常に難しいからこそ、経験豊かな企業ほど、トップに立ち続けられる確率が高くなる。
発見や発明は、前任者の実績のうえに実現され、難しい進歩は、経験やそれまでの知識を基に成し遂げられる。
先行企業が後発企業に打ち勝ってきた歴史では、セルフ・カニバリゼーションを受け入れることの重要性を教えてくれる。
セルフ・カニバリゼーションは企業が自ら進んで、より価値が低いと思われる自社製品やプロセスを、別の製品やプロセスに置き換えることである。
生産能力やブランド認知、企業機密などの先進企業の構造的な優位性は、よくても一時的なものであるため、セルフ・カニバリゼーションが重要となる。
新たな知識分野にリープ(跳躍)することとは、古いものに重点を置かなくなることであり、新たに立ち上がった製品やサービスが古い製品やサービスに非常に大きなプレッシャーをかけることである。
企業が未来を志向するのであれば、継続的に新たな分野に手を伸ばす必要があることを認識し、新しい事業に既存の事業を追い越させる心構えを持たなければならない。
ゆっくりとした動きを知らせるシグナルを騒音と区別することが重要で、正しいシグナルに耳を傾けるためには忍耐力と規律が必要である。
チャンスをつかむためには、必ずしも最初に動くのではなく、最初に正しく理解することが求められ、そのためには勇気と決断力が必要である。
リープ(跳躍)を成功させることとは、「待つための試練」と「飛び込むための決断力」の一見矛盾する二つの能力をマスターし、バランスよく組み合わせることが重要である。
リープするための5原則(新しいマネジメント方法)
原則1.自社の基盤となっている知識とその賞味期限
- ・回避するためには、企業幹部はまず何よりも、いま自社の基盤となっている知識、核となる知識を再評価し、その成熟度合を評価し直す。
- ・危険を避けるためには、まず自分たちの位置を知ることから始めなければならない。
原則2.新たな知識分野を見つけ、開拓する
- ・ある分野での知識の発見が別の分野での発見につながることがあり、継続的な発見のプロセスが成長のための新たな道を切り開いていくことになる。
- ・競争優位を確立するためには、新たな知識の吸収と、新市場や新事業のタイムリーな創造が非常に重要になってくる。
原則3.地殻変動レベルの変化を味方につける
- ・歴史によって過去を理解することが新たな知識分野へのリープ(跳躍)という概念の確立につながり、歴史についての理解を基に未来を考える必要がある。
- ・業界ごとに重要な変数は存在するものの、業界や地域にかかわらず、誰もが感じる地殻変動のような劇的な変化がある。
- ・勝利するためには、自らの周囲の地殻変動を活用し、それに従ってリープ(跳躍)しなければならない。
- ・テクノロジー開発者であれ、従来の製造業者であれ、起業家であれ、非営利組織であれ、今後数十年で重要になってくる力を認識し、他社よりも先に自社のコンピタンスを再構成しなければならない。
原則4.実験、実験、実験
- ・企業幹部らは「何を知らないかも知らない」、重要な情報が欠けていることさえ気づいていない可能性がある。
- ・証拠に基づいた意思決定を行うためには頻繁に実験を行う必要があり、そうすることによって、わからない部分を減らして、必要なレベルの情報をもって結論を下すことができる。
- ・実験こそが真実への扉であり、そこから外の光を取り入れることができる。
・原則5.実行への「ディープダイブ」
- ・認識することと実際の行動とは別ものであり、知ることだけでは十分ではないし、アイデアが日々の行動とオペレーションに変換されない限り、先行企業は後発企業に排除されるリスクにさらされることになる。
- ・先行企業のリープ(跳躍)を難しくするのは、変革的な事業提案も上の階層に上げられるなかで却下されてしまうためで、頂点に立つ人物が必要な時に介入して新たな方向性を実現しなければならない。
- ・経営トップ個人が重要な分岐点で介入し、その力を活かして障壁を乗り越えることを「ディープダイブ」と呼び、それは地位の力よりも知識の力によって可能になるものである。
3つのレバレッジ・ポイント
ハワード・ユー『LEAP ディスラプションを味方につける絶対王者の5原則』を参考にしてATY-Japanで作成
3つのレバレッジ・ポイントは、今後数十年間ほとんどの企業に影響を与え、日々のビジネスの一部になっていくため、自社に有利になるようにルールを書き換える必要がある。
- ・ユビキタスなネットワーク環境の出現
現在、意思決定の仕方の変化に直面しており、新たな競合企業は経験豊かなマネジャー数人の判断よりも、大勢の人々(クラウド)の知恵に頼るようになってきている。
- ・知的なマシンの止めようのない進歩(人間の直感の自動化)
大手企業は、先進的な機械学習専門の研究所を立ち上げたり、顧客がデータ・インフラに直接アクセスできるようにしたりしている。
- ・人間の仕事の仕方の変化(人間中心のクリエイティビティの重要性拡大)
オフィスワークのかなりの部分が自動化されていくが、それはより高度な仕事を行えるよう、人間の脳が解放されるだけであり、クリエイティビティを拡大することによってAIと人間の専門性が交じり合うということである。
3つのレバレッジ・ポイントには企業リーダーが意欲的に対応する必要があり、アイデアを日々の行動に生かさなければ、先行企業は後発企業に打ち負かされる危険がある。
将来に目を向けている企業はセルフ・カニバリゼーションを率先して行う必要性を認識しているが、その受容は自然に行えることではないため、トップが先陣を切って乗り越える「ディープダイブ」が不可欠となる。
企業戦略立案における2つのアプローチ
意図的戦略
分析できるものは全て厳密に分析し、企業の上層部が事業に関係のある答えを出す。
通常は財務的な確実性を厳密に評価して終わる。
賞味現在価値が高いと、選択した戦略は実施する価値があると確信できる。
最も効率的な仕事の仕方がわかっている環境下では、目標は明確に示されるべきで、正確に実行されるべきである。
しかし、トップダウンの計画は、常に言葉だけで、実際の業務に反映させることは少ない。
創発的戦略
中間管理職やエンジニア、営業担当者、財務スタッフなどが行う日々の意思決定や投資の意思決定が積み重なって生じる効果であり、それらの意思決定が企業の発展において、長期的には非常に大きなインパクトをもたらす。
そうした意思決定はたいてい戦術的なもので、会社による公式な審査を受けない場合が多い。
比較的安定した環境にある組織は、戦略をある程度細かく計画できるが、予測しにくい環境にある組織は、戦略方針やガイドラインをいくつかは決められるが、それ以外の部分は状況が展開するにつれて表れて(創発して)くる。
「何を知らないかも知らない」状況では、創発的戦略をとる必要がある。
ホンダが米国市場で成功できたのは、意図的戦略をひたすらに追求したからではなく、予測していなかった事業機会を認識できたからこそである。
創発的戦略の役割は、事業環境が予測不可能になっていくなかで、意図的戦略に比して重要性を増していく。
経営トップは、いずれは創発的な探求を意図的な事業活動に変えるという決定を下す必要ががあり、直接コミットしなければ、一般従業員の取り組みが革新的であっても失敗する。
成功と失敗を分けるのは、最初から正しい道を選ぶことではなく、まだやり直せるうちに間違いから学べるかどうかである。
「リーン・スターアップ」における組織は、学習の機会を最大化し、市場の知見を集め、新技術の商品化のための資金を最小化する。
そして、必要最小限の機能を備えた製品(MVP:Minimum Viable Product)で、「つくり、評価し、学ぶ」のサイクルを可能な限り早くまわすことが有効である。
本書は歴史を遡って、パイオニアであった西洋の企業の過去を振り返ることからスタートした。
失敗した企業もあれば、何とか生き延びた企業も、繁栄した企業もある。
しかし、本書は未来のためのハンドブックでもある。
さらに本書は、先行企業が自社の事業を見直し、また顧客との関係や存在理由を考え直すためのマニフェストでもある。
まとめ(私見)
本書は、「なぜ、先行企業は成功し続ける場合もれば、消えていく場合もあるのか」という疑問について探求し、さまざまな企業のストーリーを見ることによって、変化する複雑な世界に対応するための原則を明らかにしています。
また、実験こそが真実への扉であるとして、重要な予測の方法や、それを厳密な実験によって証明する方法についても検討しています。
企業の歴史を見ることによって、大きな変革や難しいトレードオフの決断をどのようにして下したのかが理解でき、また多くのデータを示しながら解説を加えているので、都合の良い部分だけを選んでいないと言えます。
先行企業が後発企業の追い上げに打ち勝ってきた要因を解説し、今後のトレンド(3つのレバレッジ・ポイント)への対応策を示している他、伝統企業が自社を再構築する際の戦略について解説していますので、企業リーダーが事業の持続的な競争優位を考えていくうえで大変参考になります。
根本となる知識分野が変わらないままだと、より先進的な生産設備を開発できる新規企業に優位性があります。
本書では、ピアノ製造でヤマハがウエスタンウェイを負かした事例を示している他、PCや携帯電話、自動車、太陽光パネル、繊維製品などの例も紹介しています。
また、バーゼルの製薬会社が有機化学から微生物学へリープ(跳躍)し、P&Gは機械工学から消費者心理へリープ(跳躍)して、競争優位を維持している様子を詳細に解説しています。
これらから、先行企業は一つの知識分野からもう一つの分野へシフトし、その新たな知識基盤の発展についていけるときにだけ、先行利益を実現できることを示しています。
かつては垂直統合を行い、生産システムの全ての段階をコントロールすることを強みとして、規模が重要で、範囲の経済が支配的な力をもたらすと考えれていました。
続いて、日本企業の台頭で、品質管理やシックスシグマ、リーン生産方式が真の答えだと考えられるようになりました。
そして次に、サプライチェーンの中で補助的な部分は全て外注して、自社の強みである優れた性能の実現に集中してきました。
しかしながら、どのマネジメントのイノベーションをとってみても持続的な競争優位についての答えは得られていないし、新たな企業が次々と先行企業を追い払ったものの、やがては次の新たな企業の犠牲になっています。
本書では歴史を理解することは未来の意思決定で活用できるとして、今後のビジネスにおける3つのレバレッジ・ポイントとして「ユビキタスなネットワーク環境」「知的なマシンの止めようのない進歩」「人間中心のクリエイティビティの重要性拡大」をあげています。
そこで、長期的な成功は異なる知識分野の組み合わせからもたらされることや、後発企業をかわすためにユビキタスな環境と人工知能を活用しているなど、さまざまな企業の取り組み事例を示しながら解説しています。
マイクロソフトやグーグル、IBM、アマゾンなどは社内で開発した機械学習の技術をAPIで企業クライアントが自由に使えるように提供していること、リクルートはいくつものプラットフォームを用いて個人事業では実現できないような機能に投資できていることなど、さまざまな企業の取り組みを詳細に例示しています。
その中では、プラットフォーム戦略やオープン・イノベーションの重要性を指摘しながら、3つのレバレッジ・ポイントへの対応という未来に目を向けた対応策を示しています。
事業のやり方を大胆に変革し、変革を支えるために新たな知識分野を求めることは、業界にかかわらず可能であり、一つの知識分野から別の分野へリープ(跳躍)することで、企業の発展を促すことができるとしています。
そのためには、セルフ・カニバリゼーションを率先して行うことが必要であり、トップが先陣を切って障害を乗り越える「ディープダイブ」が不可欠となります。
そして、ディープダイブは、地位による力よりも知識の力に頼ることが重要となります。
企業が未来を志向するのであれば、継続的に新たな分野に手を伸ばす必要があることを認識し、新しい事業に既存の事業を追い越させる心構えを持たなくてはなりません。
本書は、なぜ企業にとってリープ(跳躍)することが大切で、大きく成功した企業がどのようにリープ(跳躍)してきたかを例示し、今後どのようにリープ(跳躍)すべきかを考えていくうえで参考になる一冊です。
目次
イントロダクション 競争の仕組み
第1部 歴史から学ぶ
第1章 「日米ピアノ戦争」の教訓 ― 強みが弱みに変わるとき
第2章 新たな知識分野へ飛躍する ― 準備できている者が生き残る
第3章 セルフ・カニバリゼーションを恐れるな ― どうせ滅ぼされるなら…
第2部 未来を見据える
第4章 ユビキタスな環境を味方につける ― 一人の天才から集団の知識へ
第5章 人工知能を味方につける ― 直感からアルゴリズムへ
第6章 マネジメントにクリエイティビティを ― ビッグデータから人間としての強みへ
第3部 いまやるべきこと
第7章 知識を行動に変えるために
エピローグ
参考
「『LEAP ディスラプションを味方につける絶対王者の5原則』」の記事一覧
PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
LEAP Online program- Business growth strategies course with Howard Yu
Howard Yu - Mars Confectionary Talk in Chicago
デジタルトランスフォーメーション関係(当サイト)
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