富士通の中期経営計画目標は未達でも、全社連結及びテクノロジーソリューションも確実に収益性が向上

富士通の中期経営計画目標は未達でも、全社連結及びテクノロジーソリューションも確実に収益性が向上

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富士通の中期経営計画の目標達成状況

富士通の中期経営計画と決算資料を参考にしてATY-Japanで作成

2023年4月27日、富士通は2022年度(2023年3月期)の決算発表に合わせて、中期経営計画の目標達成状況も発表しています。

2019年9月に現在の時田社長就任以来初めて発表した、2022年度(2023年3月期)を最終年度とする中期経営計画です。

結果は、全社連結業績のフリーキャッシュフローは目標を達成しましたが、テクノロジーソリューション事業における中期経営計画の目標値は達成できませんでした。

中期計画(2020年度~2022年度)の目標達成状況

富士通の中期経営計画の目標達成状況

富士通の中期経営計画と決算資料を参考にしてATY-Japanで作成

中期経営計画の目標値は以下としていましたが、テクノロジーソリューション事業の目標は達成できませんでした。

テクノロジーソリューション事業の目標未達成の主な要因は、部材供給問題やハードウェアの供給が第4四半期には回復することを見込んでいたものの、計画通りにはいかなかったとしています。

連結業績のフリーキャッシュフロー:目標達成

  • ・当初目標は1,500億円以上
  • ・2022年度実績は1,775億円で、目標を達成しました。

テクノロジーソリューション事業:目標未達成

  • ・目標は、2022年度売上収益3兆5,000億円(2022年4月に3兆2,000億円に修正後、2023年1月に3兆2,200億円に修正)、営業利益率10%(2023年1月に9.3%に修正)
  • ・2022年度実績は、売上収益3兆1,765億円、営業利益率8.3%となり、両指標とも目標を達成することができませんでした。
非財務指標の状況

また、非財務指標として、人権・多様性、ウェルビーイング、環境、コンプライアンス、サプライチェーン、安全衛生、コミュニティの7つの課題について、NPS(Net Promoter Score)を用いて評価する仕組みを設定する予定としていました。

お客様NPSとDX推進指標は目標値を達成しましたが、従業員エンゲージメントに関してはグローバル全体で改善しているようです。

  • ・お客様NPS
    2021年度 +2.3ポイント → 2022年度 +18.1ポイント(2022年4月時点の目標 +3.7ポイント)
  • ・従業員エンゲージメント
    2019年度 63 → 2020年度 68 → 2021年度 67 → 2022年度 69(2022年4月時点の目標 75)
  • ・DX推進指標
    2019年度 1.9 → 2020年度 2.4 → 2021年度 3.2 → 2022年度 3.56(2022年4月時点の目標 3.5)

今回の中期経営計画の3年間は、コロナウィルス感染症やウクライナ情勢の影響により、部材の供給不足やサプライチェーンの分断など、厳しい状況が発生しました。

しかし、最終年度の2022年度は全社連結業績は過去最高益となり、テクノロジーソリューション事業でも確実に収益性を向上させることができています。

富士通を成長軌道に転換し、富士通の形や質を変えることに取り組み、持続的に成長する企業に転換していることを実感しているようです。

価値創造のための2つの事業領域の状況

デジタル(DX、モダナイゼーション)を「For Growth」、従来型ITを「For Stability」と定め、2つの事業領域でお客様や社会への価値創造に取り組んでいます。

「For Growth」では規模の拡大と収益規制の両方を伸ばし、「For Stability」は効率性を上げ、利益率を高める計画です。

当初目標に対して2022年度の結果は未達成でしたが、「For Growth」は確実に成長しています。

For Growth

  • ・DXやモダナイゼーションといったデジタル領域を、お客さまの事業の変革と成長に貢献する事業領域
  • ・当初の目標は、売上収益1兆3,000億円、テクノロジーソリューションにおける構成比 37%でしたが、2022年度実績は売上収益1兆1,221億円で構成比は35%

For Stability

  • ・システム保守や運用、プロダクト提供といった従来型IT領域を、IT基盤の安定への貢献と、品質向上に取り組む領域
  • ・2022年度実績は売上収益2兆544億円で構成比は65%
事業セグメント別の成果

テクノロジーソリューション

  • ・ソリューション・サービス
    国内での市場優位性を維持、強化しながら、生産性向上を推進し、利益の規模は確実に拡大
    規模の成長は若干スローだったが、DXサービス領域へのシフト、オフショア開発拡大、共通費用圧縮などによって採算性向上を実現
  • ・システムプラットフォーム
    ネットワーク事業の立て直しと、5G需要の取り込みは想定通り
    プロダクト事業において、部材調達遅延と為替の急激な変動によるネガティブな影響があったが、サプライチェーンの見直しや価格転嫁を進めることで、2022年度後半からは悪化分をリカバリー
  • ・海外ビジネス
    環境悪化の逆境をはね返す体力とスピードが不足しており、低水準の採算性のまま足踏み状態
    事業体質を一段強化するための抜本的な立て直し施策が必要

デバイス・ユビキタス

  • ・電子デバイス部品
    想定以上の需要を取り込み、円安も追い風
    今後の市況環境には不透明感があり足元は厳しい状況

「価値創造」と「自らの変革」についての成果

パーパス実現のために取り組む課題として、お客様の価値を創造し、事業成長と安定に貢献すると共に、社内DXの更なる実践により、自らを変革することをあげています。

なお、各施策には進捗の差はあるものの、着実に成果があがっているとしています。

価値創造に向けた成果と継続する取り組み

1.グローバルビジネス戦略の再構築

  • ・4リージョン制に移行、Fujitsu Uvanceを展開
  • ・2022年度までの主な成果
    グローバルでのガバナンス体制の強化に取り組み、Americasでのビジネス構造改革により収益性を改善、Fujitsu Uvance売上 2,000億円
  • ・継続する取り組み
    海外リージョンにおけるビジネスシフトと収益性向上

2.日本国内での課題解決力強化

  • ・国内全営業のリスキリングとテクノロジーの強化による、お客様との社会課題解決への取り組み
  • ・2022年度までの主な成果
    国内において8,000人のビジネスプロデューサーへのリスキリングを完了、有償コンサルティングサービスを提供する人材を900人に拡大、富岳がスーパーコンピューター世界ランキング4期連続4冠
  • ・継続する取り組み
    更なる成長に向けた事業モデルやポートフォリオの転換

3.お客様事業の一層の安定化に貢献

  • ・グローバルレベルの標準化、品質・リスクマネジメントとセキュリティの本社ガバナンス強化
  • ・2022年度までの主な成果
    グローバルデリバリーセンター(GDC)およびジャパングローバルゲートウェイ(JGG)の合計人員数が3万人となり、グローバル標準の開発やデリバリーを通じた生産性および収益性を改善した他、Palantirのデータ分析プラットフォームやAIを活用した損益予測やリスク度評価により、プロジェクトのトラブル発生の予防対策を強化して6,000以上のプロジェクトで点検
  • ・継続する取り組み
    お客様IT/サービス基盤の一層の安定化/セキュリティ強化、モダナイゼーションのサポート向上

4.お客様のDXベストパートナーへ

  • ・お客様と伴走することで、経営課題の解決をゴールとするカスタマーサクセスを支援
  • ・2022年度までの主な成果
    顧客ととも社会課題の解決やサステナビリティに貢献する新たなビジネスモデルの創出に取り組んだ「共創」がグローバルで進展し、2022年度までの3年間で、全世界での共創案件が160社以上、Ridgelinezの売上100億円以上・コンサル提案250社以上
  • ・継続する取り組み
    カスタマーサクセスをグローバルで支える仕組みや体制の構築
自らの変革に向けた成果と継続する取り組み

1.データドリブン経営強化

  • ・OneFujitsuプログラムに基づくデータドリブン経営を開始
  • ・2022年度までの主な成果
    2022年度までに基盤整備が完了して1万3,000人が利用、2021年度に稼働したOneCRMは31カ国で2万人の社員が利用、グローバルで基幹システムを刷新するOneERP+は2022年4月に英国およびアイルランドで先行稼働し2024年度に全社稼働を予定
  • ・継続する取り組み
    One ERP+を中心にグローバルで統一化されたデータドリブン経営に移行

2.DX人材への進化・生産性の向上

  • ・Work Life Shiftに基づく制度や環境の整備を進め、自律的な働き方・キャリア形成を促進、生産性の向上に寄与
  • ・2022年度までの主な成果
    Work Life Shiftに基づく新たな制度の導入などを通じて自律的な働き方やキャリア形成を促進、社員一人あたりの営業利益は2019年度比で60%増加
  • ・継続する取り組み
    事業と連動した人材のポートフォリオと個人にフォーカスした人事制度への移行

3.全員参加型、エコシステム型のDX推進

  • ・社内のトランスフォーメーションにより、コミュニケーションと組織風土を変革
  • ・2022年度までの主な成果
    全員参加型およびエコシステム型のDX推進では全社DXプロジェクトの「フジトラ」において約30の変革フレームワークを進行し、DX事例共有などを行う定例の全社DXイベントには直近では2万6000人の社員が参加
  • ・継続する取り組み
    DXの更なる発展、社内DXからステークホルダーへの価値提供の拡大

次期中期経営計画の位置づけ

次期中期経営計画(2023年度~2025年度)は5月24日に発表予定ですが、「2030年およびそれ以降に向けて、持続的な成長、収益力向上に向けたモデルを構築する3カ年」としています。

収益改善と企業文化・組織風土改革に向けて、以下の取り組みを実施することとしています。

  • ・事業モデル・ポートフォリオの変革(On Cloudビジネスの強化)
  • ・お客様のモダナイゼーションの確実なサポート(DX・GXをリード)
  • ・海外ビジネスの収益性向上(サービスビジネスへのシフト)

参考:富士通の発表資料

2023.04.27 富士通の2023年3月期決算発表

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