書籍 エンジェル投資家(ANGEL)/ジェイソン・カラカニス(著)

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エンジェル投資家
リスクを大胆に取り巨額のリターンを得る人は何を見抜くのか

ジェイソン・カラカニス(著)、孫 泰蔵(序文)、滑川 海彦、高橋 信夫(翻訳)
出版社:日経BP社(2018/7/12)
Amazon.co.jp:エンジェル投資家

 

angel

ウーバーを見出して1000万円を100億円にしたカリスマ投資家、その率直すぎる教え

リスクを大胆に取り、巨額のリターンを得る人は何を見抜くのか

 

 

 

本書は、情報テクノロジー分野の起業家、エンジェル投資家であり、起業家と投資家を橋渡しするテクノロジー系カンファレンスを数多く創立してきた著者が、自らの体験や直接見聞きしたことから、エンジェル投資家とはどういうものかを解説した一冊です。

有望なスタートアップを見極める方法、起業家が初期段階の投資を集める方法、エンジェル投資家がスタートアップ・エコシステムの中で占める役割などに加え、インキュベーターとベンチャーキャピタリストとの比較も解説しています。

投資家の方々にとっては、エンジェル投資への成功の秘訣を見出すことができますし、起業家の方々にとっても、資金調達の方法やアプローチ先、さらにはプレゼン方法など、具体的なノウハウを学ぶことができます。

 

本書は32章で構成されており、「エンジェル投資のメリット」「具体的な業務ノウハウ」「注意すべき問題点」「現金化」という順に流れています。

そして、それぞれ内容を要約したタイトルが付いていますので、興味がある部分から読んでいくことができます。

  • ・第7章では、スタートアップの資金調達ラウンドが解説されています。
  • ・第11章では、創業者の見つけ方や契約の結び方について触れられています。
  • ・第17章では、創業者にどんな資質をエンジェル投資家が期待しているかが記述されています。
  • ・第18章では、創業者と面接するとき、何を尋ねたら効果的かを、「創業者への4つの質問」と「投資家への4つの質問」として整理されています。

思いがけないことが起きても破滅的影響を与えるという「ブラックスワン」現象がわれわれの行く手に待ち受けている。

そういうことが起きたときに、単に生き延びるだけではなく、むしろそれをチャンスとして活用する方法を伝授しようというのがこの本のテーマだ。

 

エンジェル投資家とは

誰も実現性を信じないプロジェクト、最初期の非公開企業に投資する人のこと。

立ち上げ最初期の非公開企業に投資し、投資した以上のリターン(利益)を得る。

一般的な投資に比べてリスクが高く、それだけ期待するリターンも大きい。

ほとんどの場合、エンジェル投資の期間は3年以内。
投資相手の起業家は実績が少ない、もしくはゼロである。

スタートアップ創業者のビジネスモデルを信じる者がひとりもおらず、絶体絶命になったとき、天使よろしく窮地から救い出す役割から名づけられた。

創業者がプロダクトで金を生む方法を実際に見つけ出し、十分に大きなスケールに育てられた場合、「企業に買収されるか」「自ら上場するか」のいずれかが起き、ベンチャーキャピタリストはエクジット(出口)と呼ぶ。

ベンチャーキャピタリストが投資したキャッシュは、その会社の株式になっており、エクジットの瞬間に再びキャッシュ(あるいは等価物)に戻り、リターン(利益)が確定する。

 

エンジェル投資家に必要な能力と成功への道

金:小切手を書けること

時間:創業者が様々な課題を解決するのを手助けできること

人脈:創業者と投資家、顧客を仲立ちできること

専門知識:創業者がミスを犯して時間や金をムダにするのを防げること

そして、人付き合いの能力があること

 

アドバイザー、エンジェル投資家として成功と失敗を繰り返すと、優れた創業者を選び、ろくでなし、未熟者、無能な者を見抜く目が養われる。

成功を収めた人々に近づき、「勝ち馬に乗る」のも近道である。

まず少額の賭け金から始める。
そして、投資メモを書き、投資先オフィスを訪問し、スタートアップの顧客とも話をするようにする。

「どのプロジェクトが成功しそうか」ではなく、「どの人間が成功しそうか」を判断する。
10億ドルの会社を選ぶのではなく、10億ドルの創業者を選ぶ。

人物とそのモチベーションを評価する時間をとる。
「もしこの人物の株を買えるとしたら、買うつもりはあるか?」と自分に問いかける。

 

エンジェル投資家が狙うシナリオ

狙いは、企業価値10億ドル企業の「ユニコーン」

  • ・ユニコーンは、毎年10ないし20社程度登場している。
  • ・ユニコーンの10倍(企業価値100億ドル以上)の「デカコーン」も、10年間で10社程度出現している。
    例:ウーバー、小米、滴滴出行、エアビーアンドビーなど

 

投資資金として250万ドル用意できた場合

一般的に年率7%のファンドに投資した場合 = 10年ごとに、ほぼ2倍になると期待できる。

250万ドルの10%を1口5,000ドル単位でエンジェル投資した場合
=最悪のケースで7%の損失、おそらく1~3%の損失から20%の利益が現実的に予想される範囲

  • ・25万ドル(250万ドルの10%)の1口5,000ドル = 50口(50社への投資)
  • ・50社の内1社が企業価値100億ドルに成長 = 5,000ドルが500万ドル(「プロラタ」条項を入れている場合)
  • ・企業価値10億ドルの「ユニコーン」に成長 = 5,000ドルが50万ドル

運悪く、投資先の70%が消滅した場合

  • ・35社(50社の70%)が消滅
    = 当初の25万ドルの内、17.5万ドル消滅(1口5,000ドルX35社)
    = 純資産250万ドルの7% = 一般的に耐えられる額
  • ・残りの15社の内(ありそうなシナリオ)
    5社は「損益とんとん」で2.5万ドルが戻ってくる(リターン0)
    7社が倍額となり、7万ドルが戻ってくる(リターン3.5万ドル)
    残りの3社が以下となった場合、
    1社が5倍の2.5万ドルが戻ってくる(リターン2万ドル)
    1社が10倍の5万ドルが戻ってくる(リターン4.5万ドル)
    1社が20倍の10万ドルが戻ってくる(リターン9.5万ドル)

著者の経験

非常に優れたスタートアップを50チーム見つける必要があるが、投資を決断するほど優れたチームは100社に1社くらい。

すると、5年間に5,000社を見ていかなければならない。
= 平均して、1週間に20社 = 毎週20~30時間要する。

できる限り多くの創業者と会うべきであるが、投資する案件はできる限り少なくすべきである。

まずシンジケートで10回賭けてから、20ヶ月の間に2.5万ドルの投資をこなせば、2年(8四半期)足らずの間に51万ドルを動かすことになる。

2年目、投資を始めてから5、6四半期過ぎたあたりから、初めての四半期に投資した10社ほどが再び資金調達が必要だと言い始める。

スタートアップが資金調達するとき、12~18ヶ月の助走期間を設定する。

アーリーステージスタートアップの死亡率は、70、80~90%である。

参考:アメリカ証券取引委員会による「適格投資家」

  • ・投資に先立つ2年間の年収が20万ドル以上であり、今後もその年収が維持できると合理的に期待できる場合(配偶者がある場合は、合算して年収30万ドル以上)
  • ・配偶者と合算あるいは単独で純資産が100万ドル以上ある場合(但し、主要な住居の価値を除く)

 

スタートアップの資金調達ラウンド

「ただ働き」ラウンド

  • ・創業者が無償で働く
  • ・「汗による企業価値」と呼ばれるが、エンジェル投資家にとっては重要な指標となる。
    外部から投資なしに創業者自身がどれだけの企業価値を形成できたかを測ることができる。

「ブートストラップ」ラウンド

  • ・手の届くところにあるリソースを使い、自分だけの力で物事を進めようとする努力している。
  • ・投資家ではなく、外部の助けがある場合もある。
    創業者が「ただ働き」でつくったプロダクトに金を払いたいという顧客が見つかることがよくある。

「友達・家族・親類縁者」ラウンド

  • ・プロのエンジェル投資家と接触する前に、個人的な関係から資金調達をすることがよくある。
  • ・スタートアップがものになりそうかどうかは、どのくらい才気があるか、効率的かを見れば判断できる。

「自己資金調達」ラウンド

  • ・借金以外に資金を得られなかったとすれば、友人、親類、プロの投資家が、ビジョンに価値を認めなかったことにもなる。
  • ・まずは、運営資金をどの様にしてつくったか、なぜ投資家から調達をしなかったかを確認する。

「インキュベーター」ラウンド

  • ・インキュベーターに加わり、そこで少額の投資を受ける道もある。
    巨大企業に成長したスタートアップの多くはインキュベーターから生まれたわけではないが、インキュベーターから大当たりすることもある。
  • ・多くのインキュベーターは、2.5万ドルから15万ドル程度のシード資金と引き換えに、10%程度の持分を要求する。

「シード/エンジェル投資」ラウンド

  • ・ほとんどのスタートアップ創業者は、これまでのラウンドの2つか3つを使ってアーリーステージの資金調達に成功している。
  • ・エンジェル投資家は、チャンスを広く見渡し、一番有望そうな相手を選ぶ。

「ブリッジ」ラウンド(シード・プラス・ラウンド)

  • ・シードラウンド段階のスタートアップが資金を使い果たしそうになったが、ベンチャーキャピタルにシリーズAラウンドを要請する段階に達していない場合に使われる。
  • ・通常は、シードラウンドに参加した投資家と同じメンバーが「つなぎ」資金を供給する。
    すでに失敗の可能性もあるので、このラウンドからの参加は「損な投資」になる可能性がある。
    「最初の投資を決めた後で、何がどう変化したか」に注意し、「ブリッジ資金で何が達成できるのか」を創業者と率直に会話する。
  • ・「残余財産分配優先権」「新株引受権」という、会社評価額を下げずに投資家に一種のボーナスを出す仕組みもある。

「シリーズA」ラウンド

  • ・スタートアップが到達することを熱望し、最も重要である投資ステップである。
  • ・投資を実施するのはプロのベンチャーキャピタルであり、案件の担当者はスタートアップの取締役に就任して「適切な経営管理」を受ける。
  • ・エンジェル投資家は、「シリーズA」に参加することもあるが頻繁ではない。
    相乗りする場合は、「プロラタ」を最大限に活かすべきである。

シリーズB・C・D・E・F、それらの中間ラウンド

  • ・多くの場合、シリーズAラウンドが成功すれば、エンジェル投資家としてはその企業に投資することはない。

 

求める創業者像

「ただ働き」をいとわない創業者
会社を前進させビジョンを実現することが、何よりも重要とする。

向こう気が強く、資金の使い方が断固として効率的である。

スケールの大きなアイデアを持ち、元気である。

創業者を見分けるポイント

  • ・苦しいときに、逃げ出すかどうか。
  • ・資金を調達するまで働き続けるか。

 

投資家への質問

1.この創業者は、なぜ、このビジネスを選んだのか?

2.この創業者は、どこまで本気なのか?

3.この創業者がこのビジネスで成功するチャンスはどのくらいか?人生ではどうか?

4.成功したときの収益や私へのリターンはどのくらいか?

 

創業者への質問

1.あなたは、今どんな仕事していますか?

2.あなたは、なぜ、これをやっているのですか?

3.なぜ、今なのか?

4.あなたの不当なまでの優位性は何か?

さらに深く切り込む(簡潔な答えを求める)

1.競合について教えてください。

2.どうやって利益を出しますか?

3.顧客には、いくら請求しますか?

4.平均的な顧客は、いくら使いますか?

5.このビジネスが失敗する理由のトップ3を聞かせてください。

 

要約しよう。

人生に偶然はつきものだ。しかし幸運は呼び込むこともできる。

幸運だと言われる人々はもっとも成功する見込みの高い人々の世界で運を試す。これは不可能でもないし、とんでもなく難しいことでもない。ただし努力が必要だ。

では努力しようではないか!

信じていただきたい。

懸命に努力すれば必ずその成果がある。

 

まとめ(私見)

本書は、著者自らが体験したり見聞きしたりしたことが記述されていて、エンジェル投資についての体系的・理論的な分析には重きが置かれていません。

その分、エンジェル投資家の視点から起業の修羅場を疑似体験することができ、実務的な説得力があります。

投資契約の実務、契約の前後、またその最中で、どの様に創業者と話し合うべきかなど、臨場感にあふれています。

著者は、創業直後のウーバーに2.5万ドルを投資し、2018年2月時点で3億6,000万ドル(約400億円)を得たことになりますが、一方ではツイッター創業者たちから投資を求められたにもかかわらず断ってしまうという失敗も犯しています。

また、エンジェル投資はベンチャー投資の中でもハイリスク・ハイリターンの世界であるが、ギャンプルであっても「きわめて勝率が高いギャンプルである」と主張しています。

一方では、「私が思うに、エンジェル投資家にとっての一番の仕事は、CEOが苦戦しているときにはそこにいて、話を聞いてもらっていると感じさせ、自分が味方であることを確実にわからせることだ。」とも述べています。

「この本の目的は、現代の世界で大金を稼ぐ方法を伝授する」ことと言いながら、単に金儲けの手段ではなく、「素晴らしい創業者を見出し、そのビジネスを共に育てていく」という姿勢も垣間見え、共感できます。

そして、「どのプロジェクトが成功しそうか」ではなく「どの人間が成功しそうか」を判断基準にするという考えにも納得感があります。

 

多くのスタートアップ企業が生まれていけば、産業が活性化することになります。

しかし、本書の背景となっているシリコンバレーのような投資システムや環境は日本にはありませんし、本書の内容は驚異的な実績をあげた著者の視点によるものでもあります。

日本には日本の環境に則したやり方があるでしょうし、そこには形式的な創業者支援策ではなく、実質的かつ総合的な支援を実施していくことも必要ですし、本書の裏返しとなる「求める創業者」の出現(育成)も期待されます。

本書は、支援する(投資する)側と創業する側にとって、多くの気づきを与えてくれる一冊です。

 

目次

日本語版序文 孫泰蔵

第1章 誰もこういう本を書かなかったので、私が書くことにした

第2章 ブルックリンのガリ勉少年

第3章 エンジェル投資とはそもそもどういうものか?

第4章 エンジェル投資に向いている人間とは?

第5章 優れたエンジェル投資家になるにはシリコンバレーにいる必要がある

第6章 シリコンバレーのどこがそれほど特別なのか?

第7章 スタートアップの資金調達ラウンドを解説する

第8章 わずかしか(あるいは全然)金がなくてもエンジェル投資家になれる

第9章 アドバイザーのメリットとデメリット

第10章 大学新卒でもエンジェル投資家になれる

第11章 エンジェル投資のシンジケートをつくるには?

第12章 ひと月目――まずは10件のシンジケート投資

第13章 2カ月――30日間、創業者とミーティングを続ける

第14章 最高と最悪のピッチ・ミーティング

第15章 ピッチ・ミーティングの前にやるべきこと

第16章 ピッチ・ミーティングで何をすべきか

第17章 10億ドルの創業者を見つけるには

第18章 創業者に尋ねるべき4つの質問

第19章 さらに深く切り込む

第20章 創業者か詐欺師か?

第21章 案件を評価する

第22章 エンジェル投資家がディールメモを書くべき理由

第23章 出資を断る最善の方法

第24章 デューデリジェンスのチェックリスト

第25章 初めてのイエス

第26章 創業者がエンジェル投資家とつきあう方法

第27章 月次報告書ほど重要なものはない

第28章 エンジェル投資家の悲惨な2年目

第29章 片時も目を離すな

第30章 エグジット―すごい会社は売るのではなく買われる

第31章 自分の打ちやすい球を見つけよう

第32章 エンジエル投資という仕事はどこでどのように終わるのか?

 

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STARTUP(スタートアップ)
アイデアから利益を生みだす組織マネジメント

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ゼロ・トゥ・ワン
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ピーター・ティール、ブレイク・マスターズ(著)
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Yコンビネーター(combinator)
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リーン・スタートアップ(Lean Startup)
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