書籍 ピボット・ストラテジー 未来をつくる経営軸の定め方、動かし方/オマール・アボッシュ(著)

書籍 ピボット・ストラテジー 未来をつくる経営軸の定め方、動かし方/オマール・アボッシュ(著)

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ピボット・ストラテジー 未来をつくる経営軸の定め方、動かし方
Pivot to the Future: Discovering Value and Creating Growth in a Disrupted World

オマール・アボッシュ(著)、ポール・ヌーンズ(著)、ラリー・ダウンズ(著)、牧岡 宏(監修)
出版社:東洋経済新報社(2019/10/4)
Amazon.co.jp:ピボット・ストラテジー 未来をつくる経営軸の定め方、動かし方

  • アクセンチュア、コムキャスト、ウォルマート、ペプシコ、ユニクロ……
    100社以上の豊富な事例に学ぶ、過去・現在・未来の「賢明なピボット」

    変化し続ける企業だけが、高収益を実現できる!

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 2022年12月10日 アンドリュー・チェン『ネットワーク・エフェクト』日経BP (2022/11/17)

本書は、アクセンチュアの通信・メディア・ハイテク本部でグループ最高責任者の著者らが、創造的破壊の荒波の中で、その流れの力を利用して生き残るために、アクセンチュア自身が実行した戦略と現実を紹介した一冊です。

「賢明なピボット(方向転換:Wise Pivot)」を、これまで誰も手を付けていない新しい収益源、市場の非効率性が原因で「封印された」状態になっている「潜在的収益価値」を他社よりも先に手に入れて、将来の成長を確実なものにするための戦略としています。

アクセンチュア自身の取組事例に加え、100社を超える企業がどのようにして「過去・現在・未来の事業」の価値を発見したかを例示しながら、業界や地域を問わず多くの企業の成功をもたらす戦略を詳細に解説していますので、ビジネスリーダーの方々にとって自身の事業の変革に向けた戦略を考えるうえで大変参考になります。

本書は2つのPartで全8章、そして結論で構成されています。

  • ・Part1(第1~3章)では、テクノロジーが可能にする変化のペースと実現するスピードの間にはギャップ(潜在的収益価値のギャップ)があることを指摘し、潜在的収益価値が解放されない「7つの過ち」を明らかにして、解放のための「7つの勝利戦略」を解説しています。
  • ・Part2(第4~8章)では、、賢明なピボット(方向転換)についてアクセンチュアや他企業の取り組みを例示しながら詳細に解説し、過去・現在・未来の3つのライフサイクル・ステージにおける管理方法、中核事業の過去から未来へピボットを開始する際の必要な資産・資源のポートフォリオの構築・維持について詳細に説明しています。

この経験を通じて私たちが得た教訓は、予測される不確実性に直面したとき、ひとつの大規模な「変革」だけではそれを乗り越えられない、ということだ。

私たちは過去半世紀にわたるビジネスの成功と失敗の歴史を振り返った。

そして絶え間なく創造的破壊をもらたす危険性のある変化に対する唯一の解決策は「継続的な再構築」、すなわちひとつの事業機会から次の機会へと、迅速かつ効率的にピボットすることが可能になるように、ビジネスを再び設計することであるという結論を下した。

賢明なピボット(方向転換:Wise Pivot)

「賢明なピボット」とは、製品・顧客・技術などの中核資産を中心に、継続的に事業の方向を転換し、ひとつのステージから次のステージへと移行していき、市場環境の変化と創造的破壊力のある技術の登場に即座に対応する、というビジネス価値を創造するアプローチのことをいう。

上級管理職による大胆な技術的リーダーシップ、有望な創造的破壊力のあるビジネスの創出と買収、そしてビジネスプロセスを次の段階へと進めるために、従業員の再教育と資産の再配分を行う管理されたプロセスが求められる。

自らの「賢明なピボット」を実行し、潜在的収益価値を解放することで、既存の脅威を素晴らしいチャンスへと変えることができる。

テクノロジーによる絶え間ない変化が牽引する市場では、ピボットを何度も繰り返し、流れに逆らうのではなく変化の波に乗る戦略的アプローチが求められる。

過去の事業・現在の事業・未来の事業というライフサイクルの各ステージの中で、またステージ間で相互に連携して機能する戦略を通じて、リーダーは3つのステージ全てのバランスを取るために資産と投資の差調整を継続的に行う必要がある。

「賢明なピボット」は、中核資産を使い果たすのではなく、そうした資産を中心として方向転換を行い、制御不能になるのではなく再び制御を取り戻す。

  • ・過去の事業
    新しい技術を古い商材に適用し、将来に向けた方向転換を後押しするための成長を再開する。
  • ・現在の事業
    最も成功した製品やサービスへの戦略的な投資を、売上や収益の成長を加速できるという期待がある限り継続する。
  • ・未来の事業
    慎重な計画と創造的破壊が起きるタイミングを洞察し、新しい収益を確立し、それを拡大しながら、一方で失敗を最小限に抑える。

創造的破壊から真に利益を上げるには、企業は商材から収益を得られる間を管理し、市場への浸透に合わせて急速に将来事業を拡大して、需要が減少したときには同じ速度で事業規模を縮小できるよう準備する。

「賢明なピボット」とは、単にビジネス・ライフサイクルの3つのステージにおいて無関係に行われる投資をバランスさせることではなく、ステージ間にあるシナジーを見出すことである。

「賢明なピボット」をマスターするためには、過去の事業・現在の事業・未来の事業を通じて、継続的で勇気ある変化を進めなければならないし、リーダーはそれぞれの投資比率を再検討し、バランスを保たなければならない。

S字曲線の3つライフサイクル・ステージ

S字曲線の3ステージ

オマール・アボッシュ『ピボット・ストラテジー』東洋経済新報社(2019年)を参考にしてATY-Japanで作成

本当に「賢明なピボット」とは繰り返し行えるもので、中核資産を取得してから除去するまで徐々に価値が減少する個別の資源としてではなく、過去の事業・現在の事業・未来の事業というライフサイクルの3つのステージを通じて継続的にバランスの修正を行う、動的な投資ポートフォーリオとして管理する。

資産のポートフォーリオを管理して、ひとつの資産アセットから次の資産アセットへと移行しながら、新しいテクノロジーを活用して古い中核資産を新しい中核資産に成長させることで過去・現在・未来の3つのステージを統合する。

コアコンピタンスというものを抽象的に定義し、抽象的なまま新しい市場に投入するだけでは十分ではない。

新しいテクノロジーが猛スピードで市場を形成し、新旧さまざまな企業が争う世界では、自社における今日の製品、市場、テクノロジーの具体的な事実に焦点を合わせ、それを改善することが重要である。

潜在的収益価値のギャップが広がったことで、想定されるS字曲線を超えて、各ライフサイクル・ステージのパフォーマンスを改善する機会が得られる。

新しいテクノロジーを導入してイノベーションを実現することで、3つのS字曲線全ての売上と収益を改善することができる。

「賢明なピボット」を実行するためには、過去の事業・現在の事業・未来の事業の3つのライフサイクル・ステージ内において、そしてそれらをまたぐ形で、資産の割り当てを大幅に変更する必要がある。

そこにはさまざまな障害があるが、克服していく必要がある。

  • ・ブランド、市場におけるポジショニングを変え、より先鋭的でイノベーションを指向した組織となり、ビジネスの焦点を消費者サービスやユーザーエクスペリエンスの設計と実装といった新しい領域に移行する。
  • ・新しいサービスを提供するために必要なスキルを身に着ける。
  • ・投資、予算編成、資源配分のプロセスを、既存の中核事業の維持から、新しい投資へ移行する。
3つのライフサイクル・ステージにおけるピボットの知恵

ピボットの知恵

オマール・アボッシュ『ピボット・ストラテジー』東洋経済新報社(2019年)を参考にしてATY-Japanで作成

事業における3つのライフサイクル・ステージのそれぞれを管理するには、従来の考え方を捨て、新しい「ピボット」の考え方に置き換える必要がある。

過去と現在の事業を管理するための「新しい知恵」に従うことは、収益と、ますます不確実になりつつある将来、未来の事業に集中できる競争上の自由を生み出すポートフォリオの構築を後押ししてくれる。

中核事業の強化と成長を同時に実現することで、市場シェアを維持し、収益の成長を実現し、そして収益の成長は、「賢明なピボット」を成功させるために役立つ可能性のあるリスクの高いテクノロジーやイノベーションへの再投資を可能にする。

3つの「新しい知恵」は、個々に適用するだけではなく調整された戦略の中で活用させなければならず、3つのライフサイクル・ステージ全体を通じて、バランスのとれた単一のポートフォリオを作成しなければならない。

「新しい知恵」では、「賢明なピボット」における個々の方向転換に対して全体的な戦略ビジョンを構築することに加えて、「バランス」と「集中」の両方を求めている。

過去の事業の能力向上

  • ・企業は成熟したテクノロジー(過去の事業)から最後となる利益を搾り取ることで、中核となる能力を向上させる必要がある。
  • ・成熟した事業を早期に終了するのではなく、代わりに新しいテクノロジーに再投資して、他の企業が見落としている潜在的収益価値を解放し、得られた利益を他の事業の成長を加速させるための投資余力として活用する。
  • ・予算編成の際には、昨年度の予算を出発点に増やしたり減らしたりするのではなく、全ての勘定科目をゼロにして新しい会計年度の検討を始める。

現在の事業の加速

  • ・ピークに近づいているように見える事業(現在の事業)の成長を加速する必要もある。
  • ・「金のなる木」事業をこれ以上改善できないと考えるのではなく、新しいテクノロジーによって事業の寿命を延ばしたり、そこから生み出す売上や収益を増やせたりする可能性があることを認識する。
  • ・従来のS字曲線の形を受け入れるのではなく、それを描き直すことで「金のなる木」を「花形」に変え、以前より速いペースと急な軌道で成長させる。

未来の事業への備え

  • ・新しいテクノロジーを採用して革新的な製品とサービスを生み出し、それが顧客によって短期間で導入されることに備える必要がある。(未来の事業)
  • ・新しい市場とそれを牽引するテクノロジーに対して後追いするような戦略を採用するのではなく、将来の幅広いオプションを積極的に実験し、芽が出たら迅速に拡大できるようなオプションのとれたポートフォリオを構築する。
  • ・自社の競争優位性、コアバリュー、ブランド差別化要因を正確に評価し、次に自社のビジネス、業界、顧客を対象とした新しいテクノロジーに注目し、潜在的収益価値のギャップの中で、リスクとチャンスを拡大する可能性が高いテクノロジーに焦点を当てる。
  • ・迅速に実行する能力が、未来へのピボットを成功させるために重要となる。

潜在的収益価値と蓄積されやすい4つの領域

テクノロジーの進歩によって新たなツールが生まれ、競合他社がそれを使って新しいデジタル製品やサービスを創造して、満たされていない潜在的な需要を解放するが、この潜在的な収益のことを「潜在的収益価値」という。

潜在的収益価値が蓄積されやすいのは「企業・業界・消費者・社会」の4つの領域であり、それぞれ異なる種類の競合他社と新規企業を惹きつけている。

劇的な変化が必要とされ、それにチャンスを見出せることが明らかな場合でも、それまで多くの労力をかけて構築してきた資産や、サプライヤーとの関係、顧客基盤、人的資源があるために、それらに対応できないこともある。

潜在的収益価値は、テクノロジーを活用することによって、顧客に対してより優れた経験を提供することを可能にする場合に蓄積する。

テクノロジーが可能にする変化のペースと、その変化が実現されるスピードの間にはギャップ(潜在的収益価値のギャップ)がある。

潜在的収益価値を解放する10のテクノロジー
拡張現実、クラウドコンピューティング、3Dプリンティング、ヒューマン・コンピューター・インタラクション、量子コンピューティング、エッジ・コンピューティング、人工知能、モノのインターネット(IoT)、ブロックチェーン、スマート・ロボティクス

「ビッグバン型創造的破壊」と「圧縮型創造的破壊」

  • ・潜在的収益価値のギャップを急速に拡大するテクノロジーは、新規参入者と動きの速い既存企業に窓口を開き、消費者に現在提供されているよりもはるかに優れた製品やサービスを提供することで、「ビッグバン型創造的破壊」をもたらす。
  • ・特に成熟した、資産集約型の業界では、古い商品から新しい商品に乗り換えるのが難しく、より大規模で、より目立たない形でゆっくりと進む創造的破壊(圧縮型創造的破壊)がある。

新しいテクノロジーを適用して古い製品をリスタートさせ、同時に新しい製品の開発を加速する。

そして得られた収益を投資に回して、次世代の組織を構築し、新しいテクノロジーに基づく新しい製品によって、ビジネスを急速に拡大する。

潜在的収益価値が蓄積されやすい4つの領域

企業
ビジネスモデルを変える力のあるデジタル技術が限定的にしか使われていない場合における潜在的収益価値

  • ・創造的破壊力のあるテクノロジーを活用し、ビジネスプロセスの効率を劇的に改善したり、革新的な新製品やサービスを導入したりすることで蓄積される。
  • ・企業の中で中核となる業務を日々管理するなかでも蓄積できる。
  • ・企業レベルで潜在的収益価値を解放するには、改善されたビジネスプロセスと、より効率的なテクノロジーの組み合せが必要となる。

業界
電気自動車の充電ステーションなど、共有インフラに関する能力や必要な投資が欠けている場合における潜在的収益価値

  • ・エコシステム全体を改善できるテクノロジーが、少数の業界関係者だけに利益をもらたし、停滞や提供(取引コスト)を生み出している場合、業界レベルにおいて潜在的収益価値が蓄積される。
  • ・既存企業は敏捷性に欠けることが多いため、新規参入者は業界に新しいルールを確立するか、または既存の競争相手を排除する新たなサプライチェーンを構築できる。

消費者
人気の観光地における空家など十分活用されていない個人資産や各業界・企業から提供されている商品・サービスに対する不満が消費者に蓄積されたいる場合における潜在的収益価値

  • ・テクノロジーによって過剰なコストを削減できる可能性があるにもかかわらず、それを消費者が負わなければならない場合に生まれる。
  • ・十分に活用されていない資産の活用だけでなく、消費者レベルでの潜在的収益価値の解放は、満たされていないニーズに対応して生産性や生活の質向上をもたらすことでも実行できる。

社会
電化製品のリサイクルなど、社会問題を解決するパートナーシップが形成されていない場合における潜在的収益価値

  • ・商業活動が全ての人々に役立つような便益を生み出さないとき、潜在的収益価値が蓄積される(正の外部性)
  • ・ある目的のためにつくられたプラットフォームを別の目的に活用することを通じても、社会レベルで潜在的収益価値の解放を実現できる。

潜在的収益価値を解放するためには、個々の企業、業界、消費者、社会に潜む潜在的収益価値に着目し、解き放つための革新的な方法を常に探し求めなければならない。

賢明なピボットに乗り出す前に、潜在的収益価値の認識や開放を阻む、企業の典型的な舵取りの過ちを理解し、対策していくことが重要である。

潜在的収益価値を解放する「7つの勝利戦略」

7つの勝利戦略

オマール・アボッシュ『ピボット・ストラテジー』東洋経済新報社(2019年)を参考にしてATY-Japanで作成

一般的に言われる「コストリーダーシップ戦略」や「差別化戦略」「集中戦略」の名のもとに、ひとつの目標を追求するだけでは不十分となっているため、「デジタル・ファースト戦略」を採用して、戦略立案者の好みではなく、顧客のニーズに最も適した戦略を採用する必要がある。

「デジタル・ファースト」のアプローチを総称したものが、「7つの戦略」である。

アクセンチュアの元SEOであるピエール・ナンテルムが本書の冒頭で、「それには勇気がなくてはならない」と語った。

ピエールの指摘には理由がある。

未来へのピボットは、リーダーが今日の安全な環境から離れる準備ができているときにのみ可能になる。

そして、それには勇気がなくてはならないのだ。

今日の中核製品が収益をもらたす寿命を終えようとしている可能性があることを受け入れる勇気。

未だ課題の見られる新しいテクノロジーに取り組む勇気。

シリコンバレーやその他のグローバルなテクノロジー・ハブから生まれたビジネスツールやマネジメントアプローチ上の最高のイノベーションを受け入れる勇気。

市場の状況が整ったときに新しい製品の提供を拡大する勇気。

まとめ(私見)

本書は、創造的破壊の荒波の中で、その流れの力を利用して生き残るために、アクセンチュア自身が実行した戦略と現実を紹介した一冊です。

「賢明なピボット」を、これまで誰も手を付けていない新しい収益源、市場の非効率性が原因で「封印された」状態になっている「潜在的収益価値」を他社よりも先に手に入れて、将来の成長を確実なものにするための戦略としています。

「潜在的収益価値」とは、テクノロジーの進歩によって新たなツールが生まれ、競合他社がそれを使って新しいデジタル製品やサービスを創造して、満たされていない潜在的な需要を解放して生み出される収益のことを意味しています。

しかし、この「潜在的収益価値」の解放を妨げている「7つの過ち」があることを指摘し、それらを解放するためのカギとなる「7つの戦略」を解説してくれています。

さらに、テクノロジーが可能にする変化のペースと、その変化が実現されるスピードの間にはギャップがあるとして、この「潜在的収益価値のギャップ」を意識した対応も重要であることを提言しています。

また、テクノロジー革命においては、「ビッグバン型」と「圧縮型」両方の創造的破壊が予測不可能な形で業界をつくり変えているため、潜在的収益価値を解放するためには一度限りの対応ではなく、連続した取り組みが必要であるとしています。

そこで、「過去・現在・未来」の事業における3つのライフステージのそれぞれを管理し、新しい「ピボット(方向転換)」の考え方に置き換えることを提言しています。

  • ・過去の事業においては、新しいテクノロジーに再投資することにより、他企業が見落としている潜在的収益価値を解放することができる。
  • ・現在の事業においては、新しいテクノロジーによって、既存事業の寿命を延ばすことができる。
  • ・未来の事業においては、新しいテクノロジーを使って将来の幅広いオプションを積極的に実験し、芽が出た瞬間に迅速に事業を拡大することができる。

この取り組みは個々に適用するだけではなく、調整された戦略の中で活用しなければならないし、3つのライフサイクル・ステージ全体を通じてバランスのとれた単一のポートフォリオを作成していくことの重要性を示しています。

そして、3つのライサイクル・ステージの間でバランスのとれた資産と資源のポートフォリオを使用して賢く実行していくために、「イノベーション能力」「財務規律」「人的資本(従業員と利害関係者)」の3つの中核資産を組み合せて、企業の歴史・文化・可能性を構築することが必要であるとしています。

そのうえで、過去の中核事業から未来の中核事業へのピボットを開始する際に、必要な資産と資源のポートフォリオをどのように構築・維持するかについて、「3つの賢明なピボット」と「9つのレバー」を詳細に解説してくれています。

  • ・イノベーションのピボット:集中、制御、志向
  • ・財務のピボット:固定資産、運転資本、人的資本
  • ・人材のピボット:リーダーシップ、労働、文化

なお、「労働」のレバーの中で「ミッシング・ミドル」という、アクセンチュアが考える「新しい仕事の形態」を紹介しています。

これは、「マシンは人間に取って代わるものではなく、また職場における人間の必要性も排除されていない」というアクセンチュアの研究結果に基づき、マシンと人間は新しい役割と新しい協力的なパートナーシップによって助け合うようになるというものです。

詳細は、『HUMAN+MACHINE 人間+マシン:AI時代の8つの融合スキル』東洋経済新報社(2018年11月)に解説されています。

潜在的収益価値が拡大する中で持続的成長を成し遂げるためには、自社の資産の中から時代に合わせてコアとなるものを見定め、それをテコにしてビジョンを絶え間なくピボットさせる経営者が必要となります。

そして、潜在的収益価値を解放するためには、継続的な変化に対応する戦略を採用し続けることが重要となります。

そのためには、あらゆる機能・従業員を再配置し、テクノロジー、顧客、ステークホルダー、社会的価値といった核となる資源を、企業全体のポートフォリオとして管理していくことが必要となります。

本書には、アクセンチュア自身の取り組みに加え、同社の顧客企業や調査対象の企業が、それぞれの資産を中心にしたピボットをどのように実行しているかを紹介してくれています。

企業が「過去・現在・未来の事業」の価値を発見し、成功をもたらしてきた戦略を詳細に解説してくれていますので、ビジネスリーダーの方々にとって自身の事業の変革に向けた戦略を考えるうえで大変参考になる一冊です。

目次

イントロダクション 「再構築」を再構築する

PART1 潜在的収益価値を解放する

第1章 潜在的収益価値のギャップ―創造的破壊をチャンスに変える

第2章 7つの過ち―潜在的収益価値の解放を妨げるもの

第3章 7つの勝利戦略―潜在的収益価値を解放するカギ

PART2 賢明なピボット(Wise Pivot)

第4章 賢明なピボット(Wise Pivot)―過去・現在・未来の事業における価値の発見と成長

第5章 過去・現在・未来―成長を再開し、利益を加速させ、規模を拡大して勝利をつかむ

第6章 イノベーションのピボット―集中・制御・志向

第7章 財務のピボット―固定資産・運転資本・人的資本

第8章 人材のピボット―リーダーシップ・労働・文化

結論 自らのブロックを見つけよう

参考

Pivot to the Future, Omar Abbosh

Pivot to the Future | Wise Pivot | Accenture

ピボット・ストラテジー ~未来をつくる経営軸の定め方、動かし方~|アクセンチュア

関係する書籍(当サイト)
  • HUMAN+MACHINE 人間+マシン:AI時代の8つの融合スキル

    HUMAN+MACHINE
    人間+マシン:AI時代の8つの融合スキル

    ポール・R・ドーアティ(著)、H・ジェームズ・ウィルソン(著)、保科 学世(監修)
    出版社:東洋経済新報社(2018/11/23)
    Amazon.co.jp:HUMAN+MACHINE 人間+マシン

ピボット・ストラテジー 未来をつくる経営軸の定め方、動かし方
  • ピボット・ストラテジー 未来をつくる経営軸の定め方、動かし方

    ピボット・ストラテジー
    未来をつくる経営軸の定め方、動かし方

    オマール・アボッシュ(著)、ポール・ヌーンズ(著)、ラリー・ダウンズ(著)、牧岡 宏(監修)
    出版社:東洋経済新報社(2019/10/4)
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